2/12(月・祝)、2/13(火)の1泊2日で、群馬県みなかみ町にある「泊まれる学校さる小」で、「群馬県地域おこし協力隊交流研修会」が、開催されました。
これは、県内中から隊員が集まり、隊員同士のつながりをつくるための研修会。ここ数年で、隊員数も一気に増えてきたということで、昨年度から群馬県が主催となって、年に1度行われています。
現在、群馬県で活動しているアツくて、愉快な隊員たちの様子をお届けします!
「泊まれる学校さる小」に宿泊しての研修会
群馬県最北端に位置する、みなかみ町の猿ヶ京温泉郷。ここは、三国街道を往来する旅人たちが峠越えの疲れを癒す宿場町として栄えた町です。現在では、温泉はもちろん、キャンプ、カヌーなどでにぎわっています。
東京方面からやって来ると、さ、寒いです……。雪も積もり、コートを着ていても冷気が突き抜け、ブルブル震えます。
会場となったのは、廃校になった小学校が“泊まれる宿泊施設” として生まれ変わった「泊まれる学校さる小」。泊まれる、遊べる、学べるをコンセプトにする、今回の交流会にぴったりな場所です。ここへ群馬県中から28人もの地域おこし協力隊員が続々と集合しました。
レトロでかわいい木造校舎の中へ入ると、当時の教室をそのまま残しています。懐かしさが込み上げ、なんだか猛烈に廊下をかけ出したくなります。
4年生の教室へと集まり、いよいよ研修会スタートです。
群馬県では、年に数回、県庁でも研修会を開いているため、顔見知りも多いようで、最初からわきあいあいとした雰囲気です。
今回参加した隊員は、前橋市、桐生市、藤岡市、富岡市、安中市、みどり市、下仁田町、甘楽町、長野原町、嬬恋村、高山村、東吾妻町、片品村、川場村、みなかみ町の15市町村で活動する28人。
みなさん、年齢も出身地も、業務内容もバラバラですが、いい具合にやる気がみなぎっている感じが伝わってきます!
協力隊OBが伝授。「協力隊活動を戦略的に捉える」には?
「起立!注目!礼!」
群馬県式のかけ声から始まったのは、地域おこし協力隊サポートデスク上級専門相談員の野口拓郎先生の授業です。元広島県三次市の地域おこし協力隊OBで、ほんわかとした雰囲気で、隊員に近いような親しみのある先生です。
授業のテーマは、ズバリ「協力隊活動を戦略的に捉える」
自身の経験をもとに、地域の若者と仲良くなるにはどうすればいいのか? 地域の自立のうながし方など、気になる内容が語られました。
ちなみに、地元の人と仲良くなるには、「スナック」が一番おすすめなんだとか。 地域の男たちが心を開き、有力者がママに情報を話すので、情報がどんどん集まるそうですよ。
また、地方紙は全国紙に比べ、圧倒的にローカル情報が多い。新聞に登場した人はチェックしておいて「新聞見ましたよ!」と声をかけ、会いに行けば、ほぼ100%快く対応してくれる、など具体的なエピソードが盛りだくさんでした。
みなさん、居眠りをすることもなく、熱心に耳を傾け、メモしている姿が印象的でした。
どんな隊員と一緒に活動したい? を考えるワークショップ
続いて、グループになって、ワークショップも行われました。
「アンチブレスト」といわれる手法で、「○○な人とは仲間として地域活動したくない!」をお題に、次々と書いていきます。
みんなが「わかる、わかる〜」と共感を持ったところで、では、どういう人なら、一緒に活動したいか? という人物像を考えます。
例えば、
自分のことしか考えない→他人に対して思いやりがある。
人の意見を聞かない→人の意見をできるだけ取り入れる。
自分だけの手柄にしてしまう→みんなの頑張りとして喜びを共有する。
など、180度反転させることで、求められる人物像が見えてきました。
約2時間の講演&ワークショップを終え、集中力が切れてきたところで、ここからはいよいよお楽しみの交流会です!
交流の時間のはじまり、はじまり〜
図書室へと移動し、くじ引きで席が決められ、座談会が行われました。おもに、自分の活動について、活動している市町村のおもしろい人やおもしろい取り組みについて、語り合われました。任期後はどうするか、という問題についても、真剣に語り合っている姿が見られました。
こちらの女子グループで、みんなが熱心に耳を傾けていたのが、尾瀬やスキーが盛んな片品村で活動する、中村茉由さんのお話。まもなく終える任期後も村に残り、群馬県北部を指す“北毛”の暮らしを体現できる飲食店「北毛茶屋」をオープンすることに決めたそうです。
「着任の時は、起業するぞ! なんて全然思っていませんでした(笑)。きっかけは、地域行事の手伝いで知り合った『北毛茶会』のみなさんとの出会い。震災を機に、月に1度のお茶を飲んで、ゆるやかにつながっているコミュニティで、農家さんのえごまのおはぎだったり、手づくりのおみそでつくったおやきだったり、誰かの家で食べた料理が一番おいしかったんですよね。
でも、村にはそういったものを食べられる場所がない。お料理が上手なお母さんたちに活躍してほしいなという想いや、みんなのサポートもあって、お店をつくることにしました」
中村さんは、片品村初の隊員。村づくり観光課の非常勤の嘱託職員として、何をすべきか行政側も手探りの中、活動を続けていったそうです。
「1年目は計画性がなくて、もっと計画しておけば、2年目に形にできていたなと思うことが、3年目に結構ありました。これから入って来る隊員に対して、何かしてあげたり、地域に入る時の入り口にできたらいいですね」
しっかりとしたビジョンに、これからの期待大ですね!
そんないいお話を聞いた後は、いよいよ夜の交流会へ移りますよ〜。
会場は理科室。懐かしの給食スタイルで、机の上には群馬県産の野菜づくしの水炊きをはじめ、お酒もたくさん用意されました。
いよいよここからが、食べて、飲んでの交流会「本番」です!
野口先生も、「とことん付き合います!」と腹をくくり、参戦。隊員からは「どうやって、地域の若い人と仲良くなったんですか!?」と、今日の講義の内容を改めて深掘りされるなど、質問攻めにあっていました。
お酒を飲むうちに、みんなすっかり素が出てきて、話はいつしかディープな方向へ。30代の家族持ちの隊員は「任期後にどうしようか決まらなくて、焦る〜」と語ったり、20代の若き乙女たちは「結婚相手も見つけるのが、ミッションだったりするよね」と超リアルな悩みが繰り広げられました。
すっかり打ち解け、群馬県がひとつに!?
なお、飲み会は深夜3時過ぎまで続いたそうで……
2日目の会場はみなかみ町の「道の駅たくみの里」
2日目は、これぞ日本の原風景といった家屋や田んぼに囲まれて建つ「道の駅たくみの里」が会場です。みなかみ町で採れた野菜や果物の販売や、みなかみ産の食材を使った料理などが食べられる施設です。
この日の講師は、昨年から「道の駅たくみの里」で地域と連携しながら道の駅づくりを行う西坂文秀さん。
西坂さんは、2007年に愛媛県今治市で農産物直売所「さいさいきて屋」を発案。小規模農家さんが育てた“規格外”の野菜を販売し、年間来客数120万人、年間売上約27億円と、直売所革命を巻き起こしました。
成功の秘訣については、こう語ります。
「どれだけローカルにこだわるか。大根ひとつとっても、まったく種類が違うものがある。これが差別化であり、スーパーには真似できないことです」
また、日本一売れ残りの少ない直売所を目指したこと。
売れ残ってしまった果物はケーキなどの加工品にしました。すると、次第に若い女性客が増え、パティシエとして就職したいという女性までやってくるようになったといいます。
「面接で伝えたことは、ここはあくまでも果物が主役ということ。僕たちはいちごに生クリームとスポンジを添えて出す、というスタイルです。あくまで農家さんのお手伝い。そのサポーターとして、果物をよりおいしくする技術を売るんだよ、と」
果物を売る。農家さんをサポートするという意識を持つ。徹底したブレない軸が、地域に根づき、全国から人を惹きつける大きな魅力なのかもしれません。
1時間ほどの講演が終わると、敷地内の直売所へ移動し、現地視察がはじまりました。
数日前に誕生したばかりだという、みなかみ町の食品をブランド化するための「匠農里(たくみの里)MiNAKAM1」のロゴを披露。
西坂さんのみなかみ町を「日本一素敵な田舎にしたい」という熱い思いが成せる技か、なんとMの間にはiNAKA1(田舎日本一)が挟まれています。隊員たちからは、「おお〜、ほんとだ、気がつかなかった」と歓声がおこっていました。
最後は、みなかみ産のそば打ち体験
プログラムの最後は、施設内の「豊楽館」で、みなかみ産のそばを使ったそば打ちです。すっかり打ち解けた隊員同士、わきあいあいとそば打ちに挑戦。
伸ばしている最中に、大穴が空き、大失敗! 施設のそば打ち名人に助けを求めたところ、「あら〜」と伸ばした粉を一瞬で丸められ、やり直しを命じられました。
慎重に切っていきます。人柄がものすごく出ますね。
おそば、完成です!
この後、おいしくいただきました。コシがしっかりとして食べ応えがありました。
群馬の地域おこし協力隊、募集中です!
最後に、参加していた隊員の方2名に、これからの活動の意気込みをお伺いし
ました。
まずお聞きしたのは、今年で3年目を迎える高山村で、村の情報発信やイベント開催などを担当している戸井田裕希さん。
「自称・地域おこし体当たり系アイドルとして、一生懸命さを売りに、泥臭く活動しています(笑)。私を目的に村に遊びにきていただけるぐらいになったら嬉しいです!」
前夜の二次会では、めざせYouTuberということで、ほかの隊員たちに「どうやって、PRしたらいいと思います??」「動画編集もうまくできなくて、誰か助けてください〜!」と、とっても明るいキュートな人柄でみんなを巻き込んでいました。
もうひとりは、富岡市の隊員として活動する高橋 淳さん。築145年の養蚕家屋に暮らしながら蚕を育て、見学できる施設「大丸屋養蚕研究所」を立ち上げ、養蚕の魅力を伝えています。
面接時には、すでに企画書で「大丸屋養蚕研究所」の計画を提案する、ガッツあふれる隊員です。1年目は、養蚕はまったくの素人で飛び込んだため、蚕の農家さんのところへ行き、朝から晩までじっくり勉強。2年目にはさっそく蚕を育てはじめ、現場を開放し、半年間で500人ぐらいの人に遊びにきてもらったそうですよ。
「富岡市といえば、富岡製糸場が有名ですが、製糸の前の段階の蚕を育てる工程も多くの方に知って頂きたいです。お蚕をたくさん育て、そこに人に来てもらい、魅力を感じてもらい、養蚕業の文化を守っていく。今の課題は、これをどうお金に変えていくかですが、頑張りたいです!」
群馬県の地域おこし協力隊のメリットは、なんといっても東京圏から近いということ。群馬県の最北端、みなかみ町からでも東京へ新幹線に乗って1時間ちょっとで到着できるので、東京や千葉などから多くの隊員が来ていることが特徴です。
群馬県では、研修会をきっかけに、多くの隊員が市町村を越えて、悩みを相談し、助け合いながら活動しています。卒業後の道は、みんなそれぞれ。自分の力で生きていかなければいけません。定住したいと思った時に仲間がいると、心強いですね。
群馬県では、特色あるさまざまな市町村で地域おこし協力隊を募集しているので、下記のサイトでチェックして、ぜひ応募してみてくださいね!
群馬県内で活躍する地域おこし協力隊員の情報もたくさん掲載されています。
群馬県地域おこし協力隊ポータルサイト(ツナグンマ)
https://chiikiokoshi-gunma.jp/
(文・上浦未来 写真・金子敦子)