古民家が生きるまちで、古民家を生かす
愛媛県の南西部に位置する大洲市。まちを流れる肱川が、豊かな風土や文化を育む城下町だ。古い街並みを大切に残しつつ、古民家を生かしたイベントや新規事業が次々と打ち立てられる、進化のまちでもある。 川のほとりにある大洲城。その麓にまちが広がる。肱川では名物の鵜飼いが毎夏行われている。
この大洲市で、東京から移住し、夫婦でコワーキングスペースを営む山下憂さんを訪ねた。
風情のある石畳の通りを歩いていくと、築100年以上の「西田邸」に着く。憂さんはこの西田邸で、2018年から暮らし、働き、コワーキングスペースを営んでいる。 広さは約200平米。空き家になる前はカメラ屋さんだった。
まずは松山市へ移住。働くことの価値観が変わる
最初に移住したのは、愛媛県の県庁所在地の松山市だった。東京都で暮らしていた時、憂さんは終電まで働く日々の辛さの中で、地方暮らしへの憧れを募らせていた。 「大学時代、地方出身の友人たちがお盆とかお正月とか帰省するんです。帰る場所があるってステキだなと思い始めたのが、田舎暮らしへ憧れを抱いたきっかけです」 同棲していた北海道出身の直人さんも、満員電車に疲れきっていた。「温暖な西へ移住したい」という直人さんの希望を汲み、四国の移住フェアに参加。その時に聞いた、「自然が近い」という愛媛が気に入り、移住希望者が1泊2日で松山市内をめぐる「TURNSツアーまつやま」に参加した。
「松山市は『コンパクトシティ』って聞いていたのですが、行ってみるとその言葉の通り徒歩圏内でなんでも揃い、周りには豊かな自然がある。『ここだ』と2人で決めました」 2人とも会社を辞め、直人さんがウェブマーケティングで起業したタイミングで2017年に松山市へ移住、結婚した。 憂さんは、ウェブディレクターをしていた東京時代、終電ギリギリまで働き、時間に追われ、急かされるように生きていた反動もあり、移住後は定職に就かなかった。
「松山市で過ごした2年間は、本当に楽しかったです。瀬戸内海の美しさや食べもののおいしさに感動したし、おもしろい人との出逢いがたくさんありましたね」
移住するかどうか。多くの人にとって、大きなネックは仕事だ。不安はなかったのだろうか。 「そんなに働かなくても死なない、というのが愛媛に来て感じたことです。東京に比べて、家賃や食費などの生活費がかからない。家賃は格安だし、野菜はめちゃくちゃ安くておいしいです」
“稼がないと生きていけない”から、“稼がなくても生きていける”へ。この人生観の転換が、憂さんに心の余裕を生んだ。 もうひとつ、松山で感動したのが、まちに点在する古民家だった。
「東京では古民家をほとんど見かけることがなかったけれど、愛媛にはたくさんありました。佇まいがとてもステキで、古民家に住みたいと思い始めました」
古民家暮らしと、暮らしの不便さを求める
松山暮らしは充実していたが、もう少し田舎暮らしの不便さを味わいたいと松山市以外で古民家を探した。なかなか条件が合わず、直人さんがSNSで「古民家募集」の広告を出す。そこでアプローチしてきたのが、大洲市の地域おこし協力隊をしていた、まちづくりのキーマン。「西田邸」を紹介すると同時に、熱く語られるまちづくりへの構想が、感度の高い夫婦の心を動かした。 2018年、松山市から大洲市への2度目の移住を決めた。
西田邸のある通りは、レトロな街並みに和菓子の老舗や洗練されたショップが点在。週末は観光客が行き交う。 「まちの人は、私たちを歓迎してくれるし、気軽に挨拶もしてくれます。とにかく、人が温かいんです」。松山よりも一層のんびりした時間が流れる大洲は、憂さん自身の気質にも合っていた。
徒歩5分の場所にある、ミシュランガイド掲載の「臥龍山荘」。東京から友人が訪れたら必ず案内する場所だ。
憂さんは今、東京時代にしていた仕事を委託で請け負うなど、ウェブの仕事を続けている。1日3時間。それ以上は働かないと決めている。 西田邸は「広すぎる」と一度断った。ところが、直人さんの仕事上、イベントスペースが必要になり、「それならこの物件で共有スペースをつくろう」という流れからコワーキングスペースに。
余裕がある今、二人で里親になる
もうすぐ40歳を迎える憂さんには、直人さんとともに叶えたい夢がある。それが里親になること。昨年秋に養育里親の研修も受けた。
「東京にいたころから、ずっとやりたかったけれど、自分たちの生活が豊かにならないとできることじゃありません。愛媛に暮らし、幸せを実感するようになりました。時間の余裕もあるし、心の余裕もあります。今なら、私たちを必要としてくれる子どもを迎えることができます」
今2人と暮らしをともにするのは、柴犬のちはるちゃん。ちはるちゃんの早い寝覚めとともに起床し、ちはるちゃんの散歩から一日がはじまる。すぐそばの肱川沿いを、夫婦と一匹でてくてくと。
一度きりの人生で、やりたいことや大切にしたいことを、憂さんは、スルっと実現していく。 それが移住であり、今後経験をする養育里親でもある。 あまりに気負いがなく、自然体だ。 そんな彼女には、穏やかな大洲の雰囲気がとてもよく、似合っていた。
(写真・文)ハタノエリ
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