東日本大震災と原発事故の発生からまもなく12年半。復興と未来志向のまちづくりを進めてきた福島県浜通り(太平洋沿岸地域)には、複合災害の実態と教訓を後世に語り継ぐ伝承施設や観光交流スポット、シュアオフィスやコワーキングスペースなどが続々とオープンし、観光・ワーケーション先として新たな賑わいをみせています。
今回はそんな浜通りの“今”の魅力を伝えるべく、TURNS編集部員が「ふくしま浜通り・テレワークキャンペーン」を活用して、1泊2日の浜通りワーケーションに行ってきました!
その様子を前編・後編に分けてレポートします!
▼前編はこちら!
https://turns.jp/83168
\ふくしま浜通り・テレワークキャンペーン/
利用期間:令和5年7月20日(木)~令和6年3月12日(火)
対象者:企業等で働く方とそのご家族(個人事業主も対象)
対象施設:コワーキングスペース10施設+宿泊施設17施設 合計27施設(7月20日現在)
特典(先着500名様限定):①QUOカードPay②宿泊+テレワーク利用で宿泊20%割引
詳細・ご予約:https://f-htw2023.com/
09:30 浪江駅
レトロな駅舎がかわいい浪江駅
2日目も「なみえスマートモビリティ(通称:スマモビ)」に乗って、初日に宿泊した「いこいの村なみえ」からJR常磐線浪江駅へ。
車中からは、行き交う人の少ない町並みと草木が茂る空き家や家跡、田畑などが次々と目に入り、改めて被災地の現実が身に沁みました。スマモビの運転手さんとそんな話をしていると、浪江駅周辺では町役場と隈研吾建築都市設計事務所・伊東順二事務所・住友商事株式会社の4者が連携を図り、約8haに及ぶ大規模な再開発計画を進めているのだと教えてくださいました。
2022年に公表されたグランドデザインには、心躍る近未来の町並みが描かれています。次に訪れる時には全く異なる表情で迎えてくれるのだろうと、再訪を楽しみに浪江町をあとにしました。
■浪江駅周辺グランドデザイン基本計画
https://www.town.namie.fukushima.jp/soshiki/34/30691.html
10:00 大熊インキュベーションセンター(OIC)
施設名の由来は、「孵化(ふか)」を意味する「incubation」から。
この日最初に訪ねたのは、福島第一原子力発電所が立地する大熊町。震災と原発事故による全町避難で人口ゼロを経験した町です。昨年(2022年)6月に震災後11年以上にわたって続いた特定復興再生拠点区域の避難指示が解除され、今まさにゼロからの復興と原子力産業に代わる新たな地域産業創出への挑戦が進んでいます。
そんな大熊町に昨年7月にオープンしたのが、「大熊インキュベーションセンター(以下、OIC)」。地域に愛され親しまれてきた旧・大野小学校を当時の趣を残しつつリノベーションして造られた施設で、大熊町を拠点にビジネスを興そうとする起業家や企業を支援し、地域に新産業を生み出すフロンティアとしての役割を担っています。
施設内には町内外の誰もが無料で利用できるコミュニティスペースや、1時間あたり150円(町民は100円)から利用できるコワーキングスペース、月額3,000円(町民は2,000円)で利用できるシェアオフィス、貸事務所、会議室のほか、休憩室・シャワー室・和室、最新の画像認識AI技術を活用した無人販売店、スマートモビリティーなども備わっています。
OICのコワーキングスペースにて
現在入居する企業は85社。同施設のコミュニティマネージャーを務める谷田川佐和さんによると、ここを拠点に新たな取り組みが始まったり、入居企業同士がコラボレーションして新規事業が興るなどの事例も生まれ始めているのだそうです。
谷田川さん「大熊町はまだまだ震災・原発事故の爪痕が残る町で、飲食店やエンターテイメント施設なども整っておらず、無いものがたくさんあります。でもその分、ビジネスの可能性は無限に広がっています。
OICは町の歴史と”これから”が交わう交流拠点です。入居企業だけでなく一般の方も利用できるので、ぜひご活用ください」
大熊町には、原発の廃炉問題や町面積の 1/7 を占める中間貯蔵施設、過疎化・高齢化・人口減少問題など、重く正解のない課題が山積しています。
でもこの日、OICの至るところで若い利用者同士が前向きにディスカッションを重ねている姿を目にし、熱意を持って仕事に臨む姿に刺激を受けるとともに、ここで生まれた出会いとアイデアの一つひとつが町のこれからを彩るはずだという希望が湧きました。
旧小学校の記憶を伝える中会議室(写真提供:大熊インキュベーションセンター)
■大熊インキュベーションセンター
https://okuma-ic.jp/
13:00 和漢膳料理店「陽なたぼっこ」
やわらかな光が差し込む、陽なたぼっこの店内。
お昼は楢葉町にある和漢膳料理店「陽なたぼっこ」へ。
住宅街の中に静かに佇む古民家で、福島県産食材をふんだんに用いた身体に優しい料理をいただきました。
店主の吉田泰子さんは楢葉町出身。この地で開業を決意した背景には、ご両親と故郷への想いがあるのだと言います。
吉田さん「私の父は『楢葉に帰りたい』という希望を叶えられないまま、いわき市での避難生活中に亡くなりました。そして母は、長年我が子のように大切に守り育ててきた『柏屋旅館』の休業を余儀なくされました。そんな両親の想いを受け継ぎ、故郷のために私にできることをしたいと思い始めたのが陽なたぼっこです」
お店をオープンしたのは、2018年4月のこと。インフラ整備と町民の帰還が進み、町を挙げて新しいまちづくりに挑戦しようとしていた頃でした。当時帰還した住民の多くが高齢者だったことから、吉田さんご自身が病気を経験する中で培った薬膳料理の知識を活かし、心身を労わるメニューを提供することに。「『入院中に励まし合った仲間や父に食べさせたかったものを、地域の方々に提供できたら』という、弔いに似た気持ちもありました」と吉田さん。彩り豊かな心づくしの料理は評判を呼び、町外からの来訪者も次第に増えていきました。
日替わりの和漢膳メニュー。懐かしさの中に新しさがある優しい味付けで、身体に良いものを食べる喜びを味わえる。
吉田さん「オープン当初とお客様の層が変わったことやコロナ禍による影響を受けて、『この地でお店を続けていく意味はあるのだろうか?』と悩んだ時期もありました。それでも、年に何度か学生さんたちがサークルやゼミの合宿で訪ねてきてくれたり、こちらに転勤で来られていた方が本社に戻る際の最後の食事に選んでくださったり。そうしたお客様に支えられて、当初抱いていた“両親と地域のために”という思いから“お客様のために”へと、お店を続けていく意味も変わっていったんです」
吉田さん「陽なたぼっこが目立つ看板を出していないのは、お客様お一人おひとりにゆっくりと過ごしていただきたいという思いからです。特に都会から来られる方は日々の喧騒の中でお疲れの方も多いと思いますので、いつ来られても心身ともに元気を取り戻せる、隠れ家的なお店であり続けたいと思っています。遠い親戚に会いに来るような感覚で、お気軽にお越しください」
物理的な復興から、心の復興へと歩みを進める楢葉町。
吉田さんの人を想い労わる心があたたかい陽なたぼっこに、地域復興の最前線を見たような気がしました。
■陽なたぼっこ
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14:30 みんなの交流館 ならはCANvas
2015年9月に避難指示が解除された楢葉町では、帰還した町民を中心に住民主役の新しいまちづくりを進めてきました。
生まれ変わった町の特徴のひとつは、復興拠点エリア「笑(えみ)ふるタウンならは」に公営住宅やスーパー、診療所などの生活機能を集約させ、誰もが暮らしやすいコンパクトタウンを実現してきたこと。2018年7月に笑ふるタウンならは内にオープンしたのが、「みんなの交流館 ならはCANvas」です。
この日は同施設の運営を担う「一般社団法人 ならはみらい」の平山将士さんに、楢葉町のこれまでとこれからについて伺いました。
平山さん「3.11は同じ町民の中にさまざまな“立場”を生みました。インフラも未整備で灯りもない時から復興に取り組んできた方、この町で生きていくという決意を持って帰還された方、故郷に帰りたくても帰れない方、ゼロからチャレンジするフィールドとしてこの地を選び、移住してきた方…。
ならはCANvasは、立場が異なるみんなの想いをまちづくりに活かすため、約2年間にわたり全9回のワークショップの中で深めた町民の想いをもとに設計された、心の復興拠点施設です」
町民からの「町内外のみんなが世代を超えて集まれる場所にしたい」という声を元に、キッズスペースと和室を隣接させ、世代間交流が自然に生まれる設計にした。
地域の子どもたちは放課後や休日に自由に集う場所として、大人は仕事や趣味に没頭したりおしゃべりを楽しんだりする場所として、それぞれの目的で活用しているのだそう。夏祭りや音楽イベントなど世代を超えて楽しめる地域行事の会場としても使われていて、人と人とのつながりの中で生きる喜びを取り戻せる、地域に開かれた心の復興拠点施設だと感じました。
平山さん「震災・津波・原発事故は浜通り一帯に甚大な被害をもたらしましたが、その一方で3.11があったからこそ出会えた人、スタートした事業がたくさんあることも事実です。
楢葉町は、この地で起きたことを正面から見つめ、みんなで未来志向のまちづくりを進めてきた地域なので、近年はホープツーリズムの訪問先や学生の就学旅行、大学のゼミの合宿先、ゼロからの挑戦を志す方の移住先として選ばれるようになり、震災前にはなかった新しい人の流れも生まれ始めています」
震災後の楢葉町で生まれたもののひとつが、「エクストリームチャレンジ in 福島ならは ~復興アドベンチャーレース~」。海・山・川が揃う自然豊かな地域性をPRしようと、もともと地元で楽しまれていた SUP やカヤック、トレッキング、トレイルランニングなどを組み合わせ、 地域外から人を呼ぶ観光交流イベントに昇華させました。
平山さん「未曾有の複合災害を経験した浜通りには、正解のない課題が山積しています。でもだからこそ、ここでしか得られない気付きや学び、出会い、体験がある地域です。その中にはご自身の目で見て、地域住民や移住者と直接交流する中でしか感じ取れないものもたくさんあります。ぜひ多くの方にこちらにお越しいただき、浜通りの”今”を体感していただきたいです」
■みんなの交流館 ならはCANvas
https://naraha-canvas.com/
16:00 天神岬温泉 しおかぜ荘
湯の花が舞う源泉100%のお湯で、体の芯からぽかぽかに。(写真提供:しおかぜ荘)
旅の最後は、太平洋を一望できる天然温浴施設・しおかぜ荘へ。
目前に大海原が広がる露天風呂で、2日間のワーケーションを振り返りました。
「浜通りってどんなところ?」
そう尋ねられた時、これまでは震災報道を通して見聞きした被災地としてのイメージしか答えられませんでした。でも実際に現地を巡った今なら、「一生ものの学びが得られる、彩り豊かな地域です」と実感を持って答えられると思いました。
浜通りは、この地でしか出会えない大切な学びに加え、海・山・川がそろう大自然、温泉、グルメ、レジャー、テレワーク環境も整う、誰もが自分らしい旅のカタチを見出せる、可能性に満ちた地域だからです。
あなたも、ワーケーションとホープツーリズムを組み合わせ、浜通りの”今”と出会う旅に出かけてみませんか?
\ふくしま浜通り・テレワークキャンペーン/
先着500名限定で、20%の宿泊割引と500円分のQUOカードPayの特典が受けられます!ぜひご活用ください◎
利用期間:令和5年7月20日(木)~令和6年3月12日(火)
対象者:企業等で働く方とそのご家族(個人事業主も対象)
対象施設:コワーキングスペース10施設+宿泊施設17施設 合計27施設(7月20日現在)
特典(先着500名様限定):①QUOカードPay②宿泊+テレワーク利用で宿泊20%割引
詳細・ご予約:https://f-htw2023.com/
\浜通りのオススメ観光スポット情報はこちら!/
あなたの旅がきっとある ふくしま浜通り
https://hamadori-coast.com/
記事公開日:2023/9/8
取材・文・撮影:高田裕美