神が宿る里 石徹白の暮らしを学ぶ

郡上藩江戸蔵屋敷 Vol.2 レポート

「郡上藩江戸屋敷vol.2神が宿る里 石徹白の暮らしを学ぶ」が7月22日(土)東京北青山のGLOCAL CAFÉにて行われました。今回のテーマは「神が宿る里『石徹白』の暮らしを学ぶワークショップ」。

古くから山岳信仰の対象として崇められてきた霊峰白山の麓に位置する郡上市のなかでも最奥地、白山登山道の入り口にある石徹白地区。その精神的で自然と繋がっている暮らし方や、自然エネルギーを活用した地域づくりの様子を3人のゲストが紹介してくれました。
また今回は9月8日~10日に開催される「郡上藩江戸屋敷」プログラムVol.3「郡上に行こう! 郡上例祭フィールドワーク」のプレイベントでもあり、寒水かのみず地区の300年続くといわれる「掛踊かけおどり」や、「大神楽」「伊勢神楽」など例年多くの観光客を集める郡上の秋の祭礼の特色や魅力、見どころといったところも披露されました。


1人目のゲストは石徹白で生まれ育った、その名も石徹白隼人さん。
石徹白さんは白山信仰のお膝元、白山中居神社の禰宜ねぎであり、石徹白財産区管理会長も務め、地域の貴重な歴史・文化を残すべく尽力されているまさに石徹白を知り尽くした方。西暦83年建立という白山中居神社、そこを中心とした白山信仰のもとに成り立ってきた石徹白地区の歴史や文化について詳しく話してくださいました。


平野彰秀さんは石徹白に移住して6年。
水力発電施設など自然エネルギー導入の仕事を手がける平野さんは、岐阜市出身で東京の大学に進学後、東京で就職。2007年に小型の水力発電施設を設置するプロジェクトで初めて石徹白を訪れ、地元の人々と一緒にやっていくなかで、「ここには現代ではなくしてしまったものが残っている」と魅力を感じ移住しました。

実は石徹白では、なんと大正13年には集落全世帯でお金を出し合い山間に水力発電所を作って、全ての家に電線を引き、完全に電気を自給するということを始めていたのだそう。「現代でもなかなか大変なのに、情報もない重機もないなか自分たちで作ってしまうというその精神、風土をここで学んでいきたい」と平野さん。


また、奥さんの馨生里かおりさんの手がける「石徹白洋品店」では、伝統の麻布を使った野良着「たつけ」を復刻。

「すべて直線裁ちの四角と三角の生地の縫い合わせで出来ているので、端切れが出なくて効率的。昔の人は自分たちで麻を育て、それを糸にし、染めて、織り、手を掛けて作ったものなので無駄にしなかったのでしょう。しかも機能的。裾は細く絞ってあり、股上や腰回りはたっぷりしているので動きやすい。そんなふうに地域に元々あったものや、地域の人たちに学びながらやっています」と話してくれました。

徳島県生まれの近藤佳奈さんは石徹白に移住して2年。石徹白地域おこし協力隊として活動する地域の若き担い手で、石徹白での自然体験プログラムの開発及び企画の運営、石徹白の魅力を情報発信しています。

「父が転勤族だったので国内外を問わず転々と移り住んできて、大学で建築を専攻した関係でアジア・アフリカの様々な地域も訪ねました。漠然と今後もそうやって生きていくのだろうと思っていましたが、初めて『ここで暮らしたい!』と思ったのが石徹白でした」という佳奈さん。

白山信仰に通じる人々の暮らしの所作や、ものの考え方、自然への何気ない心がけなどに、人と自然の結びつきを感じたといいます。

「雨が降っても、野菜が育ってありがたい。涼しくなってありがたい。雪解けが進むのでありがたい。雪が積もれば夏の水はこれで安心でありがたい。いろいろ起こる自然現象のなかで、どんなタイミングでも『ありがたい』と受け入れているのが素敵だと思いました」

石徹白の自然資源と、人の暮らしを紡ぎ合わせ、今後は都会の人たちが地元の人たちと出会えるより多く機会を作り、これからの生き方というのを考えられる時間を作っていきたいとのことでした。


後半は、「郡上藩江戸屋敷」プログラムVol.3に繋がる、郡上の秋の祭礼について寒水地区の鷲見菜月さんが紹介のあと、9月に訪れるツアーで行ってみたい所、やってみたいことなどをグループに分かれてトークセッション。また、石徹白で採れた新鮮な野菜もふるまわれました。味付けはシンプルに塩・コショウ・オリーブオイルなど。少ない調味料とは思えないほどしっかりとした味の野菜に感動しつつ、トークセッションが行われました。

この日の参加者は約40名。それぞれに、自然・山岳信仰に興味がある人、自然エネルギーに興味がある人、地域づくりに興味がある人、田舎暮らしに興味がある人と参加動機は様々でしたが、既に祭礼をきっかけに郡上市や石徹白を訪れたことのある人も多く、より具体的な提案や意見が活発に交わされていました。




「人は自然のなかに生かされている。自然の中でゆったりとした時間を持つこと、無心で神や自然と相対する時間を持つことが、明日からの自分の生活においても必ずプラスになることであろうと思います」という石徹白さん。次回プログラムの「郡上例祭フィールドワーク」に向けてのみ有意義なイベントとなりました。

そして次回開催のvol.3郡上へ行こう!郡上の例祭フィールドワークは、ここで話し合われた内容を元にツアーの行程が組まれます。さらに、ゲストとして登壇してくださった石徹白隼人さん、平野彰秀さん、近藤佳奈さんが石徹白で活動している現場にも伺います。東京ではお話を聞くだけでしたが、今度は現地で実際に3人の案内のもと石徹白を感じてみてはいかがでしょうか。

イベント参加者と郡上に暮らす人々がともに作り上げたツアーですので、間違いなく充実した2泊3日となるでしょう!
vol.3郡上へ行こう!郡上の例祭フィールドワーク

(文:鹿島文俊  写真:矢野航)

                   

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