地域おこし協力隊リレーTALK Vol.36
​「新型コロナウイルス感染症の影響で休職中に、縁のある伊豆市との絆が復活 」

静岡県 伊豆市 現役隊員
佐藤 亜弥さん 

 

活動内容:域活性化の支援、SNSによる情報発信など

かつて旅行関係の会社に勤務していた際に伊豆市天城湯ヶ島に赴任その後はサンフランシスコに本社を置く外資系の教育プログラム会社に転職し、6年間在籍した佐藤亜弥さん。「仕事が大好き」という彼女は、やりがいをもって働いていたものの、2020年5月に新型コロナウイルス感染症の影響で業務が半分に減り社員の半数が無期限の休職となった。  

「突然大人が夏休みを与えられた感じで、正直暇を持て余していました。そのときに思い出したのが、かつて旅行関係の会社で勤務していた頃にお世話になった伊豆市天城湯ヶ島の人たちのことでした。当時から思い入れのある土地でしたし、コロナ禍で旅行業が厳しい状況だと聞いていたので、何かお手伝いできればと連絡を取りました。さっそく現地に行って何人かの有志が集まり、1カ月ほど話し合いを重ねて具体的に動き出そうとしていたところで、会社から業務復帰の連絡が入りました。」  

中途半端な形で東京に戻ることになり、仕事に復帰したものの、どうしても天城湯ヶ島のことが頭から離れなかった。 

「友人からも、そんなに天城湯ヶ島のことが気になるなら、思い切って会社を辞めて向こうに行ったらどうかと助言されました。仕事はやりがいもあり大好きな会社だったのですが、気になると止められない性格なので12月に思い切って退職しました。それから伊豆市内での仕事を探し始め、地域おこし協力隊の募集も目にしましたが、害獣駆除や農業などの専門的な業務内容での募集だったので、ダメかなと思っていました。ところがしばらくすると移住定住促進の業務での協力隊の募集が見つかったので、すぐに応募を決めました。この業務なら、幅広く活動して多くの人たちと交流したいという希望にも合致すると思いました。」  

選考を経て内定をもらった直後に住居も見つかった佐藤さんは2021年9月に地域おこし協力隊に着任、伊豆市に移住しての新生活が始まった。 


天城湯ヶ島の特産品である、わさびの収穫体験にも参加した 

 

会議を主導して地域づくり協議会に「やる気」を創出

着任してしばらくは、ひたすら各所への挨拶回りに時間を費やす日々を送った。移住定住促進という業務にあたり、まずは人脈を築くことが最重要だと考えたからだ。 

「例えば市内に空き家があるという情報ひとつでも、『よく知らない人には教えたくない』と思う人がいるかもしれません。とにかく、どこにでも顔を出して、地域に溶け込んでいくことから始めようと思いました。休みの日も車で市内を走り回って、農作業中の方に声をかけてお話を聞いたりしているので、『いつ休んでいるの?』などと聞かれることもありました動き出すと仕事と休みの境界線がはっきりしなくなる性格なのかもしれません。」 

旧小学校の建物の一室に設けられた「湯ヶ島地区地域づくり協議会」の事務所が佐藤さんの仕事の拠点となっている。そこでは地域の魅力を高めるための会議が行われ、協議会のメンバーが集まる。会議には佐藤さんも必ず参加しているが、当初はメンバーたちの熱意が見えにくい、という印象を持ったという 

「メンバーは50代後半から70代の方が中心で、立派な方ばかりなのですが、役回りとして参加しているという方が多くて、あまり積極的ではなく、会議中も反応が薄く互いに意見を交わすということはあまりありませんでしたなので、私が引っ張るしかないと思い、別会議を設けさせて頂いて、皆さんを鼓舞するような形で会議を主導することにしました。目的意識をしっかり再認識するところから始めたのですが徐々に皆さんも自分たちは地域に必要なんだ!と目の色が変わってきて、最近ではイベントの具体案が止まらないほど出てくるなど活気にあふれるようになってきました。」 

昨年末の忘年会では、協議会のメンバー一同から「オレたちは亜弥ちゃんのおかげで変われたから、そのお礼だよ」とサプライズプレゼントをもらって感激したそうだ。 


佐藤さんの古民家を地域内外の人たちと漆喰塗りをした日のワンショット 

 

地域の人々や市役所の担当者のサポートに感謝 

「すべての人に田舎(ふるさと)を」というコンセプトを掲げて、天城湯ヶ島の地に少しでも「ふるさと」を感じてもらいたいと思って業務にあたっているという佐藤さん。 

「私自身、東京で生まれ育って、ふるさとを持っていません。でも、ここに来てみんなで農作業をしたり、古民家の漆喰を塗ったり、大勢で鍋を囲んだりしていると、とても楽しいし、ふるさとを感じられます。協力隊の仕事を通して、自分が誰かにふるさとを作っているのかもしれないと思うと、とてもやりがいを感じます。」 

地域おこし協力隊の活動を続けるうえで、地域の人たちの手厚いサポートに感謝しているという。 

「地域の班長さんが本当に私を助けてくれます。各地区の班長さんが集まる会議で私を紹介してくれ、移住定住促進についてのミッションを説明する機会を与えてくれたり、『この人に会うといいよ』などとしばしば町の人を紹介してくれたりするので、人の輪がどんどん広がっています。ときには『素敵なお家ですね。お話を聞かせていただいてもいいですか』と、私から飛び込みでお声をかけることもあります。とにかく、毎日のように地域の方々に助けられていることを実感しています。」 

市役所の地域づくり課の担当者も、生活面や税金のことなど細かい部分まで相談に乗ってくれるなどのサポートをしてくれている。 

「地域おこし協力隊の活動をするうえで窓口になってもらう存在ですから市役所の人との関係が悪かったら、心が折れてしまうと思います。私がこちらに移住したばかりで不安だった頃にも、担当者の方が支えになってくれて本当に助かりました。」 


市山ふれあい六日園の活動にて。地元人たちと共に里芋掘りやタマネギ植え、漬物づくりなどを行う 

 

10年途絶えた除夜の鐘が佐藤さんの呼びかけで復活 

都会で生活していた頃は、日々のストレスを発散するために高級な食事をして、お金を稼ごうとまた一生懸命働いて、結果ストレスが溜まるという悪循環を断ち切れなかったという。  

「田舎暮らしには、ストレスを感じることがほとんどありません。“わざわざ”古い家に住んだり、“わざわざ”壊れた物を直したりという、その“わざわざ”に何か大事なものが込められているような気がします。都会では快適さや便利さがお金で手軽に買えるけど、その代わりに多くの経験や愛情を失っていたのかなと今では思えます。」 

今後は、空き家の発掘を中心にしながら移住定住の促進活動に力を入れたいという。 

「移住定住の促進というミッションは、地域の魅力創出という視点から見ると、観光から生活インフラに至るまですべてにかかわる幅広いテーマだと思います。だからこそ、多くの仲間と一緒に何でもやっていこうと思います。」 

最近では、市内にある明徳寺の除夜の鐘が10年間も途絶えていることを知り、イベントを企画して2021年の大みそかに復活させたという。先代住職がお亡くなりになったことにより途絶えてしまった除夜の鐘だったが、佐藤さんの熱い思いが現住職に伝わり、当日の午後1時から多くの人が明徳寺に集まって、甘酒や草餅が振舞われた。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で少し元気がなくなっていたまちも少しずつ活気を取り戻している。  

「地域おこしのアイディアはたくさんあるのに、誰がやるのかという話になると、結局みんなが尻込みして実現しないということが多いように感じます。近い将来地域商社のような会社を立ち上げて、アイディアを実現させる原動力になれたらいいなと思っています。こう言うと聞こえは良いですが、要は“何でも屋”です。協力隊の立場で幅広い分野に挑戦して、その経験を活かして地域のために貢献できればと思っています。」 


佐藤さんの呼びかけによる除夜の鐘復活を報じた地元新聞を手に 

 

静岡県 伊豆市 現役隊員
佐藤亜弥さん 

旅行関係の会社に勤務していた際に伊豆エリアに赴任し、伊豆市天城湯ヶ島の地に心惹かれる。その後、外資系教育プログラム会社に転職したが、コロナ禍で休職を余儀なくされたため、天城湯ヶ島を再訪したことで同地への想いが高まり、移住を決意。伊豆市の地域おこし協力隊に応募して2021年に着任。空き家活用などの移住定住促進業務に尽力している。市内にある明徳寺の除夜の鐘復活の立役者にもなった。 

 

伊豆市地域おこし協力隊:https://www.facebook.com/%E4%BC%8A%E8%B1%86%E5%B8%82%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E3%81%8A%E3%81%93%E3%81%97%E5%8D%94%E5%8A%9B%E9%9A%8A-1364772533552844/ 

地域おこし協力隊とは? 

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。具体的な活動内容や条件、待遇は、募集自治体により様々で、任期は概ね1年以上、3年未満です。 

地域おこし協力隊HP:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei

発行:総務省 

 

 

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