東北3県の 未来を育む。
「サントリーみらいチャレンジプログラム」オンライン対談

【東北3県×サントリー×TURNS】
東日本大震災から11年、サントリーみらいチャレンジプログラム取材レポート

地域に根付いてきた、
大切な文化の継承に挑戦しつづける

2011年から東日本大震災の復興支援「サントリー東北サンさんプロジェクト」を立ち上げ、現地に赴き、地域の方々と共に活動することを大切にしてきたサントリー。震災から10 年が経過した2021年、新たに「みらいチャレンジプログラム」を開始し、岩手県、宮城県、福島県の地域創生・地域活性化を目指して挑戦する個人や団体を3期に渡って応援していく。今回は第2期のサポート先(3県計34件)のうち、各県1プロジェクトずつ代表者の方をお呼びしてオンライン座談会を開催、未来へつなぎたい各人の想いを紹介する。

対談メンバー 


福島県いわき市 田人里山再生委員会
下條真輝さん 由美子さん
真輝さんは神奈川県出身で2019年より地域おこし協力隊としていわき市田人町へ移住。由美子さんはUターン。ワークキャンプ事業や地域の小中学生との連携による里山再生に奮闘中。

 


宮城県白石市 一般社団法人とおがったプロジェクト
佐藤雅宣さん
宮城県栗原市出身。就職を機に白石市にIターンし独立。2021年より遠刈田温泉郷にてアーティスト・イン・レジデンス事業を開始、地域住民によるまちの再生を目指し活動中。

 

 

岩手県奥州市
伊藤勝康さん
千葉県出身。田野畑村に移住し、地域食材を活かしたフレンチレストラン「ロレオール田野畑」を営むシェフ。岩手県の生産者に向けた6次産業化アドバイザーも務めている。


サントリーホールディングス株式会社
CSR推進部 青木瑞穂さん
広島県出身の入社4 年目。CSRの多様な業務を経験しつつ、東北復興支援活動を推進。地域の皆さまと一緒に「東北のみらいづくり」について考動・発信するのが喜び。

 

それぞれの地産品、文化を次の世代へつなぐ

−−−この7月、「みらいチャレンジプログラム」第2期のサポート先が決定しました。

青木さん「サントリーは「利益三分主義」という創立の精神を大切にしており、活動においては、「現場・現物・現実」を大事にしています。東北復興支援についてもできる限り現地に赴き、地域の方々と対話を重ねてきましたが、震災後10年以上を経てもまだまだやるべきことがあると感じています。活動を通じて出会ってきた皆さまと一緒に笑顔あふれる未来づくりができたらという想いで取り組んでおります」

−−−今回の3つのプロジェクトの活動について教えていただけますか。

伊藤さん「以前から地元の食材を使ってレストランを運営していますが、郷土料理を提供するお店を中心にした地域コミュニティづくりをしていきたいというのが今回の新たな挑戦です。まずはすでに県から郷土料理継承の認定を受けている知人がいる奥州市から始め、いずれは岩手県の内陸部と沿岸部それぞれの南北4エリアと、奥州山脈の麓の秋田の文化が色濃い地域を合わせて5つのエリアに1つずつ、特色を活かした郷土料理を提供でき、地域コミュニティの「おかみさん」的存在がいるパートナー店舗をつくりたい。エリアは違えど高齢化や賑わいづくりの課題は共通していますから。比較的人の集まりやすい奥州市で気持ちのある若い人を育て、各エリアで活躍してもらえたらと考えています」

佐藤さん「私は宮城県の遠刈田温泉という小さな温泉街でアーティスト・イン・レジデンスの事業を営んでいます。その中で出会った若手の女性版画作家が、隣の白石市の伝統工芸品である白石和紙を使って作品をつくりたいと言ったのをきっかけに現状を調べたところ、すでに紙漉き職人がほぼいない状態にまで廃れてしまっていました。白石和紙は元は紙布で、楮の繊維を漉いた和紙をさらに細かくし、糸にして布を織っていました。10年程前までかろうじて紙漉きは行われていましたが、最後の職人もまちの人に技術を伝えて亡くなってしまいました。この技術を継承していくのは難しいにしても、白石に和紙があったんだということを文化としてアーカイブしていきたいと思い応募しました。版画作家に白石和紙で制作していただく他、彼女を通じて海外のアーティストにも和紙を送って作品を制作していただき、仙台市内のギャラリーで展示会を行うのが目標です」

下條真輝さん「僕は福島県の田人町という人口千三百人ほどのまちで地域おこし協力隊をしています。この地域の風景や文化を高齢化しているまちの人だけで守っていくのは難しいので、妻(由美子さん)が海外で体験したワークキャンプの手法を使い、まちの外から若い人に来ていただいて合宿型の共同生活をしながらまちを活性化していく事業を行なっています。一方で、高齢化によって増えている休耕田を活用し、震災後に稲作の体験授業をしなくなってしまった田人町の小中学生と連携して米づくりと採れた米の販売を昨年から始めました。しかし米離れの世情もあり、米のまま販売するだけではなく、米粉として商品化し、様々な楽しみ方で田人町の米を皆さんに味わってもらいたいと思いました。例えば、町内のカフェなどで米粉のメニューを提供していただいたり、僕らの活動拠点でもある地域内外の人々の交流スポット「田人ワークキャンプ・ビレッジ」にピザ窯を設置して、米粉ピザを皆で楽しむイベントを行なったりしたいと考えています」

 

オンライン座談会の様子

 

次世代を育てることは、地域の持続可能性の芽を育てること。

−−−このみらいチャレンジプロジェクトで何が加速しそうですか?

伊藤さん「郷土料理は地域の食文化そのものであり、無くしてはいけないもの。文献はありますが、調理できる人が高齢化し、郷土料理を食べたことがない人も多い。郷土料理に接する機会を増やすために、参加者と一緒につくったり食べたりするイベントを継続し、その様子を記録していきたいと考えています。こうした思いを実現するために、サントリーさんのプログラムは大変助かります」

佐藤さん「このプログラムを知った時、岩手・宮城・福島の東北3県に特化した取り組みであることに驚きました。高価な白石和紙で作品をつくるにあたり、奨励金のおかげで材料として使うことができますし、ギャラリーで展示して多くの人に知ってもらうことにも大きな意義があります。アーティスト・イン・レジデンス事業の狙いとして、アーティストの独自の視点で地域の魅力を見つけてもらうことも大事ですが、さらに大事なのは地域の人がアーティストたちと交流することで地域の魅力を再発見し、最終的には自分達で発信できるようになること。地域のアイデンティティを誇りに思い、自ら盛り上げていくようになることが最終目標です。白石和紙もこの活動の中でこんなに価値があるんだと気づいてもらえたらいいなと思います」

下條真輝さん「休耕田の活用を進めるだけでは赤字です。今回の奨励金で米粉の商品化という新たな形に進化できました。進学すると戻ってこない人が多い田人町で、小中学生の時に米粉の商品化を通じて地域を誇りに思えたら、大人になっても戻りたい、関わりたいと思ってくれるかもしれません。
下條由美子さん 私は東京に出たくてしょうがなくていわき市を飛び出したけれど、大学1年の終わりに東日本大震災を経験し、故郷のために何かしたいと思うようになりました。ずっと温めてきたこの思いが、昨年からやっと宿泊施設や米づくりを通じた地域活動として実現しつつあります。米粉の商品化と共に私は仲間づくりがしたい。ピザ窯職人を域外から呼んだり、田人町に来たことがない市内の人に来てもらうイベントを行うなど、このプログラムのおかげで活動に発展性がつくれたと感じています」

青木さん「ご自身が「中の人」であったり、「外の人」であったりと立場は違いますが、その地域を愛し、地域のものを形に残していきたいという強い気持ちを感じます。多くの方に東北を好きになってもらえるよう、ぜひお手伝いさせて下さい」

 

風景も文化も失われるのは簡単で、取り戻すことは極めて難しい。その岐路を眼前にした時、地域を愛するからこそ「引き継ぎたい」と願う強い気持ちが動き出す。
今後もTURNSでは現地ツアーやイベントなどの企画でプロジェクトを後押ししていく予定だ。

 

プロジェクト紹介 1
美味しい“岩手”をツナグ
活動エリア:岩手県奥州市 伊藤勝康

担い手不足で問題が山積している郷土料理の飲食店を立ち上げ、食文化を伝えるとともに、飲食店を多拠点化していくことで、講習会や人材育成、さらには地域活性のための賑わい創出の場としても活用していく。店舗では地産の食材を使い、継続的な資源活用とすることで、農村部、漁村部での課題解決のモデルとなることを目指す。

 

プロジェクト紹介 2
「白石和紙」のアーカイブ
活動エリア:宮城県白石市 一般法人とおがったプロジェクト

宮城県白石市の伝統産業である「白石和紙」は現存する職人が1名しかおらず、文化の継承が困難な状態。隣接する蔵王町にあるアーティスト・イン・レジデンスを活用しながら、白石和紙の版画作品の制作、及び展示を行い、和紙を知らない世代に対して「和紙が存在していること」のアーカイブを行なっていく。

 

プロジェクト紹介 3
田人ブランド米プロジェクト「希望の一粒」
活動エリア:福島県いわき市 田人里山再生委員会

町内の休耕田を活用して米づくりを行い、町のブランド米「希望の一粒」として販売。パッケージ作りから稲作、販売までを、地元小中学生と連携して実施して行い、体験を通して子供たちに地域の誇りとして感じてもらう。さらに米を「米粉」として販売し、ピザ作りなどのイベントに活用することで関係人口の創出につなげる。

文・森田マイコ

 

「サントリーみらいチャレンジプログラム」とは

サントリーグループが東日本大震災復興支援「サントリー東北サンさんプロジェクト」の一環として、東北の未来づくりのために、岩手県・宮城県・ 福島県で地方創生・地元活性化を目指して挑戦する団体・個人を応援するプログラム。2021年の第1期は岩手県:13件、宮城県:14件、 福島県:13件、計40活動をサポート。2022年の第2期は右の通り。
https://www.suntory.co.jp/company/csr/support/mirai/

 

東北三県×サントリー×TURNS取り組み一覧

#Challenge.01「雄勝石」による天然スレートの生産復活
#Challenge.02  福島県富岡町  原発事故で無人になったまちをワインで立て直す
・#Challenge.03 被災した土地に美しい景観を取り戻す。椿のカーペットがつなぐ未来
宮城県石巻市雄勝町ツアーレポート
【東北三県×サントリー×TURNS 】サントリーみらいチャレンジプログラム対談

                   

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