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地方移住に憧れを抱いても、なかなか踏み切れない理由のひとつに「仕事」があります。地方には仕事が少ないと言われていますが、実際にはどうなのでしょうか。
この記事では、30代・40代・50代それぞれの年代別の地方での仕事状況と、移住の際に活用したい仕事情報の獲得方法を紹介します。
地方移住に興味はあるけど仕事や収入源への不安から一歩踏み出せないという方は、ぜひ参考にしてください。
移住前に仕事を探すメリット
移住準備と就職・転職活動は、セットで始めることをおすすめします。いくつか理由はありますが、主に以下の3つが大きなメリットとなるでしょう。
- 収入源が確保できる
- 移住支援制度が適用される
- 地域社会に早く馴染める
収入源が確保できる
移住に際して転職も視野に入れている場合は、移住が完了するまでに就職先を決めておくと収入源を確保することができます。
移住後の暮らしが安定するのはもちろん、その土地ならではの仕事やより自分の興味関心に沿った仕事に就くことができれば、田舎暮らしの楽しみも増えるでしょう。
面接などは移住前に済ませておき、移住後すぐに仕事ができるようにしておくと、その後の暮らしがスムーズになります。
移住支援制度が適用される
地域や居住年数、年齢などの条件が設けられているものの、移住に際して国や自治体が用意している移住支援制度が適用される可能性もあります。適用要件の中には移住かつ就職もしくは仕事の継続が条件として入っており、条件を満たせば単身者は60万円、世帯では100万円を上限に支援金が支給されるのです。
自治体独自のものでは就労支援と同時に家賃補助や事業拡大に必要なサポートをセットで行っていることもあります。引っ越しの費用や事業開始で何かとかかる費用を、助成という形で補填できる可能性があります。
移住支援制度の適用にはいくつかの条件を満たしている必要があります。詳しくはこちらのページを確認してください。
地域社会に早く馴染める
移住してすぐは地域住民との交流も浅く、地域の情報を得にくい可能性もありますが、移住とともに仕事を始めると、同僚とのコミュニティも生まれ、情報交換の機会を得ることができます。
これらを活用することで、比較的早く田舎暮らしに順応できるようになるでしょう。
地方の仕事事情
地方の仕事事情の特徴は以下のとおりです。
- 全体的に担い手が不足している
- 求人情報の集め方に注意
- 収入は都会ほど高くない
全体的に担い手が不足している
田舎の仕事事情全体に言えることですが、担い手が不足しているため常に求人を出している事業者も少なくありません。
地方の課題の中には人口流出のほかに地域住民の高齢化があります。すでに65歳、70歳を超えているひとでも、再任用や業務委託といった形式で働かなければならないほどになっている地域も少なくありません。いわゆる「若い労働力」が全体的に不足しているのです。
特に深刻なのは第一次・第二次産業や、伝統産業などの多くの人を雇わず職人としてやっていく産業です。国も地方自治体も深刻な課題として受け止めており、移住支援制度でセットで支援している自治体もあります。
求人情報の集め方に注意
田舎暮らしを初めたり、検討し始めたりすると分かりますが、求人情報をインターネット上で集めようと思ってもあまりヒットしないことが多い傾向にあります。これは主要産業の問題で、インターネットでの広報などに慣れていない業態・業種が多いことに関係しています。
第一産業は特に家族で継承する事業形態をとっている事業者も少なくないため、実際に現地に足を運んだり、組合に問い合わせたりしないと出てこない求人もあります。
インターネットと合わせ、ハローワークや自治体の移住定住窓口に問い合わせたりすることをおすすめします。
収入は都会ほど高くない
田舎暮らしを始めると分かりますが、公共交通機関などを除いて全体的に物価が安いと感じることもあるでしょう。
しかし、その分給料は低く設定されており、都市部で同じ仕事をするよりも収入が減ることも珍しくありません。移住する場所によっては光熱費や固定費がかかるため、支出が増えてしまうこともあるのでシミュレーションは綿密に行っておくことをおすすめします。
中には都市部より収入がいいものもありますが、求人数としてはごくわずかです。また、第一産業・第二次産業の中には試用期間と見習い期間中は給料が低く設定されていることも少なくありません。事前に給料に関しては確認をとり、自分が生活できる収入であるかどうかの確認をしておきましょう。
移住しても仕事はある!その探し方は?
結論から言えば、移住しても仕事はあります。さらに言えば、完全に移住しなくても済む方法もあるのです。以下の4つの探し方を解説します。
・移住先で探す
・移住前に転職する
・リモートワークで完結する仕事に転職する
・二拠点居住を実践し今の仕事を続ける
移住先で探す
地方に移住してから仕事を探す方法です。
地方の仕事というと、農業や水産など第一次産業のイメージも強いですが、実際には第二次・第三次産業の求人も多く存在します。
企業側も地方での人材採用に積極的です。さまざまな事情で優秀な人材が大都市に出てこないことも珍しくないため、地方に残っていても雇用できるようにと体制を整えているケースがあります。また、大都市にはない職種の求人もあるので、移住後に仕事を探してみるのもいいでしょう。
ただし、移住後に仕事を探す場合は、一時的な生活費が必要です。すぐに仕事先が決まらない可能性もあるため、資金計画をしっかり練っておきましょう。家族がいる場合は、より慎重になったほうがいいかもしれません。
移住前に転職する
移住先の企業や業界に転職を決めてから移住する方法があります。移住先での新しい収入の見通しがある分、移住後の生活費のへの不安がやや軽減されます。
先述のとおり、大都市にはない仕事に就ける可能性もあります。農業や漁業・林業をはじめとする第一次産業に従事できるかもしれません。また、大都市で消費するもののほとんどは地方都市で製造されているため、製造業やそれにかかわるマネジメント業務で就職先が見つかる可能性もあります。勤務開始日に融通を効かせてくれる場合もあるので、まずは相談してみましょう。
注意点として、移住が遅れると仕事開始が遅くなり、採用された企業や組合関係者に迷惑をかける可能性があります。移住前の転職では、スケジュール管理が重要です。
リモートワークで完結する仕事に転職する
完全リモートワークの仕事に転職するのも方法のひとつ。フリーランスという選択肢もありますが、それでは不安だという場合には転職がおすすめです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、企業にはリモートワークが推奨されました。その流れを受けて、現在は「完全リモート 求人」で検索をすれば多くの仕事を見つけられるようになっています。
完全リモートワークでなくても良いのであれば、原則リモートワークの企業を探してみてもいいでしょう。ただし、あくまで「原則」であるため、出勤日がある点には注意が必要です。
二拠点居住を実践し今の仕事を続ける
転職をして新たな仕事に従事したい方もいる一方で、転職はしたくない方もいます。その場合は二拠点という方法がおすすめです。
大都市と移住希望をする地方都市にそれぞれ生活拠点を構え、週末や休日に移住する方法があります。一般的に「週末移住」と呼んでおり、転職したくない、あるいはできないけれど地方移住に興味がある方がこの移住方法を採用しています。
二拠点居住については「二拠点居住(デュアルライフ)とは?その魅力や事例、メリット・デメリット、はじめ方は?」で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
【年代別】移住による仕事事情
年代別に見る仕事事情について解説します。この記事で30代・40代・50代のデータを元にそれぞれの年代別の傾向について詳しく解説します。地方都市における仕事事情のメリット・デメリットをしっかりと把握したうえで、地方移住するかどうかを検討しましょう。
30代の場合
新卒から10年前後のキャリア形成をし、自身のライフスタイルや新しいことへの挑戦を考える人もいる年代です。
環境の変化に柔軟に対応できる一方で、若いがゆえのデメリットもあるので、移住後の仕事選びに関しては注意が必要です。
移住の目的と仕事がミスマッチしないかが重要
30代の移住は、自身のやりたいことだけではなく家族のことも考えたアクションが求められます。収入源の確保はもちろんのこと、特に移住目的が子どもの教育や子育て環境を見据えたものであれば、それらを達成できる仕事環境が得られるかも考慮して決めるといいでしょう。
30代は組織に新しいイノベーションを起こせる貴重な存在です。都市部ではできない仕事にチャレンジしつつ、自身の移住目的が達成できるような仕事選びが大切になります。
給料水準の低さ
30代の地方移住のネックとなっているのが給与水準の低さです。
給与水準に関しては、関東地方の平均が422万円であるのに対し、移住希望先人気No.1の長野県は376万円となっています(※参考:doda(デューダ)【最新版】平均年収ランキング(47都道府県・地方別の年収情報)。約50万円ほどの格差があり、移住に際しては給与水準が低い現実は避けられない結果となりました。
40代の場合
40代の移住と仕事の現状は、30代とは異なった特徴があります。情報収集や予算立てはもちろんのこと、リモートワークの普及で移住へのハードルが低くなったからこそ気を付けたいポイントも出現します。
もちろん30代の移住と仕事の関係にはなかったメリットも存在するのは事実です。
キャリアアップのチャンスは大きい
40代の移住と仕事の関係で欠かせない要素が、キャリアアップのチャンスです。20年前後のキャリアを積み重ねているため、高度な技術を獲得していたり、マネジメント能力が高くなったりした方もいるでしょう。そのような人材であれば、地方企業でのキャリアアップにつながる可能性があるのです。
また、40代である程度キャリアを積んだ人材は地方企業にとっても採用したい人材だと言えます。都市部で習得した経験をもとに、企業主体の地方創生につなげられる可能性があるためです。
もちろん給料水準は懸念材料になるかもしれません。しかし、都市部よりも地方のほうが物価などが安いことも多く、収入減が必ずしも暮らしの質の低下にはつながりません。
雇用条件が悪くなることも
ただし、気を付けたいのは一般的には若い労働力が求められ、40代への評価は高くなりにくい点です。前述のとおり、キャリア面では申し分ない年代に相当はするものの、年齢的な問題で採用間口が狭い可能性があります。仕事選びは慎重にならざるを得ないでしょう。
反面、移住先の地域のために起業・独立した結果、成功した事例もあります。会社に雇用される働き方だけではなく、自身のスキルを活かしたり、やってみたいことを実現したりすることも視野に入れ新しい働き方を検討しましょう。
50代の場合
都市部では早期退職を視野に入れる50代も、地方に行けば戦力になる可能性は十分にあります。また、30代・40代にはない特徴があるのも事実です。50代ならではの持ち味を活かし、地方移住と新たな仕事の両方を両立できるかもしれません。
老後の生活拠点として考えるだけではなく、新たなビジネスチャンスとして捉えてもいいでしょう。
起業を視野に入れる人もいる
約30年間企業で仕事をしてきた人材なだけに、技術やスキル、経験値は30代・40代に劣りません。40代同様に地方企業に採用され、手腕を発揮する方も少なくありません。
一方で、都市部で務めていた企業を早期退職し、退職金を元手に起業する人もいます。始める事業はカフェや飲食店が多いものの、多種多様です。自身の経験を活かした会社を設立する人も入れば、移住先の地域課題を解決するために事業を立ち上げる方も。やり方は様々です。
30代・40代にはないまとまった資金があることも少なくないため、選択肢として出てくる可能性のあるものでしょう。また、絶対数は多くないものの、家業を継承するパターンもあるようです。
移住先によってはまだまだ若手
移住する先や就く仕事によりますが、50代でもまだまだ若手の労働力として認知されることもあります。飲食店や事務はもちろん、コンビニや調理師をはじめとする、大都市では考えられないような求人が公開されていることも珍しくありません。
特に、50代でも若手と捉えられる業種には農業や漁業をはじめとする第一次産業もあります。農業は年齢・性別に関係なく開始できることからチャレンジする方も多いようです。地方自治体によっては就農支援を行っている場合もあるため、注目してみる価値はあるでしょう。
ただし、実際にやってみるとハードに感じる方も一定数いるようです。また、支援が受けられるとはいえ、多少なり初期費用がかかります。事前にどれぐらい必要になりそうかを就農支援プログラムなどで確認しておきましょう。
田舎暮らしを始めた人が就きやすい仕事10選
田舎暮らしを始めるにあたって、就職しやすい仕事もいくつかあります。今回はその中でも特に就職しやすい10個の仕事を紹介します。就職先・転職先の参考として活用してください。
地域おこし協力隊
地域おこし協力隊は、国からの特別交付金をメインに運営されている事業です。任期は1~3年で、任期満了後に移住するかどうかを決めることもできます。
活動内容については各自治体、地域事情により様々なため、事前に都道府県庁のホームページで確認することをおすすめします。
農業
田舎暮らしとセットで始める人が多い農業も、移住とともに開始できる仕事のひとつ。
農地をいきなり借りたり購入したりすることにハードルを感じている人は、自治体の移住支援制度を探してみましょう。移住とセットで就農支援を行ってくれる自治体があります。
具体的には短期の農業体験と研修を経て、正式に就農します。就農時には農地の貸付や紹介、農機具の購入補助が受け取れるなど、初期投資が必要な農業を全面的にバックアップしてくれる体制を整えています。
林業・漁業
農業よりも母数は少ないものの、林業や漁業、畜産業といった第一次産業を移住とともに支援する制度もあります。実施している自治体そのものが少ないため、このケースの場合は制度を設けている地域から移住先を選ぶのが一般的です。
農業と同じく担い手不足に悩む反面、高度な知識や技術を必要とする産業なので、後継者が育ちにくいという課題を抱えています。研修内容などは事業内容によって変わりますが、農業と同じく移住とセットで支援してもらえるのでぜひ検討したい仕事です。
事業継承
第一次産業とも関連しますが、その地域にしかない伝統産業を含めて後継者不足に悩む事業者も少なくありません。特に伝統工芸をはじめとする産業の後継者不足は顕著で、産業そのものがなくなってしまう可能性も懸念されています。
これら事業継承に関しては、NPOをはじめとする団体が募集をかけていることがあり、実際に経験してから就労することも可能です。将来的に独立を目指しているのなら、ひとつの選択肢として検討してみる価値はあるでしょう。
医療・介護職
少子高齢化が深刻な地域課題となっている自治体は少なくありません。居住者の平均年齢が高くなる一方で、必要とされる医療・介護サービスが十分にいきわたっていないケースも存在します。
もし、医療・介護職の経験者であれば優遇される可能性も高まりますし、最近では通信講座で該当の資格を取得することもできるので、それを活用するのもひとつの方法です。
製造業・工場
大手メーカーの製造工場、および組立工場が地価が安く大規模な土地を購入できる点から工場を設置しています。
近年ではオートメーション化も進んでおり、資格取得支援を実施している工場もあるので、キャリアアップの選択肢としても活用できるでしょう。
カフェ・民宿
古民家を改造したカフェや民宿を開くのもおなじみの手法になってきました。ただ生活するためだけにリフォームするよりも費用はかかってしまいますが、自分の店を持てる点から独立志向の強い人におすすめです。
起業
思い切って起業するのもひとつの方法です。移住支援の中には起業を支援するものもあり、最大で200万円の補助を受けられる制度があります。事業内容は地域課題の解決に向けたものという制限が付くものの、会社を設立して社会貢献をするのも田舎だからこそできる働き方と言えるでしょう。
フリーランス・自営業
田舎に移住したからと言って必ずどこかの会社に就職しなければならないわけではありません。在宅でできるWeb関係の仕事をすることも選択肢のひとつです。
移住の際に活用したい仕事情報の獲得先
地方移住する際に、事前に仕事情報を獲得したいのであれば以下の3つを利用してみましょう。
・就労支援サポート
・転職サイト
・地域おこし協力隊
いずれにもメリット・デメリットがあるので、その点を踏まえてどの方法で情報獲得するのかを検討しましょう。
就労支援サポート
各自治体が設置している「就労支援サポート」で、移住希望者向けの求人を探す方法があります。都道府県や市町村によって異なりますが、インターネット上で求人情報を公開している場合もあります。
全国版の求人サイトではなかなか出てこないような仕事を発見できるチャンスです。ただし、転職サイトや全国版求人サイトのように、サポートが整っているかどうかと言われれば微妙なライン。面接や試験の対策は自身で行わなければなりません。
転職サイト
転職サイトで地域を絞り、求人を探す方法があります。大手転職サイトであれば、すべてではないにしろある程度の求人情報は獲得できるでしょう。移住する先が決まっていない、仕事次第で決めたい場合には、まず大手転職サイトで求人情報を見てから移住先を検討しても良いかもしれません。
一方で、転職サイトの中には地方には強くないサイトもあります。また、あくまでも求人情報だけなので、企業所在地周辺の情報については別途自分で調べなければなりません。仕事と生活環境のバランスを考慮して決断しましょう。
地域おこし協力隊
地域おこし協力隊とは、地方自治体がそれぞれの地域への貢献活動を行う人材を募集する公的な取り組みのこと。
活動費として給与も支払われますし、地域の方々と交流し人脈を築く機会も生まれるので、移住後に新規事業を立ち上げたい、起業したいなど、明確な目的と目標を持っている方は、任期をその助走期間に充てることもできます。
その一方で、基本的には各自治体の事情に応じた活動内容になるため、その内容と自分がやりたいこと、身に着けたいスキルが合致しているか事前にすり合わせる必要があります。
また、任期は長くても3年程度と期間限定なので、任期満了後のプランについても考えておく必要があります。
移住支援の助成金チェックも忘れずに!
地方移住する際は、各種助成金をチェックしておきましょう。国と地方自治体が力を入れていることもあって、別途助成金に充てる予算が設定されている自治体があります。これらの助成金をうまく利用することで、移住にかかる費用を補填できたり、企業・独立の足しにしたりできるかもしれません。
移住支援制度には種類があるため、詳しく知りたい方は「移住支援制度とは?利用方法や活用する時の注意点、独自のサポート制度がある自治体についてまるごと解説!」をご覧ください。適用条件や注意点を解説しています。
移住先での仕事は生き方探しのひとつ
地方移住をした後にどのように働くかを決めるのは、自身にとっての生き方探しと言っても過言ではないでしょう。スローライフを楽しむもよし、新たなチャレンジをするのもよし。都市部ではできない働き方・生活スタイルを見つけてみてはいかがでしょうか。
文:久保田幹也
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