【福島県浜通り】ワーケーション×ホープツーリズムで、一生ものの学びと出会う旅へ!【前編】

ふくしま浜通り・テレワークキャンペーン!

東日本大震災と原発事故の発生からまもなく12年半。復興と未来志向のまちづくりを進めてきた福島県浜通り(太平洋沿岸地域)には、複合災害の実態と教訓を後世に語り継ぐ伝承施設や観光交流スポット、シュアオフィスやコワーキングスペースなどが続々とオープンし、観光・ワーケーション先として新たな賑わいをみせています。

今回はそんな浜通りの“今”の魅力を伝えるべく、TURNS編集部員が「ふくしま浜通り・テレワークキャンペーン」を活用して、1泊2日の浜通りワーケーションに行ってきました!

その様子を前編・後編に分けてレポートします!

 

\ふくしま浜通り・テレワークキャンペーン

利用期間:令和5年7月20日(木)~令和6年3月12日(火)
対象者:企業等で働く方とそのご家族(個人事業主も対象)
対象施設:コワーキングスペース10施設+宿泊施設17施設 合計27施設(7月20日現在)
特典(先着500名様限定):①QUOカードPay②宿泊+テレワーク利用で宿泊20%割引
詳細・ご予約:https://f-htw2023.com/

 

07:50 東京駅

東京駅から最初の目的地・双葉町までは、JR常磐線特急ひたち/ときわで約3時間20分。3時間超の移動と聞くと長いように思えますが、各座席には背面テーブルとコンセントが備わっているので、PCを広げてメールを返したり、資料に目を通したり、景色を眺めながらのんびり仕事をすることができました。

特急ひたちでテレワーク。終わりの時間(到着時刻)が決まっているので集中して作業できました。この記事も帰りの車内で書いています!

11:30 東日本大震災・原子力災害伝承館

まず訪ねたのは、2020年に双葉町にオープンした「東日本大震災・原子力災害伝承館」(以下、伝承館)です。

最大震度6強の地震が津波・原発事故を引き起こすまでの過程と被害の実態、その後の避難、瓦礫撤去、除染作業を経て、「福島イノベーション・コースト構想」をはじめとする未来志向のまちづくりが始まるまでの軌跡を、一歩一歩、福島と共に歩むように追体験することができます。

館内には震災当日の報道資料をはじめ、貴重な所蔵品が展示されている。

特に印象的だったのが震災経験者による講話です。この日は、122名が犠牲となったいわき市沿岸エリア・薄磯地区で被災された、大河内喜男さんのお話を伺いました。

講話には子どもを含む若者世代の参加が目立っていた。

地震発生時、大河内さんは市内内陸部にある病院にいましたが、緊急警報で報じられる津波予測が3mから6m、10mと次第に高まっていくのを見て、防波堤の目の前にある自宅の家族の身を案じ車で戻ることに。 家まであと2kmほどのところにある道路が冠水していたことが不幸中の幸いとなり、奇跡的に大津波の直撃を免れたという経験をされました。

「あの時“生かされた人間”として自分の被災経験を語り継ぐことで、多くの人に天災を自分ごととして捉え、命を守ることの大切さを伝えたい」と、約10年間語り部としての活動を続けています。

大河内さんからは、津波による犠牲者の約6割が高齢者で、その多くが地震発生後も自宅等に留まり避難所に向かわなかった方、あるいは大河内さんのように自宅に戻ったり、一度は避難したものの第一波が海抜4.7mの防波堤で留まったのを見て沿岸部に戻ってしまい、 8.5m超の土壁となって押し寄せた第二波に飲み込まれた方だったことなど、実体験を踏まえた話がありました。

さらに、地元住民が海から「逃げない」「戻る」という行動を取ってしまった背景には「薄磯地区ではこれまでに大きな津波が発生したことがないから、この地域は安全だ」という昔からの言い伝えがあり、それが「今回もきっと大丈夫」という思い込みとなり油断を生んだという教訓も伝えてくださいました。

大河内さん「近年発生する天災はこれまでのものとは全く規模が異なり、『今まで大丈夫だったから大丈夫』という理屈は一切通用しません。むしろそうした思い込みが一番危険で、多くの人の命を奪うことを知っていただきたいです」

今後30年以内に、首都直下型地震や南海トラフ地震などの巨大地震が起こる確率は60〜70%とされており、浜通りで起きた災害は決して他人事ではありません。

大河内さんは「被災後の大変な混乱と無秩序の中で、冷静に『どうするか?』を考えることは困難です。ご自身や大切な人の命を守るためにも、各自治体が発行しているハザードマップを活用しながら、いざという時の避難先やご家族の安否確認手段、合流場所、仕事中など外出時に被災した場合はどのように行動するかなど、平時のうちに少しでも命を守るための備えをしておくことが大切です」と伝えていました。

原発が子どもたちにとっていかに身近な存在であったかが伺える資料。

震災から12年が経ち、当時を知らない世代も増えつつあります。伝承館を訪れ、一瞬にして無慈悲に命を奪う天災の恐ろしさを知り、そこから自分なりの学びを得ることで、救われる命も多いはずだと思いました。

■東日本大震災・原子力災害伝承館
https://www.fipo.or.jp/lore

 

13:00 双葉町産業交流センター(F-BICC)

福島第一原子力発電所が立地する双葉町は、原発事故発生から11年5ヵ月もの間、全町避難を経験した町です。一部エリアの避難指示が解除され、住民の帰還が始まったのは昨年(2022年)8月のこと。

そんな双葉町の復興を牽引する拠点施設として2020年にオープンしたのが、伝承館の向かいにある「双葉町産業交流センター」です。

地元グルメが楽しめるフードコートやレストラン、物産店のほか、コワーキングスペース「FUTABA POINT」、貸会議室や貸事務所などが入る複合施設で、町民のほか町内に事業所を有する企業関係者、これから双葉町で事業を始める方、伝承館への来館者など、地域内外の誰もが自由に利用することができます。

FUTABA POINTのオープンスペース。550円/1時間から利用できる。(写真提供:FUTABA POINT)

同施設の管理・運営を担う復興・創生支援事業本部の高野雅夫さんは、「双葉町は今なお被災地として語られることも多いのですが、昨年には町営の『駅西住宅』への入居が始まり町民の帰還と移住希望者の受け入れが始まりましたし、今年4月には大規模複合施設『フタバスーパーゼロミル』、6月には温浴宿泊施設『さくらの里双葉』がオープンするなど、今まさにゼロからのまちづくりが進む町です。

先端技術や再生可能エネルギーを活用した新産業創出事業も進行中で、そうした地域性に可能性を見出した企業の進出先やホープツーリズムの訪問先として選ばれることで、国内外からの新しい人の往来が生まれ始めています。

人々が集まり新しい活力を生み出す交流拠点として、ここから双葉町の明るい未来を創っていきたいです」と話していました。

※ホープツーリズム:ホープツーリズムとは、東日本大震災によって世界で唯一、地震、津波、原子力災害、そして風評被害を一度に経験した福島県だからこそできる“新しい学びの旅”として県が推進しているツーリズム。従来のホープツーリズムでは、フィールドパートナーが中立・客観的な立場から参加者の学びを深めていきます。https://www.hopetourism.jp/

■双葉町産業交流センター(F-BICC)
https://www.f-bicc.jp

 

14:00 震災遺構・浪江町立請戸小学校

続いて、双葉町の隣町・浪江町の請戸地区へ。大津波による被害の実態を伝える防災教育施設「震災遺構・浪江町立請戸小学校」を尋ねました。

震災当時、浪江町には5階建てのビルに相当する最大15.5mの高さの津波が押し寄せ、沿岸部に広がる500軒以上もの家々を跡形もなく奪い去りました。死者は182名にのぼり、そのうち150名が津波による溺死、31名が行方不明、1名が圧死とされており、犠牲者のおよそ70%にあたる127名が太平洋を臨む請戸地区に集中しています。

この日は、浪江町役場教育委員会生涯学習課の渡邊祐典さんに校内をご案内いただきながらお話を伺いました。

大津波の爪痕が残る、請戸小学校の校舎内で。

渡邊さん「請戸小は海から300mほどのところにあり、津波の影響で校舎2階の床付近まで浸水し、1階は骨組みを除いてほぼ流出しました。地震発生時、校内には下校した1年生11名を除く2年生から6年生までの児童82名と教員がいましたが、全員無事に避難することができました。このことから “奇跡の小学校”として紹介していただくことも多いです」

天井から崩れ落ちた鉄筋やがれき、壁から引きはがされた複合盤が津波の威力を静かに物語る。

渡邊さん「この“奇跡”の背景には、いくつもの偶然と幸運が重なっています。①地元の方が『津波が来るぞ!すぐ逃げろ!』と大声で伝え、即時避難するよう訴えたこと、②それを受けた先生方がすぐに校舎の西にある大平山への避難指示を出したこと、③平時から学年間交流を大切にしてきた学校だったため、避難時に上級生が下級生を助ける動きが自然にとれたこと、④児童の一人が野球の練習でたまたま大平山を訪れたことがあり、山頂へと続く道を知っていたこと、⑤大平山を越えた先の国道6号線に降り立った時、ちょうどいわき市の運送業者のトラックが通りがかり、生徒たち全員を乗せて町の体育館に送り届けてくださったこと。このうちどれが欠けても全員無事に避難することはできなかったと思います」

子どもたちを含む、多くの尊い命を守った大平山。大津波は海岸から1 km以上離れた山の麓まで押し寄せた。

実際に生徒たちが避難した経路を指で追って紹介。

渡邊さん「請戸小の児童82名は全員助かりましたが、浪江町全体ではその倍以上の182名が亡くなっています。多くの犠牲者が出てしまった要因の一つは、原発事故直後の3月12日に出された避難指示によって行方不明者の捜索が強制的に打ち切られ、その後約1カ月もの間、町に立ち入ることさえ許されなかったことです。もしすぐに捜索できていれば、助けられた命もたくさんあったはずです。津波の被害を受けた方の中には、未だにご遺体が見つかっていない方もいらっしゃいます」

校舎内に残る時計の針は全て、津波到達時刻の15時37分を指したまま止まっていた。

渡邊さん「こうした自然災害はどの地域でも起こり得ます。ぜひ一度こちらにお越しいただき、こうした事実も含めてご自身の目で被害の実態を見て、災害の恐ろしさを身をもって感じ取っていただきたいです。そして、もしご自身の周りで起こった時にどう行動し、どのように命を守るかを考えるきっかけにしていただけたらと思います」

「災害を自分ごととして捉えてほしい」というメッセージが込められた展示パネル。

■震災遺構・浪江町立請戸小学校
https://namie-ukedo.com

 

15:30 請戸浜

次の目的地へと向かう前に、請戸小から徒歩5分ほどのところにある「請戸浜」に立ち寄りました。高さ7mの真新しい防波堤が続く海岸線の先に、今後30年はかかるとされる廃炉作業が進む福島第一原発の煙突が見えます。

あれから12年以上が経った今も、放射線量が高く将来にわたって居住が制限される「帰還困難区域」の総面積は、浜通り7市町村全体で337㎢。浪江町だけでも180㎢と、町面積全体(223.1 km²)のおよそ80%を占めています。

震災前、浪江町には21,000人ほどが暮らしていましたが、現在の居住人口は約2,300人。その過半数を復興作業員等が占めており、もともとここで暮らしていた町民は1,000人に満たないと言います。

「故郷に帰りたい」
「もとの暮らしを取り戻したい」
「行方不明になったままの家族に会いたい」

多くの人が震災の記憶を留めるこの海を見つめながら、行き場のない想いと向き合ってきたのではないかと感じました。

あの日と同じ海とは思えない、穏やかな波が打ち寄せていました。

 

16:30 道の駅なみえ

浪江町の“今”を知る上で欠かせないのは、未曾有の災害から立ち上がり復興を遂げて来た強さのある町だということです。

2020年に浪江町の復興のシンボルとしてオープンしたのが「道の駅なみえ」。浜通りの大動脈である国道6号線沿いにあり、店内には多くのオリジナル商品などを販売する産直コーナーや地元グルメが揃うフードコート、ベーカリー、無印良品、地域観光情報発信室、会議室や調理室などが入っています。観光・交流拠点として地域内外から親しまれ、連日賑わいをみせている町の新名所です。

何事も馬九行久(うまくいく)のメッセージに元気をもらいました。

この日は、フードコート内の「レストラン かなで」でご当地グルメ・なみえ焼そばをいただきました!極太麺のモチモチとした食感ともやしのシャキシャキ感、豚肉の旨味に甘じょっぱい濃厚ソースが絡み合う、唯一無二の味わいでした!

浪江産の唐辛子を使用した「なみえ町ポテト」など、震災後新たに開発された地産品も並んでいました。

道の駅の敷地内には、津波被害を受けて全壊した請戸の老舗酒造「鈴木酒造店」の新しい酒蔵があり、地酒の利き酒、甘酒スイーツなども楽しめます。

■道の駅なみえ
https://michinoeki-namie.jp/

 

17:30 イオン浪江店

宿泊先に向かう前に、道の駅なみえから徒歩10分程の所にある「イオン浪江店」に立ち寄りました。町内唯一のスーパーで、月~土曜日は6:00~20:00、日曜・祝日は9:00~20:00の時間で営業しています。

地産野菜や鮮魚類、日用雑貨類など、生活用品が一通りそろい、復興関連事業に携わる方々の利用も多いためか、買ってすぐに食べられるお弁当や総菜、飲み物の種類も豊富。観光客にとっても移住してきたばかりの方にとっても嬉しいスーパーだと感じました。

道の駅なみえやイオン浪江店は、町内を走る乗合ミニバス「なみえスマートモビリティ」(通称:スマモビ)のデジタル停留所にもなっています。

スマモビは、人口が激減し公共交通機関の運行本数が少なくなった浪江町で、「移動の自由を守る」をスローガンに始まったサービスです。デジタル停留所か登録済みのスマートフォンから利用予約すると数分で迎えに来てくれて、目的地まで送り届けてくれます。利用料金は200円~。月~水・祝日は19:30まで、木~土曜日は21:30まで営業しているのも心強いポイントです。誰でも手軽に利用できるとっても便利なサービスなので、浪江町にお越しの際はぜひご活用ください◎

■イオン浪江店
https://aeontohoku.co.jp/stores/namie

■なみえスマートモビリティ
https://www.smamobi.jp

 

18:00 いこいの村なみえ

スマモビに乗って、宿泊先の「いこいの村なみえ」に到着!客室のほか、大浴場や食事処、多目的ルーム、バーベキュー場など充実した設備を有し、観光客はもちろん、地元の方も利用する交流宿泊施設です。

宿泊したお部屋は、キッチン、冷蔵庫、電子レンジ、テレビ、Wi-fi完備のコテージタイプ!もともと仮設住宅として使われていた建物を移設して建てられたそうで、暮らすように滞在することができます。実際に「いこいの村なみえ」はお試し住宅としても利活用されており、移住希望者は定額2万円で1回あたり30日まで利用できるそうです。

貸切り状態の大浴場で思う存分リフレッシュしたあと、小鳥のさえずりが届く静かなコテージでこの日の仕事を終えました。

「浜通りで起こったことを、どうか自分ごととして捉え、いざという時に命を守る行動を取 ってほしい」。

この日出会った方々から受け取ったメッセージは、あの日の犠牲を決して無駄にしないという強い決意のようにも聞えました。

どうすれば復興の一助になれるか、自分には何ができるのか。遠く離れた場所から想いを巡らせるのもいいけれど、まずは浜通りを訪ねてこれまでの歩みを見つめ、一人一人が歴史を教訓として活かすことも大切なのではないかと感じました。

■いこいの村なみえ
https://www.ikoi-namie.com

 

▼後編に続く!
https://turns.jp/83177

 

\ふくしま浜通り・テレワークキャンペーン

先着500名限定で、20%の宿泊割引と500円分のQUOカードPayの特典が受けられます!ぜひご活用ください◎

利用期間:令和5年7月20日(木)~令和6年3月12日(火)
対象者:企業等で働く方とそのご家族(個人事業主も対象)
対象施設:コワーキングスペース10施設+宿泊施設17施設 合計27施設(7月20日現在)
特典(先着500名様限定):①QUOカードPay②宿泊+テレワーク利用で宿泊20%割引
詳細・ご予約:https://f-htw2023.com/

 

\浜通りのオススメ観光スポット情報はこちら!
あなたの旅がきっとある ふくしま浜通り
https://hamadori-coast.com/

 

記事公開日:2023/9/1
取材・文・撮影:高田裕美

                   

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