里山とは?里山が抱える課題や保全・活用方法、実際の暮らしを解説!

豊かな自然の中でスローライフを送れるイメージがあることから、移住先としても人気の里山。しかし近年、少子高齢化・過疎化が進む中で人の管理が届かなくなった里山が増え、本来の豊かさが失われつつあります。

その背景にはどのような要因があり、どうすれば豊かな里山を次世代につなぐことができるのでしょうか。

この記事では、里山の重要性や現状、課題、新しい保全・活用方法、リアルな里山暮らしについてご紹介します。




里山とは

里山とは、原生自然(人間の手が加えられていない自然)と都市部または農村の集落エリアの中間に位置し、人が維持・管理している森林や雑木林、田畑、ため池、草原などを含む地域一帯のこと。

環境省の調査によると、里山を構成する二次林(山火事や伐採等で消失後に再生した森)約800万haと農地等(里地)約700万haを合わせると、日本の国土の4割もの広さを占めています。

参考:環境省「日本の里地里山の調査・分析について

 

里山の重要性

里山は食料や木材などの自然資源を育むとともに、多種多様な生物の生息地として、また、地域の文化や風土、景観を形作る上でも重要な役割を果たしています。

ここでは、里山の重要性として挙げられる主なポイントを整理します。

自然資源の生産・供給

農林畜産業のフィールドとして、米や野菜、きのこ類などを含む食料や木材を育み供給する。

水源涵養・洪水調節

多くの草木が茂る環境があることで、雨水が時間を掛けて土壌に浸透して地下水として蓄えられ、水源確保や洪水緩和につながる。

土砂崩れ防止

斜面上の樹木等の根が表土を安定させることで、土砂の流出・崩壊の防止につながる。

生物多様性・生態系の保全

人が生み出す田畑やため池、草原、雑木林などの自然環境は多種多様な動植物の生息・生育地となり、豊かな生態系が育まれる。これにより農林畜産業の安定生産にもつながる。

 

里山の変化

食料・木材・水資源の供給など私たちの暮らしと密接な関わりを持つ里山ですが、近年は各地で耕作放棄地や放置林が増え、深刻な地域課題を生み出しています。その背景にはどのような要因があるのでしょうか。

産業構造の急激な変化

日本社会全体の産業構造は、戦後から高度経済成長期にかけて第一次産業(農・林・漁業)中心から第二次産業中心へと大きくシフトしました。これにより日本は急速な経済発展を遂げましたが、里山をフィールドとする農林業や製炭業などは担い手不足に陥り、人の手で維持・管理できるエリアは年々縮小。継ぎ手の見つからない田畑は耕作放棄地化し、伐採適齢期を過ぎた木々が茂る放置林も各地で増え続けています。

山村の人口減少・高齢化

地場産業の衰退が引き起こすのは、現役世代の域外流出です。特に山村(中山間地域)は少子高齢化・過疎化が著しく進行しており、中には居住者すらいない地域も増え、山地や農地の荒廃、空き家の増加などが深刻化しています。これらは地域の風土や景観を乱すだけではなく、昨今増加化しつつある鳥獣被害を引き起こす要因のひとつとされています。

参考:林野庁「令和2年度 森林・林業白書

 

里山の保全と活用に向けた取り組み

こうした課題に対し、各地で里山保全に向けた取り組みが進められています。各県や市町村が施行する里山保全条例もそのひとつですが、ここでは近年の新しい里山保全・活用の潮流をご紹介します。

里山の観光地化

社会が成熟し人々の価値観の多様化が進むにつれ、観光スタイルも従来型のマスツーリズムから個人旅行へと変化しつつあります。人々の旅の目的が変わったことで、里山が持つ独自の自然環境や風土、食文化、温泉などを観光資源として捉え直す動きが出てきており、グリーンツーリズムやヘルスツーリズム、エコツーリズムなどの開催地として、また、インバウンド需要を取り込む上でも注目されています。

▶グリーンツーリズムとは
緑豊かな農村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ、滞在型の余暇活動のこと。
参考:農林水産省「グリーン・ツーリズムの定義と推進の基本方向

▶ヘルスツーリズムとは
旅を通して旅をきっかけに健康増進・維持・回復・疾病予防を図る旅行スタイルのこと。
参考:NPO法人日本ヘルスツーリズム振興機構

▶エコツーリズムとは
地域ぐるみで自然環境や歴史文化など、地域固有の魅力を観光客に伝えることにより、その価値や大切さが理解され、保全につながっていくことを目指す仕組みのこと。
参考:環境省「エコツーリズムとは

森のようちえん(里山保育)

里山を教育のフィールドとして活用する動きも定着しつつあります。その好事例が自然体験活動を軸にする森のようちえんです。元々は北欧諸国で始まった自然教育プログラムですが今では日本各地に広がりました。地域の里山を保育資源として活用することで、里山の保全・利活用につながるのはもちろん、森のようちえんに通う児童にとっても、里山の多様な自然環境の中で幼少期を過ごすことで主体的に遊び、学ぶ姿勢が育まれ、感性の豊かさや身心の健康・体力、創造性や社会性、豊かな人間性を身につけられるなどの教育効果があるとされています。

また、森のようちえんへの入園希望世帯が地域に移住するなど、人口減少が続く地域への移住・交流人口の増加にもつながっています。

事例:森のようちえん まるたんぼう|鳥取県八頭郡智頭町
https://turns.jp/13567

山村留学(里山留学)

山村留学とは「自然豊かな農山漁村に、小中学生が一年間単位で移り住み、地元小中学校に通いながら、さまざまな体験を積む」活動のこと。基本的には1年間の留学(新学期が始まる4月から翌年3月末まで)になりますが、中には「自然体験プログラム」や「自然体験キャンプ」という形で、週末や夏休み、冬休みだけの期間限定で参加できるものもあります。多彩な自然体験やキャンプなどの野外活動、小規模校での授業、地元との交流などの新しい体験から、都会では得られない刺激と学びが得られると期待されています。

関連記事:子どもの可能性を伸ばす、国内版教育移住とは?
https://turns.jp/56955

木材資源の有効活用

これまで、森林整備の際に生じる間伐材や倒木等は里山に放置されたり、廃棄されたりするのが一般的でした。これらが里山の荒廃や景観悪化の一因ともされてきましたが、近年では廃棄されるはずの木材を燃焼したりガス化したりすることで木質バイオマスエネルギーを生み出したり、新たに加工し商品として販売するなど有効活用し、新しい価値を生み出す動きが出てきています。

▼里山保全につながるサステナブルな商品

Retre
「商品にならない」という考えから山に捨てられていた虫喰い楢材を活用したブランド。

Odai products
森林整備の際に生じる枝葉を活用し、豊かな森づくりにつながる商品を生み出しています。

東京チェンソーズ
”一本の木が持つ価値を最大化する”をコンセプトに、根っこから葉先までを利活用し、新たに生み出した利益と価値を森林整備、保全活動に還元する取り組みを行っています。

里山の暮らし

里山に移住すると、どのような暮らしを実現できるのでしょうか?

ここでは、ローカルライフマガジン『TURNS』が取材した、日本各地の里山ライフ・移住体験談をご紹介します!

 

【埼玉県比企地域】東京からもっとも近い里山の暮らし

池袋から東武東上線でも車でも約1時間のところにある、埼玉県比企郡。東京に一番近い里山といわれ、近年は県内や東京のみならず海外からの移住者も増えているという。Iターン、Uターン希望者から密かに注目を集めるのどかな里山を訪ねました。
▼取材記事はこちら!
https://turns.jp/3790

【東京都檜原村】東京の里山・檜原村に移住希望者が絶えない理由

大都市・東京に属しながら、総人口は2,038名(2023年時点)、高齢化率52%超の厳しい人口減少問題に直面する檜原村。

同じ課題を抱える他の市町村同様、過疎化・限界集落化に歯止めがかからない状況なのかと思いきや、近年は移住希望者が増加し、空き家の供給も追いつかない状況なのだと言います。

檜原村の何が移住希望者を惹きつけているのでしょうか?
その秘密を探りに、檜原村に行ってきました!

▼取材記事はこちら!
https://turns.jp/80164

【新潟県十日町市】雲の上の集落、会沢・蓬平集落の住民から、里山で生きる技術を学ぶ

伝統的な雪国の暮らしが今も残る豪雪地、新潟県十日町市の会沢・蓬平(あいさわ・よもぎひら)集落。ここで生きることでしか感じとることができない暮らしの豊かさを取材しました。

▼取材記事はこちら!
https://turns.jp/41431

 

【兵庫県丹波篠山市】関西圏で最も身近な里山・丹波篠山で見つけた新しい暮らし

京阪神からそれぞれ1時間ほどの場所にある兵庫県丹波篠山市は、関西圏で最も身近な里山として知られる地。

市街地の中心は歴史ある城下町でありながら、少し車を走らせれば里山風景が広がり、農業、ものづくり、古民家再生、教育関連など市内には様々なプレイヤーが存在しています。

そんな “多様性のあるちょうどいい田舎” という環境こそが、多くの移住者や若者を丹波篠山に惹きつけています。

▼取材記事はこちら!
https://turns.jp/47191

 

【愛媛県久万高原町】高原のトマトと里山の風景に惚れて移住。農家として大切なものを継いでいく

愛媛県松山市の松山インターチェンジから車で35分。距離にしてわずか30キロほどのところにある、平均標高800メートルほどの高原地帯「久万高原町」。名古屋から松山市を経て久万高原町に移り住み、夫婦でトマト農家を営む上村芽衣子さんを訪ねました。

▼取材記事はこちら!
https://turns.jp/23968

 

【宮崎県諸塚村】森林を守りながら最大限に活用する「森と共生する暮らし」

宮崎県の北部、九州山地のほぼ真ん中に位置する諸塚村は、人口1,500人の小さな村。急峻な山々に囲まれた地域性から、一つの産業を大規模に展開することが難しい分、森林を守りながら最大限に活用する「森と共生する暮らし」が営まれてきました。

▼取材記事はこちら!
https://turns.jp/47225

 

里山暮らしを体験するには

里山暮らしの豊かさを実際に体験してみたいという方へ。

短期~中長期間かけて里山暮らしを体験できるプログラムをご紹介します。

【短期】里山体験プログラムに参加する

最も気軽に里山の魅力に触れられるのが、各自治体や里山保護活動団体等が開催する里山体験プログラムに参加すること。田植えやきのこ狩り、林業体験、各種クラフトなど、親子で参加できるプログラムも豊富に用意されています。

例:東京都環境局「里山へGO!」
https://www.tokyo-satoyama.metro.tokyo.lg.jp/schedule/

【短期~中期】農家民泊を活用する

まとまった休みを活用して里山暮らしを体験してみたい、という方におすすめなのが、農家民泊を利用すること。特に各宿が主催する農業体験や収穫した野菜を用いた郷土料理づくり体験などに参加し、地域の方々との交流を深めることで、里山暮らしの豊かさをよりリアルに体感できるはずです。

例:山口県萩市「つぎはぎ農園」
https://turns.jp/86250

【短期~中長期】お試し住宅を活用する

具体的に里山への移住を考えている方は、「お試し住宅」を活用するのがおすすめです。「お試し住宅」とは、各自治体が整備・管理している移住希望者向けの滞在拠点拠点施設のこと。地域の空き家を改修して「お試し住宅」として活用しているケースが多く、一定期間暮すように滞在することで、周辺環境も含めた移住後の暮らしのイメージがつきやすくなります。

里山暮らしに関する本・参考文献

里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川新書)
https://amzn.to/3RoGiyt

書籍検索一覧
https://amzn.to/4bZekSb

TURNSでは今後も里山暮らしに関する情報を発信していきますので、ぜひご活用ください!

#里山暮らし

 


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