【埼玉移住プロジェクト】
埼玉で訪ねてほしい人たち – 秩父地域編 –

saitama story|埼玉県の移住者交流会レポート

埼玉県に移住したひと、まちを盛り上げるべく活動するキーパーソンを紹介する埼玉ものがたりの連載。

今年度、自然・アウトドア、子育て・教育、場所やコミュニティづくりの3つのテーマと、比企地域、秩父地域という2つの地域の合計5つのカテゴリに分けて、埼玉移住のサポートメンバーを紹介しています。

【埼玉移住プロジェクト】埼玉への移住を応援する取り組みが始まっています

【埼玉移住プロジェクト】埼玉で訪ねてほしい人たち – 比企地域編 –

【埼玉移住プロジェクト】 埼玉で訪ねてほしい人たち – 場づくり編 –

【埼玉移住プロジェクト】埼玉で訪ねてほしい人たち – 自然・アウトドア編 –

【埼玉移住プロジェクト】 埼玉で訪ねてほしい人たち – 子育て編 –

今回は、秩父市・皆野町・長瀞町・小鹿野町・横瀬町の5市町から構成される秩父地域についてです。東京から日帰りで行ける観光地として知られる秩父地域は、自然豊かな環境でのびのびと暮らせる場所でもあることから、移住先としても人気を集めています。

そんな秩父地域では、デザイナーや木工作家、ゲストハウスの運営者、秩父銘仙のPRに携わる方など、さまざまな仕事や働き方を実践する先輩移住者やキーパーソンがいます。2022年2月に開催したオンラインイベント『埼玉移住リレートーク』のゲストとして登場いただいた5名のキーパーソンの紹介と合わせて、秩父地域の魅力をお届けします。

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ヨソモノ目線で、秩父のまちや人の魅力をデザインに変える

秩父地域を中心にデザイナーとして活躍する『malme.design(マルメデザイン)』の吉田武志さんは、大阪出身で、8年前に知人の紹介で秩父の企業へ転職したのを機に秩父市へ移住しました。

もともとは大阪でグラフィックデザインの仕事をしていたそうですが、違う世界も見てみたいと飛び込んだのは、インテリアショップのスタッフ。5年ほど店舗の運営に携わりながら働いていましたが、同時に秩父で知り合った人からグラフィックデザインの依頼を受けることも増え、それならば!と3年前にデザイナーとして独立したそう。

吉田さんが秩父に来てから携わったロゴデザインの数々。ざっと数えても80個以上もあるそうです。

「秩父にきたばかりの頃は、正直なにもないまちだって思ってたんですが、そんなことはなかった。いろいろな人と関わる中で “なにもない=関わりしろがある” ってことなんだと感じるようになりました。

秩父にいると、地域の人から仕事をもらうことが多いんですが、偶然、飲み屋で隣になった人と仲良くなって仕事を頼まれたり、飲みにいったお店の店主からロゴを頼まれることもあったり(笑)。あとは、たまたま秩父で知り合った人が関西の大学の仕事を紹介してくれたこともあって。秩父にいながら、出身である関西の仕事に携われるって、なんだか不思議でしたね。

最近は、自分の作ったデザインをまちで見かけることも少しずつ増えてきて。目に見えることで、まちに愛着も湧いてきました。いずれは、秩父地域に関わるロゴを100個デザインしたいと思っています。」(吉田さん)

手に持っているイチローズモルト秩父エディションのラベルデザインも吉田さんがご担当されたそう。

秩父のどこを歩いても、吉田さんが関わる仕事に出会えるほど、秩父地域のさまざまなデザインを手掛けられている吉田さん。そこまでの信頼を得るのは簡単なことではないと思いますが、コツコツと地域の人との関係性を深めてきた賜物なのでしょう。

吉田さんは、秩父は魅力がたくさんあるけれど、住んでいる人はその魅力に気づけていないことも多いと話します。吉田さんのように、地域の中に飛び込み、ヨソモノの目線で自分が関われるフィールドを見つけることが、移住する上で大事なことなのかもしれません。

 

秩父銘仙を通して、まちの歴史と文化を紡ぐ

『彩機織(イロハトリ)』の関川亜佐子さんは、6年前に地域おこし協力隊として秩父市へ移住し、秩父銘仙のPR活動に携わりました。もともと着物が好きだった関川さん。養蚕がさかんだった秩父市で、地域の経済発展を支えてきた歴史ある秩父銘仙ですが、時代とともに作り手がどんどん減っている現状を知り、自分自身も作り手になろうと、3年間の地域おこし協力隊の活動を経て独立しました。

現在は、古民家をリフォームして秩父銘仙の工場を構えながら、秩父駅の近くで銘仙のレンタルやワークショップ体験を提供するお店も運営しています。

「秩父銘仙は、絵柄を直接布に描いていく独特な織り方で、当時は庶民の普段着として人気だったそうです。今では廃れてしまっているけれど、少しでも身近に楽しんでもらいたくて、着物のレンタルもはじめました。秩父は風情があって街並みも素敵だから、着物を着て秩父のまちを散策してもらえる人が増えると、地元の人にも見直される機会に繋がりますよね。

これからのシーズンは、地元の小学校で卒業式の着付けをする出張にも行かせてもらっています。地元に歴史ある織物があって、文化が根付いているって凄いことだし、秩父の魅力の一つだと思います。」(関川さん)

関川さんが移住した当初は、レンタル着物のお店は一軒もなかったそうですが、最近では少しずつ増えているのだとか。まちに根付いてきた歴史文化を、外の人が価値として感じ、再び光を当てることで、結果的に地元でも見直され、次の世代へ継承されていく。関川さんの活動は、そんな秩父の歴史を紡いでいく作業のようにも感じます。

これから関川さんが作られた秩父銘仙がお店に並ぶのも、楽しみですね。

 

自然に囲まれながら、子育ても仕事も楽しめる環境づくり

木工作家として活躍するうだまさしさんは、12年ほど前、独立を機に千葉県から皆野町へ移住しました。その後、奥さんと出会い結婚、現在は二人の息子さんと家族4人で暮らしています。

5年前に空き家バンクで偶然見つけ購入したという現在のお宅。もともとは普通の古民家だったそうですが、味のある建具や古材を使いながら、水回り以外は自らDIYでリノベーション。うださんのこだわりが詰まった素敵な空間に仕上がっています。最近では、母屋と工房の間を繋ぐ庭づくりもご自身で手がけているそうで、生活の場と仕事場、子どもの遊び場までも、すべてがひとつの場所で完結しています。

「秩父に来たばかりの頃は、木工だけでは食べていけなくて、ラフティングの会社でアルバイトをしたり、派遣で工場勤務をしたこともあります。でも、自分には向いていなくて、本当に辛かったです(笑)。向いていない仕事をやらないためにも、自分が好きな木工の仕事を頑張らなきゃって思えたのが、転機でしたね。発信の仕方も勉強したりして、少しずつ木工で食べていけるようになりました。」(うださん)

「今は、二人の男の子を育てなきゃいけないので、収入面でも生活面でも頑張らなきゃって奮闘してます。月2回、自宅の一部をオープンギャラリーとして開いているのも、もちろん仕事のためもありますが、子連れのお客さんが訪ねてくると、子ども同士で一緒に庭で遊んでくれたり、子どもにとってそういう時間も必要だなって思っているんです。

ものづくりをしていると家に籠りがちで、なかなか外出する機会が少ないので。家族にとっての息抜きの時間とか、居心地のいい環境を作ることも、ストレスなく仕事をするために大事なことですね。」(うださん)

“自分の住みたい環境は自分で作るのが楽しい” と語るうださん。仕事を頑張るためにも、自分にとっても家族にとっても居心地のいい環境をつくることが、豊かな日常の暮らしにも木工作品にも繋がっています。

 

仲間と力を合わせて、観光をリブランディングしていく

秩父の中でも観光地として有名な長瀞町で、石森まさしさんが『ゲストハウス NEMAKI』をオープンしたのは、ちょうど新型コロナウイルス感染症が世間を騒がせ、緊急事態宣言が発令されていた、2020年6月のこと。

もともと旅行が好きで、北海道でウィンタースポーツに関わる仕事に就いたり、カナダでワーキングホリデーをしたり、中米を放浪したり。バックパッカーとして海外を巡る中で、海外でいうホステルのような場所を日本で作りたいと思ったのが、きっかけだったそう。

「東日本大震災のときはちょうどカナダにいて、日本にいることができなかったことが心に引っかかっていて。何かあってもすぐ行ける距離で、家族の近くに居たいと思ったんです。僕は長瀞町の隣の本庄市出身で、もともと長瀞町のラフティング会社で働いていた時期もあったので、長瀞ならいいなと思って決めました。

ただ、なかなか物件が見つからなくて。今の物件は普通の民家を改装して、旅館業の営業許可を取って運営しています。民家で旅館業って、埼玉では初だって言われましたね。でも、基本的には素泊まりで、食事も提供しないし、駐車場もまわりの民間のところを使ってもらっています。

長瀞って観光客はたくさん来てるんですけど、ラフティングだったらラフティングだけで帰っちゃう人が多いんです。だから、泊まってもらって滞在時間を増やすことで、地域に少しでもお金を落としてほしいし、まちなかも、もっと見て欲しいと思っています。」(石森さん)

長瀞町は今、若くて面白い活動をしている人が増えているそう。観光地ならではの課題もありながら、田舎だからこその体験をウリにできたり、そんな仕掛けを考えられる人が育てば、まちはどんどん楽しくなると石森さんは話します。

最近では、長瀞町や周辺市町村の仲間とともに『地域観光ラボ』というグループを作り、オープンチャットで意見交換したり、協力しながらプロジェクト化していくコミュニティも運営しているとのこと。気になる人は、ぜひ覗いてみてください。

 

誰もが自分らしくいられる町を目指して、今日も町を駆け回る

人口8,000人ほどの小さなまち・横瀬町は、”日本一チャレンジする町” をスローガンに掲げ、次々と新たなプロジェクトを生み出しています。そんな横瀬町の仕掛け人とも言えるのが、横瀬町役場まち経営課の田端将伸さん。横瀬生まれ横瀬育ち、生粋の横瀬町民です。

中でも代表的なプロジェクトが、企業や個人、団体がアイデアやプロジェクトなどを形にするために、横瀬町のフィールドを使って実験できる仕組みの『よこらぼ』です。毎月開催される審査会にエントリーして、採択されれば、町公認でプロジェクトを実装できます。これまで5年間で100件以上のプロジェクトが動いているというから驚きです。

他にも、多いときには1シーズンで8万人もの見物客が訪れるという『あしがくぼの氷柱』や、町民ボランティアの方々と一緒に整備して生まれた『花咲山公園』など、町の名所プロジェクトも仕掛けています。

「高校を卒業して役場に入った時は、今ほどの情熱はなかったかもしれません(笑)。2年間だけ埼玉県庁に派遣されたことがあって。唯一、横瀬町を離れたのはその時だけです。でも、横瀬を出てみたら、改めていい場所だなって思えて。このまちが元気じゃなくなるのは嫌だなって思ったんです。それからアクセル全開でここまできましたね。

特に、2019年4月に農協跡地につくった『オープンアンドフレンドリースペース エリア898』は、大人はもちろんだけど、子連れの人も小中学生もくるし、おばあちゃんもフラッときたり。この空間の中で、小さな横瀬町が出来ていて、とても良いなと思うんです。この感じを、もっとエリアを広げてやりたいなと思っていたら、なんと、すぐ横の敷地も空くことになって!(笑)今年中にはテレワーク拠点をオープンさせて、さらに7月には子どもの第三の居場所づくりも進行中です!人が足りませんね。」(田端さん)

昨年9月には、地域商社としても機能するまちづくり会社を創り、まちの農産物や加工品の商品開発を進めるべく、チャレンジキッチン『ENgaWA』をオープン。また、昨年クローズしてしまった横瀬町駅前の食堂を新たに『縁側食堂』にリニューアルをし、運営しています。

とにかく、とどまるところを知らない田端さんの活動。しかし、この横瀬町の勢いに惹かれるように、次々と移住者が増えています。まだまだ横瀬町ではチャレンジしたい人を募集しているとのことなので、移住先に迷っている方はぜひ一度、現地を訪ねてみてはいかがでしょう?


記事で紹介した秩父地域で活躍する5名をゲストに開催したオンラインイベント『埼玉移住リレートーク vol.2』の様子は、下記よりご覧いただけます!

ここで紹介したゲストの皆さんは、秩父地域と一括りに言っても、暮らすまちも職業もバラバラですが、それだけ何でもできる地域なのだと改めて感じました。

うださんのようにものづくりをする人も、関川さんのように歴史ある文化を継承していく人も、吉田さんのようなクリエイターも、それぞれの分野でチャレンジする気持ちがある人には、向いているフィールドなのかもしれません。そういった時に、田端さんのようにまちをあげてサポートする仕組みを作ってくれる人や、石森さんのように仲間同士でアイデアや意見を交換できるコミュニティを作ってくれる人がいることも、秩父の魅力のひとつなのだと思います。

イベントでは、関川さんの秩父銘仙の話から、石森さんがゲストハウスの寝間着を秩父銘仙で作りたいといった相談が生まれたりと、ゲスト同士で新たな交流も生まれる機会となりました。

東京から日帰りでいける田舎・秩父で、まずは気軽にお試し暮らしをはじめてみるのもいいかもしれません。

 

\秩父地域に興味が湧いたら…/
埼玉移住サポーターの皆さんに会いに行ってみませんか?

①吉田武志さん/malme.design

大阪府出身。もともとグラフィックデザインの仕事をしていたが、2014年に転職を機に秩父市へ移住。インテリアショップのスタッフとして働く傍ら、個人でグラフィックデザインの仕事も請け負っていた。秩父地域でもデザイン仕事の依頼を受けることが多くなったため、2019年にデザイナーとして独立。秩父地域周辺のお店や企業、自治体のロゴやパッケージデザインなど数多くのデザインを手掛けている。

秩父には僕のようなグラフィックデザインの他に、服飾だったり映像だったり、色々なデザイナーやクリエイターも多くいます。東京まで1,2時間で行けるので、リモートで仕事ができる人にとってはすごくおすすめの環境です!

malme.design
https://malme-design.com/
「malme design」のInstagramはコチラ

 

②関川亜佐子さん/彩機織(イロハトリ)

2016年に秩父へ移住し、地域おこし協力隊として秩父銘仙のPR活動に従事。任期終了後に独立し、現在は秩父銘仙を製作する工房を構えながら、レンタル着物やワークショップ体験を提供するお店『イロハトリ』を運営し、秩父銘仙のPRに携わっている。

秩父は古い建物やノスタルジックな街並みが残っていて、歩いていて楽しいまちです。ぜひレンタル銘仙を着て、秩父のまちを散策してみてください。

レンタル銘仙『イロハトリ』
埼玉県秩父市本町3-1 秩父ふるさと館 1階
https://irohatori.com/
「イロハトリ」のInstagramはコチラ

 

③うだまさしさん/木工作家

木工作家として独立したのを機に、12年前に住居兼工房で活動できる場所を求めて皆野町へ移住。その後、奥さんと出会い、結婚。5年前に空き家バンクで偶然見つけた古民家をDIYでリノベーションし、二児の父として子育てと仕事を両立させながら、木工作家として活躍している。

予約制ですが、月に2回、自宅の一部をギャラリーとしてオープンしています。僕の作品に興味を持ってくれた方は、遊びにきがてら、秩父の暮らしを覗きに来てください。

自宅gallery《Ūca》
*住所やオープン日などは、Instagramにてお問い合わせください。
http://monomusubi.com/
うださんのInstagramはコチラ

 

④石森まさしさん/ゲストハウス『長瀞NEMAKI』

本庄市出身。長瀞町や北海道でアウトドアの仕事をした後、海外でのワーキングホリデーやバックパッカーとして旅をする中でゲストハウスに惹かれ、帰国後、長瀞町で開業するため物件を探しながらキャンプ場の立ち上げなどに携わる。コロナ禍の2020年に、長瀞町でゲストハウス『長瀞 NEMAKI』をオープン。他にも周辺市町の若手仲間らと意見交換できるコミュニティも運営している。

移住する上では、仕事も家もコミュニティも大切です。いきなり飛び込むのではなく、まちの人と仲良くなれるか肌に合うかなど、ぜひ現地に来て確かめてください。今春、長瀞町のメイン通りでコーヒースタンドもオープンするので、ぜひ立ち寄ってください。

『長瀞 NEMAKI』
埼玉県秩父郡長瀞町長瀞1126-3
https://nagatoro-nemaki.com/
「長瀞NEMAKI」のInstagramはコチラ

 

⑤田端さん/横瀬町役場 まち経営課

高校卒業後、横瀬町役場に入職。2年間、埼玉県庁に出向したことをきっかけに横瀬町の魅力を再認識し、様々なプロジェクトに携わる。

今後も次々と仕掛けている事業があるので、横瀬町は人手が足りていません!とにかくチャレンジしたい人、笑顔が素敵な人など、想いをもって挑戦したい人はぜひ一度、横瀬町に遊びに来てください!

オープンアンドフレンドリースペース『エリア898』
埼玉県秩父郡横瀬町大字横瀬1926
https://area898.space/
田端さんのInstagramはコチラ

                   
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