《会津美里町×会津坂下町 》
伝統工芸や食。会津のものづくりを巡る。

「ターンズツアーみさと・ばんげ」レポート

TURNSでは、昨年から「会津美里町」と「会津坂下町」の暮らしや文化を知ってもらう企画を開催してきました。これまで、地元の作り手さんたちと交流できるマルシェや、地元男性との縁結びツアー、真冬の雪国の暮らしや、器を通してさまざまな魅力に出会うツアーなどをお届けしてきました。
そして今回は二つのまち”みさと・ばんげ”を訪れ、「伝統工芸」や「食」といったものづくりを担う作り手たちに出会う旅をしてきました。

Uターンをして新しい風を入れようとしている人、農家へお嫁に嫁いだ人、代々伝わる麹店を継いだ人、親子で果樹園を盛り上げる人、移住してワイナリー作りに励む人たち・・・。”みさと・ばんげ”にはさまざまな働き方、暮らし方があるようです。今回は、地方移住を考えてる、地方での働き方を知りたいなど、さまざまな思いを持って15人がこのツアーに参加しました。その様子をお届けします。

 

1日目 会津坂下町
地元に伝わってきたものを、丁寧に今に活かす作り手たち

東京から新幹線と車で約3時間ほどで会津坂下町に到着。旅の始まりの腹ごしらえに「農家レストラン けやき蔵」を訪れました。田んぼに挟まれた細い道をバスが進み、着いた場所は広い一軒家。外から見るとご飯処と分かりませんが、実は慶徳さんご家族がご自宅内で経営している農家レストラン。切り盛りしているのはお母さんの敬子さんで、その日の朝に採った野菜を使った体に優しい創作料理をいただきました。

どの野菜もとっても美味しかったのですが、特に目を引いたのが会津坂下町の伝統野菜「立川ごんぼ」というごぼう。ビックリするくらい太く、柔らかくて香り高いごぼうで、敬子さんご自慢の野菜です。会津坂下町の中でも、立川ごんぼが採れるのはここ立川地区だけだそう。最近では息子さん夫婦も本格的に「けやき蔵」を手伝ってくれていると嬉しそうに話す敬子さん。とても明るく元気で、手塩にかけて育てた野菜のことを、まるで自分の子どものように話してくれました。

ここで、参加メンバーで自己紹介を行いました。「食について知りたい。」「伝統文化について知りたい。」「ものづくりに興味がある。」「ちょうど仕事を探し中で、新しい働き方を見つけてみたかったから。」など、今回の参加者はいろいろな理由で参加したようです。

ランチのあとは、すぐ近くにある「IIE Lab.ファクトリーストア」へ。閉園した幼稚園を再利用しているんだそうです。こちらでは、会津の伝統工芸品「会津木綿」を使った商品の企画・デザイン・生産・販売までを一貫して行なっています。代表の谷津さんから「IIE Lab.ファクトリー」を立ち上げた経緯や「会津木綿」についてお話しを伺い、実際に「会津木綿」の工房も見学させていただきました。ここでは、一度は途絶えてしまった伝統の「会津青木木綿」を今に復活させています。100年以上も前に製造されたという織機の数々は、地域に眠っていたものを集めてメンテナンスし、また新たな製品を織りなす役割を果たしています。

「会津木綿」は吸水・保湿・保温が良く、夏は蒸し暑く、冬はとても寒い会津盆地の気候に合わせた製品です。東京のデパートなどにも置いていたり、若者にも人気の有名企業とのコラボもしています。先ほど訪れた「けやき蔵」の敬子さんも「会津木綿」のエプロンを着ていたり、幅広い世代に愛されている製品です。

次に向かったのは「目黒麹店」。こちらでは味噌作りの体験をしました。迎えてくれたのは「目黒麹店」4代目の目黒正博さん。味噌作りの前に「目黒麹店」の味噌について教えてくださいました。

「目黒麹店」の味噌の材料はほとんどが会津坂下町のもので、一つ一つが選りすぐり。無添加国産品、アルコールフリーで発酵を止めない味噌作りをしています。実は普段、スーパーで売られている味噌は発酵を止めているものがほどんどだそう。発酵を止めないことで、麹が生きたまま食べることができるそうです。

そして、ここからは味噌作り体験!
説明の最初に「汗かぐかんね〜!」と正博さんが言っていた意味がすぐに分かりました。材料となる大豆・塩・麹を混ぜ合わせる作業はなかなかの力仕事。みなさん想像以上の量にビックリしながらも、一生懸命に材料を混ぜていきました。
完成した味噌は家に届けられて、熟成させます。来年の5月頃にできあがる予定で、一冬越すと風味が一段と美味しくなるのだそう。

味噌作り体験が終わると、テーブルにはご馳走が…!「目黒麹店」の味噌や麹を使ったお味噌汁やお漬物をご用意してくださっていました。美味しくいただきながら、正博さんに自宅での味噌の扱い方をとても丁寧に教えていただきました。お昼ご飯を食べたばかりでしたが、美味しさのあまりみなさんペロッと完食。

お腹もいっぱいになり、最後に向かったのは今回のツアーで宿泊する「松林閣」。会津盆地を一望できる場所にある割烹旅館です。

6年もかけて建てられた建物はとても厳かで趣があり、参加者のみなさんは入り口からさっそく写真をたくさん撮っていました。実はツアーの数日前にテレビで紹介され、来年の春まで予約がいっぱいだそう。

夜は「会津木の実園」の新國眞弓さんと、シンガーソングライターの青木真一さんをお招きして懇親会が開かれました。

新國さんはなんと今回「息子のお嫁さんを探しに来ました!」と宣言!息子さんがこれから独立してブドウ園を始めるらしく、一緒に支えてくれる素敵な女性はいないかと、女性の参加者に声を掛けていました。また、新國さんはご自身で作った「会津木綿」の服を地元の若い女性に着てもらいファッションショーを開き、若い世代にも「会津木綿」の魅力を伝え、身近に感じてもらえるような活動を通して、世代を超えた交流をしているそうです。

青木さんにはIターンした経緯や暮らしぶりについてお話を伺った後、アコースティックライブで会場を盛り上げていただきました。有名歌手やアイドルグループに楽曲の提供もしている青木さん。とても優しい歌声でオリジナル曲やみんなが知っている曲を披露。青木さんは会津美里町の歌「美しきふる里」も作詞作曲しており、最後はみんなで合唱しました。会津美里町では町で毎日流れる防災放送でも「美しきふる里」が使われており、子どもから大人まで、町の人たちはみな歌えるんだそう。

青木さんにとっては会津美里町は奥さんの地元。東京から地方へ移住することへの葛藤などもあったようですが、自分の得意な音楽を会津美里町で生かしている青木さんはとても誇らしそうであり、楽しく日々を過ごしているようでした。

食事の最後には会津坂下町のお蕎麦を堪能。会津坂下町の蕎麦は白いのが特徴で、蕎麦の実の芯の部分だけを使ってつくるんだそう。とてもみずみずしく、クセのない優しい味でした。

 

2日目 会津美里町
伝統工芸品と、新たな拠点作りの現場へ

2日目はとても天気がよく、みなさん早起きして、外に散歩に出たり、温泉に入ったり、それぞれゆったりとした朝を過ごしました。松林閣の露天風呂には朝日が入り込み、広大な会津盆地を眺めることができます。

そして、朝一番に会津坂下町の「フルーツの森・わたなべ」へ向かい、りんごと洋梨の収穫体験をしました。こちらの農園では低農薬で安全な果実作りをしており、もも、洋梨、ぶどう、柿、りんごなど、季節ごとに旬の果物を生産・販売をしています。

迎えてくれたのは、とっても明るく元気な渡部久幸さん。普段は奥さんと息子さんと一緒に農園を経営しています。息子さんは10年前にUターンをしており、東京では音楽業界で働いていました。そんなこともあり、二人の夢はこの広大な農園で音楽イベントを開くことだそうです。迎えてくれた看板にも「NO FRUIT, NO LIFE」というどこかで見たことのあるキャッチコピーが…。

みなさん、一生懸命に「これが美味しそう!」とフルーツを探していました。中には、見たこともないくらいの大きさの洋梨を収穫した方も。

収穫後は農園で作られたフルーツをご馳走になりました。朝の綺麗な空気と、広大な会津盆地に囲まれて、朝から大満足な旅のスタートになりました。

 

ここからは会津美里町へ向かいます。
到着したのは「cafe yuinoba」。こちらは「会津本郷焼」の窯元「樹ノ音工房」が週末のみ運営しており、樹ノ音工房の器で食事を楽しめるお店です。こちらで、手びねり体験をしました。
「これで日本酒を飲みたい。」や「カレーを食べたい。」など、自宅で使うイメージをしながら、平皿や湯のみ、深皿など様々な器をつくりました。

手びねり体験が終わった後は、樹ノ音工房や「本郷インフォメーションセンター」で買い物をする人も。「本郷インフォメーションセンター」では「会津本郷焼」の組合に加入している13の窯元が焼き物を販売しており、さまざまな器に出会うことができます。
一言に「会津本郷焼」と言っても、窯元によって素材もデザインも様々なのが特徴的です。個性豊かな窯元で、それぞれの持ち味を活かしたものづくりが続けられています。

昼食は「会津美里町ふるさと物産館(ニイツル森カフェ)」へ。会津の野菜たっぷりのカレーを頂きました。この店ではさまざまな会津美里町の商品を購入することができます。

今回の旅ではたくさんの会津の「食」に出会いました。その中で気付いたのが、会津の女性がとても健康的で肌が綺麗ということです。1日目に出会った「けやき蔵」のお母さん敬子さんや、交流会でお会いした新國さんにその秘訣を伺うと、毎日自分たちで作った野菜や果物をたくさん食べているそう。自分たちの作った農作物が身近にあることが美しさの秘訣なのかもしれません。

昼食後は、すぐ近くにあるワインぶどう畑と、2019年4月オープン予定のワイナリーを見学しました。現状では会津美里町産のブドウを使ったワインは醸造を他県で行なっていましたが、ここが完成するとブドウ作りから醸造・販売まで一貫して会津美里町で行えるようになります。イタリアやフランスでは当たり前のようにある、ワインをブレンドして販売するサービスも予定しているそうです。ワイナリー内にはバーカウンターやテーブル席、ライブステージも用意されており、目の前に広がるブドウ畑を眺めながら、ワインと音楽に酔いしれる・・・そんな贅沢な過ごし方ができることでしょう。完成がとても楽しみな場所です。

その後は、ワイナリーのスペースをお借りして、「起き上がり小法師」の絵付け体験を行いました。「起き上がり小法師」は450年も前から会津地方に伝わる郷土玩具の一つで、七転び八起きの縁起物として知られています。
可愛い動物やキャラクター、「起き上がり小法師」の顔を描いたり、個性豊かな作品ができました。

旅の最後は「道の駅あいづ湯川・会津坂下」に立ち寄り、お土産を見つつ、旅の振り返りをしました。
参加した方々からは「なかなか普通のツアーでは味わえない地元の人に会って、実際に暮らしぶりなどのお話しを聞けて良かった。」「会津に焼き物文化があるのが知らなかった。また今度、ゆっくり会津本郷焼巡りをしたい。」「人との繋がりがすごく強く素敵な地域だと思いました。」「何度か会津を訪れたこともあったのですが、大人になった今だからこそ自然や暮らし方の大切さについて振り返ることができました。」と、さまざまな声をいただきました。

伝統工芸や食、会津のものづくりをを通して”みさと・ばんげ”の魅力に触れた今回の旅。

今回の旅ではものづくりを通して、”みさと・ばんげ”で生き生きと暮らす、さまざまな人たちと出会うことができました。特に、UターンIターンJターンで新しい風を入れようとしている若者や、親から家業を継いだ若い世代の頑張り、世代を超えた交流が日々行われていることが印象的でした。
その背景には、世代を超えて、誇りと自信を持って伝えることができる”みさと・ばんげ”のものづくりがあるからだと思いました。そして、これからの若い世代が担う”みさと・ばんげ”のものづくりがどんなものになっていくか、とても楽しみです。

(写真・文:田代恵理)

                   

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