「旅するようにはたらく」パソナJOB HUBのローカルチームが提案する、新しいはたらき方=生き方

パソナグループのパソナJOB HUBは、雇用にとらわれない働き方(フリーランスや兼業・複業など)を支援している。特に、地域に関心のある都市部人材と地域のマッチングを行い、地域複業の支援やワーケーションサービスを展開しているのが「ローカルチーム」だ。

 

テレワークが普及し、働き方そのものが問い直されている昨今、地域複業やワーケーションにおける人々の興味関心は高まっている。パソナJOB HUBのローカルチームは、複業やワーケーションという概念がない頃から、この分野で先駆的な動きを見せてきた。本記事では、ローカルチームのチーム長である亀井諭(かめい・さとし)さんと、副チーム長の山口春菜(やまぐち・はるな)さんに、ローカルチームが支援する地域複業とワーケーションの内容や、事業をはじめた経緯や想い、そしてチームとして目指す未来について聞いた。

 

 

「旅するようにはたらく」を、幸せな人生の選択肢のひとつに

 

パソナJOB HUBのローカルチームが地域複業サービスをはじめたのは2018年。きっかけとなった最初のプロジェクトは、都市部人材と岩手県の地域企業をつなぐ「遠恋複業課」だった。両者の関係が遠距離恋愛をする恋人関係に似ていることから、こうしたプロジェクト名になったのだという。

 

その「遠恋複業課」を立ち上げたのが、当時、パソナに所属していた山口さんだ。

 

名古屋で生まれ育った山口さんは高校時代、東日本大震災がきっかけで、ボランティアとして東北を訪れるようになり、地域の人たちと交流する機会を得た。山口さんにとってそれは「自分の居場所を与えてもらったような経験だった」という。大学を卒業し、会社員になった後もより積極的に関われる道を探った結果、地域の企業を複業で手伝うことを思いついた。

 

そうして岩手県と始めた「遠恋複業課」の説明会に、パソナJOB HUBに所属していた亀井さんが参加。亀井さんは、山口さんの想いに強く共感したという。「まさにこれだ、と思ったんです」と亀井さんは語る。

 

「私が子どもの頃は父がずっと単身赴任をしていて、当時の働き方に子どもながらに疑問を抱いていました。一方、海外の大学院を出ている兄が、田舎の地元では仕事がないと言っている。こうした“働き方”における当時の状況に問題意識を持ち、人材業界に就職しました。いつかは、単身赴任をしなくてもいいような、それでいて地域とも関われるような、そんな働き方を実現したいと思っていて。だから地域複業にすごく興味があったんです。遠恋複業課の話を聞いた時、まさにやりたいと思っていたことが、こんなに身近で形になろうとしていて、驚きました」

 

そうしてこのプロジェクトを、パソナJOB HUBで本格的に事業化することになった。

 

コンセプトは「旅するようにはたらく」。2022年の現在こそ、この言葉にはまったく違和感がないが、2019年当時は、「そんなこと本当にできるの?」「旅なの?仕事なの?」と、懐疑的に捉えられることもあったという。

 

まだテレワークがそれほど浸透していなかった頃、「はたらく」とは多くの人にとって、毎日会社に行き、決められた時間を労働することだった。つまり場所と時間に拘束されるのが当たり前だった。もちろん、それが主体的に選ばれた選択肢ならば問題はない。だが、少なくない人にとって、それは「単にそうせざるをえないから、そうしている」状態だったのではないか。「そういう状態だと、幸せにはならない人もいるのではないかな、と思ったんです」と山口さんは言う。

 

「誰もが毎日オフィスに出社してフルタイムで働きたいとは限らない。わたしだって、出社してメンバーに会うのは楽しいけれど、毎日必ず出社したいかと言われたら、そうではない日もあります。『出会いにより人は成長する』と考えているわたしは、働きながら旅をしていろんな人と出会い多くのことを吸収することが、いいアウトプットにつながると感じていました。だから、自分の人生を幸せにする選択肢として、旅するようなはたらき方があってもいいんじゃないかな、と思ったんです」

 

岩手県の「遠恋複業課」は、初回の参加者募集イベントに多数の応募者が集まり、すぐに定員を当初の100名から150名に増席。それでもキャンセル待ちが発生し、オンデマンド配信を望む声も多数あった。まだオンラインイベントがそれほど浸透していない2018年の段階で、である。

 

「正直、ここまで反響があったことに驚きました。初めての取り組みでしたし、どうなるかなと思いながらでしたが、地域企業の経営者のみなさんも参加者のみなさんも、目がキラキラしていて」

 

その後はご存じの通り、世界はコロナ禍に突入し、テレワークできる環境が急速に整い、多くの職種で「旅するようにはたらく」ことが可能になった。

 

「以前は『自分には何のスキルもない』と言っていた人が、遠恋複業課をきっかけに地域複業を始めて、今や地域複業の第一人者になっています。そんなふうに誰かの人生が変わる瞬間を、この4年間でいくつも見てきました」

 

 

地域複業は「スキルよりも、想い」でマッチング

パソナJOB HUBが支援する地域複業の特徴のひとつは、「想いを重視したマッチング」にあるだろう。「遠恋複業課」の他にも、愛媛県松山市の「だんだん複業団」、主に関東地域の複数の地域で実施をしている「#複活」、徳島県の「サステナブルワークスタイル」など、全国各地で地域複業支援を行っているが、そのすべてに共通していることは、マッチングの前にフィールドワーク(現地視察)や面談を行うことだ。

 

地域や企業、経営者の思いを都市部人材に知ってもらい、地域企業もまた、人材側のパーソナリティやモチベーションを知り、互いに共感・信頼できると判断したうえで、マッチングする。このプロセスには半年ほどの時間を費やす。都市部と地域では物理的に距離が離れているので、円滑かつ長期的なコミュニケーションのためには信頼関係が必須だと考えられるからだ。

 

フィールドワークを重視する理由を、山口さんは次のように語る。

 

「オンライン面談では視覚と聴覚しか使わないですが、実際にその土地に行ってみると、それ以外のたくさんの情報が入ってきて、より地域のことがわかるんです。それに、すべての地域企業が遠隔でのやり取りやプレゼンテーションに慣れているわけではないので、経営者のみなさんの想いも、実際にその場に行って直接会った方が、よりリアルに感じられるんです」

 

このフィールドワークを通して、地域企業と都市部人材、あるいは人材同士が仲良くなり、マッチング前に一緒にお酒を飲むような仲になることもあるという。あるいは、複数の人材が同じひとつの企業とマッチングし、チームとして複業にあたることもあるという。

 

 

「副(サブ)」ではなく「複(パラレル)」という字にこだわる理由

 

もうひとつの大きな特徴は、「副業」ではなく「複業」であること。この「複」という字(プロジェクトによっては「福」を使うことも)にもこだわりがある。亀井さんは次のように語る。

 

「我々は『多様なはたらき方を支援する会社』なので、様々なキャリアを支援したいんですよね。副収入やお小遣い稼ぎとしての副業ではなく、パラレルなキャリアとしての複業を支援する。そういう意味で『複』という字が適切だと考えました」

 

亀井さんによると、都市部人材も地域企業も、複業に興味を持つのは主体的で前向きな人であることが多いという。というのも、経済状態など喫緊の問題を抱えている場合は、人材も企業も複業以外のやり方を模索するからだ。そうではなく、さらなるキャリアアップやプラスαの価値創造を求めるのが複業を志す人材だという。亀井さんが「前向きな人同士の出会いだから、楽しい」と言えば、山口さんも「わたしたちは事務局だけど、経営者のみなさんと参加者、どちらとも仲良くなるんです」と言う。

 

 

 

可能性と創造性を最大化するために

 

2020年からはワーケーションも事業化している。ワーケーションという言葉が浸透したのは2020年、政府の観光戦略実行促進会議にて、菅官房長官(当時)が、旅行や働き方の新しいスタイルとしてワーケーションの普及に取り組む考えを示したことがきっかけだと言われている。そうした経緯から、あるいは「Work」と「Vacation」を合わせた言葉の由来からも、ワーケーションには「バケーション」のイメージが強くあった。

 

だが、パソナJOB HUBのローカルチームが進めるワーケーションは、バケーションではなくワークの方に重きが置かれている。元々は、新たな事業開発ができる次世代リーダーを求める企業と、自身のスキルや経験に自信が持てないでいる会社員、両者の悩みに応えるためのサービスとして、パソナで2018年にはじめたプロジェクトに端を発しているという。

 

「地域に行き、地域企業と一緒に、事業を創ったり、地域課題を解決するプロセスを学ぶ。そこで身につけたスキルを自身が所属する会社に還元する。中には地方に拠点を出す企業もいます。そうしたことを支援する旅を提供することが、JOB HUBワーケーションなんです」と山口さんは言う。

 

地域複業とワーケーションは、別の概念のようでいて重なる部分も多い。山口さんによれば、パソナJOB HUBのローカルチームのミッションは「人の可能性と創造性を最大化する」ことであり、その方法として地域複業やワーケーションがあるだけだと言う。つまり、例えるならば、同じ山を目指しながら、その登り方として複業やワーケーションという選択肢があるということだろう。

 

亀井さんも、「我々は、複業マッチングを進めたいわけでも、ワーケーションを進めたいわけでもないんです」と語る。

 

「それらは手段であって目的ではない。はたらき方を支援することによって、個人や企業のはたらき方をより豊かにする、これが我々のミッションなんです」

 

 

地域との関わりを通して、新たな生き方を提案する

 

JOB HUBローカルチームのウェブサイトには「私たちは、はたらくの定義を変えます」と書いてある。そもそも「はたらく」とはどんなことで、それをなぜ、どのように変えたいのだろうか?

 

「働く」ではなく「はたらく」とひらがなで表記していることに、ヒントが隠れているかもしれない。山口さんは次のように語る。

 

「『働く』という漢字からは、どうしても『労働』をイメージしてしまいます。わたしたちの考える『はたらく』は違います。一説によると、『はたらく』の語源は『傍を楽にする』とも言われています。他人をラクにさせたり楽しませたりすることなんですね。そのためには、まずは自分が楽しくないといけない。それは『労働』とは少し違う気がするんです」

 

また、亀井さんは次のように語る。

 

「はたらき方とは、生き方や自己表現のひとつだと思うんです。我々が関東地域で行っている複業支援事業『#複活』には『働き方に彩りを。』というサブタイトルがついていますが、まさにこれだろうなと。つまり、はたらき方に彩りを与えること、それをもって人生を豊かにすることが、我々の仕事だと考えています」

 

ふたりの話を総括すると、パソナJOB HUBのローカルチームとは、地域複業のマッチングやワーケーションの提案をしてくれる会社ではあるが、本質的には、自分の生き方について新たな選択肢やヒントを与えてくれる会社だと言えるだろう。その方法のひとつとして、地域との関わり方をさまざまな方法で提案してくれるわけだ。

 

パソナJOB HUBの利用者には、都市部人材・地域企業ともに、これまで地域との関わりや複業・ワーケーションなどの経験がなかった人も多いという。ということは、初心者にやさしい会社だとも言えそうだ。もし、あなたが新しいはたらき方=生き方を模索したいのなら、その第一歩として、パソナJOB HUBのローカルチームがよき相談相手になってくれるかもしれない。

 

 

(文/山田宗太朗 写真/内田麻美)
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パソナ JOB HUBローカルについてはこちら
https://travel.jobhub.jp/

パソナ JOB HUBワーケーションについてはこちら
https://mag.jobhub.jp/workation/

                   

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