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【レポート】見る・使う・創る。様々な切り口で器を体感する旅
「器をめぐる旅 会津本郷焼編」ツアーレポート

東京から新幹線と車で3時間ほど、福島県郡山市から西、会津若松市の西隣りに位置する「会津美里町」。山に囲まれた盆地に、田んぼや蕎麦畑が一面に広がる自然豊かなこの地域は「会津本郷焼」の発祥の地。

今回は会津美里町を知るきっかけとして「器をめぐる旅」を開催しました!都会から器好きのメンバー16名が訪れ、ろくろ体験や窯元巡り、会津本郷焼の器を使ったカフェなど、器を通して様々な視点で、会津美里町の魅力に触れてきました。ツアー参加者の方がこの旅の中で感じた事とともに、その様子をお伝えしたいと思います。

 

1日目 会津美里町の地域や歴史、暮らしを知る

東京から新幹線とバスで約3時間ほどで会津美里町に到着。旅の始まりは「Café&marché Hattando」でランチ。地元の有志で営業しているこのカフェは丘の上に位置し、見晴らしが抜群。ちょうど黄金色の稲穂が揺れる季節で、窓からは隣接しているワイン畑と会津美里町の街並みが一望できました。こちらのカフェでは、食事を会津本郷焼の器で提供してくれます。名産の高田梅を使ったパスタや、地元の農業高校が育てた卵を使ったプリンを食べながら、さっそく器を通して会津美里町の食に触れることができました。

ランチの後には目の前にあるワイン畑でぶどう収穫を体験。カベルネソーヴィニオンという赤ワイン用のぶどうだそうで、この近くではワイナリーの開業に向けて準備が進められていました。休日は「Café&marché Hattando」で働き、この日のぶどう収穫体験でも収穫の仕方を教えてくださった地域おこし協力隊の菅家真実さんは「会津美里町を代表するワインを作りたい」と語ってくれました。


 
その後、バスで移動し、「法用寺」を参拝。
法用寺は養老4年(720年)に開基、会津坂下町の恵隆寺に次いで、会津で二番目に古い寺院です。こちらにある三重塔は会津に現存する唯一の塔で、江戸時代中期の安永9年(1780年)に完成し、県重要文化財に指定されています。このお寺には、平安時代に造られた仁王像、室町時代の銅鐘や明治時代につくられた石川啄木の歌碑など、時代の違う様々な文化財があり、会津美里町の歴史の深さを知ることができます。


 
そして、1日目の最後は高田地域永井野地区にある「長福寺」を訪れ、坐禅を体験しました。都会の生活ではなかなか感じることのできない静けさのなかで、風の音や鳥や虫の鳴き声に耳を澄まして、ゆっくりと深呼吸をし、自分を見つめ直す良い機会になりました。また、坐禅後の“お寺カフェ”では、会津本郷焼の器で薬草茶やお茶菓子をいただきました。「長福寺」の和尚さんはとても可愛らしく穏やかな方で、お別れの際には参加者から「握手してください」とファンになってしまう方もいました。


 
今回のツアーで宿泊した場所は新鶴地域にある「新鶴温泉 ほっとぴあ新鶴」。夕食を兼ねた懇親会では「工房彩里」の馬場美穂さんと、地域おこし協力隊で会津本郷焼のPRを担当されている渡部未来さんをお招きして、会津美里町の暮らしぶりや「会津本郷焼」についてお話していただきました。
特別ゲストになんと鉄拳登場!?と思いきや、鉄拳に扮した会津美里町役場の関本さんが「あるあるネタ」で会津美里町をアピールして場を沸かせてくれました。

また、翌日の「ろくろ体験」に向け、どの工房に行くかガチャポンでチーム分けをしました。行き先が分かると、どんな器を作ろうかパンフレットを熱心に読んだり、みなさんで相談をしていました。窯元めぐりを楽しみにしながら、1日目は終了しました。いよいよ明日は「器をめぐる旅」が本格的にスタート!

 

2日目 窯元のある会津本郷エリアへ

2日目も絶好の散策日和のお天気で旅が始まりました。「新鶴温泉 ほっとぴあ新鶴」は丘の上にあり、会津美里町の絶景を一望できます。参加者の中にはランニングが趣味で、早朝にホテルの周辺をランニングした方もいらっしゃいました。「空気が東京とまったく違う!緑も多いし走っていてとても気持ちが良くて最高でした!」

私たちは会津美里町を走る「只見線」に揺られ、窯元のある会津本郷エリアへ向かいました。只見線は会津若松駅から新潟県魚沼市の小出駅までを結ぶローカル線で、電車が走る風景、車窓からの眺め共に絶景で、写真を撮りに電車ファンがたくさん訪れます。

乗車したのは「根岸駅」から「会津本郷駅」までの区間。車内には学生が多く乗車しており、隣の市の「会津若松駅」までの重要な交通手段になっているそうです。
ちょうど収穫期を迎え始めた黄金色の稲穂や、真っ白な花をつけた蕎麦畑が広がる田畑の中を通り抜けていきました。窓を開け、爽やかな風と風景に和んでいる内にあっという間に到着。

そして、ここからは本格的に「器をめぐる旅」がスタートです。
「本郷インフォメーションセンター」が出発地点。すぐ隣には、「会津本郷陶磁器会館」があり、会津本郷焼の組合に加入している13の窯元が焼き物を販売していたり、会津本郷エリアの情報を案内してくれます。参加者はたくさんある器の中でお気に入りの器を見つけようと真剣に手にとっていました。

会津本郷地域にお住まいで建築士の竹内樹美さんによる案内のもと、会津本郷エリアの小道や公園などを通りながら、窯元を巡りました。ときおり、道の途中や川底に「じゃらんかけ」と呼ばれる陶磁器の欠片が敷かれているのがこのまちならでは。昔ながらの自然がたくさん残っており、用水路がある道では、水の流れる音を聞きながら歩くことができました。また、公園や丘の上にある窯元までの道乗りの中にも緑がたくさんあり、どこか懐かしく感じます。


 
一ヶ所目に向かったのは、1718年創業の歴史ある「宗像窯」。丘の上にある東北最古と言われる登り窯を九代目の宗像利訓さんに説明していただき、工房では八代当主の宗像利浩さんによる器作りを見学させていただきました。

次に向かった「草春窯 工房爽」は、冬を迎えるために薪割り作業中の田崎さんが笑顔で迎えてくれました。ここは案内役の竹内さんが設計した素敵な工房兼住宅になっていて、リビングには薪ストーブがあります。冬が厳しい会津ですが、暖かな火を囲みながら自作のカップでコーヒーを味わう、そんな贅沢な時間の過ごし方だってできるのです。

驚いたのは、草春窯 工房爽のカップです。光にかざすと、光が透き通って見た目も楽しめる器です。草春窯 工房爽の特徴はなんといっても、美しい白磁。会津の雪の様な繊細な白の器です。

「会津本郷焼」には陶器と磁器のどちらもあり、形や色も様々です。だからこそ、作り手の人柄や窯元の歴史がそれぞれの個性となり、作品を生み出しているように感じました。


 
この日の昼食は「cafe yuinoba」へ。こちらは「樹ノ音工房」という窯元が週末のみ運営しており、樹ノ音工房の器で食事を楽しめるお店です。

ランチのあとは、「樹ノ音工房」、「流紋焼」、「工房彩里」の3班に分かれてろくろ体験へ。ろくろ体験を楽しみに、この旅へ参加した方も多く、実際にろくろの前に座ると、緊張とワクワクでみなさん大盛り上がりでした。

「樹ノ音工房」はcafe yuinobaのすぐ側にあり、おしゃれなショップに併設した工房内には、色とりどりの器が並んでいます。体験中にも若い方々が次々に来店されていました。

「流紋焼」は会津美里町で一番大きい工房で、一度に千個も焼ける窯があります。こちらでは、ろくろ体験前に、とても大きな工房の中で、土を混ぜるところから、形をつくるまでの工程を見学しました。

「工房彩里」は1日目夜の懇親会のゲスト・馬場美穂さんご夫婦が営む工房です。会津美里町に移住され、「流紋焼」修行を積んだのちに独立してお店を構えています。柔らかい雰囲気の器は、馬場さんご夫妻の優しい人柄が表れているようです。

最初はみなさん緊張もありましたが、職人さんからアドバイスをいただき、それぞれのペースで無事完成しました。器は焼いたあと、後日東京へ送っていただきます。出来上がりがとても楽しみです。

ろくろ体験のあとは自由時間で、それぞれ会津本郷エリアを散策しました。目星を付けていた器を購入したり、散策する中で窯元を発見し、覗いてみたりと、みなさん窯元めぐりを楽しんでいました。


 
自由時間を終え、最後に向かったのは白鳳山公園。
中世会津の領主、葦名盛氏が居城として築いた東北最大級の山城跡です。現在は遊歩道や車道、駐車場、トイレ、フィールドアスレチック広場などが整備され、春は桜の名所としても賑わいます。山の各所にある広場では、会津盆地や会津のシンボル「磐梯山」が望めます。
こちらでは、お茶の教室を開いている三浦弓子さんと生徒さんが迎えてくださり、呈茶体験をしました。白鳳山では毎年5月に野点お茶会を開いており、この絶景を楽しみながら「会津本郷焼」の器でお茶を楽しむそうです。

私たちも実際に会津美里町の風景を前に、お茶とお菓子を楽しみながら、今回の旅を振り返りました。

参加した方々からは、「食べものが美味しい。」「田園風景にとても癒されました。只見線からの写真もたくさん撮ったので、友達に自慢したいです。」「座禅体験で静かな時間に癒された。」「ろくろに集中する時間が良かった。」「季節が変わったら、また違う魅力も味わえると思う。また、来たいです。」「また、来たいと思わせてくれる人の温かさがあった。」という言葉が聞こえて来ました。

 

器を通して知ることのできた、会津美里町の魅力

器を見る、使う、創る…と、会津本郷焼を通して様々な角度から会津美里町の魅力に触れた今回の旅。

そんな視点を通して、都会では忘れがちな、五感が研ぎ澄まされていくような、伸びやかな時間を過ごせました。参加者からは「自分を見つめ直す良い機会を持てた。」「会津美里町の人の温かさにもとても感動しました。」という声を多くいただきました。
それは、会津美里町に流れる、自然豊かで穏やかな空気が、私たちをゆったりと受け入れて、心の余裕を与えてくれるからではないでしょうか。また、そのような地域に住んでいる人たちだからこそ、訪れる人々を温かく迎えてくれる、優しくて器の大きな人たちがたくさんいるのでしょう。


 
(写真・文:田代恵理)