天草の自然を五感いっぱいに感じながら、 子どもたちの“生きる根っこ”を育む【保育園留学®️】

熊本県天草市牛深 もぐし海のこども園 レポート

野生のイルカが泳ぐ海と、緑の山々に囲まれた熊本県天草市。最南端の牛深地区はウミガメが産卵にくるほど美しい砂浜がある自然の宝庫。その海のすぐ近くにあるのが、幼保連携型認定こども園『もぐし海のこども園』だ。天草市と株式会社キッチハイクの連携のもと、町づくり事業として取り組む『保育園留学』プログラムにおいて2022年から受け入れをスタート。全国の子育て世代から注目を集めている保育園留学と、もぐし海のこども園独自の保育内容について、園長の福岡英人さんに話を伺った。

はだしで土の感触を知り、
遊びを通して感性を伸ばす

昭和39年に祖父が創設した『もぐし海のこども園』を、父から受け継いだ福岡園長。東京からUターンして12年。一度、外に出たからこそ、子育てをする環境として天草の魅力を再発見できたという。「天草は海に囲まれた島なので、地元の人にとって自然が多いのは当たり前。僕自身もそうでしたが、子を持つ親として、都会から天草に戻った時、この大自然の中で子育てできることがどんなに素晴らしいかを改めて感じました」。

原生林に囲まれた園庭は、ブランコやうんていなどの遊具が見当たらない。「園庭には遊具を置いていません。真ん中に立つ栴檀(せんだん)の木と、土のトンネル、泥山がうちのシンボル。子どもたちは木の枝や葉っぱ、土、石、花など自然素材で色んなものを作って自由に遊んでいます」と、福岡園長。ここではどれだけ泥んこになって遊んでも大丈夫。園庭に寝転がっている子がいると、「ひなたでぼ〜っとしているようでも、風の流れや、日差しのまぶしさ、土の匂いを感じているんです」と教えてくれた。

はだしで走り回る子どもの姿も印象的だ。自分たちの手足で直に触れた感覚をインプットしたら、それをアウトプットするのが遊び。自然に親しみながら遊ぶことで、子どもたちは自ら考える力を身につけ、感性を伸ばし、豊かな創造力と表現力を育んでいく。

自然との遊びから生まれる
子どもの心を表現したアート

「子どもたちは絵を描いているんですよ」と、福岡園長が見せてくれたのはダイナミックな色使いの抽象画。子どもたちが自然との遊びの中からつかんだ感覚を、心のままに表現する、絵を生かした保育だ。「僕らが用意するのは白い画用紙と絵の具だけで、あとは子どもたちの自由。筆を使わず手で色を混ぜて塗ったり、遊びが深まるにつれて表現が変わったり。絵ができあがるプロセスも大事にしています」。

こども園の職員は、絵の描き方は指導せず、きれいやかわいいといった形容詞も使わない。主役はあくまで子どもたち。大人の価値観を与えることなく、一人ひとりの“らしさ”を大切に、遊びや成長を手助けし、見守っている。「僕らが子どもたちに教えてもらうことも多いです。子どもの目線に合わせて物事を見ると、自分の固定観念がどんどん良いほうに崩されていって、新しい世界が次々に広がる。それに、たとえ幼少期のことははっきり覚えてなくても、自分で経験したものが土台になります。成長し、生きる“根っこ”ですね」。

地元産の有機食材をガブリと噛む。
自然への感謝と歯を大事にした食育

こども園の給食やおやつはすべて手づくり。地元の茂串の海で採れた塩など天草産の無添加・有機食材のほか、近くにある畑で子どもたちが育てた野菜も献立に取り入れている。

また、ユニークなのが、歯科医の協力のもと口腔の発達に着目した取り組みだ。「最近の子どもたちはかたいものを食べる機会が減っていますよね。でも、噛むことを意識した食事をすると、歯やあごなど骨格がしっかりするし、虫歯の予防や免疫力の向上にもつながります。給食でガブリとよく噛めるように食材を大きくカットしたり、定期的な口腔調査も行っています」と、福岡園長。

気候の良い季節は、園庭にテーブルを出して給食を食べることも。食は健康の基本。おいしい食事を通して、健やかな体と、自然に感謝する心が育まれている。

保育園留学は子どもと家族の
健やかな未来につながる第一歩

福岡園長に、天草の保育園留学について伺うと、「やっぱり自然とのふれあいを大事にしたいご家族が多いですね」と教えてくれた。「保育園留学で来たお子さんは、最初はちょっと緊張しますが、本当になじむのが早いですよ。地元の子たちも、他所から来たとか遠巻きに見ないでフラットに接するから、すぐ一緒に遊び始める(笑)。大人は手を貸さず、子どものことは子どもにまかせています」。また、園外活動でも子どもたちの距離が一気に縮まるという。「近くの茂串白浜海水浴場に子どもたちを連れて行って磯遊びをします。貝殻を拾ったり、海の生きものを見つけたり、みんなもう夢中ですよ。都会から来た子はもちろん、その親御さんもすごく楽しまれて、『こういう経験は都会ではできない』と喜んでくださっています」。

海のそばで働きながら子育てがしたい、自然の恵みを感じながら元気に育ってほしい。天草の暮らしを体験できる保育園留学は、子どもと家族の心身を豊かに満たし、健やかな未来につながる一歩になるかもしれない。

【保育園留学体験インタビュー】

苦手だったお箸にもトライ!
天草の子どもたちと過ごすうちに、できることが増えました

体中で自然とふれあって
のびのびと遊ぶ楽しさを体験

子どもが自然の中でどろんこになって遊ぶ『もぐし海のこども園』の取り組みに興味をもち、都会の保育園ではできない体験をしてほしいと、保育園留学®️に参加したKさん。「東京で通っている保育園はビルの中にあって、お散歩で行く公園も緑が少ないし、体を動かす場所も限られています。小さなうちに、もっと自然の中でのびのび遊べる体験ができたら…と思って、保育園留学に行きました。実際にどろんこになって遊べて良かったです」。最初は、娘のAちゃんが違う環境になじめるか心配していたが、園に通い出すとちょっとした変化が見られたそう。

食の体験イベントに
親子でワクワク

もぐし海のこども園では、親子で参加できる体験イベントも行われている。「ちょうど昨日、食育の体験イベントがあって、天草の北部にある農園までバスに乗ってみんなで行ってきたんですよ。かまどや石窯があるところで、ほかのお母さんや子どもたちと一緒に、パンやクッキー、ピザを焼いたり、かまどで炊いたごはんを食べたり。緑いっぱいの山の中で良い体験ができました」。Aちゃんも「おいしかった」と満面の笑顔。パン生地をこねながら地元のママたちとおしゃべりができたのもKさんにとって楽しい思い出に。

娘は保育園、ママはリモートワーク。
休日は天草を巡ってリフレッシュ

Kさんの仕事はリモートワークがメイン。娘を保育園に送った後は、滞在先のゲストハウスで仕事をするワーケーション感覚の過ごし方をしていた。「ゲストハウスはWi-Fiもしっかりつながって仕事をする上では全く問題ありません。会社の中には私が天草にいるのを知らずにやりとりした人もいますよ(笑)」。ゲストハウスの周辺は飲食店やスーパーも充実していて、不便さも感じなかったとのこと。

休みの日はレンタカーで野生のイルカを見に行ったり、海岸に遊びに行ったり。天草らしいスポットを母娘で満喫できたそう。「天草での2週間はあっという間でした。娘も慣れてきた頃にバイバイしないといけないからちょっと寂しいですね。でも天草という土地の良さも知るきっかけになったし、また機会があれば遊びに来たいです。まわりの人たちにも薦めたいと思います」

「娘はお箸がまだ上手く使えなくて、飲食店に入ってもスプーンやフォークでした。でも、天草の子はみんなお箸を使うから、それが良い刺激になったみたい。お箸にトライするようになりました。また、今まではマヨネーズが苦手だったけど、こども園の給食で食べれるようになったんですよ。」と、嬉しそうなKさん。

地元の子どもたちと過ごすことで、できることが少しずつ増えていったAちゃん。そんな頑張る気持ちを引き出すのも、一人ひとりときちんと向き合い、子どもの考えや行動を尊重する、もぐしの先生たちによるものかもしれない。

文・山田美穂 写真・藤本幸一郎

もぐし 海のこども園
http://mogushi.jp/

「保育園留学」|天草
https://hoikuen-ryugaku.com/amakusa

あまくさライフ/天草市移住・定住サイト
「島のような穏やかなまちに移住したい。でも島暮らしって不便かな…」と悩んでいる方に特におすすめしたいのが、天草市。ここ数年で20〜30代の移住者が続々と増加している全国的にも珍しい地域です。どんなまち?人気の理由は?などを探るには移住・定住サイト「あまくさライフ」を覗いてみましょう。
https://inaka.amakusa-web.jp/

あまくさライフ公式Instagram
天草に移住した方の暮らしやお店の紹介、移住相談会情報、その他いろんな移住に関する情報発信をしています。移住担当者による空き家紹介のライブ配信もお見逃しなく!
https://www.instagram.com/iju.amakusa/

天草市ふるさと住民登録制度
天草市では、出身者などとつながりを深めながら、魅力的な地域づくりを行うため、「天草市ふるさと住民登録制度」をはじめています。これは出身者などがふるさと住民(あまくさンサポーター)として登録し、自身が市に協力できること、市のためにやりたいことを記載するもので、登録情報をもとに市内の団体などの利用希望に応じてマッチングし、お互いにつながりを深めながら、ともに市を盛り上げていこうというものです。
https://www.city.amakusa.kumamoto.jp/kiji0034927/

                   

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