雲の上の集落、里山で生きる技術を学ぶ
【里山暮らし体験募集】

新潟県十日町市 お試し移住体験プログラム [地域交流 編]

新潟県十日町市、会沢・蓬平(あいさわ・よもぎひら)集落。

秋の稲刈りを終え、冬を迎える準備が始まった11月。
紅葉を迎える山々の間から、段々に連なる棚田が見える。

目の前の景色は誰の手によって、生み出されているのか。
山の斜面に切り拓かれた棚田を見て、考えもしなかった。

ここで生きることでしか、感じとることができない営みを知りたい。
私達は、集落の語り手と山を巡った。

 

山で生きる覚悟は必要か

北越雪譜(※)に記された雪国の暮らしが文明の発展した今も残る豪雪地。それがこの集落の冬だ。海抜399mの山あいからは、しばしば雲を上から見下ろす雲海を眺めることができる。

集落へ続く道を歩くに連れて、山の傾斜がある道の途中に家がポツリポツリと見えてきた。

※『北越雪譜』とは、江戸後期における越後魚沼の雪国の生活を活写した書籍のこと。

「なぜ俺がここに住んでいるかと言うと、山で生きることを教えてくれる師匠がたくさんいるからなんだよね。」

そう話すのは、一般社団法人里山プロジェクト(以下、里山プロジェクト)の代表をつとめる小山友誉さん。彼がこの地に出会ったのは11年前。春には山菜を取り、田んぼで米を作り、畑をかまって、木を切り、冬には雪と暮らす。自然の厳しい里山で呼吸をするかのように平然とそれらを営み、自分を活かしながら地域を活かす村びとたちの背中に理想の生き方を見つけた。

▲小山友誉さん
十日町市地域おこし協力隊として活動  農業や除雪などの地域活動と深く関わり、活動期間中の平成23年東日本大震災翌日の3.12長野県北部地震(最大震度6強)や 同年7月の新潟福島豪雨、また任期中の3年間全ての冬で災害救助法が適用された豪雪を地域の方々と一体となり全ての災害を乗り越えたことで「本物の生きる力」を学ぶ 。総務省地域力創造アドバイザー、株式会社トロノキファーム取締役、(一社)TOC十日町アウトドア体験センター代表など歴任。

 

正直な話をすると、里山での生活は簡単なことではない。山に囲まれ、四季の移ろいを感じながら、自給自足に近い田舎生活は一朝一夕には成立しない。

蓬平集落の中心部にある旧小学校のプラタナスの木の根元に腰をかけて小山さんは「雪が降ったらタクシーも救急車も来ないよ」と笑いながら話した。


村の中心には学校の名残りが残されている

 

それほどに厳しい里山の暮らしをなぜ続けるのか。シンプルに「幸せな日常と心の平和だよ」と答えた。

 

幸せな日常とはなんだったろう

小山さんはウィンタースポーツを愛する若者だった。11年前に会沢・蓬平集落の環境と人に触れ、住むことを決めた。地域おこし協力隊を経て、現在はキャンプ場の運営・アウトドアガイド・市全体の協力隊の指導をしながら奥さんと子供2人と暮らしている。

幸せな日常とは「人らしいコミュニケーションが取れる暮らし」だという。野菜が取れたからと隣へ持っていき、料理にして返す。良いことも悪いことも全て話せる家族のような『共同体』の中で暮らすことだ。


村の収穫祭では秋の豊作を祝う

住む場所にお金がかかって、それを支払うためにお金を稼ぎ、足りなければ食べ物が買えない。いつなくなるか分からない仕事に不安を抱える人は、コロナ渦で増えたのではないだろうか。

そういった「不安」や「焦り」がない生活が成立している。ここで暮らす人たちの個のエネルギーが溢れ、自分たちを生かし、地域を活かしている。

「言葉だけではピンとこないかもしれない」と、小山さんは立ち上がり歩き始めた。

 

雲の上の集落、会沢

雲が海のように広がる景色「雲海」は標高が高く、放射冷却が起こる山間部や盆地で発生しやすい。ここはそういった眺めが見える雲の上の集落だ。「ここは自分が憧れて、背中を追いかけている山の達人達が住んでる村」と小山さんが語りながら着いたのは、会沢集落。山あいの集落で13世帯が暮らす蓬平集落に隣する集落だ。この日は曇り空で霞が少しだけ漂い、どこか浮世離れした世界だった。


小山さんが民家に立ち寄ると嬉しそうに出迎える

その中の一軒の家、庭に広がる里芋と玄関に立てかけられた芋茎。そこにいた村の母ちゃんに小山さんは声をかけると、私たちに村のことを教えてくれた。

「会沢は90歳の人達が中心の世代でね。一番若い人で65歳。みんな農業をやってる。この時期はカボチャに白菜、大根もキャベツも何でもあるよ。キノコもね、家の前に生えてるのよ」

会沢の野菜は直売所で売られている。その中継ぎをしているのは小山さんだ。1袋100円の野菜でも1日で1万円以上も売れるようになった。

「買いにいくのは卵と肉くらいかね」と。昔は鶏も飼っていて、ほとんど自分達で育てたものを食べて暮らす。


「鶏は害虫駆除のスタッフとして雇っている」と小山さん

「山で暮らす技術を持ったプロフェッショナル達だからね。本人とっては当たり前なんだけど、俺は全くかなわない」

よく集落は閉鎖的だと聞くが、ここはそう感じさせない空気がある。できない人は助けて当たり前、家族としての関係を築こうとするから外の人も自然に溶け込めるのだ。

一軒上の民家にも顔を出すと、さっき帰ってきたばかりの村の母ちゃんに声をかけられる。「今年は芋もらいが足りなくてね」と家の前に広げた里芋を指さす。

「これ、食べてみるか」と差し出してきたのは、小さな里芋を茹でたもの。「こんな小さい里芋、ほんとは人様に出せないんだけど、うめぇから」と渡された。皮はつるりとすぐに向けて一口で食べられる。塩味がきいて里芋の旨味がギュと詰まっている。

「小山さんはやり手だよぉ。わたしらは、ほんと感謝してるんだ。作ったもん売ってくれて、孫にやる小遣いとれるようになったのも、小山さんのおかげ」

訪ねてきた小山さんに嬉しそうな視線を向ける。この集落で積み重ねてきたものがあるから、こうして、よそ者が来てもあたたかく迎えてくれるのだ。

「袖触れ合うのも他生の縁だからね、またお会いしましょうね。ありがとね」という言葉と袋いっぱいに詰まった山芋を抱えて、会沢集落を後にした。

 

この景色はあらゆる力の集合体

「里山の暮らしっていうのは、誰かが欠けたら欠けたままになる。この景色も。みんなで支えあっているから、この空間が存在している。自分なんて、この景色のほんの一つのパーツでしかないのよ」

蓬平集落には、まだまだ若手の担い手がいる。それでも百年後には集落はなくなっているかもしれない。「ここの人達が受け継いできたものを自分も好きだから」と小山さんは一つ、また一つと田んぼを増やした。

誰かができなくなれば「俺がやるよ」って手が挙がる。大事な時は協力する阿吽の呼吸がある。大きな家族としての安心感。それが集落で暮らすことの良さだ。

「俺の山で暮らす能力なんて、最大が100だったら35くらい。本当に凄い山の神様達がいっぱいいるのよ。あの山の斜面の棚田を管理してるのは80代の爺ちゃんなんだけど、普通じゃないよね。自分はなんの役にも、まだ立ててない。郷に入れば郷に従う必要はあるけど、よそ者でも家族として迎えてくれるのが、この集落だよね」


この山の急斜面の棚田を管理するのは80代の爺ちゃんだそう

 

それでも住むことで、村の話のタネになる。「稲刈りは始めたんか」「いよいよになったら、オラ刈りに行くスケ」助けてもらいながら、その触れ合いには愛がある。

山で暮らすために必要なことを聞くと「感じること、それだけだね」と短く答えた。自然に近い里山では人の力が及ばないことがほとんどだ。長雨や天災を乗り越えて、環境の変化を感じること。人の機微を感じること。自分の内面の声を感じることだ。

 

人の営みの集大成がここにある。

 

〜 会沢・蓬平集落について 〜

 

■蓬平・会沢の位置情報
https://goo.gl/maps/rYuGbpd79gLx6M6m6

■やぶこざきキャンプ場/Yabukozaki outdoors
小山さんが蓬平集落で運営するキャンプ場。
スノーシュートレキングやメープル狩り&デイキャンプなど、季節ごとの里山体験を提供している。
https://www.facebook.com/pages/category/Sports—Recreation/Yabukozaki-outdoors-468407283351182/

■まつだい芝峠温泉 雲海
芝峠の頂上に位置し、露天風呂からは雲海を見下ろすことができる。
やぶこざきキャンプ場より徒歩5分。
https://shibatouge.com/

 

※十日町市では、ご紹介した集落に滞在ができる移住体験プログラムの参加者を募集しています!詳細・お申込はこちらをご覧ください。以下も合わせてご確認ください。

 

 

文/大塚眞
写真/ほんまさゆり

 

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新潟県十日町市 会沢・蓬平集落
移住体験プログラム
開催日 2020年11月5日(木) 〜2021年2月28日(日)
地図
住所新潟県十日町市 会沢・蓬平集落
参加費大人1名(1泊2日):14,000円
大人1名(2泊3日):21,000円
参加費補足※費用に含まれるもの
滞在先での宿泊費用、移住者との懇談会、十日町市内で使用するレンタカー(必要な場合のみ)、十日町市内到着時・現地出発時の滞在場所までの送迎
※上記費用とは別に、参加者には十日町市内までの交通費と余暇の費用、ガソリン代金、飲食代金を負担していただきます。
※現地にて体験アクティビティに参加される場合は別途参加費が必要です。
※お子様も参加可能です。料金はお問い合わせください。
主催プログラム企画・運営:
新潟県十日町市
株式会社HOME away from HOME Niigata

HOME away from HOME Niigataは、新潟県十日町市を拠点とした小さな旅行会社です。「ありのままの日常に入り込むような旅」のお手伝いすることで、観光地化されていない、昔からの文化様式が残る里山の美しい姿をご紹介しています。
https://homehome.jp/
参加方法体験プログラムへのお申込みは、以下の「詳細・問い合わせ」フォームよりお問い合わせください。
※お申込み締め切り:2021年1月31日
お問い合わせ先HOME HOME Niigata
https://forms.gle/NTE5YneDWCPhQqeRA
参加条件

・地方移住や多拠点生活を検討している方で、十日町市へのIターン・Uターンに興味がある方。
・1グループの参加人数は基本的に大人2名まで(お子様も参加可能です。別途ご相談ください。)。
・ツアー事前または事後のアンケート及び情報発信を目的とする写真撮影にご協力いただくことが可能な方。(お顔やフルネームを臥せたい方はご相談ください。)

その他

・本プログラムは、十日町市による「令和2年度ふるさと回帰UIターン体験プログラム」の一環で行われます。
つきましては、ツアー事前事後のアンケート及び情報発信を目的とする写真撮影にご協力いただく場合がございますので、予めご了承願います。
・本ツアーはGo toトラベル対象商品となりますので、表記金額より実質的に35%の割引が適用され、15%を
地域共通クーポン券として現地で配布いたします。

受付終了
※TURNSでは紹介のみ行っています。お問い合わせ・ご連絡はイベント主催者さまへお願いします。

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