北陸のものづくりの魅力を伝えるコミュニティスペース

東京・月島で話題のお店が金沢へ。
素材とデザイン、伝統と未来をつなぐ
コミュニティスペースが誕生しました。

東京のアパレル会社デザイナーから
      北陸のものづくりを伝えるキュレーターへ

2015年10月、東京・月島にある、ものづくりの魅力を伝える
コミュニティスペース「セコリ荘」の2号店が、金沢にオープンした。
店長は、下山和希さん。
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店内には、北陸でつくられた繊維素材やデザイン性の高い工芸品が並んでいる。
下山さんが北陸中をめぐり集めたものだ。
「北陸のものづくりの魅力をどんどん発掘、発信していきたいですね。
産地とデザイナー、産地と使い手をつなぐ窓口にしたいです」
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下山さんは、元・アパレル会社のデザイナー。
27歳の若さで、東京から金沢へ移住し店を開いた。
その理由は、ものづくりをめぐる”違和感”だった。
下山さんがデザインを描くと、電話とファックスのやりとりで、ものすごいスピードで服ができあがる。
どんな人がどんな想いでつくっているのか、まったく知らずに・・・。
下山さんは国内有数の繊維の産地に飛び込んだ。
ものづくりの現場の職人に話を聞き、知識を蓄えるべく、北陸中の工場をめぐりはじめた。

つくった人の想いは、百年、二百年後も ものを見るだけで伝わる

「絶対に会ってもらいたい職人さんがいるんです」
そういって、下山さんが案内してくれたのは、富山県南砺市城端町にある「松井機業」。
明治10(1877)年創業で、二頭の蚕が一緒につくりだす玉糸で織り上げた「しけ絹」を生産している。
しけ絹は”蚕の愛の結晶”の芸術作品とうたわれ、人気を博してきた。
約320年前の最盛期にはあちこちから機織りの音が聞こえたが、
いまではこの松井機業が全国で唯一、しけ絹紙を一貫生産できる工場となった。
木造建ての工場におじゃますると、飾らない人柄の六代目見習い、松井紀子さんが迎えてくれた。
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三人姉妹の三女で、6年前、都内の証券会社をやめ、家業を継いだ。
当初は衰退している絹業界をなんとかしようと、
「松井紀子の時代で、花を咲かせるんや!」とメラメラ燃えていたが、
出会った職人たちによって、その炎は消された。
職人たちは、百年、二百年先を考えて、ものづくりをしていた。
「私は、400年の歴史を誇るしけ絹さまにおつかいする、ただの見習いだと気づかされました。
時代が変わっても、ものを見ればつくり手の想いは伝わります」
文:上浦未来  写真:栗原洋平
全文は本誌(vol.17 2016年6月号)に掲載

                   

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