【イベントレポート】佐賀で何かしたい! を語る会
「Re:サガワークトークイベント」vol.2

自然に恵まれ、穏やかで過ごしやすい気候が特徴の佐賀県。子育て支援の取り組みも充実しており、ゆったりした環境で生活したい人や、のびのび子育てをしたい人におすすめの移住先です。

11月4日(土)、首都圏で暮らす佐賀県ゆかりの人たちが集まって、佐賀のトレンドやこれからの働き方・暮らし方について語り合うトークセッション&交流会「Re:サガワークトークイベント」が開催されました。このイベントでは、佐賀県への移住者を迎えてのゲストトークやクロストーク、山口祥義佐賀県知事(以下、知事)によるプレゼンテーション、参加者同士のグループトークが行われました。さらに、東京・渋谷の「おばんざいDININGみなみ」による佐賀グルメも提供され、ゲストも参加者も一緒に楽しみながら交流を深めていきました。

前回(2023年3月開催)を上回る熱いトークと最新情報で、大いに盛り上がった当日の様子をレポートします!

会場は、東京・品川区の「NEWPEACEオフィス」。オープンキッチンを併設したユニークで開放感な空間です。オープンキッチンではケータリングの料理が手際良く用意され、ゲストや参加者が続々と会場入り。開会前のプレオープンでは、前回参加者であるhutan.coffee代表の大栗さんのコーヒーと、佐賀の和菓子屋「菓心まるいち」の和菓子が提供されました。コーヒーとお菓子を片手に、和やかなムードが広がります。

ゲストトーク
移住者が語る「わたしの移住までの道のりと実際の暮らし」

ゲストスピーカーや運営スタッフの多くが佐賀にゆかりを持つ、佐賀色満載のイベントがいよいよスタート。前回のイベントをきっかけに3組の移住が決まり、冒頭の挨拶に立った佐賀県移住支援室の副島室長も「イベントを通じて、佐賀への関心を高めて欲しい」と声が弾みます。

続いて、モデレーターを務める佐賀県嬉野温泉一古い旅館「大村屋」の15代目社長・北川健太さんが自己紹介。北川さんは、スリッパ温泉卓球大会や地元農家が観光客をもてなす「嬉野茶時」を企画したり、佐賀県のFMラジオ局でパーソナリティを務めたりするなど、多彩な活動をしています。そんなユニークなお話に会場が湧いたところで、佐賀県にUターン、Iターンしたゲストスピーカー3名が登場しました。

ゲストスピーカー①:野中将司さん(株式会社イーダブリュエムファクトリー)

野中さんは、神奈川県の自動車部品メーカーに勤めていました。共働きで双子の子育てに追われる中、3人目のお子さんの誕生を控えてUターンを決意します。収入よりも「自分は何がしたいか」を軸に転職先を模索し、その中で興味を抱いたのが、イーダブリュエムファクトリーが募集していた「地域プランナー」という職種でした。

移住して3年、現在は佐賀県産業スマート化センターのセンター長として県内企業のDX推進事業を担当。3児の父としても奮闘中ですが、「地域全体で子育てしているイメージ。とにかく子育てがしやすいです」と笑顔で語ります。


野中将司さん

ゲストスピーカー②:守田桃実さん(税理士法人諸井会計)

旅行好きで全国各地を旅してきた守田さんは、佐賀の人たちの温かな人柄に惹かれて佐賀移住を決めたと言います。佐賀県のホームページや移住者ブログで移住関連の情報を集め、同時に求人サイトで仕事探し。今、勤務している会計事務所に採用され、2022年3月に出身地の北海道から移住しました。

「はじめは知り合いが一人もいない状態でしたが、会社の同期の子と出かけた先で交流の輪が広がり、その流れで知った『移住者女子会』というイベントに思い切って参加。同世代の女友達が増えて、移住1年で友達がたくさんできました」


守田桃実さん

ゲストスピーカー③:いわたてただすけさん(伊万里の求人)

いわたてさんは、6年半前に東京から伊万里に家族でIターン。妻が伊万里出身で、自身は住む場所を選ばないフリーランスの広告業だったこともあり、子どもの小学校入学のタイミングで移住しました。移住前から佐賀の情報が少ないと感じていたいわたてさんは、自ら佐賀情報を発信する側になります。それを機に佐賀県庁とのつながりが生まれ、移住後はコミュニティカフェに足繁く通って地域交流を図りました。

「培った人脈を活かして、地域の人材確保と育成、交流を目的とする『伊万里の求人』の運営事務局長を務めるまでに至り、地域貢献や移住者関連の企画運営に複数関わっています。東京ではプロジェクトの一端を担う役割でしたが、佐賀ではプロジェクト全体を任されることが多く、スキルもコミュニケーション力も急速に上がりました」と語り、「佐賀の暮らしは最高です」と言い切ります。


いわたてただすけさん

佐賀の穏やかな県民性や多様な人々を受け入れるオープンなマインドが、移住者の暮らしの満足度に直結していることが共通認識としてあるようです。

参加者同士でグループトーク
「移住して何がしたい? 踏みきれない理由は何?」

ゲストトークを踏まえて参加者同士のグループトークを実施。知事やゲストスピーカー、運営スタッフも加わって、1グループ4〜5名、計8グループに分かれます。各テーブルに「アクセルポイント」(移住して実現したいライフスタイルなど)、「ブレーキポイント」(移住に踏み切れない悩みや不安、課題など)を記入するワークシートが配られ、そのシートを活用してそれぞれの思いをシェアしていきます。

アクセルポイントに、子育てや自然の豊かさ、ワークライフバランスの取りやすさなどの佐賀暮らしに求めるポイントが多く書き込まれた一方で、ブレーキポイントでは、キャリアや人間関係に対する不安が目立ちました。さまざまな意見を共有し合うことで、参加者同士の距離感がグッと縮まっていきました。

佐賀県知事のプレゼンテーションで佐賀のトレンドをキャッチ

グループトークが盛り上がったところで、知事が登壇。

実は、知事自身も9年前に家族で佐賀に引っ越してきた移住組。冒頭で、移住の経緯や「人生をかけた挑戦をしたい、佐賀を良くしたい」という思いを語りました。そして、佐賀暮らしのよさや現在の取り組みを紹介するプレゼンテーションに入ります。


佐賀県知事・山口祥義さん

今年、男子プロバスケットボールのB1リーグに昇格した佐賀バルーナーズのホームでもある「SAGAアリーナ」(今年5月13日オープン)を紹介。“新時代のエンターテインメントアリーナ”として佐賀の文化や経済の活性化に貢献していると語ります。

また、「子育てし大県“さが”プロジェクト」による充実した子育て支援策について詳しく説明。その中でも特に注目すべき事業として、全額公費助成事業による中学3年生希望者全員のピロリ菌検査・除去を実施していること、ピロリ菌を除菌することが胃がん減少につながることを紹介しました。このほか、子育て相談アプリ「mamari(ママリ)」の活用や、新刊児童書全点購入による子どもたちの活字離れ対策など、子育て世代には興味深い施策を次々と展開しています。


「街が主役ではなく、住んでいる一人ひとりが主役です」と知事。ユーモアあふれる軽快なトークに参加者も熱心に聞き入ります。

「佐賀県の食料自給率は全国平均を大きく上回っています。また、地域の民間企業は柔軟な雇用形態を採用して多様な人材を受け入れており、佐賀県庁の中途採用率も全国トップクラスです。今、佐賀は勢いづいています!」という知事の言葉に、参加者の表情も明るくなります。

知事を交えたゲストトークセッション

続いてゲストスピーカー3名も登壇し、知事とのクロストークが展開されました。

最初に野中さんが県内企業のDXを進める中で、企業側の移住者受け入れ整備が課題であると口火を切りました。それに対して知事が企業関連の取り組みを紹介。唐津市の離島でオーガニックコスメメーカーが起業して雇用を創出するともに、エコツアーや離島留学で交流人口や地域活性化に貢献していること、嬉野温泉の旅館「和多屋別荘」に11社のサテライトオフィスが開設されていることなどを挙げます。さらに、県立大学創設が実現すれば産学官連携による受け入れ整備が進むと語ります。

守田さんの「佐賀のいいところがあまり知られていないのがもったいない」という意見には、知事も「同感」と大きく頷き、情報発信強化と、それに伴う人口減から人口増も念頭に施策を講じたいと丁寧に応えます。

いわたてさんは「『佐賀には何もない』と思われている状況が面白い」と現状を前向きに捉え、理想的な街の仕組みづくりを官民一体となって創造できる今が移住のチャンスと、知事とともに参加者を鼓舞しました。

佐賀で進む数々のイノベーションに期待が高まったところでタイムアップ。大きな拍手で会場が包まれます。

佐賀の食材に舌鼓を打ちながら交流会

イベントの締めくくりは、ゲストと運営スタッフ、参加者の交流会。佐賀県出身で渋谷に店舗を構える「おばんざいDININGみなみ」の田中みなみさんから、佐賀県産の食材を使った出来立てのメニューが紹介されると、参加者から歓声が上がりました。

〈提供された料理〉

・佐賀白石レンコンステーキ

・桜ポークステーキ(佐賀玉ねぎソース)

・ありたどりの唐揚げ

・佐賀県産玉ねぎと生ハムのサラダ

・イカ墨ラー油と有明海苔のおにぎり(活魚料理店『河太郎』と吉本興業のコラボ商品)等

料理やトークセッションの感想やグループトークの続きで会話が盛り上がり、知事やゲストも参加者と気さくに語り合います。

最後に、「困った時は頼ってください」と知事が参加者に温かい言葉をかけ、「佐賀さいこう!」の決めポーズで記念写真。会場は初対面の人ばかりとは思えないにぎわいとなり、新たなつながりが至る所で生まれていました。

\参加者の声/

「今日のイベントを通じて、佐賀県移住をより具体的に検討したい。帰って妻と早速相談してみます」(30代男性)

「広範囲で移住先を考える中、今回のイベントを知って参加しました。思っていた以上に佐賀の魅力を知れて、移住先のひとつとして前向きに考えたいです」(30代女性)

「子育て中なので、ピロリ菌の話はとても興味深かったです。医療費無料を掲げる自治体は数多くありますが、ピロリ菌の話は初めて。来てよかったです」(30代女性)

「妻が佐賀出身で、この度、佐賀でお店を出すことが決まりました。地域貢献を念頭に、コミュニティスポットになるような店づくりをしていきたいです」(40代男性)

取材後記

佐賀県の県民性が伝わるアットホームな雰囲気と、知事と参加者の距離感の近さがとても印象的でした。佐賀は子育て施策や新たな地場産業の創出に力を入れており、全国共通の人口減や人材不足の課題に対して、独自の取り組みやアイデアで挑戦しています。

こういった佐賀のよさをうまく届けていくことで、人口増に転じる日が来るのもそう遠くはないのかもしれません。佐賀ムーブメントに期待が高まるイベントでした。

取材・文:浜堀晴子

                   

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