旅好きだからこそわかる、観光業に就くすばらしさ

沖縄Work Style 未来を担う観光人材 08

慶良間諸島の雄大な自然に衝撃を受けた山下真紀子さんは、単身、阿嘉島に移住。マリンアクティビティ運営会社での勤務を経て、現在は那覇市にあるホテルパームロイヤルNAHA 国際通りで予約受付管理やマーケティングなどに従事。丁寧なおもてなしの随所に、国内外を旅してきた経験が活かされている。

＜Profile＞
ホテルパームロイヤルNAHA 国際通り
予約営業課
山下真紀子（やましたまきこ）さん 　49歳（2023年入社、中途採用）

＜勤務先紹介＞
沖縄県那覇市の観光名所・国際通りの一角に立つホテル。パームタワーと新館RAMタワーで構成され、総客室数170室を備える。建物全体がアジアンな雰囲気で統一され、屋外プールや大浴場、アートギャラリーなども併設。独自のおもてなしで、くつろぎのひとときを提供する。　https://palmroyal.co.jp/

「ケラマブルー」に惹かれて、阿嘉島に移住

山下真紀子さんが沖縄県に移住して、かれこれ20年近くが経とうとしている。もともと東京で一般職に就いていたが、友人の伝手で訪れた阿嘉島の生活に魅了された。阿嘉島は慶良間諸島を構成する離島のひとつで、沖縄県島尻郡座間味村に属している。島には信号もなければ、コンビニもない。ありのままの姿で残る大自然に、山下さんは沖縄の原風景を見た。

「『ケラマブルー』とも評される、海の美しいグラデーションに衝撃を受けました。サンゴ礁や泳ぐ魚の姿まではっきりと見え、海の底まで透き通っているかのよう。旅行から戻ったあとも島で見た風景がずっと忘れられずにいました。」

いつか阿嘉島に住むことができたら……。そんな淡い期待を抱く山下さんにある日、島の友人から朗報が舞いこんだ。マリンアクティビティ運営会社の事務職に空きができ、人材を募集しているという。縁を感じた山下さんは、勢いに身を任せて移住を決意。受付担当として、阿嘉島店、那覇店で17年間勤め上げた。

予約対応にも一期一会のおもてなしを

そして現在、山下さんは、ホテルパームロイヤルNAHA 国際通りで予約管理やマーケティング業務などを担当している。マリンアクティビティ運営会社を辞めた際、異業種に就くことも考えたが「沖縄観光」の世界に後ろ髪を引かれた。

「忙しさに波がある観光業は、体力的に厳しいかなと思ったんです。けれども、結局、離れることはできませんでした。観光業は、誰かの思い出に残る素晴らしい仕事。私自身が旅好きだから、余計に惹かれるのでしょうね」

国内外を旅してきた山下さんだからこそ、自分の仕事の重要性を知っている。ホテルのファーストインプレッションを決めるのは、なにもフロント業務の良し悪しだけではない。宿泊客と直接顔を合わせない予約受付とはいえ、一期一会のおもてなしが求められるのだ。

「お客さまとのやりとりは、電話やメールが中心です。沖縄は定番の観光地なので、旅行に慣れていない方も少なくありません。そういった方のことも想定して、予約の手続きや問い合わせに応じるときは丁寧な接客を心がけています。同じ理由で、専門用語を使うこともほとんどありません」

宿泊客のなかには「予約に対応してくれた山下さんは、いらっしゃる？」とお礼をいいにきた人もいたという。宿泊客と心を通わせる度に、山下さんは観光業のすばらしさを噛みしめている。

「『沖縄観光』は過渡期の真っただ中にある」

山下さんは公式WEBサイトやSNSなどを通じて、ホテルの情報発信も行っている。集客アップのために、業界のトレンドや宿泊客の動向、口コミなどをくまなくチェックする。

「『コト消費』という言葉があるように、若いお客さまは旅行そのものが目的ではなく『旅行によって得られる思い出』を積極的に求めている印象。そのあたりの需要も加味して、ホテルの情報に盛りこむようにしています」

訪日観光客の増加も肌で感じている。この頃は、訪日観光客をターゲットにした飲食店やお土産店も珍しくないという。

「いまは『沖縄観光』の過渡期なのかもしれませんね。周囲の反応としては、期待半分、とまどい半分といったところ。私としては、とくに気がかりな点はありません。時代が変わっても『沖縄観光』に求められる根本的な部分は変わらないと思うので。海外旅行先で受けたおもてなしに恩返しするつもりで、自分のスタイルを貫いていくつもりです」