鹿児島県鹿屋市
「かのやローカルチャレンジスクール」
で見つけた新たな暮らし

やりたかったことが明確になって、実現できた!

これから紹介するのは、東京の広告代理店でバリバリ働いていた30歳目前の女性が、鹿児島県鹿屋市(かのやし)で開催された地方創生フィールドワークに参加したことで価値観が180度変わり、全国の農家を巡り住み込みで働きながら、農業を学び始めた物語です。

彼女の名前は、櫻井静香(さくらい・しずか)さん。櫻井さんはフィールドワークに参加後も、毎月オンラインで開催される「かのやローカルチャレンジスクール」に参加。ここで鹿屋市に短期滞在し農業に携わりながら「生きる」ことを見つめ直す “人生の夏休み”をテーマにしたプロジェクトを企画し、実現に向けて動き始めています。

かのやローカルチャレンジスクールとは?

自分が持つスキルや得意なこと=“自分資源”と、鹿屋にある“地域資源”を組み合わせて、自分のやりたいこと=「マイプロジェクト」を企画・実現するスクール。学生から会社員、フリーランスなど、さまざまなキャリア、年代の人が参加し、お互いにサポートし合いながら、プロジェクトを企画しています。

詳しくは以下のWEBサイトをご覧ください。
https://localdesignlab.studio.site/

櫻井さんの価値観を大きく変えるきっかけとなった、鹿児島県鹿屋市とはどんなところなのか? 今年9月から第2回がスタートする「かのやローカルチャレンジスクール」(現在、参加者募集中!)とは、どんな取り組みなのか? 櫻井さんが、鹿屋市で実現しようとしているプロジェクトとは、どんな内容なのか? 詳しく紹介していきます。

東京での充実した日々の中で感じた、漠然とした不安

大学までを横浜で過ごし、東京の広告代理店に就職した櫻井さん。「ちゃんと大学を出て安定した職に就いてほしい」という両親の期待の中で育ち、数ある職の中でも、最も華やかな印象のあった広告業界に進みました。

新聞部で4年ほど経験を積み、自ら希望を出して営業部に異動。クライアントに少しでも良い提案をしたいと、ときには残業もして仕事に打ち込んできました。自分にプラスαの強みを作ろうと、週末にはデザインスクールに通い、1年かけてグラフィックデザインとWEBデザインを学びました。

仕事は面白く、とても充実していましたが、「年齢を重ねても、ずっとこの仕事を続けていけるだろうか?」という不安が心の片隅にあったといいます。デザインスクールに通ううちに、デザインの面白さに目覚め、デザイナーを目指して転職活動を始めましたが、30歳目前で未経験OKという求人は、ほとんどありませんでした。「収入をなるべく下げたくない」「できれば名のある企業に転職したい」という櫻井さんの希望もハードルとなり、なかなか転職活動はうまくいきませんでした。

そんなとき、デザインスクールの卒業制作発表会で知り合った人から誘われたのが、冒頭で紹介した鹿児島県鹿屋市で行われた地方創生のフィールドワークです。

「それまで、田舎暮らしや農業については考えたこともありませんでした。でも、行ってみたら何か新たな発見があるかもしれないと感じ、思いきって参加してみることにしたんです」

鹿屋のみなさんは温かく、東京の人よりもなんだか楽しそう!

マップで鹿児島県を見ると、桜島を囲むように半島が東西にのびています。鹿児島市がある薩摩半島とは反対の東側にある、大隅半島のほぼ中央に「鹿屋市」はあります。海も山も近く美しい自然が広がり、その自然環境を生かした農業や畜産業、漁業が盛ん。黒毛和牛や黒豚、カンパチなどの産出額は国内トップクラス! この他、サツマイモやお茶、うなぎなど、数多くのおいしいものに恵まれています。

人口は約10万人で、古くから大隅半島の中心拠点として発展してきたこともあり、市内には商業施設や飲食店がそろい、生活がしやすいところも魅力。日本最大級の「かのやばら園」や、国立の「鹿屋体育大学」などの施設もあります。

そんな鹿屋に櫻井さんが初めて訪れたのは、2021年11月のこと。農家をはじめとした生産者や、加工品を手がける事業者、特産品が味わえる飲食店などに足を運び、地元の人と触れ合う中で何よりも驚いたのは、「住んでいる人たちが皆、東京の人たちよりもちょっと楽しそうに見えた」ことでした。

「東京で、地方出身の友人たちから『地元には何もなくて……』と聞き、真に受けていた私は、本当に失礼な話ですが、地方に対してちょっと寂れた、薄暗いようなイメージを持っていました。けれど、実際に訪れてみると全然そんなことはなくて。みなさん、楽しそうに暮らしていました。また、道で会う方が『どこから来たの?』と声をかけてくれたり、畑でわからないことを質問すると丁寧に教えてくれたり、東京では考えられないような人の温かさに触れ、心が休まりました」

崖から突き落とされたように180度価値観が変わった、仲間との出会い

もう一つ、櫻井さんに大きな衝撃を与えたのは、フィールドワークに参加していたフリーランスや多拠点居住者、移住検討者など、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちとの出会いでした。フィールドワークが終わった後、錦江湾に面した宿泊施設「ユクサおおすみ海の学校」で、焚き火を囲んで語り合う機会がありました。

「それまで、私の周りは大半が広告業界の人で、大学の友人もみんな正社員として働いていました。たまに友人たちに会うと、『今の年収どう?』みたいな話になりがちで、正社員から外れると社会から浮いてしまうと思い込んでいました。でも、フィールドワークの参加者は、本当にいろいろな働き方、生き方をしていて、とても輝いて見えたんです」

鹿屋の街の人やフィールドワークの参加者と出会う中で、自分の価値観や優先順位が180度変わっていったと、櫻井さんは振り返ります。

「鹿屋を訪れる前までは、収入(お金)に気を取られていました。社会人としては、安定した収入を得ることが大切で、そのためには正社員として働く以外の選択肢はないと思っていました。けれど、鹿屋を訪れてからは、これまでの生き方がすべてじゃない。一度、身軽になって、新しい生き方や暮らし方を考えてみたいと思ったんです」

やりたいことを口にするようにしたら、働き先が次々と見つかった!


北海道では、大規模農業を体験。

東京へと戻った櫻井さんは、数週間後に会社へ辞意を伝え、2022年2月末に退職。そこから1年かけて、北は北海道の士別から南は鹿児島県の鹿屋まで、全国8カ所を巡りながら各地で1カ月ほど働きました。農業についても、有機農業から自然農、大規模農業など、さまざまなスタイルを体験。このほかにも、建物の修繕やレジ打ち、接客、ソフトクリームの提供、薪ストーブの火おこし、車の運転など、さまざまなことを経験しました。

「少しずつできることが増えていくのがうれしくて、自信につながっていきました」


和歌山では完熟梅の収穫と選別を学ぶ。完熟梅は香りが芳醇で、皮が薄く、梅酒や梅干しにしたときにおいしさが引き立つ。

こんなふうに全国を巡ることができたのも、鹿屋のフィールドワークで出会ったフリーランスの参加者に、「もっとやりたいことを言葉にしたほうがいいよ」とアドバイスをされたことがきっかけ。最初に訪れた宮城県の気仙沼で、一緒に働いていた大学生たちに「実は、農業をやってみたいんだよね」と話すと、たまたま農業大学の学生がいて、農業を学べる働き先を紹介してくれました。そこからつながって訪れた農園も多いそうです。

鹿屋に短期滞在しながら、生き方を見つめ直す『人生の夏休み』を

全国の農園をめぐりながら、オンラインで「かのやローカルチャレンジスクール」にも参加していた櫻井さんが企画したのが、「なっじゃすん」(鹿児島弁で「夏休み」の意味)というプログラム。これは、以前の櫻井さんのように、人生や働くことについて漠然とした不安を抱きはじめた人に、「生きる」ことを見つめ直すための“人生の夏休み”を提供するプログラムです。

具体的には、鹿屋に10〜20日ほど滞在しながら、農業を通じて身体を動かす中で、「筋肉痛による達成感」や「ご飯のおいしさ」、「銭湯の心地良さ」などを体感。鹿屋で日常生活を送り癒されながら、「生きる」ことを見つめ直します。


鹿屋で1カ月滞在した農家で、ピーマンを収穫する櫻井さん。半日で軽トラがいっぱいに。

櫻井さんは、東京で働いていた頃は、偏頭痛や肌荒れがあったり、体重が増えたり、健康診断には引っかからないものの、かなり不健康だったと振り返ります。また、仕事が終わって帰宅してからも、自宅で一人反省会を行うなど、精神的にも追い詰められていました。

「私と同じように、漠然と不安を感じている方や日々を忙しく過ごしている方に、一旦立ち止まって普段と違う環境に身を置くことで、生き方を見つめ直すきっかけにしてもらえたらうれしいです」

「なっじゃすん」に興味のある方は、ローカルデザインラボ事務局(E-mail : afujiwara12@gmail.com)まで問い合わせてみてください!

第2回「かのやローカルチャレンジスクール」参加者募集中。
「かのやローカルキャリア相談会」も開催!

櫻井さんも参加してきた「かのやローカルチャレンジスクール」では、個々のスキルや得意なことを活かし、鹿屋の地域資源と組み合わせて、自身が挑戦したい「マイプロジェクト」を企画し実践することができます。幅広いキャリアや年齢層の人々が参加し、お互いに協力しながらプロジェクトを立ち上げています。

毎月オンラインで開催するワークに加えて、実際に鹿屋に足を運ぶフィールドワークも設けているのが特徴。鹿屋に暮らす人たちともつながり協力を得ながら、プロジェクトを企画するだけでなく、実際に形にしていくところまで継続して取り組むことができます。

「私にとって『かのやローカルチャレンジスクール』は、やりたいことを気軽に言葉にできる場所でした。やりたいことを口にすると、スクールのメンバーたちは、『それ面白そう! やってみようよ』と背中を押してくれますし、鹿屋市の職員のみなさんや住民のみなさんも、さまざまな形でサポートしてくれます。やりたいことを気軽に口にでき、なんだか実現できそうと思わせてくれるところが、『かのやローカルチャレンジスクール』の魅力! 私は、この一年、口に出したことが全部と言っていいほど実現しています」


鹿屋市では現在、9月からスタートする第2回「かのやローカルチャレンジスクール」の参加者を募集しています。

また、櫻井さんのように、自分一人でこれからのキャリアを考えるのではなく、第三者と一緒に、思いもよらなかった選択肢の中から、これからの働き方を考えることができる「かのやローカルキャリア相談会」も開催中です。興味のある方は、リンク先からぜひ応募してみてください!

文・杉山正博


▼「かのやローカルキャリア相談会」についての詳細は、こちらのページをご覧ください。
これからの働き方やふるさとを考える
「かのやローカルキャリア相談会」開催中!

                   
第2回
「かのやローカルチャレンジスクール」
開催日 2023年9月3日(日) 〜2024年1月20日(土)
会場鹿児島県鹿屋市/オンライン
主催鹿児島県 鹿屋市 地域活力推進課
参加方法下記応募フォームよりお申込みください。
お問い合わせ先ローカルデザインラボ事務局
afujiwara12@gmail.com
※TURNSでは紹介のみ行っています。お問い合わせ・ご連絡はイベント主催者さまへお願いします。

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