第一次産業とは?定義と二次・三次産業との違い、歴史・現状まで解説

目次

第一次産業とは

第一次産業とは、自然界に働きかけて作物を生産したり採取したりする産業のこと。
総務省が告示する「日本標準産業分類」の大分類の中では、「農業」、「林業」、「漁業」が第一次産業に該当します。

 

第二次、三次産業、六次産業化との違い

第二次産業との違い

第二次産業とは、第一次産業(農業・林業・漁業)によって採取・生産された原材料を加工し、利益を生み出す産業のこと。
日本の産業区分では、鉱石や金属などを採掘する「鉱業、採石業、砂利採取業」、土木・建築工事などを行う「建設業」、物品等を製造する「製造業」の3業種が該当します。

第三次産業との違い

第三次産業とは、第一次産業にも第二次産業にも分類されない産業のこと。
商業、金融業、医療・福祉・教育、飲食サービス、宿泊、小売、情報通信業などが該当します。

六次産業化(六次化)との違い

六次産業化とは、第一次産業従事者が生産だけでなく、製造・加工(第二次産業)やサービス・販売業(第三次産業)に一体的に取り組むことで、生産物の付加価値を高めること。1(一次)+2(二次)+3(三次)=6(6次)となることに由来します。

 

第一次産業の仕事内容・役割

農業

農業は、稲や野菜、果樹などの植物を生産・収穫する「耕種農業」、家畜・家禽を飼育する「畜産農業」、農作物の生産、加工、流通など農に関する事業を行う「アグリビジネス」の3種類に分けられます。

私たちが生きていく上で欠かせない「食」を供給するという重要な役割を担うほか、田畑を適切に維持・管理することで洪水・土砂崩れ防止や生物多様性保全、景観保全などのプラスの外部経済効果をもたらすことから、近年はそうした公益的機能の側面からも農業の持つ意義が見直されています。

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林業

森林を維持管理しながら主に樹木を植林、育成、伐採して林産物を生産します。木材のほか、薪や木炭、竹材、桐材、漆、山菜・きのこ類など、森林原野を起源とする生産物(特用林産物)をつくる仕事も林業に含まれます。

農業同様、土砂災害防止機能や水源涵養機能、地球環境保全機能、生物多様性保全機能等の公益的機能を有し、特に国土の約3分の2を森林が占める日本において重要な役割を果たしている産業です。

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漁業

漁業には、陸地が見える程度(海岸から数十km)で行う沿岸漁業、陸地から200海里(約370㎞/自国の排他的経済水域)内の沖合で行う沖合漁業、公海や外国の排他的経済水域内に出向いて行われる遠洋漁業、稚魚から成魚になるまで人の手で育てて出荷する養殖漁業の4種類があり、漁法により仕事内容は様々です。

漁業が担う役割として、水産資源の安定供給のほか、適切な漁獲による生態系循環の促進、カキやアサリなど水質浄化機能を有する貝類の養殖や陸から海に流れ出た窒素、リンを摂取した魚介類を獲ることによる海洋環境改善などが挙げられます。

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日本における第一次産業の歴史と変遷

日本で初めて国勢調査が行われた1920年(大正9年)の産業別就業者数は、第一次産業14,672,164人(54.9%)、第二次5,597,905人(20.9%)、第三次6,463,586人(24.2%)と、労働人口の半数以上が第一次産業に従事していました。

産業構造に大きな変化をもたらしたのは、1955年ころから始まった高度経済成長期。特に1960年に成立した池田勇人内閣による「所得倍増計画」等の経済優先政策により、社会インフラの整備や拡充、石油・鉄鋼を中心とする重化学工業への産業転換が推し進められ、さらに先進国からの技術輸入による技術革新が起こったことで民間企業によるヒト・モノへの投資が活発化。日本は、諸外国から原材料を輸入し、加工した製品を輸出する「加工貿易」で農業国から工業・ものづくり大国へと大転換を遂げました。これに伴い、1960年代頃から第一次産業従事者数は減少傾向に転じ、1965年には(昭和40年)第二次産業就業者数が第一次産業就業者数を上回ります。

その後、人々の価値観やライフスタイル、娯楽の多様化等を背景に第三次産業の規模が拡大し、2020年時点で全就業者数に占める第一次産業就業者の割合は3.3%、第二次23.4%、第三次73.4%と産業構造の高度化が進み続けています。

参考:総務省統計局「変化する産業・職業構造」
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/sokuhou/03.htm

参考:総務省統計局「統計でみるあの時といま No.3」
https://www.stat.go.jp/info/anotoki/pdf/census.pdf

 

第一次産業が抱える課題と現状

日本の第一次産業は衰退傾向にあるとされていますが、具体的にはどのような産業課題を抱えているのでしょうか?

1.就業人口の減少

日本の第一次産業が抱える課題の中で、最も深刻なのが担い手不足です。

農水省による調査によると、2015年に推定値で175.7万人だった基幹的農業従事者※1は、2023年には約34%減の116.4万人にまで減少。さらに、116.4万人のうち65歳以上の高齢者は82.3万人と、約70%を占めています。※2

また、2014年に5万7700人だった新規就農者数は、2022年には4万5800人に減少しており、就業者の高齢化と減少に歯止めがかからないのが現状です。

※基幹的農業従事者(個人経営体):ふだん仕事として主に自営農業に従事している者のこと。
参考:農林水産省「農業労働力に関する統計」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html

2.労働環境

担い手不足の背景には、少子高齢化・人口減少が進む日本社会全体の傾向も挙げられますが、自然を相手にする産業ゆえの労働環境が大きく影響していると考えられます。

例えば農業や漁業は深夜・早朝からの作業を伴います。また、林業を含め台風や大雨、干ばつ、冷害等が発生した場合はダイレクトにその影響を受けますし、これらの対策や回復に想定以上の作業時間がかかったり、大きな被害を受けてしまうと計画していた収穫量に届かないため十分な売り上げが立てられず、労働時間に見合った収入が得られないことも珍しくありません。

3.テクノロジー導入の遅れ

人手不足の解消と作業効率の向上のため、近年はロボットやICT技術を導入し、作業員に掛かる負担を軽減させたり、データに基づく技術継承を行うことで参入障壁を低くするなどの対策が講じられています。

その一方で、日本の農業は農業経営体全体のおよそ96%を家族経営体が占めており、漁業も同様に家族・親族経営の小規模事業体が大半であることや、林業に関しては急峻な山々が多い日本の山林の特性上、大型の機械を作業現場に持ち込めないことなどから、諸外国のようにテクノロジー導入を急速に進めていくのは難しいのが現状です。個々の事情にあわせて柔軟に技術導入を進めつつ、農作物のブランド化や六次産業化を並行して推進していくことで新しい収益源を確保する工夫が求められています。

※農水省「国連『家族農業の10年』(2019-2028)」
https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kanren_sesaku/FAO/undecade_family_farming.html#:~:text=%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E7%B5%8C%E5%96%B6%E4%BD%93%E6%95%B0%E3%81%AF,%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8A%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 

第一次産業の働き手の声

TURNSでは実際に第一次産業に従事し活躍されている方々を取材し、リアルな声をお届けしています!

農業

【岐阜県中津川市】小池菜摘さん|Koike lab.(コイケラボ)代表

大阪府出身の小池菜摘さんは、夫の故郷である岐阜県中津川市に移住して就農。地域野菜のプロデュースやフードロスの削減に取り組む小池さんに、野菜作りや地域への思いを聞きました。農業と兼業で、写真家、中津川市議会議員としても活躍し、恵那市・中津川市の地域野菜共同出荷事業「恵那山麓野菜」代表も務めています。

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https://turns.jp/84243

 

【宮城県石巻市】あぼーぼら・いしまき農園・石牧 紘汰さん

横浜市出身。2019年10月に「一般社団法人イシノマキ・ファーム」への入社を機に宮城県石巻市へ移住。イシノマキ・ファーム職員として、石巻市農業担い手センターで新規就農支援を伴奏型で行いながら、2022年3月からは自身の農園「あぼーぼら・いしまき農園」を立ち上げ、かぼちゃの生産・販売を行っています。

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https://turns.jp/86846

【和歌山県有田川町】シビアだけどチャンス!「篠畑農園」に教わる有田川町特産ぶどう山椒の無限大の可能性

Uターン後に耕作放棄地を活かしてぶどう山椒づくりをスタートさせた「篠畑農園」の代表・篠畑 雄介さんに、移住就農の体験談やぶどう山椒づくりに込めた思いを伺いました。

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林業

東京都檜原村】人と共生する美しい森が、檜原村の希望になるまで|東京チェンソーズ


東京都檜原村を拠点に、木の価値・森の価値を最大化させる多岐にわたる森林ビジネスを展開されている『株式会社東京チェンソーズ』代表取締役の青木亮輔さんを取材しました。

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東京都檜原村東京の木のおもちゃに込める、100年先への希望|東京チェンソーズ

東京チェンソーズとNPO法人、檜原村役場が官民連携を図り、日本一の木のおもちゃの村を目指す「トイビレッジ構想」を取材しました。

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https://turns.jp/80447

漁業

宮城県石巻市】〝乗り越えていない〟漁師たちは有事に向き合い続ける|フィッシャーマンジャパン

震災後の漁業を支えるべく宮城県石巻市で生まれた漁師団体「フィッシャーマン・ジャパン」。コロナ禍においても彼らは変わらず一つの〝旗〟を目指す。有事をものともしない彼らのビジョンを、石巻の浜で語っていただきました。

▼取材記事はこちら!
https://turns.jp/48650

和歌山市雑賀崎】日本のアマルフィと呼ばれる雑賀崎で空き家を活用!孫の代まで楽しく住み続けられる漁村に|Fisherman’s Table&Stay 新七屋(しんちや)

漁師の家に生まれ、2020年に雑賀崎にUターンした池田佳祐さんは、漁師をしながら集落内の古民家をリノベーションし、2021年4月に「Fisherman’s Table&Stay 新七屋(しんちや)」を開業。稼げる漁師のモデルを示すことでUターン者を増やしたいと、新たな漁師文化の確立に励んでいます。

▼取材記事はこちら!
https://turns.jp/92285

岩手県大槌町】復興から復光へ ご当地サーモンをブランド化し地域の持続可能な産業に|大槌復光社協同組合

400年以上の長い年月、大槌町民に愛されてきたサケに代わる新しい特産としてご当地サーモンの養殖事業が始まったのは2019年。この事業の担当であり、「桃畑学園サーモン」のブランド化に取り組む大槌復光社協同組合理事の金﨑拓也さんに、ご当地サーモン事業を始めた背景を聞きました。

▼取材記事はこちら!
https://turns.jp/88599

島根県海士町】転職先は離島。島根県 海士町で島の暮らしを支える担い手を募集中|飯古建設

海士町で唯一の総合建設会社であり、主軸である建設業のほか、漁業と畜産業も手がけて島ならではの多角経営を行っているのが『飯古建設有限会社』。1960(昭和35)年の創業以来60年以上にわたり、港湾や防波堤、橋、道路の建設など、島民の生活基盤を整える重要な役割を担い、この島になくてはならない存在となっている。

▼取材記事はこちら!
https://turns.jp/65158

第一次産業に関する本・参考文献

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TURNSでは今後も第一次産業に関する情報をお届けしていきますので、ぜひご活用ください!

#第一次産業


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