愛媛県松山市の松山空港から車で南下すること、約1時間半。高知県との県境にある松野町は、8割以上を森が覆い、国立公園「滑床(なめとこ)渓谷」や四万十川の支流が絶景をつくる山あいのまちだ。
人気アトラクションの滑床渓谷のキャニオニング
愛顔のひめターン連載企画2回目は、ここ松野町に、神戸市から移住し、「地域おこし協力隊」として活躍する岸本有希さんを訪ねた。
地域おこし協力隊という働きかたに憧れる。
最長3年間、観光や移住促進など地域課題に向き合う国の制度「地域おこし協力隊」(以下、協力隊)。有希さんは現在、松野町役場で「観光まちづくり」班に所属し、地元の食材や料理を掘り起こし、観光資源につなげる食をベースにした町おこしをミッションとして取り組んでいる。
神戸の短大を卒業後、地元の児童館に就職した。小さな子どもたち相手のしごとにやりがいは感じていた。ひっかかりは唯一、20歳のときに知った協力隊という働きかた。
「地域に貢献するしごとに興味があったけれど、その頃はまだ踏み出せませんでした」
その後、東日本大震災や熊本地震でボランティア活動を経験。実際に協力隊の活躍を目の当たりにした。就職して6年。26歳の有希さんは人生のその先を見つめたとき、協力隊にチャレンジしようと決意した。
ウェブサイトで調べてみると、たまたま近日中に愛媛県のイベントが開催されると知った。足を運んでみると、各市町が協力隊を募集していて、そのなかに松野町のブースもあった。担当者から「一度おいでよ」と声がかかり、その“ウェルカム感”に惹かれて2週間後、「どこにあるかも分からなかった」という松野町を目ざした。
そこでは、味わったことのないひととのふれあいが待っていた。
移住するとも決まっていない若者を囲んで、役場のひとたち、協力隊も総出で歓迎会を開催。地元のひとたちがみな、初対面の有希さんになんでもかんでも話してくれた。ここなら生きていける。直感で移住を決めた。
地元の食のシーンを盛りあげる。
協力隊として活動し1年半。なかでも重要な活動は、農家のおかあさんたちと一緒に、道の駅で月2回開く「おかあさんレストラン」だ。
地元の食材をつかい、すべて手づくりでこしらえる評判の“レストラン”のオープン当日は、早朝から仕込みに慌ただしい。
この日は栗おこわ、しし肉の佃煮風、梅干の甘煮、芋炊き、煮込みハンバーグなど約20種類の料理が並んだ。
「いつも楽しみにしている地元のお客さんが多いです。食材やレシピを知る貴重な経験ができています。おかげで山菜なども調理できるようになりました」と有希さん。“おかあさん”たちの平均年齢は70歳を超える。代表の矢野千津さんは「伝統にあたらしいものを取り込もうとする彼女から、いい刺激をうけています。無くてはならない存在です」と目を細める。
おかあさんレストランには、有希さんてづくりのメニューカードが並ぶ
頼り、頼られる関係が、じぶんを変える。
しごとを終え、家に帰れば、一軒家の一人暮らしが待つ。「心細いでしょう」と訊くと、隣に住む金谷純一さん、和子さん夫妻が、家族のような存在になっているという。
週3回、家に招かれ、食事や酒をともにする。「お酒を飲む機会はこちらに来て、圧倒的に増えましたね(笑)」と有希さん。ご夫妻も「生活に張り合いがあっていいですよ。娘のように思っています」と、うれしそうだ。
「野菜とかが自宅の玄関のノブにひっかけてあるのは本当にしょっちゅう。だれもじぶんが置いたとは主張しないんですよ。野菜おいておったよって言いたいじゃないですか。松野のひとたちは決してそうしない。すごく温かくて本当にありがたいです」
松野のひとたちにとってなにかを与えることは「当たり前」。だから、“名無しの贈りもの”が行き交うのだろう。
頼る、頼られる。それがコミュニティの土台にある生活を送るなかで、有希さん自身も変わっていったという。
「兄弟や両親に、『そんなにひとに甘えるタイプやった?あんた、移住して変わったな』って言われます。頼るのが得意ではなかったのですが、ここに来て、自然に皆さんにお願いごとができるようになりました。生活にストレスを感じなくなりましたね」
ここが暮らしたい場所。だから定住する。
そもそも、移住を決断する前、愛媛の端にある松野町を、有希さんも両親も地図上で探すことからはじまった。未知の場所へ娘を送り出すことを引き止めなかったのは、「任期満了の3年後には戻ってくるだろう」という心づもりがあったからだ。
有希さんも、当時は定住を思い描いていなかった。「いまはずっと住み続けたいと思っています」。旧知の友人もいない、両親もいない、神戸からもあまりに遠い。なぜ定住の選択肢がでてくるのだろう。
「移住したことで、『なにを大切にして生きたいのか』と、じぶんへの問うチャンスができました。住む場所をえらぶために何を優先か考えたとき、しごとやこれまで築き上げてきたものとかではなく、ひととの濃密なふれあいに支えられ、自然豊かないまの生活が大事だと気づいたのです」
新たな目標は地域のニーズから得た。
有希さんは、移住する以前から、「カフェを開く」という目標をもっていた。
松野町でレストランを手伝い、まちのひとたちの声をひろううちに、ちがったニーズが見えてきた。
「地元のひとたちがゆったり楽しめて、小学生もふらりと立ち寄れる、そんなコミュニティスペースのようなカフェをつくりたい」
未知の土地に新たな「居場所」を手に入れた有希さん。こんどは地元のひとたちのための居場所をつくるという新たな夢にむかって走り出した彼女を、里山の淡い緑が包み込んでいた。
文・写真:ハタノエリ
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