両極を知るからこそ感じる地域の豊かさが、私の心も豊かにする。 | 移住・定住インタビュー「愛媛のひめターン」

愛顔のひめターンvol.8【宇和島市三間町 酒屋「KOUJIYA」経営 白鳥未来さん】

里山が囲む町に、うわさの酒屋

松山空港から車を1時間15分ほど走らせ、愛媛県南部の、米の産地で知られる宇和島市三間町へやってきた。

里山の風景の中に、一筋の商店街があった。瓦屋根が続くレトロな通りは平日昼間、ひっそりとしていた。

目的地は、遠方からも客が来るこの町の新名所で、約120年続く酒屋「KOUJIYA」。周囲の雰囲気とは一線を画す、モダンな外観に目を奪われた。

この店を、3代目の夫と共に営む白鳥未来みおさんが今回ご紹介する女性だ。

「SHIBUYA109」で自分のブランドを持つ

未来さんは東京都北区生まれ。約30年を過ごした東京時代の経歴は華やかだ。

高校を卒業後、スタイリストになるためアパレル系の専門学校で学び、卒業後はレディスブランドのデザイナーになった。その後、努力家でありカリスマ性も備えた未来さんのキャリアは、順調に拓いていく。若干23歳、若者向けのファッションビル「SHIBUYA 109」で自分のブランドを持つ。

しかし、最大のチャンスは同時に、最大の試練でもあった。

「経験もない人間が、服づくり、店づくり、店長と全部やらなきゃいけない。ほとんど一人でこなしていて、明らかにキャパオーバーでした。休みはなく、毎日朝方まで、仕事尽くしでした」。

反動もあり、2年後、未来さんは好きだった有名ブランドのデザイナーに転身した。その頃に出会ったのが、ミュージシャンをしていた夫の高山雄大さん。雄大さんは、宇和島市の高校を卒業後、自分の夢を叶えるために上京した。「いつか愛媛に帰るけん」が口癖だったという。

「私は東京で生まれ育って、物に恵まれ、便利なのが当たり前だったので、このまま東京に住むのがいいと思っていました。ずっと平行線でしたね(笑)」

妊娠、出産で、東京への違和感が生まれる

頑なだった未来さんが、移住に傾いたのは自身の妊娠・出産だった。

妊娠中を知らせるマークは、満員電車では誰も気づかない。子連れで移動するのにいちいち頭を下げなければならない。「完璧だ」と思っていた日常に、疑問を持ちはじめた。

「出産後に愛媛へ行ったとき、地域で子育てしているおおらかな雰囲気がいいなあって感じました。生活も仕事も急かすように生きてきたこれまでを振り返って、夫がなぜずっと『帰りたい』と言ってきたのか、そのときスッと分かったんです」

アパレルのデザイナーは激務だ。海外出張も多く、産後復帰するイメージも描けなかった。

「大きな歯車の一つになって自分自身でできることの物足りなさも感じていました。夫の家業をそのまま継ぐのではなくて、私たちだからこそできることをやりたいなと。その可能性にワクワクしていたのもあって、移住しようと決めました」

培ったキャリアとセンスで店を変える

2017年、愛媛に移住した当時の店舗は今の4分の1ほどの広さ。昔ながらの焼酎や日本酒が並ぶ典型的なローカルの酒屋だった。

未来さんが大好きなワインを取り扱い始めたことで、新風が吹き始める。

「ネットショップにワインをアップしたら、お店にも今まで来なかったような若いお客さんが来るようになったんです。ワインの一角だけDIYしたのですが、お義父さんが『若い人たちが来るにはこんな店じゃ恥ずかしいから、リノベーションしたらいい』と言ってくれました」。

東京を離れ、店を継いだ若い2人を、全面的に応援する両親の存在も力になった。

のれんのロゴは未来さんデザイン。上の看板はリノベーション時にそのまま残した。新旧ブレンドの「KOUJIYA」を象徴している

「もともと地域に愛されている酒屋だったので、なじみのお客さんも、新しいお客さんもどちらも居心地のいい店にしたい」。

未来さんの想いは、リノベーションした店内のあちこちにあふれている。埃をかぶっていた火鉢や肘掛イスを引っ張り出して造ったお店の一角に、朝からなじみのお客さんが集まるのがKOUJIYAの日常だ。

リノベーション前は丸椅子だけが置かれていたが、さらに居心地の良さが増した

“ポップな米”で地域を盛り上げる

店舗を営むとは別に、地域を盛り上げる取り組みにも力を入れる。地域のこと、三間米のおいしさを世の中に伝えたいと、2018年、「MIMARICE(ミマライス)」をプロデュースした。異業種で培った経験をプロダクトデザインに生かし、未来さんがデザインを担当。5つの契約農家から特別栽培米を仕入れ、全国に発送している。

地元の良さを伝えたいという雄大さんの想い、高齢化の波に飲まれる産地を救いたいという未来さんの想い、驚くほどおいしい三間米のおいしさを伝えたいという農家さんの想い。

色々な気持ちが相まって、カタチになった。

お米っぽくないデザインと、そのおいしさから評判の「MIMARICE」。「おいしさは保証済だからパッケージは裏切っていい。ポップなデザインで、幸せだったり驚きだったりを表現しました」と未来さん。

両極を知るから分かる、暮らしの豊かさ

「東京のアパレル時代も、自分の好きな仕事だったので楽しかった。やればやっただけ、失敗も成功も返って来る今のほうが、自分のやりたいことを実現できるステージに立っているのでもっと楽しいと感じます」。

事業と自分の可能性を思いっきり試す今、やるか、やらないかの基準はとてもシンプルだ。

「自分たちがやっていて楽しいかどうか。その先に成功があればいいと思っています」。

力みがないのは、今の暮らしと仕事への充実感の表れだろう。

お店から徒歩10分の場所。田園風景が広がる

三間町に暮らし、店を営み、3年が経った。

「自然の豊かさを感じる喜びを知りました。東京時代も、キャンプで自然で過ごす楽しさを知っていたけれども、それが日常にある豊かさは知りませんでした。食べ物がどうやってできるのか、田畑が周りを囲み、山がそこにある環境で、旬をいただく楽しさとか。より人間らしく生きているというか、そういう暮らしが心も豊かにしていると感じます」

両極を知る未来さんだからより感じる、三間暮らしの豊かさ。その豊かさを実感するからこそ紡げる「KOUJIYA」の物語。その未来図はどんどん膨らんでいくだろう。

文・写真:ハタノエリ


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