千葉県と聞くと、テーマパークや大型イベント施設など、レクリエーションスポットをイメージする人が多いかもしれません。しかし実際は、海も里山もあり、食べ物も美味しい、豊かな自然の中での生活にもオススメの場所なのです。東京駅から1時間から2時間程度で着くので、アクセスのしやすさも申し分ありません。
インフルエンサーのpitoさんが千葉県海匝地域で二拠点生活を体験した1週間。密着レポート【後編】をお届けします。
歴史ある商店街で始まる新たな挑戦
知らない町をぶらりと歩くのも、地方散策の面白さ。匝瑳市の「本町通り商店街」は、国の有形文化財に登録された建造物が4棟もある、建築好きにはたまらない場所となっています。雰囲気がある街並みをバックに、いろいろなポーズで写真を撮るpitoさん。商店街を歩きながら、「歴史のある街並みはお散歩していて楽しい」と笑顔を見せます。
1781創業の長い歴史を持つ和菓子屋「鶴泉堂」も、登録有形文化財のひとつです。元気な女将さんが迎えてくれる店内には、季節の一品と共に昔ながらの煎餅や羊羹なども並んでいます。
この地に来たら、ぜひ食べてほしいのが「初夢漬」と呼ばれる茄子の砂糖漬け。茄子に砂糖と驚くなかれ。朝廷にも献上された、江戸時代から続く歴史あるお菓子なのです。ザクッとした食感とジュワっと口のなかに広がる甘味は、まるで琥珀糖。渋い日本茶は言うまでもなく、香り高いブランデーにも合いそうな一品です。
感想をpitoさんに伺うと「古くからの製法で作られているものが、今もそのままの味で食べられるのはすごい! ずっと続いて欲しいですね。お茶だけでなくお酒にも合うと聞いたので、ぜひ試してみたいです」と未知なるお菓子との出会いを楽しんでいました。
<鶴泉堂>
住所:〒289-2144 千葉県匝瑳市八日市場イ2871
HP:https://www.kakusendou.jp/
次に訪れたのは、江戸時代の古い建物を再利用したブックカフェ&リユース店舗「ぐるり」をオープンしたばかりの匝瑳市の地域おこし協力隊である北條将徳さん。
「ぐるり」という店名には「本を中心とするいろいろなモノを循環させて、新しいつながりや縁をぐるっと紡いでいく」という想いが込められ、地域の学生を巻きこみながら、壁の色を塗ったりメニューを考案したり、自らの手でリノベーションを進めてきたそうです。すでに大きなミッションに挑んでいるようにも思えますが、北條さんは「ぐるり」はまだスタート地点に過ぎないと言います。
「本当にやりたいのは、地域の資源やお金、物を循環させることなんです。ひとつやってみたいと思っているのは、地域に根付いている祭をデジタル活用による資産化して、地域外に関係人口を増やしていくこと。何事もちょっと体験しておくとハードルは低くなるので。既存のリソースを付加価値を与えて、人の流れを作っていきたいと思います」
熱い想いを聞いたpitoさんは「新しい施設をつくったり、街を盛り上げようとしているのが素敵ですね」とお話していました。
飯高檀林跡飯高寺でホッと一息
「飯高檀林跡飯高寺」は里山を散歩したり史跡を巡ったり、時間や気分に合わせてそれぞれの楽しみ方を見つけられるスポットになっています。
檀林とは、仏教の学問所のこと。「飯高寺」は、日本で最古の大学だとか。境内に構える建物は、長い歴史を重ねてきた威厳を感じさせます。現地にいるガイドさんが、丁寧に建物や歴史について説明してくれます。
<飯高寺>
〒289-2173 千葉県匝瑳市飯高1789
「農業をエンターテイメントにしたい」という坂尾さんの想い
銚子市にある築90年の古民家施設を改築した「farm & stay YAOYA」は、農業体験ができる宿。日本文化とモダンが融合したおしゃれな空間でゆったりとした時間を過ごせます。座布団としてに使われているクッションがネパールからの輸入品だったりと、一つひとつのアイテムにもオーナーのこだわりとセンスが光ります。「とっても素敵にリノベーションされていて、おしゃれな空間」と目を輝かせるpitoさん。
また、夜になると「庭から見える星が本当に綺麗」と感動していました。
隣接するレストラン「808+DELI」では、外部から料理人を招き特別メニューを振舞うことも。アンティーク家具が並ぶ品のいい空間は、ノスタルジックな世界に迷い込んだような気分になります。
洗練された宿でゆっくり過ごした翌日は、キャベツ畑で農業体験。時期によって変わりますが、苗植えと収穫を体験できます。特徴的なのは、いずれの場合もアフロ+サングラスのドレスコードが必須であること。
“畑はダンスフロア”というオーナーのポリシーから、畑に入る際はパーティー仕様におめかしする必要があるのです(アフロとサングラスは、現地で借りられます)。はじめはどこか気恥ずかしさがあるものの、一度身につけてしまうと段々とお祭り気分に。ポーズを決めて写真を撮り合うのも、特別な思い出になること請け合いです。畑へ入るpitoさんも、パーティールックに大変身。「アフロで体験したのも、いい思い出になりました」と語っていました。
獲れたてキャベツの味はというと、今まで食べてきたキャベツが別の野菜だったのではないかと思うほど、瑞々しくて甘い。キャベツ独特の後から来る苦味がなく、ただひたすら爽やかな風味が広がっていきます。芯を切ったときに滴る尋常ではない水分も、いかにフレッシュなのかを物語っています。収穫前のキャベツを切り出してもらい、かじりついたpitoさんも「ジューシーでとっても甘い!」と驚きの表情を浮かべていました。
そんなキャベツを育て、「farm & stay YAOYA」を運営しているのが、Hennery Farmで代表を務めている坂尾英彦さん。この農場で作られるキャベツは、彼のトレードマークであるアフロヘア―にちなんで、「アフロきゃべつ」と名付けられています。
ご実家が代々続く農家だった坂尾さん。ストレートに家業を継いだのかといえばそうではなく、高校卒業後は就農を1年間経験すると、都内へ出て派遣社員として働きながら、クラブDJとしても活動していたそう。しかし、実力だけではどうにもならないのが音楽業界。理想と現実のギャップを痛感し、「音楽なら地元に帰ってもできるんじゃないか」と思い、銚子市へ戻ってきたそうです。
地元に戻ってきてからは、農業をやりながらインターネットや実店舗で輸入品販売をする日々。しかしながら、薄利多売を原則とする商いでは、売り上げで大手企業には適いません。そして思い立ったのです。「オリジナルで自分たちにしか、価値を決められないものを売ろう。じゃあ、農業だ」と。
「生産して出荷するだけの大量生産型の農業はやりたくないけど、自分の作った作品に値段をつけて売るのは面白そうだなと思ったんです。自分が頑張ることで業績が伸びていくなら、すごくやりがいもある」
そうして始まった、アフロきゃべつの生産。普通の人なら、特別なキャベツを生み出した時点で満足しそうなものですが、坂尾さんはそれだけでは飽き足らず、さらに事業を広げました。「farm & stay YAOYA」を始めたきっかけを問うと次のように返ってきました。
「宿泊することでたくさんの体験を楽しんだり、いろいろな人と話ができる、そんな場所をつくりたかったんです。農業体験を始めたのも、農業をもっと身近に感じてほしいから。僕は農業をエンターテインメントにしようと思っているんです。人って楽しい場所に集まるでしょ。畑が魅力的で楽しい場所になったら、行ってみようってなるんじゃないかなって。いくら自分のブランドとして価値を生み出せても、大量に生産して大量に売らないと売り上げはあがらない。だったら、300円のキャベツがきっかけで人と繋つながって、その人が銚子市に足を運んでくれたら嬉しいじゃないですか」
キャベツ畑にアフロヘアーというユニークな光景は、なんとなくキャッチーなことをやろうとして生まれたわけではない。坂尾さんの熱い志が生み出した景色だったのでした。
<farm & stay YAOYA>
住所:〒288-0855 千葉県銚子市猿田町958
HP:https://www.hennerymarket.com/blank-19
\マンガで二拠点生活の様子をチェック!/
今回の二拠点生活の様子が、マンガになりました。TURNSのInstagramで公開中!
併せてお楽しみください。
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文:坂井 彩花 写真:関口碧斗
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