
「自然豊かな環境で、のびのび暮らせる」
「都会より低コストでゆとりある暮らしが手に入る」
そんな漠然としたイメージがある地方移住ですが、移住者の中には現地の暮らしに馴染めず移住後すぐに転出する方も少なくありません。
この記事では、移住者が陥りがちな失敗をまとめてご紹介しつつ、失敗事例から学ぶ地方移住を成功させるための5つのポイントを分かりやすく解説します!
地方移住の失敗事例
地方移住の失敗事例には、移住者本人の事前準備不足や地域とのミスマッチ、仕事・収入面での課題、地域住民とのトラブルなど、さまざまなパターンがあります。
ここでは移住者が陥りがちな失敗事例をジャンル別にご紹介します。
1. 仕事・収入面での失敗
収入が減った
一般的に、都市部よりも地方の方が求人数が少なく給与水準も低い傾向にあります。また、自分が希望する業界・業種の求人がない、あっても雇用条件が合わない、キャリアや経験を活かせる仕事がないなど、さまざまな理由で都会と同等の収入が得られないリスクも生じます。
地方移住を機に独立・起業を検討されている方も、移住先にマーケットはあるか、開拓の余地はあるか、安定した収入を得られるかを事前によく調査する必要があります。
事業に失敗した
自分のお店を開きたい、新規ビジネスをスタートさせたい人にとって、都会より初期費用や人件費が抑えられる地方での開業は魅力的です。しかし、地域のニーズと自らが提供できるもの・提供したいものとの間のギャップを埋められず経営難に陥るケースが見られます。
都会で培ったノウハウがそのまま地方でも通用するとは限らないため、移住前に複数の収入源を確保しておくことや、「地域おこし協力隊」や「地域活性化起業人」制度など時間を掛けて開業・起業準備できる制度を積極的に活用し、地域の実情をさまざまな角度から可能性を見定めた後に行動を起こすことをおすすめします。
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2. 地域とのミスマッチ
地域の風土・文化・人間関係に適応できない
ムラ社会の強い結びつきに馴染めず孤立する、地域行事や雪かき・草むしり、消防団等の地域活動への参加が心身共にストレスになる…など、都会にはない文化や慣習、暗黙のルールを負担に感じるケースも。
最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、「郷に入っては郷に従え」のことわざにもあるように、自分の価値観や慣習に固執し過ぎず、地域のルールや考え方を尊重する柔軟な姿勢を実際の行動を通して示していくことが、地域との信頼関係を築き心地よい暮らしを実現する近道です。
受け入れ側のギャップ
人口減少問題に直面する多くの自治体が移住・定住促進に取り組んでおり、専用の相談窓口を設置するなど公的な移住支援体制の整備も進んでいます。その一方、実際に地域で暮らす住民は人口減少等の地域課題があっても “困っていない”“暮らしに影響はない”という感想抱いていることも多く、移住者の受け入れに積極的な自治体と地元住民との間に温度差がある地域も少なくありません。
こうした実情を把握しないまま地域に入り、地元住民からの十分な合意を得ずに新しい価値観で地域の課題解決に取り組んだ結果、長年その地で暮らしてきた住民とのトラブルに発展した…という事例が散見されます。
3. 生活インフラへの不満
教育・医療機関の不足
少子化が進む地方では学校の統廃合が進んでおり、小・中・高等学校を問わず遠方通学を余儀なくされたり塾や習い事の選択肢が少なかったりと、都会とは教育環境が異なります。
児童数が少ないためにサッカーや野球等のチームが組めない、同い年の友達ができないなどの理由で子ども時代に経験できることが制限される可能性があることにも注意が必要です。
また、都会と比べ医療体制も限られることが多いため、夜間や休日の急な体調不良に対応できる医療機関はあるか、持病がある方や幼い子を持つご家庭は専門医がいる病院を受診できるかなど、地域の医療体制もチェックするようにしましよう。
車社会・買い物の不便さ
地方は車社会。地域によっては雪道運転ができないと生活に不自由するため、運転に不慣れな人にとっては大きなハードルになり得ます。
また、「スーパーや銀行など日常的に利用する施設との距離が遠く、生活に不便を感じる」という声はよく聞かれるので、可能であれば移住する前に「お試し住宅」等を利用して中長期間実際に暮らしてみることをおすすめします。
4.家族間のトラブル
家族で移住して新生活をスタートさせたものの、配偶者や子どもが地方暮らしに馴染めず家庭内でトラブルに発展するケースも見られます。特に子どもは年齢を重ねるほど環境の変化に敏感になるため、「いつ移住するのか」はとても重要です。
移住は単なる引越しではなく、家族一人ひとりの「ライフスタイルの再構築」であるという認識を持ち、個人の夢や理想だけで動かないことが大切です。
5. 住居や不動産関係のトラブル
空き家バンク等で安価に家屋が手に入る地域も多いですが、築年数を経た物件は想定外に老朽化が進んでいるリスクがあります。屋根・床・水回り・断熱などのリフォームに数百万円単位の費用が掛かったり、シロアリ被害や配管の腐食、耐震基準を満たしていないなど、購入時には分からない問題が入居後に発覚し、想定外に高くつくことも。
田舎の空き家は、名義人が亡くなった後の相続登記が済んでいないなど法的な管理が行き届いていなケースもあり、土地・建物の権利関係が曖昧で地元住民とのトラブルに発展する事例も散見されるため注意が必要です。
住まいは暮らしの土台。長期的な視点を持ち、安さより安心感を重視した物件・土地選びを心掛けましょう。
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地方移住を成功させる5つのポイント
これら失敗事例を踏まえ、地方移住を成功させる5つのポイントを整理します。
1.十分な下調べと現地訪問で、理想と現実のギャップを埋める
多くの自治体が地域の暮らしに関する情報をHP、SNS、各種パンフレット、イベントなどさまざまな方法で発信しており、移住相談窓口では現地のリアルな暮らしを知る専任の相談員からより詳しい情報を得ることもできます。
こうした情報源を活用してさまざまな角度から地域を知り移住イメージ膨らませることも大切ですが、思い描く理想の暮らしと現実との間には多かれ少なかれギャップが生じます。特に自然豊かな地域では季節によって住環境や生活様式が大きく異なるため、「お試し住宅」等を活用し、1度ではなく複数回季節を変えて現地を訪問し「自分に合う土地か」「無理なく暮らしていけるか」をチェックしましょう。
その際、日常生活に必要な施設(商業施設・学校・病院など)の位置把握や、各自治体が作成するハザードマップの確認も忘れずに。
▼移住のリアルが分かるイベント
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▼お試し住宅に関する記事
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2.移住後の仕事と収入源を確保し、現実的な収支計画を立てる
転職なき移住やリモートワークなどを活用し、都市部の仕事を地方に持ち込むことができれば収入の増減に悩まされるリスクは抑えられます。また、「地域おこし協力隊」「地域活性化起業人」、各種起業支援制度などを活用し、地域ビジネスを起業・開業する方法を模索するのも一つの手。転職と起業の何れの場合も、移住する前に収入源を確保しておくようにしましょう。
また、都市部よりも生活コストが低く抑えられると思われがちですが、積雪量の多い地域では光熱費がかさむ、中心市街地から離れたエリアに移住したため車のガソリン代が高くつく、築年数を経た物件のためメンテナンスに費用がかかるなど想定外の出費も生じます。
具体的な収入源の確保と個別の事情を踏まえた支出シミュレーションにより、現実的な収支計画を立てておくようにしましょう。
3.リスクを説明した上で家族全員の合意を得る
移住は家族全員のライフスタイルの再構築であるという意識を持ち、子どもの学校や進学、配偶者の就業先など、家族全員の生活設計も含めて検討しましょう。
家族会議を開き、理想の暮らしを共有するだけでなく、これまでに見てきたような失敗事例があることや収入減、地域に馴染めないなどのリスクがあることを説明した上で全員から合意を得ることが大切です。
4. “受け身”ではなく“積極的”な関係構築
多くの地元住民にとって、移住者は突然地域にやってきた“よそ者”。移住者が地域の人の人間性が分からないと不安なように、住民側も移住者の人物像が分からないままだと不安や不信感を抱きます。
移住とは、住まいを変えるだけではなく、文化や人間関係を含めて新しい地域に入っていくこと。
自ら進んで挨拶をする、自治会や地域行事に積極的に参加して顔と名前を覚えてもらうなど、積極的に地元の人との交流していくことが大切です。
5.移住支援制度の活用と、専門家への相談
各自治体が実施する移住支援は、移住支援金の支給や、育て、住宅、仕事、就農に関わる具体的な支援など多岐にわたり、これらを活用することで移住に掛かる負担を大幅に軽減できる可能性があります。
移住コーディネーターを設置し、移住者と現地コミュニティの橋渡しをしている地域や、移住や起業を支援しているNPO法人もあるので、これらの相談機会を積極的に活用し具体的なアドバイスを得ることをおすすめします。
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移住を成功に導くチェックリスト
最後に、移住を成功に導くためのチェックリストをフェーズごとにご紹介します!
【移住前:情報収集・準備フェーズ】
ライフスタイルの整理・自己分析
☐ なぜ地方移住したいのか、目的が明確になっている
☐ 都会暮らしでは得られない何を地方に求めているのか理解できている
☐ 自分や家族にとって譲れない生活条件を洗い出し、家族全員が移住することに納得している
地域選びと現地調査
☐ 複数の候補地域を比較検討した
☐ 現地を季節・平日・週末など時期を変えて複数回訪問した
☐ お試し住宅や移住支援制度を利用した or 利用計画がある
☐ 地域の自治体・移住相談窓口に連絡をとった
収入・仕事の見通し
☐ 転職・就職先から内定を得るなど、収入源の当てがある
☐ フリーランス・起業時の収支計画を立てた
☐ 複数の収入源(副業・リモートワーク等)を確保した
☐ 地域の求人動向や産業構造を把握した
住居・生活インフラの確認
☐ 空き家バンクや物件情報を確認し、内覧した
☐ リフォーム・修繕の費用や必要性を見積もった
☐ 電気・ガス・水道・ネット環境を事前に調査した
家族との合意・相談
☐ 配偶者・子ども・親の合意を得ている
☐ 子どもの教育(学校・進学・習い事)に不安がない
☐ 高齢者のケア・通院・福祉への対応も見据えている
【移住後:定着・継続フェーズ】
地域との関係構築
☐ 自治会や地域行事に積極的に参加している
☐ 近隣住民と顔を合わせて挨拶できる関係性を築けている
☐ 地域の暗黙ルール・習慣を理解して受け入れている
生活の安定とストレス管理
☐ 通勤・買い物・医療など生活動線に不満がない・不満を解消できている
☐ 田舎特有の不便さや孤独感に対処できている
☐ 家族内で定期的に「今の暮らし」について話し合っている
長期的な暮らしの見通し
☐ 3年、5年、10年後のライフプランを描いている
☐ 子どもの進学・仕事のことまで視野に入れている
☐ 将来的な医療・介護の対応策も想定している
地域貢献・役割への参加
☐ 地域のイベントや団体で役割を果たしている
☐ 地元の人たちと対等な関係性が築けている
☐ 「移住者」ではなく「地域の一員」として受け入れられている感覚がある
この記事では移住の失敗事例を中心に紹介しましたが、何れも事前の備えをしっかりしていれば防げるものです。
地方移住を検討中の方は、事前の情報収集と現地体験を重ね、理想と現実のほど良いバランスを取りながら、確かな一歩を踏み出しましょう。
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