【北海道猿払村役場・新家拓朗さん】
公務員マーケターの情報発信が拓く、日本最北端の村の未来

地域活性化のキーパーソンに聞く、"今、地域で求められる人"とは? vol.2

「地域活性化に携わりたい!」「地域貢献につながる仕事がしたい!」と思っても、具体的にどうすれば地域の力になれるのか見えにくいもの。

そこでTURNSでは、連載企画「地域のキーパーソンに聞く!“今、地方で求められる人”とは?」を通し、地域活動の最前線で活躍するキーパーソンに、今、地域で求められている人物像や地方で暮らし働く可能性について聞き、これから地方を目指す方のヒントとなる情報をお届けしていきます!

連載第2弾は、北海道猿払村役場の職員で、ライフワークとして村のプロモーション活動に取り組む「地方公務員マーケター」の新家拓朗さんです。新家さんのTwitter(@takuro_shinya)のフォロワー数は、なんと1.4万人。公務員としての仕事の枠を超えて地域活動に取り組む訳を伺いました。

新家拓朗さん|猿払村役場住民課

1980年猿払村生まれ。地元高校卒業後、猿払村役場に入庁。日々の業務や暮らしの中で猿払の知名度の低さを痛感し、地域の情報を発信することに関心を持つ。2014年頃からSNSを活用した猿払のプロモーションを村と個人で開始。2020年に、村内外に猿払の持つ魅力を届けるプロジェクト「SARUFUTSU-LABO」を立ち上げ、自ら撮影した猿払村の写真を用いたカレンダーを製作・販売するなど、地域プロモーションのカタチを模索している。

▼新家さんのTwitter、note、Instagram、Voicy
https://lit.link/takuroshinya

 

日本最北端の村から

-私自身も新家さんのSNSがきっかっけで猿払村のことを知ったのですが、改めて猿払村とはどのような地域ですか?


1月から3月にかけて、アムール川河口付近で生まれた流氷が接岸する神秘的な光景が広がる

猿払村は、北海道最北のエリアである宗谷地方に属す、日本最北端の村です。総面積は590 km2と村としては道内一、全国でも2番目に広く、面積の約8割を山林原野が占めています。村内には幻の魚と呼ばれる「イトウ」が生息する猿払川が流れ、多様な動植物を育む湿地帯が点在し、冬には流氷が接岸し神秘的な光景を見ることもできる雄大な自然が魅力の地域です。

甘みと旨みがギュッと詰まった肉厚の身が特徴の猿払産ホタテ

日本有数の水揚げ量を誇るホタテを中心とした漁業と、さるふつ牛乳やさるふつバターを始めとする酪農業が盛んで、近年はビニールハウスを活用してのいちご栽培実証事業の取り組みやホタテ貝殻を利活用してのプロジェクトも進行中。海産物・乳製品を中心としたグルメに定評があるとともに、約8kmに渡って信号や標識、電柱等の人工物がない直線道路が続く「エサヌカ線」 という道がライダーに人気のスポットとなっていて、産業・観光資源も豊富です。

人口は2,600名ほどですが、高齢化率※1は25.7%(令和4年時点)で北海道179市町村の中では下から二番目に低く、村の合計特殊出生率※2出生率は2.19(2020年)と、全国平均1.33(2020年)と比較して高水準。人口に占める若い世代の割合が比較的高いのが特徴です。

※1:総人口に占める65歳以上人口の割合のこと。
※2:15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの。

 

-若い世代の割合が高い背景には、猿払村ならではの地域性があるのでしょうか?


日の出とともに出航するホタテ漁船

盤石な産業基盤と働き口があり、安定した生活ができる点が大きいのではないかと思います。

猿払村のホタテは水揚げ量が多いだけでなく大粒で高品質なため、国内外で高い評価を受けています。なかでも、干し貝柱は、中華料理等で高級食材として活用されるなど、輸出も多くされています。

猿払村産の干し貝柱は、品質の高さから人気が高い

漁業に関しては、組合員の資格が世襲されるため新規参入するのは不可能ですが、村の産業のもう一つの柱である酪農業は村外からの移住者も就くことができますし、就農支援制度も整っています。現在、村をあげて農の六次産業化や新産業創造にも取り組んでいるので、今後、猿払村が経済的にますます発展していく可能性も新しい雇用が生まれる可能性もあると思っています。

一次産業の恩恵をうけて、経済的に安定した暮らしができることは、子どもを産み育てる上で大きな安心感につながるため、地域に強い産業と雇用があることが全国的にも高水準の出生率につながっていると思います。

 

たった一人の行動も、続けることで大きな力になる

-新家さんは「地方公務員マーケター」という肩書で、個人で猿払村の情報発信をされていますが、活動を始めたきっかけについて教えてください。

猿払村にはたくさんの魅力があるのにも関わらず、それが知られてすらいないのは非常にもったいないと思ったためです。

自分自身、生まれも育ちも猿払村で43年間ずっとこの村で暮らしてきたのですが、仕事で北海道内外の方々との交流機会が増すにつれて、「猿払村ってすごい村ですね!」と言っていただくことも増え、住み慣れた自分にとってはなんてことない日常の風景や食文化も、外の人から見るとむしろとても魅力に映るんだということを自覚できたのです。

あらゆる行動は知ることから始まると思っているので、地域PR活動を通してまずは魅力溢れる猿払村のことを知ってもらえれば、次第に村のファンができて、観光や移住、新産業、ふるさと納税など、さまざまな新しい可能性が拓けるのではないかと思いました。

-具体的にはどのような方法でPRをされていますか?

2018年の秋頃から個人のInstagram、2020年からはTwitterやnote、2022年からはVoicyを活用して村のPRにつながる情報発信をし始めました。

村の魅力や村として力を入れている取り組みなどのほか、自ら撮影した村の風景や天気など定期的に出しやすい情報を織り交ぜることで、継続が苦にならないよう自分なりに工夫しつつ、カメラやPC、車など、個人の趣味に関する情報も入れることでリーチし得る層を広げ、Twitterは開設した2020年4月から、毎日投稿を続けています。

それと並行してInstagramやnote、Voicyを使った情報発信もはじめ、今では撮影した写真を使ってカレンダーやポストカードの製作・販売も行っています。

 

-情報発信がきっかけ始まったプロジェクトもあると伺いましたが、それはどのような事業なのでしょうか?

ホタテの貝殻活用の事業がそのひとつです。

きっかけは大手広告代理店の方が、noteで私の記事を見つけてくれたことです。noteに投稿した記事や村の公式HPを隅々まで読み込んで猿払村がホタテの一大産地であることを知り、プラスチックメーカーの「甲子化学工業株式会社」と村をつないでくださったのです。甲子化学工業さんは卵の殻からプラスチックを製造する技術を持つ企業で、「技術を応用することで、ホタテの貝殻からも環境に優しい新素材プラスチックを作れるではないか?」ということで話が進んでいきました。

ホタテの貝殻は長らくチョークの原料などに使われていて、全く活用されていなかった訳ではないのですが、猿払村を含む宗谷地区だけで年間約4万トンあまりが水産系廃棄物として扱われ、費用をかけて処分されたり輸送コストを掛けて海外に送られたりしていたのです。ホタテ漁に支えられてきた猿払村としても、村の宝であるホタテの貝殻をなんとか有効活用できないかと長年模索し続けていたところでした。

このプロジェクトは現在、ホタテの貝殻から地球に優しいエコプラスチック「カラスチック®︎」を生成し、ヘルメット「HOTAMET」に加工・商品化するところまで進んでいます。本格的な販売やプロモーションはこれからですが、2025年に開催予定の大阪・関西万博の公式ヘルメットとして採用が決まったり、世界最大級の広告祭「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」のデザイン部門とイノベーション部門で金賞を受賞したりと、既に実績が出始めています。

今後、大量の貝殻需要が生まれれば村の新産業なり得ますし、貝殻は粉砕すれば低コストで輸送できるので、例えば村に貝殻の粉砕工場作ることで新しい雇用が生み出せるかもしれません。ホタテでまちづくりをしてきた村だからこそ、これからも歴史と資源を最大限に活かすまちづくり・産業のあり方を模索していきたいと思っています。

今年の秋頃には、本プロジェクトに関するニュースをお届けできると思うので、ぜひ楽しみにしていてください!

 

-継続的な情報発信が、村の新産業創造にもつながってゆくとは!
プロモーション活動を続けていく中で気付いたことなどはありましたか?

広大な牧草地と年間を通して涼しい環境が整う猿払村は、ホルスタインがのびのび過ごせる酪農の適地

たった一人の行動でもやり続けることで何かのきっかけとなり、村の未来をより良い方向に変えるような成果を出せる可能性があるということです。

活動を始めてから約6年目、コツコツと情報発信を続けた結果、SNS等のフォロワー総数は今では村の人口をはるかに超える1.6万人ものフォロワーを獲得できました。ホタテの貝殻活用事業も情報を発信し続けなければ目に留まることもなく、始まらなかった事業かもしれません。

また、個人的にもフォロワーさんから「新家さんの投稿がきっかけで、猿払村に行ってみたくなりました。いつか必ず行きます!」「新家さんの熱意に動かされ、ふるさと納税しました!」などのメッセージをいただけるようになったり、Twitterを見て猿払村に興味を持ってくださったフォロワーさんが、実際に村に旅行に来てくれたこともありました。情報発信から生まれたこうした出会いと交流が、自分自身が公私ともに地域活動を続けていく新しいモチベーションにもなっています。

情報発信する上で、質はもちろん大切にしなければなりませんが、とにかく発信し続けるという「継続力」も同じくらい大切だと実感しました。

 

チャレンジしたい人が集まる村へ

-新家さんが公務員としての枠を超えて地域活動に取り組む訳を教えてください。

面積の約8割を山林が占める自然環境も魅力

一番は自分の故郷である猿払村のファンを増やしたいということなのですが、生まれ育った地だからこそ人口減を身に染みて感じており、それをなんとか食い止めたいという思いもあります。

猿払村の人口は1955年の8,871名から減少傾向に転じ、現在の人口は2,600名ほどと、ピーク時のおよそ3割にまで減少しています。自分が中学生の時は一学年40名くらい生徒がいたので2クラスくらいは編成できていましたし、部活動もサッカー、野球、卓球、バドミントンから選択できていましたが、今は子どもの数が半分くらいに減ってしまったため全学年1クラスずつしか作れず、部活動や習い事を含め子どもたちが取り得る選択肢が減ってきていると感じています。

これ以上人口減少が続くと、子どもたち同士のコミュニケーションの機会や日々の楽しみなどあらゆる選択の幅が狭まったり、地域内では日常的な買い物もままならなくなったり、さまざまなところで弊害が出てくるかもしれません。

猿払村には高校がないので、中学卒業と同時に地元を離れる子どもも多く見られます。故郷を出ること自体決して悪いことではなく、むしろ地元を離れて活躍している人の情報は村民にとって希望にも元気の源にもなるので村を出るという選択肢も残しつつ、若い人が地元に残って活躍する、故郷に帰ってくるという選択も可能な村であり続けたいと思っています。そして何より「猿払村に生まれて良かった」と、村民であることに誇り持つ人を増やしていきたいです。

 

-今後、猿払村をどのような村にしていきたいですか?

既存産業と新産業を掛け合わせ、農の新たな取組みも推進中

猿払村は強い産業がしっかりある地域なのでそれを維持・発展させつつ、いちごの産業化や貝殻活用事業のように新しいチャレンジが盛んに興る村づくりを行って、「猿払村に行けば挑戦できる!」と思われる村にしてきたいです。

実際に、今、村内では地域おこし協力隊の現役隊員やOB・OGなど若い人の活躍が目覚ましく、特にいちごの産地化への取り組みは協力隊の方々の存在なしでは成り立たない事業だと感じています。協力隊卒業後も村のパン屋さんを承継しようと頑張っていたり、酪農業に関する仕事をしていたり、地元の建築会社に就職するなど、挑戦を続ける若い世代が増えています。

そんな風に新しいことに前向きに挑戦できる人を村に呼び、チャレンジすることが身近になれば、村の子どもたちに対しても大人にも、猿払村をフィールドに自ら挑戦するという選択肢もあるのだと伝えることができますし、「自分も新しいことにチャレンジしてみよう!」という気持ちを持つ人を増やせると思います。

そのためにも、挑戦を支える政策や支援制度、周りの村民のあたたかいフォローなどを通して、一人一人の挑戦を支えられる村づくりができたらいいなと思っています。

 

-ずばり、今、猿払村で求められている人とは?

求められている人というとちょっと偉そうなので、村に来てくれると嬉しいなと思う人で言うと、やはり自ら新しいチャレンジができる人ですね。

猿払村は“ないものが多い村”で商業施設や飲食店なども少なく、村民が地域外で消費活動をせざるを得ないことも多いです。でもそれだと地域で稼いだお金が外に出ていくばかりなので、稼いだお金をしっかり村内で循環させる仕組みづくりが大切だと感じています。飲食・宿泊・観光業など、何かしら地域社会・経済の活性化につながる活動ができる方が来てくださったらとても嬉しいです。

チャレンジしたい人が来たくなる村にしていくためにも、まずは知ってもらわないことには選択肢の一つにもならないと思うので、今後もライフワークとして村のプロモーション活動を続けていきます。その上で、自分1人が100回情報を出すよりも、100人がそれぞれの視点で1回ずつでも村の魅力を発信してくれる方がプロモーション効果は高いと思うので、少しずつ仲間を増やして猿払ファンの輪を広げていきたいです。

 

取材協力

新家拓朗さん

Twitter:https://twitter.com/takuro_shinya

Instagram:https://www.instagram.com/takuro_shinya

note:https://note.com/takuro_shinya

voicy:https://voicy.jp/channel/3072

SARUFUTSU-LABO:https://note.com/takuro_shinya/n/na39bfc58df6d

HOTAMET(ホタメット):https://www.makuake.com/project/hotamet

猿払村HP:https://www.vill.sarufutsu.hokkaido.jp


連載企画「地域のキーパーソンに聞く!“今、地方で求められる人”とは?」

■vol.1「【東京チェンソーズ・青木亮輔さん】人と共生する美しい森が、檜原村の希望になるまで」
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