ファミリーがイキイキ暮らせる情報を
ママ自身が集め、発信する。
~富岡町で叶える、支え合う子育て。

原子力災害から復興の道を一歩一歩進んでいる富岡町。
鈴木みなみさんが共同代表を務める「cotohana」を通して子育て世帯や地域の人々が協力し合うコミュニティができつつあります。

子育て世代のノウハウを発信し、蓄積する媒体に

東日本大震災による原子力災害の被害を受けた富岡町。2017年に町の9割が居住可能になり、残りの帰宅困難区域解除に向け、除染やインフラ整備が進められている。まだまだ復興事業に従事する作業員の出入りが多い富岡町だが、ファミリー世帯の移住も徐々に増えている。そんな富岡町周辺の子育て情報の集積地になっているのが、「いわき・双葉の子育て応援コミュニティcotohana(コトハナ)」だ。

「地域には子育てに関する支援や資源がいろいろあるのですが、必要な人に届いていないと感じていました。移住したばかりの頃、私も情報を見つけるのに苦労しました。情報がきちんと届けば、暮らしやすさがもっとアップするのではと思ったのが、この取り組みをスタートしたきっかけです」

cotohanaの共同代表で、自らも一児の母である鈴木みなみさんはそう振り返る。cotohanaでは、情報誌を年2回発行するとともに、ウェブマガジンやSNSも運営している。行政や団体の子育て支援情報をはじめ、保育施設や遊び場、病院の情報、子ども用品が買えるスポットの情報まで、子育てに必要な情報をあらゆる側面から発信している。公園や施設には、実際に訪れて使い心地をレポートすることも。子育てファミリーの口コミやインタビュー記事も人気だ。

「情報誌もウェブマガジンもすごく反響が大きいです。ママからは『こんな情報がありがたかった』という声をいただきますし、『うちで良かったら、体験談話すよ』という申し出があったりもします。自分が知っていることを伝えたいとか、同じ悩みを持っている人の役に立ちたいという想いがあるんですよね。買い物一つとっても、文房具はここのスーパーで買って、靴や学用品はあそこのショッピングモールに行って、と、みなさん工夫しながら子育てしています。そういうノウハウを個人の経験として留めないで、みんなのために蓄積していく場がcotohanaであったらいいなと思います」 

支え合う関係性がある子育てしやすい地域

鈴木さんの出身は山形県。京都の大学に在籍中に東日本大震災があり、大学に在籍しながら東北の沿岸部へ支援活動を行っていた。当初はいわき市に住みながら、同市に避難している富岡町の住民に向けた支援を行っていたが、帰還が進むにつれて、富岡町で活動を行うことが増えていった。富岡町に移住を決めたのは2019年。鈴木さんの背中を押したのは、富岡町で暮らす人のあたたかさだった。

「子育てしていると、どうしても子どもと一緒に孤立感を覚えることが増えてきて。でも、富岡にいると孤独を感じることが不思議とありませんでした。富岡には、日常的に支え合う関係性があった。決して便利ではないけれど、子どもも私も心地よく過ごすことができるのでは、と思いました」

実際、助けられていると感じる場面も多いとか。

「近所の人も子どもを気にかけて、一緒に過ごしてくれますし、ママ同士の一体感もすごくあって。この地域で子育てしている仲間同士だという意識があるのかなと思います」

「とみおかこども食堂」も、地域の人と子どもたちが触れ合える場所をつくりたいという想いでスタートした。現在参加者は30~40人。親子、シニアの方などのほか、保健師や民生委員なども一緒に食卓を囲んでいる。

「私たちはサービスを提供するのでなく、応援していく仲間づくりをしていくのが目的です。みんなの『こうやったらよくなるかも』という想いを引き出し、実行していける存在になれたらいいなと思っています。子育て関連の資源はまだ発展途上ですが、人との繋がりの面白さを感じられる場所です。人と繋がることで、地域の魅力って倍増すると思う。そうやって、富岡をもっと豊かな場にしていけたらいいなと思っています」


「とみおかこども食堂」は「トータルサポートセンターとみおか」で実施。山形風芋煮汁や肉団子等のほか、町から提供があった富岡町産のお米食べ比べセットを味わった。

いわき・双葉の子育て応援コミュニティ cotohana 共同代表
鈴木みなみさん

1990年山形県真室川町出身。米沢女子短期大学、立命館大学卒業。大学在籍中から、東北沿岸部の復興支援に取り組み、2015年に福島県いわき市に移住。2017年、任意団体「いわき・双葉の子育て応援コミュニティcotohana」設立。2019年、富岡町に拠点を移した。

【コトハナの活動紹介】
「双葉郡で子育てするパパ・ママのためのお役立ち情報誌 コトハナ」を年2回発行するとともに、ウェブマガジンでも子育て情報を発信。「とみおかこども食堂」は月1回開催。「ままカフェ」「冒険ひろば」などのイベントも開催。

【インフォメーション】
移住に関する窓口相談:とみおかくらし情報館
TEL:0240‐23‐6983

とみおかくらし情報館は、富岡町の移住相談窓口です。富岡町へ移住をご検討の際はご相談ください。

富岡町は、東日本大震災及び原子力災害により全町避難を経験し、ゼロからのまちづくりに取り組んでいます。ゼロからはじめるまちづくりは、険しい道である一方で新たなチャレンジができる道でもあります。

多くの方々に「暮らしたい場所」、そして「チャレンジする場所」として選んでもらえるように、みなさんの「とみおかくらし」を様々な形で応援します。

富岡町移住定住ポータルサイト :http://www.tomiokakurashi.com/ 

文・沼田佐和子 写真・早坂正信

                   

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