ターンズビジネススクール番外編!

香川県三豊市フィールドワークをレポート

地域ビジネスの注目のエリア、三豊へ

9月中旬、TURNSビジネススクール1期受講生の有志メンバーたちと香川県三豊市にて一泊二日のフィールドワークを行った。
三豊市といえば、SNSをきっかけに「日本のウユニ塩湖」として一躍有名になった『父母ヶ浜』があるまちだが、TURNS読者のみなさまならお気づきであろう、TURNSvol.47〜地域経済を生み出す人たち〜で表紙を飾った『瀬戸内ビレッジ』の拠点になっているまちだ。
『瀬戸内ビレッジ』は三豊の地元企業連合で構成される会社で、今回表紙を飾っていただいたメンバー達に実際に会い、三豊で次々に生まれている地域ビジネスについて様々なお話を伺った。
驚くほどに見所があり過ぎた三豊市。訪問先の全てをここでお伝えすることはできないが、初日を中心に一部ご紹介する。

 

〜訪問先〜
【1日目】
UDON HOUSE▷おむすび座・ブレーメンカンパニーズ▷ku;bel▷父母ヶ浜▷百歳書店▷宗一郎珈琲▷父母ヶ浜PORT▷GATE▷古木里庫▷宗一郎豆腐・大家族宿辻家▷URASHIMA VILLAGE

三豊を案内してくれたのは、瀬戸内ビレッジ代表でプロジェクトデザイナーの古田秘馬さん、ターンズビジネススクールでも講師を務めた瀬戸内ワークス代表の原田佳南子さんをはじめとした、三豊の面白さをディープに知っている方々だ。

まず我々が集合したのは『UDON HOUSE』。ここは讃岐うどんを学びながら地域を楽しむことができる体験型宿泊施設で、原田さんが三豊に移住して立ち上げた。うどんは安い食べ物だからといって安価な価格設定はせず、明確なターゲット設定とコンセプトを持ち、適正な価格でのサービス提供を行なっている。

講師陣・受講生同士初めてリアルな対面をしたのだが、オンラインのビジネススクールですでに関わりがあったおかげで馴染むのも早い。新しい出会いにわくわくしながら、二日間のフィールドワークがはじまった。

次に、子ども連れで利用しやすい全席畳敷のブッフェ店『おむすび座』に訪問した。孤独な「孤育て」から「Co育て」となるよう、地域ぐるみの子育て共助環境をつくることを目指し運営されている。特別に作ったというふかふかした畳も特徴的だった。

この建物を運営しているのは隣接する「ブレーメンカンパニーズ」だ。
設計に携わった株主でもあるしわく堂では、代表の関さんに事業プレゼンを発表していただいた。サービス立ち上げの経緯や今後計画しているビリヤード事業についての内容だったのだが、三豊でのビリヤード人口はたったの3名しかいないことが判明するも、その事業計画には実現可能性とワクワク感満載で、さっそく三豊の地域ビジネスのエネルギーに対峙した瞬間となった。

昼食は焚火グリル付きホステル「ku;bel」へ。浪越オーナーシェフの料理に舌鼓。

「百歳書店」店内。これまで百年続いてきたもの、これから百年続けたいものをセレクトしている

創業100年を越える建築会社「菅組」が運営する「古木里庫(こきりこ)」。広い店内には古材や古道具が並ぶ

 

午後にはTURNSvol.39「新地方の経済入門」でも取材している今川宗一郎さんのお店も訪問。ご自身の顔をデザインしたインパクトのあるロゴが店の目印になっている。

今川さんは三豊が地元で、祖父が始めたスーパーが家業。一時は“後継者コンプレックス”に悩んだこともあったそうだが、自分自身で1から作り上げられる経営者になりたい思い「株式会社ウルトラ今川」を起業。

「地域のやりたい心に火をつける」というビジョンを掲げ、第一弾として父母ヶ浜に「宗一郎珈琲」をオープンした。今年4月には、世代を越えて集まれるような場所がないということから、老若男女が食べれる豆腐屋「宗一郎豆腐」も立ち上げた。どちらも今川さんご自身が「やりたい!」と思うことであると同時に、地域課題の解決策になっていることが共通している。ローカルで仕事を続けていくには、「自分のため」も「地域のため」も、同じくらい必要なことなのかもしれない。

今川さんのお話の中で、UDON HOUSEの原田さんから「何がしたいの?」と“存在価値を詰められている写真(笑)”を紹介していたのだが、彼女のような移住者の存在も地元民のやる気をバチバチに刺激していたようだ。
キムチ屋、納豆屋、パン屋などさまざまな展開を構想中で、今後の今川さんも非常に楽しみである。(もちろんロゴはすべて今川さんの顔!)

 

初日の締め括りは、瀬戸内ビレッジが今年オープンさせた一棟貸しの宿『URASHIMA VILLEGE』へ。地元企業の工務店、建材屋、地元のスーパー、交通インフラなどが出資をして、それぞれの得意分野を活かしあいながら運営されている。

入り口のドアを開けると、思わず歓声が上がる。どんな様子かは、ここに来た方のお楽しみに

おしゃれな館内に彩りを与える壁画も、地元メンバーが作ったものだ。宿の居心地の良さは、瀬戸内の多島美を堪能できる最高のロケーションだけではなく、関わったメンバーのこだわりと愛が滲み出ているからかもしれない。ここは三豊の地域ビジネスのすごさを象徴する場所と言えるだろう。

 

三豊の“変態”的建築へ潜入!

【2日目】
荘内半島オリーブ農園▷積凪▷三豊鶴▷demi1/2▷RACATI▷暮らしの森▷三好うどん▷UDON HOUSE

2日目は「荘内半島オリーブ農園」から訪問スタート。
広い空と海、そしてオリーブ畑の丘を見下ろせる絶景の一棟貸コテージがある場所なのだが、長年休耕田として放棄されていた敷地を開墾し、700本のオリーブを植樹したというから驚きだ。
現在はオリーブの加工品の生産も行っている。昔は地域の産物として育てられていたオリーブ畑は、新しい付加価値とともに再生されていた。

この日は生憎の天気だったが、目下にはオリーブ畑と瀬戸内海が広がる

この後は、「ど変態な場所を紹介するよ!」と古田さん。

一体どんなところに連れていかれるのかと思ったら、一際存在感を放つ「積凪(つむなぎ)」が現れた。「MOKURASU棟」と「KITAKEN棟」という趣の異なる二つの建物からなる一棟貸しのゲストハウスだ。
なるほど変態というわけあって、とにかく建築へのこだわりがすごい。三豊の建材屋と工務店がタッグ組んで作っており、「泊まれるショールーム」としての機能も持ち合わせる。そのため自社技術の見せ所として実験的ともいえるユニークな建築デザインが実践できるようだ(ちなみに棟の名前がそれぞれの社名に由来している)。大人が本気を出すと、こんなにも格好良くておもしろいクリエイティブが生まれるのだなあと感心してしまった。

 

そして次に向かった「三豊鶴TOJI」にも度肝を抜かれた。
明治に創業し、2005年に廃業してしまった元酒蔵「三豊鶴」。長年荒れたまま放置されており、「取り壊した方がいいんじゃないか」という声が上がり始めた頃、なんとか取り壊さない道はないかと集まった地元経営者5人によって、酒蔵体験型ゲストハウスとしてすばらしい復活を遂げた。

「Brew a New You!<さあ、新しい自分を醸そう!>」がコンセプトのこの宿では、宿泊客は「酒米」として扱われる。精米=服を脱ぐ、蒸米=蒸し風呂に入る、といった具合で、宿泊体験のステップを通して酒造りのプロセスを実体験できる仕組みになっているのだ。
瓶や樽など当時使われていた物をインテリアが随所に生かされ、建物からもただならぬこだわりが感じられる。修繕するのは難しいと言われていた建物だったのに、こんな風に新しい価値を醸造する場所にできるなんて、大きな拍手を送りたい。

風呂釜は実際に酒作りで作られていた大釜。水もお酒の仕込み水を使用しておりリアルに酒米気分が味わえる

 

三豊ブランドたるもの

記事の中では紹介しきれないが、この二日間で本当にたくさんの場所と人に出会った。ここまで読むとお気づきの方もいるかもしれないが、三豊には近年オープンした宿泊施設が多いことも特徴的だった。この2日間だけでも8箇所ゲストハウスを訪問したのだが、古田さんが言うにはこれでも3分の1くらい、とのこと。一体どれだけあるんだ…!?

しかもそのどれもクリエイティブの質が高く、確固としたコンセプトがある。それぞれ個性的で違うのに、不思議とある統一感は一体なんなのだろう?何も知らないで三豊に来たのだとしたら、外からアートディレクターやプロデューサーを呼んでクリエイティブを作ったのかと誤解していたことだろう。
良い場所がひとつふたつと生まれていくと、それが基準となりその後に作られるもののクオリティが守られていくのかもしれない。

建材加工会社が営む「Bean to barのチョコレート専門店RACATI」。障害者雇用を考えてはじめた事業だそう

「暮らしの森」の一角。敷地内にはライフスタイルショップ、工務店、料理教室など複数の店舗がある

共通していたのが、「そこに住む人たちが、その土地に元々あるものを生かしながら、自分が好きなことをめちゃくちゃ楽しそうにやっている」という事だ。
結果それがまちの課題を解決をしたり、新たな価値を創造している。新旧も、地元民も移住者も、お互いにリスペクトを払っていることも印象的だった。
点在する魅力的な地域ビジネスが面となり、「三豊ブランド」を醸成しているように思う。
読者のみなさまにも、ぜひ三豊に滞在して体感していただきたい。

(文:伊藤春華)

 

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