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【群馬県富岡市】地方との関係性は、人生の可能性を広げてくれる。
富岡で出会った人達の「〇〇」な関係づくり

「住む」から「関わる」へ。
人と地域が持つ可能性を相互作用によって広げていく。そんな関係性が模索されています。
群馬県富岡市でも交流人口から一歩踏み込んだ人達の動きが「新たな人の接点」を生み出しています。

あなたの人生の可能性を広げてくれるかもしれない。そんな地域との接点を探してみましょう。

 


富岡市に生まれた観光業の可能性

群馬県富岡市と聞けば、多くの人がユネスコ世界文化遺産である富岡製糸場を連想するのではないでしょうか。

富岡製糸場がユネスコ世界文化遺産に登録された2014年。
登録当初、観光客は年間130万人を超え、日本国内外から人の流れが生まれました。

4年が経った現在は年間50万人前後に激減したそうです。
これを「減少した」と見るのは間違いで、「世界遺産効果」から4年が経ってもなお、“安定”した観光客に恵まれていると捉えるべきでしょう。

「世界遺産への登録で製造業が中心だった富岡市に『観光業』という新しい産業の萌芽が見られています。これをどう活かしていくかが富岡市が抱えている課題であり、可能性でもあるんです。」

富岡市の現況から見えてくるキーワードとは


富岡市役所地域づくり課を訪ねて、富岡の現況を伺うと、富岡を活かす重要な要素として「観光業」というキーワードへ辿り着きました。
ただ、一重に観光業と言っても旅行業、宿泊業、飲食業、運輸業、製造業(名産品、お土産製造等)と多岐に渡ります。

「観光業を活かしたまちづくりを進めるためには、町を動かしていく力が必要です。人の受け皿となるコミュニティや滞在拠点があれば…。」

観光客が増えているとは言っても、人口減少や空き家の増加は依然として課題のまま。こういった地域が漫然と抱えている問題に対して向き合っていける人やコミュニティの力が必要です。この機会を活かしていくための先駆者はどこかにいないのでしょうか。

地元もよそ者も関係ない!それぞれの立場から「まちの空洞」を埋めていく

佐藤芳秋(さとうよしあき)さんは、2017年の冬に富岡市の新たなプレイヤーとしてまちづくりに参戦しました。
生まれも育ちも世田谷区松陰神社前。奥様の祖父母の出身が富岡市ということ以外に接点はなかったそうです。

「富岡リノベーションスクールという、空き家の活用方法を3日間でプランニングして大家さんに提案するというイベントに参加したのがキッカケで、株式会社設立に携わることになりました。しかも、地元の事業者3名と東京在住者3名による共同出資の会社です。最初の事業では『まちやど』っていう町の日常と宿泊場所を繋ぐことをコンセプトにした滞在拠点を運営していきます。」

佐藤さんと富岡市の繋がりは、まだまだ浅い。しかしながら、地元の事業者の1人に話を聞くと「佐藤さんが外側からの目線で物事を前に進めてくれるから、地元の事業者だけではやれない取り組みが出来ている」と言われるまでに信頼を得ていることが分かります。

会社設立の富岡組メンバーで、Pizza&29Bar IL.PINO(イルピーノ)の馬場俊人さん

佐藤さんらが仕掛けるのは、まちなかの滞在拠点づくり。中心市街地のど真ん中の空き家を改装して一棟貸しの宿泊施設を提供する計画です。
富岡市では、まちなかの宿泊施設が不足していて人の流れはあれども、観光客が回遊しづらい状況が続いています。

「まちやど」予定地の空き家

富岡市の中心市街地から30分ほど車を走らせれば、新幹線も停まる高崎駅へ辿り着けますから宿泊業が根付きづらいのかもしれませんが「まちづくり」という視点においては「滞在・交流」が出来る拠点が一ヶ所あるかないかで、交流人口から一歩進んだ活動人口の獲得を左右するでしょう。

富岡組で洋装店を営む入山寛之さん


では、なぜ富岡市なのか。佐藤さんの話を聞いていくと、世田谷線松陰神社前駅を中心としたバックボーンが見えてきました。

「私にとっての地元は世田谷線が走る松陰神社前で、家業は不動産や銭湯の運営をする地域密着の企業なんです。」

佐藤さんの地元、松陰神社前は世田谷区の中でも程よい下町風情を残した商店街。その場所でコミュニティスペースやカフェとショップが併設されたプラットホーム「松蔭PLAT」という場づくり、拠点づくりを実践しているということでした。

「外から来た人に対して、変に先入観を持たずにフラットに見てくれるのが富岡の人達でした。だから、関わっている期間が長くない私のこともしっかり見てくれたのだと思います。」

松陰神社前と富岡市がどう繋がっていくか。この事業と関係性に佐藤さんは一つの期待を持っていると話します。

「日本全体が人口の減る中で、富岡市で僕らのチャレンジが行く末を観測することで、松陰神社前の未来を見ることが出来るのかもしれない。自分の子供達が育つ世界を見ることが出来るのかもしれない。富岡市で得た知識や経験というものを子育てや教育に活かすことが出来るんじゃないかとも思っているんです。」

富岡市が抱えている課題は、未来の日本が抱える課題でもあります。その一端に関わることで、これからの自分の在り方が見つめ直されるのかもしれません。

 

富岡市から世界を見渡す。若手職人が出会ったチャンス

視点を「まちづくり」から「ものづくり」へと移してみると、富岡市では作家や職人の活発さが見えてきます。

妙義山を擁する富岡市は郊外へ出れば作品づくりに適した自然環境が広がった環境の中で、自身の技術を磨く若手職人に出会いました。

山崎杜人(やまざきもりと)さんは、天然の染料にこだわった草木染めの職人。
富岡の蓼(たで)を使った藍染や桜、冬青などの植物を使って「色」を表現する作家でもあります。

「家業が草木染めの染色業で、高校を卒業してからすぐ修行に入りました。20歳になる手前で、工房に適した物件がたまたま富岡市で見つかったので、家業拠点が富岡に移ったんです。それが私が富岡と関わりを持つキッカケでした。」

富岡市の「動楽市」は60組以上が参加するクラフト作家が集まるイベント。
富岡市に拠点を移してからは、山崎さんも参加するようになったそうです。

「修行というのは工房の中で内に内に籠って技術を磨いていくので、家族以外の繋がりというのが薄くなってしまっていました。しかし、富岡市に来てからは地域の人に声をかけてもらう機会が増えたんですよね。どこから知ってくれたのか、わざわざ声をかけてくれて、それをキッカケに消防団に入ったり、クラフト市に出店させてもらったり。富岡に来る前とは違う人や機会との出会いが増えていきました。」

作家にとって、時間の使い方はとても重要。技術を磨くことに使うのか、作品を生み出すことに使うのか。
もしくは自分の中にある世界を省みることに使うのか。そういった内省的な時間を持つことが職人や作家という存在でもあるでしょう。

指の先の藍染のあとから日々への向き合い方が分かる。

しかし、その作品や技術が誰かの目に触れなければ継続していくことは出来ません。
そんな中で助けになったのが地方特有の「人の距離感」。自分の作家としての世界を富岡の人達は広げてくれたのだそうです。

「地方で生きていくためには努力と行動力は必要です。ただ、就職をして働きながら…となると時間を大きく使わなくてはならないので作品づくりが進まないということも往々にしてございます。私は幸運なことに、消防団を通じてクラフト市を知り、クラフト市を通じて多くの出会いがあって、県内のみなかみ町に自分のお店を持つことが出来ました。その機会は人から人へと繋がっていった先にあったんです。」

山崎さんは技術を磨きながら、国外での染色指導や自分の作品の卸先づくりといった動きへと世界を広げていきました。
その着火点になったのは富岡市であり、そこで関わりを持つことが出来た人達との関係だったのです。

「お店を持って独立してからも大変でした。初月の売上は6万円で、とても生活は出来ない。でも、頑張った分は着実に返ってきて今では収入の基盤を持てるようになりました。だから私はこれから次のステップへ向かいたいと思っているんです。一つは技術面に関して、もう一度学び直していこうと思っています。もう一つは富岡をきっかけに広がっていった関係性をより深めていこうと。」

人から人へと関係性が広がっていく中で、誰かがその価値を見つけてくれる。
富岡市には「ものづくり」をする人にとって、自分の世界を広げてくれるキッカケに溢れているのかもしれません。

富岡で出会った人達の「フラット」な関係づくり

「まちづくり」と「ものづくり」、それぞれの視点から富岡を見てみると私達が関わりを持てる接点が随所に散りばめられているようです。

その理由はフラットな視点で地域と人を見ようとしている空気感なのではないでしょうか。
排他的と言われやすい地方ですが、富岡製糸場を中心とした外からの人の流れによって地域が開かれ始めている。そんな感覚を覚えます。

「よそ者が好き勝手に地域を駆け回り、面白がることが歓迎される空気感」というのは、変化の前兆なのかもしれません。

今、注目の地域、群馬県富岡市。あなたとの接点も探しに来てみてはいかがでしょうか。

 

(写真:本間さゆり 文:大塚眞)


富岡市×TURNSのイベント情報!

\記事に登場したお二人をゲストに、イベントを開催!/
【10/10(水)ターンズカフェとみおか】「まちづくり」と「ものづくり」、それぞれの“作り手”から見る地域との関わり方
https://turns.jp/23568

 

\草木染めの体験やクラフト市見学もできる現地ツアー/
【11/10-11(土日)ターンズツアーとみおか】農業、染め、クラフト、まちづくり…富岡の“作り手”に出会う
https://turns.jp/24217