3/8(金)〜3/10(日)の3日間、富山県射水市で、「射水で自己実現と出会う旅」を開催しました。その様子をレポートします。
近年、空き家を活用した飲食店や宿泊施設が増えている射水市。今回のツアーでは、射水市で「自己実現」をした方のもとを訪問し「自分らしい暮らし方・働き方」のヒントをもらいます。
【1日目】射水市の食と文化に触れる
ツアーのはじまりは、小杉駅から。北陸新幹線が開通し、関東からも関西からもよりアクセスしやすくなった富山駅。そこから、あいの風とやま鉄道を利用して2駅、約10分のところにある、射水市のメインターミナルです。
今回、同行してくださる山田奈津子さんは、富山市出身で東京からJターン。移住コーディネーターとして活躍する現役の地域おこし協力隊員です。移住者ならではの視点で、参加者のサポートをしていただきます。
射水市移住コーディネーターの山田奈津子さん
まずは「ファミリー食堂 さかなやさん」にて昼食を。
ランチのメニューは、新湊漁港で水揚げされた新鮮な魚を目一杯楽しめるお膳です。刺身の盛り合わせには富山の名産「さす(カジキ)」やホタルイカも入り、富山ならではの海の幸を堪能しました。
刺身盛りの下段中央にある薄いピンク色の切り身が「さす」。「初めて食べた!」という参加者がほとんどでした
お腹が満たされたところで、オリエンテーションを実施。射水市の担当者から挨拶があった後、それぞれが自己紹介を行いました。
今回は関東圏から3組、関西圏から1組、中部圏から1組が参加。もともと富山に縁があり二拠点生活を考えている方、移住を見据えてさまざまな場所を訪れている方、地域の風土や食文化に興味がある方、よりローカルを感じてみたい方など、その理由もさまざまです。
これからの3日間で、どのような出会いや気づきを得られるのでしょうか。
食堂を出て向かったのは、「大島絵本館」。国内外の絵本を約1万冊収蔵する公立博物館です。原画展やイベントなども定期的に行っていて、市内外問わずファンの多い施設です。
この日も原画展が行われており、子連れの参加者だけでなく、大人も興味深く見学していました。
ワークショップが充実しているのも大島絵本館の特徴のひとつ。てづくり絵本制作キットや、パソコンで描いた絵をグッズにできるコーナーなどが常設されていて、お土産に持ち帰ることができます。
建物のまわりには芝生の広場があり、外の空気を楽しむ参加者も。それぞれがゆったりとした時間を楽しんでいました。
「ピクニックに来たいね!」と、気持ちよさそうに散策を楽しむ参加者もいました
続いて、新湊漁港にあるお魚専門シェアキッチン「minato kitchen(みなと キッチン)」にて、アンチョビ作りを行います。
「minato kitchen」は空き店舗をリノベーションした場所で、魚食文化や新湊の魚のおいしさをもっと多くの人に知ってもらい、違う業界の人たちとも繋がって、新しいサービスを生み出せる拠点にしようと始めたそうです。
マネージャーの大坪史弥さんも、県外からUターンしたひとり。空き家活用などを通して、富山に魅力的な場を増やす活動を行っています。
「僕は射水市の出身なんですが、昔は早く富山を出たいと思っていて。だから高校を卒業してすぐに県外に出ました。
7年ほど前に射水に帰ってきたときも、理由が家庭の事情だったので、正直あまり本意ではありませんでした。それがなんで今こういう仕事をしているかというと、何年ぶりかで帰ってきて改めてまわりを見てみると、射水には自分で開拓できる面白さがあると気づいたから。自分で何かを作りやすい環境がここにはあったんです。それは大人になったからこそ、わかる部分だったのかな、と思っています。
射水市は、消費するより生産したい方のほうが楽しめる場所なのかもしれません」
「minato kitchen」マネージャーの大坪さん
今回、アンチョビ作りを教えてくれるのは、そんなバックボーンを持つ「minato kitchen」で定期的にワークショップを開催しているユニット「たべごとや ナトゥーラ」の水野さんと中村さんです。
2人はそれぞれ発酵マイスターや薬膳マイスター、食育インストラクターの資格を持ち、自然のなかで季節を感じられる食をともに楽しんだり、昔ながらの麹づくりと、そこから味噌や醤油を作ったりするワークショップや、無農薬栽培を行う田んぼでの農作業体験などを主催しています。
アンチョビは、イワシを塩漬けにしたイタリアの保存食。ほどよい塩気があり、パスタやソース、炒め物などの調味料として使われます。まずは風味を知るため、水野さんが作ったアンチョビソースをじゃがいもにつけて味見したあと、アンチョビそのものの味も体験しました。
マイルドなクリームに魚の旨みと塩気が溶け込んだ水野さんお手製のオリジナルソース。「おいしい!」とあっという間にお皿が空に
いよいよ実際にアンチョビ作りを行います。通常、アンチョビにはカタクチイワシを使用しますが、今回はマイワシを使用。
頭の下に包丁を入れて・・・
包丁を骨に沿わせながら、身をこそぎます。
魚をおろしたことのある参加者はごくわずか。ほとんどの参加者が初めてということもあり、最初は恐る恐るでしたが、すぐにコツを掴んでお皿に盛られたイワシを手際よく捌いていきます。
水野さんの実演に見入る参加者たち 取り除いた骨は塩漬けにして魚醤にすることもあるのだそう。余すところなく命をいただく、先人の知恵です
捌いたイワシの重さをはかり、30%程度の重さの塩と切り身をミルフィーユ状に重ね……
今回はこのまま持ち帰り、3か月程度、自宅で常温発酵させます。その後、オイル漬けにして完成!
出来上がりが楽しみですね!
初日最後のプログラムは、夕食&交流会。会場となる「喰べものや世楽美」は、元地域おこし協力隊の斎藤まゆ美さんがオーナーを務めるお店です。
フレンチをベースに、地元の食材をふんだんに使用したメニューの数々
斎藤さんは埼玉県出身。最初は埼玉県内で飲食店を経営していましたが、2021年に地域おこし協力隊として射水市に移住。古民家をセルフリノベーションし、昨年、ビストロ「喰べものや世楽美」と、布製品を扱う「布ものや c’est la vie」をオープンしました。
「世楽美」オーナーの斎藤さん
「富山県には縁もゆかりもなく、住むまでに来たのは2回だけ。ただ、インスピレーションで『ここに住んだらきっと楽しいだろうな』『何かが変わるな』そう思って、冒険のつもりで飛び込みました。
地域おこし協力隊という形を選んだのは、『地域おこしをやってみたいな』という気持ちがあったし、初めての土地でいきなり仕事をするなら、役所と関わる仕事から始めれば地域にも溶け込みやすいから。
それに、任期が決まっている点も魅力のひとつで、自分に合っているかをその期間で判断すればいいや、という気持ちもありました。
地域おこし協力隊と聞くと、何か地域をおこさなきゃ!と気負ってしまうことも多いと思いますが、特に何かをやろうと思わなくてもいいんじゃないかな。自分が楽しそうに生活することが地域おこしに繋がる、と任期を終えた今、思っています。
3年間、私は本当に楽しかったので、もし自分もやってみたいな、という方には、まず楽しみながら射水で暮らしていただけたらいいな、と思います」
交流会には「minato kitchen」の大坪さんや市役所の方々も参加。美味しい食事とお酒に舌鼓を打ちながら、射水で実現している自分らしい暮らし方や、暮らしに「楽しいこと」を取り入れる方法など、すでに実現されている方のお話を聞き、熱く語り合いました。
【2日目】「内川」で今、起こっているコトを知る
今回宿泊したのは、「内川」エリア。富山湾へと流れ込む運河と、川沿いに立ち並ぶ民家が織りなすノスタルジックな景観が美しく、「日本のベニス」と呼ばれることも。ここを拠点に釣りに出る人がいたり、映画やドラマのロケ地になったりと、外から多くの人が訪れる場所でもあります。
また、古民家や空き店舗を使ったリノベーションのメッカでもあり、“いい感じ”の飲食店や個性的なお店が続々とオープンしているエリアでもあります。
2日目は、この「内川」を中心に、さまざまな「ヒト・モノ・コト・バショ」に出会います。
まずは、遊覧船でのんびりと内川クルーズを。「海王丸パーク」から船に乗り込み、「川の駅 新湊」を経て、再び海王丸パークに戻ってくる1時間弱のコースです。
「海王丸パーク」には、商船学校の練習船として造られ、1989年に退役した帆船「海王丸」を展示
観光船からは新湊大橋が。船内では射水市出身の落語家、立川志の輔さんによるガイド音声が流れています
車窓からノスタルジックな景観を楽しむ参加者
途中からは青空も見え始め、甲板に上がって気持ち良い風を楽しみました。
その後は、バスで新湊エリアをぐるっと見学。
晴れた日には能登半島や立山連峰、日本海を一望できる「新湊大橋」
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遊歩道や芝生広場などもあり、ヨット客や海水浴客に人気の「海老江海浜公園」
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全国的にも珍しい「ホタルイカの身投げ」が見られる海岸
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人工芝フィールドと屋内フィールドを備えたフットボール施設「オリバースポーツフィールド」
など海沿いの主要なスポットを巡り、整備が進む新湊エリアの雰囲気を感じてもらいました。
そのままバスで港に戻り、今度は新湊大橋の下を通る県営渡船に乗船。
対岸に渡ると、小さな駅が。
射水市と高岡市を結ぶ路面電車「万葉線」の「越ノ潟」駅です。高岡市は漫画家の藤子・F・不二雄さんの出身地ということもあり、人気キャラとのコラボ車両が大人気!
参加者たちも、笑顔で記念写真を撮影していました。
その後は内川に戻ってランチタイムです。
移住者の田中さんが営む食堂・居酒屋、きまぐれ食堂「 虎と猫」は、お肉もお魚も楽しめる店としてオープン。気さくな雰囲気で、地元で愛されています。
もともと居酒屋だった店舗を夫婦2人の手でリノベーション
店主の田中さんも移住者です
この日のメニューは、地元食材を使った定食。味が染み染みのブリ大根に、山菜ご飯の組み合わせがたまりません
身体も心もホッとする味わいに箸が進み、続々と「おかわり!」コールが
食後のお茶を飲みながらくつろいでいると、次に伺う「ma.ba.lab(株式会社ワールドリー・デザイン)」の代表、明石あおいさんが迎えに来てくださり、そのまま内川散策へと出発することになりました!
明石さんは、東京から富山市へのUターンを経て射水市に。「一目惚れした」という内川エリアにどっぷり浸かり、古民家を利用したカフェや民泊の運営をはじめ、新たな拠点や行動のきっかけを次々と生み出しています橋の上で観光船に遭遇
優しい甘さとサクサクの食感がおいしい、地元スイーツ「おらんだ焼き」。参加者の中には気に入ってたくさん購入する方も
内川の川沿いは、絶好の散策コース。向こうに見える赤い屋根付きの橋は「東橋」
東橋は歩行者専用です川べりにひっそりと現れた道端アートは、目の前にある電気屋さんの作品
明石さんが手がけたデザインが、まちのあちらこちらに。こちらのバーの看板もそのひとつ
六角形がかわいいこちらの「カフェ六角堂」も明石さんがオーナーを務めるお店。もとは畳屋さんだった物件をリノベーションし、オーガニックコーヒーとサンドイッチが楽しめる大人のためのカフェとしてオープンしました
途中、雪が強くなってきたため、昨日お世話になった斎藤さんが営む「布ものや c’est la vie」で雪宿り。「とにかくセンスがよくてかわいい!」と明石さんが絶賛する斎藤さんセレクトの布アイテムは感性を刺激するものばかり。
と同時に、好きなものを集めて短時間だけ商うスタイルから、「自分らしい暮らし」のヒントも得られたのではないでしょうか。
内川は1000年以上の歴史を持つエリアで、江戸時代には北前船の中継地として栄えました。商店街にはその頃の名残が感じられる商店も。
「はまや」さんは、創業100年を超える海産物のお店 。富山県は昆布の消費量が日本トップクラスで、とろろ昆布は郷土の味として親しまれています「現在は県内でも珍しくなった」という、昆布の量り売り 昆布を試食。噛み締めるごとに滲み出る旨みに、老若男女問わず「おいしい!」と声が上がります
海産物を扱う商店の数も多く、常に身近に海の恵みが息づいていることを実感。
そのほかにも老舗の餅屋さんやパン屋さん、お菓子屋さんなどを巡り、お土産もたっぷりと購入。“内川の今”を肌で感じました。
ここで明石さんのお店に移動し、ワークショップに参加します。
明石さんは京都府生まれ、富山市育ち。大学進学と同時に東京に出て、卒業後はまちづくりシンクタンクに就職し、コンサルタントとして活躍されました。その後、「いつかは地域に」との思いから富山市にUターン。“せけんをデザインする”をコンセプトに株式会社ワールドリー・デザインを立ち上げ、グラフィックデザインだけでなく、まちづくりに関わるすべてのプロセスをデザインしています。
今回ワークショップを行う「小さなShop」は、ワールドリー・デザインのオフィス「ma.ba.lab」の一角を利用した店舗で、営業日は不定期、営業時間も昼間の1時間だけ、というゆるさが魅力。自社でデザインしたプロダクトを扱っています。
「デザインするのが1番好き!」という明石さんのプロダクトは、雑貨・文具好きの心をくすぐるアイテムばかり。内川の景観をイラスト化したグッズも豊富です
今回体験するのは、カレンダーづくり。無地のカレンダーにさまざまな形の紙フレークや型抜きをしたパーツを貼り付けて、オリジナルカレンダーを作成します。
壁掛け式のカレンダーを使用。日本家屋の柱に気持ちよく収まる、どこか懐かしいサイズ感です 明石さんが用意してくれたフレークの数々。型抜きしたあとの紙も、もちろん活用!少しずつ手元にとって、貼り付けていきます 型抜きを使って自作のパーツを作る方も。ミスプリントなどで廃棄する予定のチラシが、カラフルなデザインパーツに 作業中は和気あいあいとした雰囲気。大人も子どもも関係なく、熱中していました 出来上がった作品とともに記念撮影
カレンダーづくりを終えたあとは、「天神の家」に移動して夕食&交流会です。参加者みんなで富山の漁師飯「かぶす汁」を作ります。
作り方を教えてくださるのは、東京から内川沿いに移住し、民泊「さとみんぷれいす」を営む石井さとみさんです。
石井さんは福島県出身。就職を機に東京へ出て、以来約45年、仕事も子育ても東京で行ってきました。子どもが手を離れたあとは自宅の空き部屋を使って民泊を経営。内川に移住したのは2022年のことです。
現在経営している「さとみんぷれいす」は漁師の家として使われていた町家をリノベーションしてオープン。土蔵だったスペースを使って、脱毛やエステなどのサービスも提供しています。
「60歳を過ぎた頃から第2の人生をどう過ごしたいかと考えるようになり『東京で民泊をしていた経験を活かして、地域で古民家を再生した民泊を経営してみたい』と思ったんです。
そして、射水市で理想の物件に出合い、ここでチャレンジすることにしました」
そんな石井さんにかぶす汁を教えてくれたのは、富山の漁師さんだったそう。
「かぶす汁」は、富山県の漁師たちの間で漁の合間や後に作られてきました。ぶつ切りにした魚の切り身を鍋に入れ、水とネギ、味噌だけで煮た、シンプルで豪快な味噌汁です。魚の種類に決まりはなく、その日の獲物のなかから、売り物にならない魚を使います。
今回は石井さんが頭と内臓を取った下処理済みの魚を準備してきてくださったので、以降の工程を参加者で分担して作業することになりました。
この日の魚は3種類ほど。このほか、イカも加わります臭み取りの酒を使用しないため、あく取りは丁寧に 最初は慣れない手つきでしたが、すぐにうまく切れるようになりました しっかり火が通ったら、味噌を加えますネギはシャキシャキ感を損なわないよう、仕上げに投入!
メインディッシュのかぶす汁に合わせるのは、富山のお米と昆布締めです。
昆布締めも富山の郷土料理のひとつ。他県ではタイやヒラメなどが一般的に使われますが、本場の富山では、さす(カジキ)やブリなどで作るのが主流なのだとか。
実際に触れてみないとわからない、ちょっとした食文化の違いに参加者の会話も弾みます。締めた後の昆布は細かく刻んで付け合わせに
出来上がった料理を囲み、交流会スタート!
魚の旨みが溶け込んだかぶす汁は、出汁を入れなくともコクが感じられ、身体に染み渡るおいしさ。
「あったまる〜」
「魚の出汁が最高!」
と、幸せそうな表情です。
この日は、3月から地域おこし協力隊として活動する荒城さんがゲストに来てくださいました。
「兵庫県川西市から2月に移住してきた荒城です。以前から妻とどこかに移住したいね、という話をしていたんですが、海が近くてすぐに行けるところや、実家のある富山市にも帰りやすいことが決め手になり、射水市を選びました。
子どももちょうど4月から幼稚園に上がるタイミングなので、これから徐々に地域に馴染んでいきたいと思っています。子育てのこととかもぜひお話ししましょう」
その後、同じく今年1月から地域おこし協力隊として活動を始めた朽木さんも合流し、富山や射水の話、子育て環境の話など、さまざまな話題で盛り上がりました。
【3日目】里山エリアで「やりたいこと」を叶えた人と出会う
最終日は海辺を離れ、里山が広がる地域を訪問します。
まず最初は、農薬や肥料、除草剤などを使わない自然栽培を行っている「maru farm」の丸山友徳さんを訪ねました。
「maru farm」の丸山友徳さん
長年、看護師として手術室で働くなかで、病気に苦しむ多くの患者を見てきた丸山さん。次第に食が身体に与える影響の大きさに気づき、「おいしく安心して食べられるものを自分で作りたい」と思うようになったことが、農業を始めるきっかけに。
「病気になったら切ればいい」「薬を与えればいい」という考えではなく、病気を予防するという観点から活動を行っているそうです。
また「射水は海のイメージが強いけれど、山側の魅力を伝えたい」と、丸山さん。今回はその一環として、山に入って収穫体験をします。
山道のあちこちに、キノコの原木が しいたけをたくさん収穫!少し下ったところには、ふきのとうが顔を出していました「そこには野蒜が……そっちには……」と、山がもたらすさまざまな恵みを解説してくれた丸山さん 今回、収穫した山の恵みです
下に戻ってからは、原木づくりも体験。
ドリルで穴を開け……
「種駒」(木駒にシイタケの菌糸を培養させたもの)を入れ込みます。
途中、丸山さんのさつまいもを使ったジェラートを試食させていただきました。なんと、完成したての新作なのだそう。
「有名アイスメーカーにも負けません!」と丸山さんが自信を見せるそのお味は……
「おいしい!口当たりもまろやかだし、お芋の食感がある」
「有名アイスよりおいしい!」
と、参加者からも大好評!
同じさつまいもを使ったチップスと共に食べると、甘じょっぱさとカリカリの食感が加わり、さらに美味でした。
「山の暮らしを楽しみたいので、養蜂を始めました。ハチミツの自給だけでなく、最近は販売も行っていて好評をいただいています。それから、狩猟免許を取得したので、イノシシを捕獲して燻製づくりもしたい。そこには今、鶏小屋を作っていて、来月から卵も自給する予定です。
あとは、ヤギも飼おうと思っています。ミルクが取れて、草を食べてくれるので」
と、“やりたいこと”をどんどん実現している丸山さんの姿に、感心するばかりの参加者たち。
「ここは松茸が有名だったけれど、だんだん採れなくなった。なぜかというと、人が入って手入れをしなくなったから。そこで一般社団法人「金山里山の会」が山に入って森林整備を続けたところ、松茸がまた採れるようになりました。そうやって、人の手が入ることで、里山は受け継がれていきます。
もし農業に興味があるなら、このあたりには空いている農地がたくさんある。地域に入って行事に参加して、一緒にお酒飲んで『畑をやりたい』って言えば、けっこうな割合で解決しちゃいます。
それでもダメなら、僕が間に入るので声をかけてください!」
頼もしい言葉をいただき、「maru farm」を後にしました。
続いては、「薪ストーブに似合う家」を建てた、松原さんのお宅へ。
薪ストーブは、ストーブ自体が温められて発する熱だけでなく、遠赤外線を発します。そのため、身体の芯からポカポカと温まり、心地よく過ごせるのだとか。実際に、広々とした広間の隅々まで温かさが伝わってきます。
この薪ストーブに魅せられた松原さんは、「薪ストーブがある生活」と「自然に近い暮らし」を求めて、富山県の市町村だけでなく、隣県にも訪れた結果、この土地に家を建てました。
「金山里山の会」メンバーでもあり、里山の手入れで伐採した木を薪として使用するなど、自然と調和した暮らしを続けています。
しかし、住み始めた当初はご夫婦ともフルタイムの仕事を続けていたため、いきなり完璧な「理想の暮らし」をスタートしたわけではなかったのだとか。当時の生活の中から少しずつ不要なものを削り、必要なものを取り入れながら、理想のスタイルに近づけていったそうです。
現在は自宅で薪を炊いて塩づくりも行っているそうで、お土産に自家製のお塩を分けてくださいました。
松原さんのお宅を後にし、いよいよ最後のプログラムです。射水市民病院近くのカフェ「Café de Repos(カフェ ド ルポ)」で、ランチと振り返りを行います。
優しい味わいのポークピカタや雑穀ご飯、昆布締めなどが 乗ったランチプレート
ランチを食べながら、オーナーの高島さんにお話を伺いました。
「私は50歳になる年に起業したのですが、それまで特に飲食店の経験もなく、漠然と自分の店を持ちたいな、という思いを持ちながら10年ほどを過ごしていました。その間、『子育ても大変だし』『失敗したらどうしよう』と、“やらない理由”や“できない理由”ばかりを探していた気がします。
しかし、元気に動けるのもあと10年くらいだな、と思ったときに『このままだと私の人生が終わってしまう!』と気づき、考え方を変え、ひとつずつ“やらない理由”をクリアにしていきました。
商工会議所の起業塾を受講し、富山県のよろず支援などに相談もさせていただき、少しずつ構想を固めて無事に起業することができましたが、皆さん本当に小さなことでも温かく聞いてくれて、とても助かりました。
起業した今も、まわりの方々にサポートしていただいています。
ちなみに、この場所(市民病院の近く)にお店を開いたのは、病院ってやっぱり楽しい場所ではないので、少しでも楽しい場所になればいいな、と思ったからです。
射水市は移住してくる方も多いので、受け入れてもらいやすい場所だと思います。私もここの生まれではないけど、地域の皆様のおかげで、すんなり溶け込めました。
皆さんもぜひ、何かあれば声をかけてください!」
その後、参加者の皆さんに今回のツアーを振り返ってもらいました。
「富山市出身で帰省する機会も多いし、将来的に戻ってくることも考えて参加したのですが、射水市というこの小さなまちで素敵な人にたくさん出会えて、刺激をもらいました。すぐに移住するのは難しくても、まずは二拠点などから考えてみたいです」
「これまでは富山に来ても観光地ばかりだったので、地域でいろいろなことをやっている人と会話ができて、自分のなかで貴重な経験になりました。近いうちに子どもを連れて、また泊まりに来たいと思っています」
「地域の方とお話したり、雰囲気を肌で感じたりというのは、こういうツアーでしかできない経験。役場の方からもいろいろなお話を伺えたので、また来る際はぜひまた違う射水も知ってみたいです」
「地域の風土や自然、食文化に興味があったので、それらを知ることができて楽しかったです。せっかく縁ができたので、まずは射水市にアンテナを張って、イベントなどでこまめに訪れたいと思います」
「何よりも、皆さんとても温かく迎えていただいて、人との出会いが印象的でした」
「他にも移住先を検討していますが、今回、射水市ではとてもいい経験をさせてもらえて、出会えた人もまちの雰囲気もとても魅力的でした。また帰ってくると思います」
なかには、「富山に興味が湧いたので、個人的にもう2泊ほどしてから帰ります!」という参加者も。すぐには見つからずとも、「やってみたいこと・叶えたいこと」を、意識するきっかけになったのではないでしょうか。
今回は「射水市で自己実現をした人」との出会いを中心にさまざまな場所を巡りましたが、射水にはやりたいことに挑戦しやすい環境と、すでに実現している先輩たちがたくさんいることがわかりました。そして今まさに、誰かが「楽しい場所やコト」を次々と生み出しています。
ぜひ読者の皆さんも、豊かな食・美しい景観・温かい人に囲まれた射水市で、自分の「やりたいこと」を見つけてみませんか?