滋賀県北部地域(長浜市・高島市・米原市)で
クラウドファンディングを活用し、
新しいビジネスに挑戦する人を補助金で応援!

10月5日(土)に愛知県で開催される移住フェアに出展します!

滋賀県では2022年7月に北部振興(長浜市、高島市、米原市のさらなる地域振興)を公約に掲げた三日月大造知事が3選を果たしたことを機に、翌年度から北の近江振興プロジェクトをスタート。2023年度には、県湖北合同庁舎内に「北の近江振興事務所」を立ち上げました。

これまでも、滋賀県では北部地域でのインフラ整備や観光振興などに取り組んできましたが、北の近江振興プロジェクトでは、この地域ならではの豊かな自然や歴史・文化遺産などの地域の魅力を活かした、さらなる振興を進めることを目指しています。

 

地域活性化に向けた取り組みを支援するため、
クラウドファンディングの利用手数料を補助!

北の近江振興プロジェクトの取組の一つとして、滋賀県は「クラウドファンディング活用型北の近江振興事業補助金」を創設しました。

この制度では、北部地域の活性化を目的とした事業や活動にクラウドファンディングを利用する際、その手数料の一部(最大100万円)を補助します(詳細は滋賀県の公式ホームページをご覧ください)。

本記事では、この制度を活用して新たな事業をスタートさせた2組の取り組みをご紹介します。

Case 1 於勢晴彦さん
大阪から高島市に移転! ビワマスや近江牛が味わえる
「晴遊 オーベルジュ&レストラン」をオープン

長年、大阪で飲食業に携わってきた於勢おせ晴彦さんは15年前に独立し、大阪府内でレストランを営んでいました。しかし、コロナ禍を機に2021年1月、滋賀県高島市マキノ町へとレストランを移転。ビワマス漁師としても活動しながら、2週間に一度は家族が暮らす大阪に戻る二地域居住をスタートしました。そして、2024年7月に「クラウドファンディング活用型北の近江振興事業補助金」を活用し、レストランの隣に一棟貸し切り宿もオープン。

「晴遊 オーベルジュ&レストラン」と名付けられたこの宿とレストランが“旅の目的地”となるよう、ここでしか味わえない非日常のひとときを届けることに全力を注いでいます。

琵琶湖には、全国から人を惹きつける大きな魅力がある

於勢さんは14歳の頃、今は亡き父親に教わったフライフィッシングがきっかけとなり、6年ほど前に琵琶湖の固有種であるビワマスを釣りに高島市マキノ町へと足を運びました。それから数年が過ぎ、コロナ禍で大阪での飲食店経営が厳しくなる兆しを感じたとき、すぐにこの地への移転を決意したそうです。


於勢さんが釣り上げたビワマス

「琵琶湖には、釣りやキャンプ、水上アクティビティ、登山、サイクリング、ドライブなど、全国からさまざまな目的を持った人たちを引きつける大きな魅力があります。なかでも都市部から比較的離れた高島市マキノ町には、豊かな自然がそのまま広がる一方、『メタセコイア並木』などの名所があり、リゾート感もある。こうした環境が商売をする上でもプラスになると思ったんです」


多くの観光客が訪れる「メタセコイア並木」

2020年5月、目の前に芝生の庭が広がる優しい建物の雰囲気に惹かれ、メタセコイア並木の入口からすぐ近くにある築45年の物件を購入。その後、4カ月ほどかけてセルフリノベーションを行い、2021年1月に「レストラン 晴遊はるゆう」をオープンしました。


「レストラン 晴遊」外観

“旅の目的地”となるレストランを目指して

レストランを移転オープンする上で、最も悩んだのはお客さまのターゲティングでした。大阪では家賃をはじめとした固定費が高く、それを賄うためにはできるだけ多くのお客さまを招き入れる必要があり、メニューの価格設定も来店しやすい値段に抑えざるを得ませんでした。言わば、家賃のためにがむしゃらに働かなければならない状況に、ずっとモヤモヤを感じていたといいます。

「『レストラン 晴遊』では、当店でしか味わえない料理や非日常的な体験を求めて、わざわざ足を運んでくれるお客さまをターゲットにしていきたいと考えています」


「レストラン 晴遊」のインテリア

於勢さんは自らトローリング(一本釣り)で釣り上げたビワマスを新鮮なまま昆布締めやスモークに加工し、レストランのメニューとして提供。また、滋賀県産黒毛和牛の近江牛のすき焼きやステーキ、近江鴨の鍋、さらには、大阪時代から不動の人気を誇る石焼ハンバーグや海老フライ、スパイス香るカレーなど、ここでしか味わえないメニューを揃えました。


近江牛の石焼きのステーキや海老フライ、天然琵琶鱒を使った料理の数々 

自らリノベーションした店内には、琵琶湖の流木を活用した照明やアート、ビワマスの剥製、水槽などを配置し、フォトジェニックな空間を演出。唯一無二の料理や空間をじっくり楽しんでもらえるよう、ランチ・ディナーともに予約制で営業しています。

クラウドファンディングと県の補助金を活用して
「オーベルジュ 晴遊」を開業

於勢さんは、「さらに満足してもらえる非日常の時間を提供できれば、もっと多くの人に『晴遊』を旅の目的地として選んでもらえるのではないか」と考え、レストランの隣に一棟貸し切り宿のオープンを決意します。


一棟貸し切り宿「オーベルジュ 晴遊」

宿をオープンするための資金調達は、クラウドファンディングを活用することに。さらに、「クラウドファンディング活用型北の近江振興事業補助金」も利用することで、開業に必要な資金を確保することができました。

「補助金は宿の手作りのインテリアなどに活かしました。クラウドファンディングにより、応援してくださる方との関係性を築けたのも大きなメリットでしたね」


クラウドファンディングの返礼品として贈られたオリジナルのTシャツとソース

こうして、2024年7月1日、レストランに隣接する一棟貸切宿「オーベルジュ 晴遊」が誕生しました。2階のリビングやヒノキの浴槽を備えた客室からは目の前に広がるメタセコイア並木を眺められ、食事は「レストラン 晴遊」の料理を楽しむことができます。


「オーベルジュ 晴遊」の2階リビング。空間のいたるところには、琵琶湖の流木を活かして地元の木工作家や於勢さんが手がけた流木アートやランプなどが飾られている


浴室

「関西と関東で遠距離恋愛をしているカップルのお客さまが宿泊してくれて、この地域ならではの料理と自然を堪能し、とても喜んでくれました。オープンして1カ月ほどですが、地域の魅力を十分に活かせる店づくりができつつあるのではないかと、手応えを感じています」

二地域居住ならではのメリットも活かして

高島市と大阪の二地域居住を始めて約3年半。於勢さんが大阪で暮らす家族のもとへ帰るだけでなく、家族が「晴遊」に遊びに来ることもあるそうです。

「生活利便性のいい大阪と、自然豊かな滋賀の二つの拠点があることで、子どもたちもいろいろな経験ができます。それは、きっと大人になったとき、どんな仕事に就くか、どんな暮らしをしていくかについて、選択肢を広げることにもつながると考えています」

最後に、於勢さんに今後の抱負をうかがいました。

「晴遊のレストランやオーベルジュを目指して来てくださるお客さまを増やしていくこと。それをきっかけに、滋賀を訪れ観光を楽しむ方や、移住してみようかなと思う方が少しでも増えることで、この地域に貢献できればと願っています」

晴遊 オーベルジュ&レストラン

〒520-1821 滋賀県高島市マキノ町沢1495-2
https://www.86you.jp/

 

Case 2 長谷善広さん、清水幸男さん
薬草の宝庫「伊吹山」の麓にある遊休施設を活かして、
「いぶきハーブ・ガーデン」を開業

滋賀県で唯一新幹線が停車する「米原駅」や名神高速道路と北陸自動車道が連結する「米原JCT」があり、交通の要衝として知られる米原市。その北東部には、古くから薬草の宝庫としても有名な伊吹山がそびえ、麓には美しい姉川の清流が流れています。

今回訪ねたのは、伊吹山の麓に広がる板並地区。この地区出身の長谷善広さんと清水幸男さんは、今は使われていない多目的集会施設をリノベーションして、ハーブを使ったスキンケア商品などを販売するショップや農家レストランなどが一体となった「いぶきハーブ・ガーデン」を、2025年度中のオープンを目標に立ち上げようとしています。


「いぶきハーブ・ガーデン」の開業を目指す多目的集会施設

生まれ育った板並地区の活性化を目指し、立ち上がった二人

今年の3月末まで米原市の職員だった長谷さん。市のとある事業がきっかけとなり、兵庫県姫路市で「香寺ハーブ・ガーデン」を営む福岡讓一さんと出会いました。

「福岡さんは40年以上前からハーブの効能に着目し、ハーブの普及に尽力されてきました。そんな福岡さんのハーブに対する思いや食に対する考えを聞くことができ、感銘を受けたんです。福岡さんは昨夏に板並地区に足を運んでくださり、『周囲の景観が素晴らしく、薬草の宝庫としても知られるこの場所で、ぜひハーブ・ガーデンにチャレンジしてほしい!』とおっしゃってくれました」(長谷さん)


多目的集会施設の近くには、美しい姉川が流れる

伊吹山には、イブキヨモギやイブキジャコウソウなど、名前に「イブキ」と付くハーブが約30種類も生育しています。かの織田信長も伊吹山の薬草に注目し、ポルトガル人宣教師に命じて伊吹山に薬草園を開く計画を立てさせたことが書物に残されています。

こうした地域資源を活かして中山間地域の活性化を目指そうと、米原市では「いぶきハーブ・ガーデン事業構想」を立案。地区住民の皆さんに主体的に事業に参加してもらうべく事業構想を地域の役員会に提案した際、役員を務めていたのが清水さんでした。


長谷さん(左)と清水さん(右)

「私もこの遊休施設を活かしたいと考えていましたが、ノウハウも資金もなく動くことができませんでした。そんなときに、米原市のほうからハーブ・ガーデンの事業提案があったんです。多くの役員からは『これまでこの施設でいろいろやってきたが、成功したことがない』と反対の声が上がりました。しかし、私は今までとは違う何かを感じました。そこで手を挙げて、事業に参加させてもらうことになったんです」(清水さん)

一方、米原市職員だった長谷さんは、この事業に賭けるため退職を決意。清水さんとともに会社を設立し、ハーブ・ガーデン事業に全力を注いでいます。そんな二人の熱意と行動力を目にした役員の方たちも、最終的には全員が事業に賛同するに至りました。

耕作放棄地の問題を解消しながら、地域に新たな雇用を生む

「いぶきハーブ・ガーデン」では、伊吹山のハーブを使ったオリジナルのスキンケア商品や地元の農産物などを販売する「ショップスペース」、地元の食材とハーブを使ったビュッフェスタイルの「農家レストラン」、さらには「テイクアウトコーナー」が計画されています。

昨秋からは、カモミールや近畿以北にしか生息していないオオヨモギの栽培をスタート。「香寺ハーブ・ガーデン」の協力を得て、伊吹産のヨモギを使ったオイルやハーブウォーター、スキンクリームの開発にもすでに取り掛かっています。


スキンケア商品の試作品

農家レストランでは、「香寺ハーブ・ガーデン」が運営するレストラン「且緩々シャカンカン」からレシピ提供を受けた料理に加え、琵琶湖産のすじえびを使った「えび豆」や、たくあんを煮物にした「ぜいたく煮」などの郷土料理も提供する予定です。

テイクアウトコーナーでは、ヨモギを使用したドリンクやスイーツなど、地域の特産品を活かしたユニークなメニューを企画中とのこと。

「ヨモギやカモミールの栽培は、耕作放棄地を有効活用しながら進めていきます。地域の皆さまのご協力を得て、徐々に栽培に参加する仲間も増やしていきたいですね。また、農家レストランで使う野菜やお米は、地元産のなるべく無農薬で栽培されたものを使いたいと考えています。オープンに向けて、すでに無農薬栽培を行っている生産者を訪ねるなど、私たちと一緒にチャレンジしてくれる方を探していきたいと思っています」(長谷さん)


農家レストラン完成イメージ

米原市の中山間地域に位置する板並地区では、過疎化や高齢化が進行しています。近隣に働く場所が少ないため、若者が地域を離れてしまうことが多いそうです。

この状況に対し、清水さんは「ヨモギや無農薬野菜の栽培を通じて、耕作放棄地の問題解消に近づけると同時に、地域に新たな雇用を創出できます。農家レストランでも地区の皆さんに調理などを担当してもらいたいと考えています」と展望を語ってくれました。


広い軒下はテラス席として活用予定

クラウドファンディングではネクストゴールも達成!

長谷さんと清水さんは、リノベーション費用を調達するためにクラウドファンディングに挑戦。同時に「クラウドファンディング活用型北の近江振興事業補助金」も活用しました。

クラウドファンディング開始からわずか1カ月で当初の目標額50万円を達成し、ネクストゴールとして設定した100万円も見事突破。最終的に120万8千円もの支援金を集めることができたのです。

 


来年は施設横の敷地で、カモミールを栽培予定

「補助額は手数料の2分の1まで、最大100万円までという上限がありましたが、それでも大変助かりました。リノベーション費用だけでなく、商品開発費など、事業立ち上げにはさまざまな資金が必要となります。このような補助制度の存在は、滋賀県北部地域で新たなチャレンジを考えている人々の背中を押す重要なきっかけになると感じています」(長谷さん)

過疎と言われてきた地元が、多くの人で賑わう日を夢見て


カモミール収穫イベントの様子

今年の6月には、試験的に栽培したカモミールの収穫イベント(種取り)を開催。地元だけでなく、京都や大阪、兵庫、愛知など遠方から来てくれた人も多く、100人を超える参加者が集まりました。

「『オープンしたら絶対に行きます!』、『すごく楽しみにしています!』といった励ましのお言葉を数多くいただき、開業への手応えを強く感じることができました」(清水さん)


栽培したカモミールで淹れたカモミールティー

伊吹山の麓に広がる板並地区は、関西や中京圏からアクセスしやすい環境にありながら、豊かな自然が身近にあふれています。また、近隣には年間30万人以上が訪れる「グランスノー奥伊吹」というスキー場や道の駅、さらには、「伊吹薬草の里文化センター」などの施設も点在しています。

「私が市の職員を辞めてまでこのプロジェクトに専念した理由は、過疎地域と言われてきた地元が、たくさんの人で賑わう様子を見てみたいと思ったからです。とにかく、地元を盛り上げたい! 『いぶきハーブ・ガーデン』の完成により、交流人口や関係人口が増え、『ここに住んでみたい』『戻ってきたい』と思ってくれる人が少しでも増えれば何よりもうれしいです」(長谷さん)

いぶきハーブ・ガーデン

〒521-0305 滋賀県米原市上板並1759-1
Instagram: https://www.instagram.com/ibuki_herbs/?hl=ja

 

滋賀県北部地域で、あなたの“やりたいこと”を形に!

北の近江振興プロジェクトでは、「クラウドファンディング活用型北の近江振興事業補助金」だけでなく、次の3つのテーマを掲げて、地域振興に取り組んでいます。

「住み続けたくなる還りたくなる北部へ」
健やかな暮らしの実現、女性が活躍する社会づくり、地域資源を活かした魅力ある地域づくりに重点的に取り組みます。

「挑戦する若者が育ち・集う北部へ」
地域経済活性化のための人材確保や未来を支える人材を育成します。

「訪れたくなる北部へ」
首都圏・京阪神から北部への移住・誘客促進の他、地域観光資源のさらなる活用や滋賀の魅力や技術を発信します。

滋賀県が北の近江振興プロジェクトに力を入れ、「クラウドファンディング活用型北の近江振興事業補助金」などでサポートも行っている今こそ、あなたの夢やアイデアを形にする絶好のチャンスです!

「クラウドファンディング活用型北の近江振興事業補助金」の詳しい内容や申し込みについては、滋賀県の公式ホームページをご覧ください。

 

10月5日(土)移住フェアに出展します!

愛知県名古屋市で開催される合同移住フェア「いい街発見!地方の暮らしフェア 2024」に滋賀県と北部地域が連携して出展します。滋賀県北部地域での暮らしや、補助金を活用した新たな事業へのチャレンジに興味がある人は、ぜひ気軽に足を運んでみてください!

【日時】2024年10月5日(土)12:00〜18:00(予定)

【会場】新中日ビル6階(ホール&カンファレンス)

【住所】愛知県名古屋市中区栄4-101

【入場料】無料

【主催】中日新聞社

 

滋賀県北部地域(長浜市・高島市・米原市)は、どんなところ?

長浜市は滋賀県の湖北に位置し、美しく豊かな自然環境と共に、豊臣秀吉の時代より続く町衆文化や曳山まつりなど、多くの歴史的文化遺産を有しています。京阪神、東海、北陸の交通結節点として京都市や名古屋からは60km圏域、大阪市からは100km圏域にあり、どこにでも行きやすいのも魅力。長浜市では、豊かな田園風景と温かい人々と共に、田舎すぎない「ちょうど良い」暮らしが実現できます。

米原市は滋賀県一高い伊吹山と、それに連なる山々がもたらす豊かな自然や、そこから琵琶湖に注ぐ水に育まれてきた「水源の里」。一方で、滋賀県唯一の新幹線停車駅があり、京都・大阪・名古屋・東京などへも思い立ったらすぐに行くことができます。高い利便性と豊かな自然を併せ持つ地域です。

高島市は滋賀県の北西部に位置し、京阪神へのアクセスが便利でありながら、琵琶湖と山々が広がり、里山に集落が点在する“ほどよい田舎”が広がっています。市の面積の72%が森林で、琵琶湖へ注ぐ水の約3分の1を生み出す地域と言われています。2005年に5町1村が合併して誕生した高島市は、琵琶湖湖畔の平野部から山間部まで、それぞれ異なる表情を持っているのも魅力です。

取材・文:杉山正博 写真:岡松愛子


【記事作成者 / お問い合わせ先】

滋賀県北の近江振興事務所

住所:滋賀県長浜市平方町1152-2
TEL:0749-53-2801
MAIL:kitanoomi@pref.shiga.lg.jp

                   

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