【移住者インタビュー】
大都会バンコクから海のまち鳥羽市へ。
長い海外生活の旅路の終わりに見つけた新しい自分

国際結婚を機にタイのバンコクに渡ったプルックサラナン真千代さん。約30年の海外生活を経て、還暦という人生の節目に帰国を決意し、2022年4月に三重県鳥羽市へ移住しました。海のまち鳥羽で移住コーディネーターを務めながらイキイキと毎日を過ごしている真千代さんに、移住の経緯や鳥羽の魅力、そして、移住において大切なポイントを伺いました。

オープンな心で、外から来る人をもてなし続けてきた鳥羽の人々

市の全域が伊勢志摩国立公園内に位置する三重県鳥羽市。美しい海には複数の離島が浮かび、ほかでは見られない景観が広がります。海女文化も健在で、アワビやサザエ、牡蠣、海藻類など新鮮な海産物も豊富。年間を通じて温暖な気候に恵まれ、古くから大勢の観光客をもてなしてきました。名古屋や大阪、京都から列車で容易にアクセスできるほか、大型客船が入港しているので船で海からも入ることができ、伊勢志摩の玄関として開かれたまちです。

「やっぱり海とともに暮らしている人たちは明るくて気さくですよね。人口約1万7千人に対して年間400万人以上の観光客をお迎えしていますから、外から来る人を受け入れるオープンな心を持っている人が多いんです。だから移住者も地域に溶け込みやすく、すぐに友達ができます」と真千代さん。

移住したばかりの頃、コーヒーショップでたまたま隣に座り話しかけられた海女さんに、海藻をいただくことも。また、移住前からインスタグラムで知り合った海女さんとは今でも友人関係だとか。街なかに構えた自身のオフィスの1階では、大阪から移住してきたご夫婦がちゃんぽん麺のお店を営んでおり、地域の人たちと一緒にごはんを食べることも。移住から1年余りで真千代さんの周りには楽しげな交流が生まれています。

「鳥羽は交通の便が良く、二拠点生活や多拠点生活の場としても魅力的です。実際、東京と鳥羽で二拠点生活をしているライターさんもいらっしゃいます。関西圏の人にとっては昔から身近なリゾート地なので、何度も遊びに来て良さを実感し、セカンドハウスを構える人も多いですね」

そう言う真千代さんは、実は同じ三重県の桑名市出身。約30年も海外で暮らし、しかもあえて故郷ではない鳥羽に移住した理由は何だったのでしょうか?

 

コロナで海外生活の限界を感じ、新たなステージへ

テレビ番組などから影響を受け、幼少期から海外への興味が強かった真千代さんは、東京の大学へ進学すると、休みを利用してイギリスへの短期留学やヨーロッパを巡る一人旅を経験。アメリカの大学院にも3年間留学し、そこで中国系タイ人のご主人と出会いました。大学院修了後、日本に帰国して心理カウンセラーの仕事を始めましたが、結婚して3年後、父親の事業を継承することになったご主人と共にバンコクへ移りました。

「バンコクは熱気が渦巻く大都会で、24時間眠らないまち。私の肌にはあまり合っていませんでした。もともと体が弱かったのに、いっそう体調が悪くなってしまって。それで太極拳に目覚めて北京に2年間留学し、バンコクに戻ってから自分の太極拳道場を開いて、16年ほど運営していました。その16年は楽しかったなぁ!」

そんな真千代さんが、長年運営してきた道場を閉めてまで帰国に踏み切った大きな理由は、2020年から始まったコロナ禍でした。

「『異国にいるんだ』ということをひしひしと感じました。政府から突然、道場の営業も禁止され、半年間飲食店に行くのも禁止。私はお酒が大好きなのですが、スーパーで販売もしてくれない。和食屋や日本企業も撤退していきました。タイと日本の2カ国間を行き来していたから暮らしのバランスが取れていたのに、それもできなくなってしまった。その時ちょうど還暦を迎える頃だったので、そろそろ自分のステージを変えてもいいのかなって」

 

インスタグラムで移住の意志を発信したら、鳥羽の人から反響が

2021年の9月にそう決意した真千代さんは、インターネットで日本国内の移住先を探し始めました。理想は、世界でも最も好きなまちの一つだというエディンバラのように、小高い丘から海へ向かって下りながら開けていく、潮風が吹き抜けるまち…。長崎や函館もイメージが近かったものの、四日市の老人ホームにいる長寿の母親のことを考えると、すぐに駆け付けられる所が良さそう。そこで「三重県、海の見えるまち」と検索して出てきた鳥羽の海を見た瞬間、「ここだ!」と直感したそうです。

鳥羽に移住するにあたり、真千代さんはインスタグラムに鳥羽移住のアカウントをつくり、希望する住まいの条件や、実現したい暮らし方などを投稿し続けました。すると、鳥羽に住むいろいろな人からメッセージが届くようになったのです。

「『そのエリアは私が住んでいる場所の近くですよ』というコメントや、わざわざお電話をくださる方もいて、ご縁を感じました。移住の相談窓口や支援があることもまったく頭に浮かばず、住まいもオンラインで内覧して決めました。決意が鈍るのが嫌だったので、先に帰国の日も決めてしまい、住まいの決済が終わったのが帰国の2日前。そこから飼い猫を抱えて飛行機に飛び乗りました」

飛行機を降りると列車を乗り継いでそのまま新居に入り、その日から真千代さんは鳥羽の人になりました。

鳥羽に到着した日に自宅のバルコニーから海を眺める真千代さん

 

自身の体調もみるみる回復。鳥羽で開いた新たな人生

長年の海外生活からいきなりの鳥羽暮らしでしたが、真千代さんは思っていた以上に暮らしやすさを実感しているそうです。

「鳥羽に住むと決めて、すぐにバンコクで運転免許を取り直しました。車があるから今の生活はとても便利。移住してから気づいたのは、鳥羽は伊勢市と志摩市の隣にあるので、例えば、朝は伊勢のお気に入りのカフェでコーヒーを飲んだり、伊勢神宮の下宮や内宮をハイキングしたり、違う景色が見たくなったら志摩に行ったりというふうに、この美しい伊勢志摩一帯が自分の活動範囲になるということです」

この一帯には豊かな自然だけでなく、極上の食べ物や伊勢神宮に代表される多くのパワースポット、アクティビティも豊富にあり、多様な滞在を楽しめます。移住をきっかけに、真千代さんが暮らすマンションには1ヶ月に1組は必ずといっていいほど各地から友人が遊びに来るようになりました。

バンコク時代の友人が鳥羽に遊びに来た時の様子

そんな真千代さんのお気に入りの過ごし方は、海の見える自宅で沖を行き交う船を眺めたり、本を読んだり、料理を楽しんだりして、ゆったりした時間を楽しむこと。ご主人と娘さんは移住後に釣りを始め、家族みんなが鳥羽での暮らしを満喫しています。

海釣りを楽しむご主人と娘さん

 

大好きな鳥羽で、移住者と地元住民の交流の機会を増やしたい

真千代さんの移住コーディネーターの仕事は、鳥羽市からの委託を受けて市の担当者と連携しながら移住促進を行うこと。主な業務内容は、LINEやメールでの移住相談対応です。元心理カウンセラーの移住相談は大きな安心感がありそうです。同時に空き家活用の業務も担い、空き家バンクへの物件登録や現地内覧の同行なども行っています。

「私自身は行政の移住支援を知らなかったけれど、移住者としての目線は活かせます。自分の好きなまちを紹介して、面白い移住者がたくさん来てくれたら、もっと楽しいまちになる。移住コーディネーターとして活動する中で、その可能性が少しずつ現実に近づいているのを感じます」

空き家の内覧に出向く真千代さん

最近は、若い人たちから離島の空き家を週末の家として活用したいという相談や、海外から移住や空き家取得の問い合わせも寄せられているそうです。定住だけではない移住のスタイルを提供できるのが、鳥羽の魅力の一つだと真千代さんは言います。

ご自身の今後の展望を伺ってみると、

「移住当初は落ち着いたら太極拳教室を開こうと考えていましたが、それはあまり大事ではなくなってきて、今は移住者と鳥羽の人たちがもっと交流できる機会をつくっていきたいと思っています。鳥羽には技能研修生として来ている外国人の若者も多いので、こうした方々との交流の機会も増やせたら」

たくさんの“ご縁”をつないでいきたいと話す真千代さん。それはまさに移住コーディネーターの役割であり、これまでの真千代さんの道のりや経験があるからこそ開けた、新しい人生と言えます。鳥羽への移住や二拠点生活に興味を持った方は、ぜひ真千代さんに相談してみてはいかがでしょうか。

▼移住相談については下記のURLからご確認ください。
https://www.city.toba.mie.jp/soshiki/iju/gyomu/1/5860.html


志摩市の横山展望台にて。バンコクから帰国していた太極拳の生徒夫妻が、老後のためにと伊勢志摩を5日間体験しに来た時の写真

移住に興味がある方へメッセージ

「『なぜ移住したいのか?』という真の目的を明確にしましょう。漠然とした田舎暮らしへの憧れではなく、『これがしたい』という具体的な夢や暮らしのビジョンと一致する移住先を選ぶことが大切です。例えば、私は『海を眺めて暮らしたい』ということが最も重要でした。目的が曖昧だと、さほど重要ではない目先のメリットに惑わされて、正しい決断ができなくなり、“こんなはずじゃなかった”というミスマッチが起こります。情報収集のポイントは、なるべく多く現地に足を運んで、実際に住んでいる先輩移住者や移住コーディネーターなど地域の暮らしに詳しい人から話を聞くことです。観光の形で来ると、生活者の視点で見ることが難しいので、移住体験ツアーを利用して実際にそこでの暮らしを感じてみることをおすすめします」

▼鳥羽市の移住体験ツアーについては下記にお問い合わせください。
https://www.city.toba.mie.jp/soshiki/iju/gyomu/1/7329.html

取材・文:森田マイコ


鳥羽市公式ホームページ
https://www.city.toba.mie.jp

移住に関するお問い合わせ
企画財政課 移住定住係
517-0011 三重県鳥羽市鳥羽3-1-1
電話番号:0599-25-1227
メールフォーム:https://www.city.toba.mie.jp/soshiki/iju/gyomu/1/5860.html

                   

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