岩手県大槌町は三陸海岸のほぼ真ん中にある里海と里山のまち。縄文のころから海の恵みと山の恵みを糧に暮らしを営んできた地域です。そんな豊かな自然とともにある大槌ですが、近年の気候変動の影響などにより、サケやサンマの不漁やシカによる農業被害といった深刻な打撃を受けています。日本各地の農山漁村が同様の課題を抱える中、大槌町にはいち早く立ち上がり、困難な状況を自分たちの手で打開しようと動き始めた人たちがいます。その1人がご当地サーモンの養殖に取り組む大槌復光社協同組合の金﨑拓也さんです。地域内外の人たちとつながり、連携し、金﨑さんとともに清流育ちの「桃畑学園サーモン」のブランド化に挑戦しませんか。
【募集するポジション】
「桃畑学園サーモン」を飼育し販売している大槌復光社協同組合は、東日本大震災後の2013年に大槌町内の建設業者などで立ち上げた組織です。その中の水産部会が主体となってご当地サーモン「桃畑学園サーモン」を養殖し、町観光交流協会や町内の水産加工業者、飲食店などと連携して、認知度の向上や販路拡大を進めています。
「桃畑学園サーモン」の美味しさやストーリーを伝え、ファンを増やしていくため、町外からの視点やつながりを活かし、ブランディングやPR活動に取り組んでいただく地域おこし協力隊を募集します。
業務内容
①サーモン養殖場の飼育管理
②規模拡大に向けた企画づくり および コーディネート 等
- マーケティング戦略の立案/
実行
- ブランディングに向けた施策の検討/立案
③各種関係機関との調整/コーディネート 等
④営業活動/広報PR /販売/渉外対応 等
⑤生産現場体験ツアーの受入れや新規コンテンツの企画
三陸の海を目の前に山々に抱かれた大槌町
「桃畑学園サーモン」生みの親 金﨑拓也さんにお話を聞きました。
400年以上の長い年月、大槌町民に愛されてきたサケに代わる新しい特産としてご当地サーモンの養殖事業が始まったのは2019年。この事業の担当であり、「桃畑学園サーモン」のブランド化に取り組む大槌復光社協同組合理事の金﨑拓也さんに、ご当地サーモン事業を始めた背景や地域おこし協力隊に期待することを聞きました。
復興終わり新たな課題「持続的な産業を作りたい」
大槌町で生まれ育った金﨑さんは、社会人になって以来、建設土木の仕事一筋。大槌復光社協同組合の一員である建設会社・小松組の役員も務める工事のプロです。長年、大槌町民の安全で安心な暮らしを支えてきた金﨑さんの日常を一変させる出来事が起こりました。2011年の東日本大震災です。津波の直後は消防団として被災者の救助や捜索活動に参加し、その後はがれきの撤去や新しい町をつくる復興工事の前線で働いてきました。「早く町をどうにかすっぺ」。その思いだけで日々、生きてきたと振り返ります。
復興工事が進み、少しずつ新しい町のかたちが見えてきたころ、三陸の港では、長年にわたって漁業の柱だったサケの不漁が深刻になっていました。大槌湾に面した魚市場の目の前で育った金﨑さん。幼いころには、大漁に沸き、大勢の漁師や仲買人が行き交う市場の活気を肌で感じていただけに、主要な魚種の不漁により人影もまばらになった浜を目にするうち、不安と焦りを感じるようになりました。「町が復興しても、持続可能な産業がなければ町民は暮らしていけない」。大槌復光社協同組合の中での議論が始まりました。
もとは復興工事をスムーズに進めるために立ち上げた「大槌復光社協同組合」。「復興した後の大槌に光を灯し続けたい」と名付けられたこの組織のメンバーの思いはひとつ。地域に根ざした産業を作り、若者が住み続けられる町にすることです。
「せっかく大槌には海と山がある。そのふたつを活かした産業を」と議論を交わし、「サケに代わる魚で活気ある浜を取り戻そう」との思いから、もともと大槌で水揚げされていたシロサケに近く、三陸の環境に適したギンザケとトラウトサーモンの養殖に取り組むことを決めました。
実は、三陸で水揚げされる魚の中でもサケは大槌町にとっては特別な存在。安土桃山時代、この地を治めた大槌城主・大槌孫八郎が塩漬けの保存方法を編み出し、大槌の新巻鮭は「南部鼻曲がり鮭」の名で江戸でも知られるようになりました。新巻鮭が寒風に揺れる光景は大槌の冬の風物詩です。
そんなサケに代わる一手として、令和の時代の新たな特産品づくりへの挑戦が始まったのです。時はまさに2019年、令和元年のことでした。
遊休施設を活用し、雇用を生み出す
復光社は、行政やサーモン養殖のノウハウを持つ水産会社などと協議を重ね、山間部で育てた稚魚を海で大きく成長させる養殖の実証実験に臨むことに。復光社が稚魚の飼育を担うことになりました。
事業の担当となった金﨑さんが目を付けたのが、山間部の桃畑地区にあり、震災前はアユの養殖をしていた桃畑養魚場。北上山地から大槌湾に注ぎ込む大槌川はヤマメやイワナが生息する清流で、サケの稚魚を育てるのにも適していると考えました。
専門の建設技術を活かして改修工事を進め、桃畑養魚場での飼育をスタート。この新たな挑戦によって、新たに町民2人の雇用が生まれ、遊休施設もよみがえることになったのです。
建設業から養殖業への参入は初めて経験することの連続。「サケのことも餌のことも何もかも知らないことばかりで、異業種の人たちとかかわり学ぶ日々でした」と振り返ります。初年度は桃畑で育った2,000尾を無事に海の養殖施設へと送り出し、「岩手大槌サーモン」として旅立って行きました。
岩手大槌サーモンは、その脂の乗りの良さから高評価を得て、実証実験から本格的に事業としてスタートすることが決定。幸先の良いスタートを切りました。
次なる課題は淡水サーモンのブランド化
金﨑さんの挑戦と奮闘はまだまだここからが本番。クマなどの野生動物による被害、豪雨による河川の増水、夏の異常な暑さ……自然の中で育てるからこそ、自然の容赦ない試練を受けますが、その都度、向き合い、知恵を絞ってきました。
金﨑さんはまた、桃畑で大きく育てた“淡水育ち”のサーモンのブランド化に取り組んでいます。その名も「桃畑学園サーモン」。桃畑養魚場をサーモンの学校に見立て、進路選択のタイミングで海に旅立つ「岩手大槌サーモン」、桃畑に残る「桃畑学園サーモン」とそれぞれ名付けられました。
岩手大槌サーモンは、大槌町にグループ会社を置く大手水産会社の流通に乗り全国のスーパーなどに並びますが、桃畑学園サーモンは大槌町観光交流協会などと連携し、町内の水産加工業者がさまざまな調理品に加工したり、町内の飲食店で刺身で提供したりすることで、町内でお金が循環し、大槌に来たからこそ味わってもらえる仕組みを育てています。
町内での試食会や「大槌サーモン祭り」などでのPR活動を地道に重ね、「岩手大槌サーモン」とともに「桃畑学園サーモン」の町内での認知度も高まっています。
さらに、自然体験の場を提供するNPOなどと連携し、桃畑学園サーモンが育つ環境について学び、サーモン釣りや料理を楽しむツアーの開発などにも取り組むなど、その活動は養殖の枠にとどまりません。
ブランド確立に向け“ちおこ”と連携
サケの不漁に苦しむ町内の水産加工業者からのニーズに応えるため、養殖施設の規模拡大を検討中だという金﨑さん。地元出身の自分だけでは思いつかない新しい発想やネットワークを持つ人と一緒に事業を拡大していきたいと考え、町内で“ちおこ”の愛称で呼ばれる地域おこし協力隊の新しいメンバーとともにブランド化により一層力を入れることにしました。
ブランド化に取り組む前提として、まずは桃畑養魚場での飼育についての知識を身につけ、養殖に関する業務を覚えることが不可欠です。屋外での稚魚の飼育や出荷など、桃畑の豊かな自然の中で身体を動かす仕事は田舎暮らしの醍醐味を味わえます。
仕事を覚えながら、町内の水産加工業や飲食業、観光業などさまざまな分野の人たちと少しずつ信頼関係を築き、連携して「桃畑学園サーモン」を発信し、サーモンによって大槌町に人を呼び込む確かなブランドとして、「桃畑学園サーモン」を大きく育てていくこともミッションです。
「自然や生き物が好きで興味がある人にぴったりの仕事」と金﨑さん。「大槌の大きな魅力は自然。山の恵みを頂き、海の恵みを頂きながら暮らす楽しさがある」と言います。自身も山に入って山菜やマツタケを採り、大槌の四季を感じます。遠くから大槌の海に釣りに来る人も多く、渓流釣りができる清流もあります。
もうひとつは「町民の中に飛び込んでいくチャレンジ精神を持った人」にも向いているとのこと。金﨑さん自身は、もとは多様な人とコミュニケーションを取ることが得意ではなかったと言いますが、サーモン事業によって多くの人から学び、刺激を受けて、自分自身が変化したのを実感しています。新しい土地で活動し、自分の成長を感じられるのも地域おこし協力隊として働くことの魅力です。
「町を愛する町民と、町民以上に大槌を推してくれる移住者が一緒になって新しいことを起こしている町。色々な人とかかわりながら、どんどん地域に入り、一緒に桃畑学園サーモンを盛り上げてほしい」と金﨑さんは新しい出会いを待っています。
先輩ちおこ20人 多様なロールモデルに出会えるのも魅力
「大槌推しの移住者」と言えば、忘れてならないのがちおこたち。現在20名ほどが活動していて、大槌ジビエのMOMIJI株式会社や持続可能な森林づくりに取り組む特定非営利活動法人吉里吉里国、大槌に移住者や関係人口を呼び込む移住定住事務局など、さまざまな分野で即戦力として活躍中。
ちおこの活動を支える事務局を民間で運営していて、親身に寄り添ってくれるのもポイント。日々の活動状況や課題を共有し意見交換する定例ミーティング、任期後の定着に向けたサポート、町内外のイベントや研修会の情報提供など、活動をサポートする仕組みが充実。さらに、任期中に新しい団体を設立したちおこや卒業後に向けたなりわいづくりを実践しているちおこがいて、きっとロールモデルに出会えるはず。
移住定住事務局での活動と並行して任期中に立ち上げた自身の会社での事業にも取り組んでいる伊藤将太さんは、「それぞれのちおこのやりたいことや将来像をベースに、働き方を一緒に考え、活動中に見えてきた課題に応じて柔軟に対応するのが大槌ちおこをサポートする事務局の役割」と語ります。
「日本一柔軟な地域おこし協力隊事務局」を合言葉に、1人1人のちおこが大槌で自分らしいキャリアを重ねるための方法を一緒に考え、かたちにするサポーターです。
「具体的ではなくても、おおまかにやりたいことが見えていれば、関係者と対話する中で大槌でやるべきことが見えてくる。まずは、お試し制度やインターンを使って、大槌に来て、金﨑さんやちおこに会ってほしい」と伊藤さん。
「桃畑学園サーモン」という新しいブランドの可能性は無限大。あなたのやりたいことや得意なこととサーモンを掛け合わせ、「桃畑学園サーモン」を遠い将来まで愛されるブランドに育て上げてみませんか。
【大槌町ってこんなまち】
リアス海岸のほぼ中央にある岩手県大槌町は、海の暮らしと山の暮らしのいいとこどりができる三陸らしい町です。東日本大震災後につながった三陸縦貫道など、適度に便利で、ほどよい田舎。街なかでのリモートワークや飲み会、山菜採りや釣り……。時には漁師さんの船に乗せてもらったり、祭りで神輿を担いだり。自然と文化が豊かな地域です。
2011年の東日本大地震で甚大な被害を受け、長い復興期間を経て、新しい町の未来をつくるために「成長」へと舵を切りました。気候変動や環境の変化といった大きな課題と向き合うことから始まった大槌ジビエやサーモンなど、地域課題を資源に変え、地域に人やお金の流れを呼び込む新しい事業は、全国から注目を集めています。
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募集状況 募集中 勤務地 大槌町内、町外・県外への出張も想定されます。 募集職種 ①サーモン養殖場の飼育管理
②規模拡大に向けた企画づくり および コーディネート 等
- マーケティング戦略の立案/実行
- ブランディングに向けた施策の検討/立案
③各種関係機関との調整/コーディネート 等
④営業活動/広報PR /販売/渉外対応 等
⑤生産現場体験ツアーの受入れや新規コンテンツの企画
雇用形態 任用形態:民間組織である地域おこし協力隊事務局との業務委託契約に基づいて活動する「個人事業主型」と所属先の事業者に雇用される「雇用型」が選べます。応募後に、どちらが良いか、協力隊事務局、事業者とともに相談して決めていきます。 給与 個人事業主型の場合は時給1200円以上。雇用型の場合は、受入事業者と相談の受け決定。 福利厚生 各種手当(全隊員共通):
①住宅手当:上限5万円
②家賃補助:5万円を超えた分の1/2補助(上限10,000円まで)
③活動費:レンタカー借り上げ、活動旅費(燃料費含む)、作業具、消耗品、会場使用料他
勤務時間 ◉任期について
2024年4月以降から最大3年間 (着任日は相談のうえ決定できます)休日休暇 基本週5日勤務( 受入事業者と相談して決めます) 募集期間 応募締切:2024年2月29日まで (応募状況により、受付期間が変更になる場合があります) 選考プロセス 下記の応募フォームのリンク先のページ「ココカラ オオツチ」に、地域おこし協力隊の募集説明会の参加説明と申し込みがございます。そちらからご応募ください。