多くの人から愛されるリラクゼーション施設を夢見て

沖縄Work Style 未来を担う観光人材 09

中学時代の縁で「沖縄観光」の世界に飛びこんだ図師里佳さん。現在は、学生時代の学びを活かして、リラクゼーション施設・タピックタラソセンター宜野座で支配人を務めている。館内のインストラクターとしても活動しており、いまや地域住民の健康づくりに欠かせない人材だ。

＜Profile＞
タピックタラソセンター宜野座
支配人兼インストラクター
図師里佳（ずしりか）さん　　35歳（2015年入社中途採用）

＜勤務先紹介＞
太平洋を望むリラクゼーション施設。本格的なタラソテラピー（海洋療法）が体験できるほか、ジャグジーや運動浴プール、サウナなどが楽しめる。地域密着型のサービスを提供しており、ファミリーからお年寄りまで幅広い客層から支持を集めている。　https://www.thalasso-osi.jp/

長寿県・沖縄を支えるリラクゼーション施設

「人生100年時代」といわれる昨今、世界五大長寿地域とされる「ブルーゾーン」が注目を集めている。100歳を超える人の割合が多い地域が対象になっており、日本では唯一沖縄県が五大地域のひとつに選ばれた。

そんな沖縄県民の健康・長寿を後押ししているのが、宜野座村にあるリラクゼーション施設・タピックタラソセンター宜野座だ。海水を利用したジャグジーや運動浴プール、サウナなどを完備しており、スパ感覚で心も身体も癒される。なかでも、タラソテラピー（海洋療法）が最大の売りになっており、県外から訪れるリピーターも少なくない。

施設の支配人兼水中運動のインストラクターを務める図師里佳さんは、宮崎県の出身。中学二年生の頃に沖縄への移住を決意し、高校卒業後に県内の大学に進学した。

「中学時代、水泳大会に参加するためにはじめて沖縄を訪れました。しかし、あいにくの台風で海に入ることは叶わず……。そのとき『いつか必ず帰ってくる』と心に決めたんです。観光業への関心が芽生えたのも同じ時期。べつの機会でポルトガルへ研修旅行に行った際、地元の方々がとても親切で一生の思い出になりました。旅は人を成長させ、その後の人生にも影響を与える。そのことを身をもって体験したわけです」

インストラクターとして現場に出続ける理由

図師さんは大学を卒業後、東京都内の旅行会社に就職。しかし、自分がよく知らない土地を商材として扱うことへの抵抗感から一年足らずで退職する。そして、学生時代の恩師の仲介で、2015年にタピックタラソセンター（当時の施設名は、かりゆしカンナタラソラグーナ）へ。学生時代に学んだ観光学の知見を活かし、入社からわずか2年後、支配人に抜擢される。

「一般課員時代から運営についていろいろと提案していたので、マネジメント業務を任されることになりました。正直なところ戸惑いもありましたが、タピックタラソセンターを多くの人から愛される施設にしたい！という気持ちの方が大きかったですね」

インストラクターを兼任するのは、図師さんたっての希望だった。現場に出ないことには、利用者の“生の声”が汲み取れないと考えたからだ。もちろん、マネジメント業務も怠らず、職員が働きやすい環境づくりに努めている。

「子育て中の方や家族を介護している方など、職員のライフスタイルは十人十色。皆が心地よく働ける職場環境の整備も私の大切な仕事です。子連れ出勤もできるので、ママさん従業員にはとても働きやすい環境だと思います」

地域住民の健康づくりをサポートし続ける

タピックタラソセンターは多くの観光客を受け入れている一方で、地域住民からも厚い支持を得ている。とりわけ、高齢の利用者にとっては気軽にリフレッシュできる憩いの場だ。

「この施設に足しげく通い、運動機能が改善した利用者の方もいらっしゃいます。通っているうちに気持ちも前向きになっていき、こちらまで元気がもらえました。マネジメント業務には大きな責任がともない、頭を悩ませることもしばしばあります。しかし、その度に利用者一人ひとりの顔が脳裏に浮かんできて、やる気が湧いてくるんです」

観光客のみならず、地域に暮らす人々の健康づくりもサポートしてきたタピックタラソセンター。地道な活動が実を結び、2023年には自治体との介護予防や健康づくり事業、観光協会とのウェルネスツーリズム事業もスタートした。「連携事業が決まったときは、思わずガッツポーズでした」と、目を細める図師さん。「多くの人から愛される施設」という大きな目標が、いま確かな歩みで実現に向かおうとしている。