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福井県若狭町で「自然と共存した持続可能なビジネスの在り方」を探る

豊かな自然に育まれた「穏やかさ」

福井県南西部に位置する若狭(わかさ)町。

日本海に面したこの町を舞台に2018年6月、『若狭ソーシャルビジネスカレッジ』がスタートします。
http://wakasacollege.com/

若狭ソーシャルビジネスカレッジとは… ※若狭ソーシャルビジネスカレッジHPより転載

社会は、常に変化をし続けて、いまの私たちがあります。
しかし近年は、社会もそれを取り巻く自然環境も、変化の幅と速度が増していて、将来に対しても漠然とした不安を抱いてしまいます。
それでも、自分の大事なことを見失わず、その変化に柔軟に応じていくことで不安は希望に変わるのではないかと思っています。
変化に流されるのか、反発するのか。白か黒かではなく、しなやかにたくましく生きていく力を養うことで、今度は自分たちから変化を起こしていくことができるかもしれません。
私たちのいる若狭はごく普通の“田舎”です。
でも、自分の生き方や、地域のあり方を考え、実行に移してみる場として、田舎はとてもチャンスが多いところです。
このカレッジでは、これからの一人一人の幸せ、地域、社会全体の幸せについて共に考え、実現に近づけられるような場にしていきたいと考えています。

 

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まずは、若狭町について知るために、カレッジ運営に参画する一般社団法人『若狭路活性化研究所』を訪ねました。カレッジだけでなく、スポーツツーリズムや小学生対象の自然体験合宿などの事業も手掛ける団体です。
お話を伺ったのはスタッフの福島空(そら)さん。宮城県出身の福島さんは東京都内の大学を卒業後、地域づくりに関わる仕事に就き、2014年、縁あって福井県に移住したという経歴を持つ方です。

スタッフの福島空さん

「若狭町は縄文の時代から人々が住み続けてきた土地ですから、自然資源も豊かで、それゆえに人々も穏やかな、ゆとりのある気質があると思います。地理的には滋賀や京都にも近く、言葉や文化も関西に近いですね」

福井県の公募に応じ、若狭町にある研究機関『福井県里山里海湖研究所』職員に採用されたのを機に移住した福島さん。東京で仕事をしていた時から「全国の山村などを回るうち、東京を出てどこかに移住したいとずっと思っていた」と振り返ります。

「採用されたのが県の機関ということもあって、県内全域がプロジェクトの対象エリアでした。若狭町で仕事をしているけど、町の一員として現場の課題解決に深く関わっているような立ち位置ではなかったんですね」

そんな中で出会ったのが、ワークショップ講師として招いた若狭路活性化研究所代表の田辺一彦さんでした。

「地元の課題解決の実践者と知り合って、私が目指している方向や手法に共通点を感じたんです。これまでいろんな地域に訪れましたけど、どこも住みやすそうで私にとっては選択肢が多かった。そうなると決め手はもう、そこに住んでいる人々なんですよね。自治体が行っている住宅補助のような移住定住施策などではなくて」

 

「スポーツ」合い言葉に、年間4000人がイベントに

代表の田辺一彦さん

若狭路活性化研究所が設立されたのは2014年のこと。田辺さんは若狭町生まれで学生時代を東京で過ごし、大阪の料理専門学校を経て家業の旅館業を継いだという経歴を持つ方です。

「スポーツツーリズムを手掛けるのは高校・大学とボート部に所属していた経験が大きいですね。縁あって生まれ育った若狭町の自然を守りながら、人々が生き生きと暮らしていける環境づくりを考えたとき、自分が置かれている環境とそれまでの経験とを組み合わせてスポーツという軸が現れたわけです」

『若狭路センチュリーライド』の様子。標高約400メートルの梅丈岳(ばいじょうだけ)を上るヒルクライムコースが呼び物(写真提供:若狭路活性化研究所)

若狭町を起点に嶺南地方約160キロを走るというサイクリングイベント『若狭路センチュリーライド』を手始めに、スイーツを味わいながらのマラソンイベント『若狭路ドルチェラン』、「誰でも笑顔になれる運動会」を掲げる『若狭路ハッピースマイル運動会』などを企画・運営。2017年は北海道から沖縄まで、全国から約4500人がイベント参加者として訪れました。

 

「私たちが求めていた場」がカレッジ開講に結実

同研究所の代表であり、旅館経営者でもある田辺さん。『若狭ソーシャルビジネスカレッジ』立案の背景には、一人の経営者としての経験も投影されていました。

「これまでも県外から移住される方がいましたが、なかには『思っていたような仕事と違う』などの理由から町を離れていく現状も見てきました。町の人口増加という視点からだけじゃなく、やはりそれぞれの個人に寄り添うこと、それぞれの生活や幸せについて一緒に考えていくことが必要なんじゃないかと思います。これは自分自身が経営するなかで学んできたことでもあるんですけど」

同町は耕地全体の約90パーセントが水田で、コシヒカリやハナエチゼンなどが栽培されています(写真提供:若狭路活性化研究所)

田辺さんの話を受け、福島さんはこう付け加えます。

「私が県外出身者ということもあるかもしれませんが、地域の将来像について深く語れる場や思いを共有できる場がまだまだ少なくて。研究所の事業としてカレッジを開講するわけですが、そもそもの話として『思いを共有できる場を私たちが求めていたから』というのが起点にあるんです」

 

「人と人とのつながりを『幸せ』と感じられる人」

田辺さんや福島さんが求めている「思いを共有できる場」。そこに集う人たちのイメージ、つまりこのカレッジのターゲットについて尋ねたところ、このような答えが返ってきました。

●地域の課題解決やソーシャルビジネスに関心がある人
●Uターン、Iターンなど、今後田舎で暮らしたい人
●「半農半X」な暮らしに関心がある人
●田舎に興味があり、何かできないかと考えている人
●ともに考え、行動できる仲間を求めている人

 

「田舎はやはり都会とは違って人と人との距離が近いですよね。それが良かったり、時には煩わしく感じることもあると思います。それでもやはり自分一人で生きているわけじゃない。そんな人と人とのつながりがあって自分の幸せがあるな、と感じられる人。そういう方と、人の温もりのある地域社会の実現に向けて一緒に語り合える場にしたいですね。」(福島)

「とはいえ、もちろん本気で起業やプロジェクトを起こしたいと考えている方に対しては、こちらも本気で具体的なサポートができるようにと考えています。生きていくためにはお金も大事ですからね。」(田辺)

 

嶺南地方の若手実践者が、実体験を基にレクチャー

それでは、『若狭ソーシャルビジネスカレッジ』の開講スケジュールを見ていきましょう。
カレッジは2018年6月~2019年3月の全8回。テーマに「地域を知る-地元学」「人を知る-聞き書き」「自然を体感する」「自分を見つめる-セルフデザイン」などを設け、座学、フィールドワーク、学びの振り返りなどを行います。もちろん、お楽しみの懇親会も。

講師は田辺さんのほか、嶺南地方を拠点に活動する若手実践者などを予定。実体験に基づくレクチャーなどを通じ、地方におけるソーシャルビジネスの在り方をともに探っていきます。また、特別講師としてNPO法人『共存の森ネットワーク』(東京都世田谷区)理事長で、福井県里山里海湖研究所アドバイザーの澁澤寿一さんが加わります。

特産品の福井梅を栽培・加工販売する『エコファームみかた』社長の新屋明さん(写真提供:若狭路活性化研究所)

「『よそ者視点』で若狭町の暮らしや人々の生き方を掘り下げたり、カヤックなどのアクティビティを体感したりすることで、自然を生かした持続可能なビジネスをイメージしていただければと考えています。カリキュラム後半には学び全体の振り返りや発表会もあり、受講者それぞれの答えが共感の輪となって広がればと期待しています」(福島さん)

湖でのアクティビティのイメージ(写真提供:若狭路活性化研究所)

「志を共にした人同士のネットワークが広がって」

「数十年先の地域の将来像を考えて動かないと人は定着しない」と話す田辺さんは、2期生、3期生……と長期にわたる将来像を描いています。

「2年目以降は修了生を対象に、若狭町への移住、町内での就職・起業の個別支援を行っていく予定です。ただ、移住・定住だけを目標にしているわけではないのも事実。カレッジでともに過ごした人たちが各自の地元に戻り、幸せの連鎖が地域全体に広がればカレッジとしては成功だと思っています」

インタビュー中、個人の幸せと社会の幸せとのつながりをしきりに強調した2人。「カレッジの最終目標は?」の問いに、意外な言葉が返ってきました。

「カレッジをきっかけに人が集まり、志を共にした人がつながりあって、ネットワークができて、そこからさらに人を通じて広がっていって…。そうやって社会がつながりあっていれば、もうカレッジは必要なくなりますよね。なので、カレッジが要らなくなることが最終目標ですね。これから始めるという段階で言うべきことではないかもしれませんが(笑)」

\若狭ソーシャルビジネスカレッジの開講に向けて説明会が開催されます!/
日時:2018年3月25日(日)14:00~  会場:リブラ若狭(福井県三方上中郡若狭町中央1−2)
基調講演:澁澤 寿一氏(カレッジ特別講師)
※要事前申し込み・参加費無料

若狭ソーシャルビジネスカレッジHPはこちら!
http://wakasacollege.com/

(文・写真:森川徹志)

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