現在TURNSでは、『withコロナの知恵袋』という企画を行なっています。『withコロナの知恵袋』とは、コロナ禍の影響を受けつつも、知恵を絞って取り組んでいる新たな活動を応援するために立ち上がった『TURNS』の新しい企画です。今回の記事は、株式会社スターレットの三星千絵さんより寄稿いただいたものです。ぜひ、ご一読ください!
今だからこそできた、新しいお買い物のカタチ
東京から約2時間。房総半島にある千葉県いすみ市。近年、移住者を中心とした「小商い」が盛んで、週末になると大小規模問わずあちこちで様々なマーケットやイベントが開催されています。特に、毎年春になると、多くの人で賑わっていたのですが、今年は、予定されていたマーケットやイベントが次々と中止に。出店を主な活動の場としている「小商い」プレーヤーにとって、厳しい状況が続いています。
その中で、今、自分たちができることはないかと考え、完全予約制ドライブスルー『ナカガワお持ち帰りBOX』がはじまりました。
発起人は、いすみ市に移住し米農家になった結農園の関谷啓太郎さん。実は、関谷さん、2年前、いすみ市で開催された「いすみ起業フォーラム」で、新規事業として『ナカガワお持ち帰りBOX』のベースとなる仕組みをプレゼンしていました。
「今こそ、これをカタチにする時ではないのか?」。そう考え、ご近所の移住者仲間である、おにぎり工房かっつぁんの坂本勝彦さんやシェアハウスや私設図書館を運営する株式会社スターレットの三星夫妻に相談し、思い描いていた構想を形にすることにしました。
善は急げ!と、いすみ市中川地区を中心に、協力してくれそうな方に声をかけ、皆で集まった2日後には商品の予約を開始。その週末である4月11日(土)、緊急事態宣言が発令される中でしたが、安心して利用してもらえるよう、スタッフのマスク着用はもちろんのこと、消毒なども徹底し、かつお客様とのやり取りを最小限になるように工夫・対策を万全にし、第1回目のドライブスルー『ナカガワお持ち帰りBOX』を実現させました。
事前に予約。受け取りはドライブスルー 。
買い物の仕組みは、いたってシンプル。毎週火曜日の19時、その週に販売される商品情報がWEB上に掲載されます。画像と共に商品を確認しながら、好きな商品を選び予約。
その週末の土曜日に、事前に指定した時間に受け取り場所へ行き、支払いをして荷物を受け取るというシステムです。
商品は、日常の必需品である野菜や卵のほか、食卓を彩るおにぎり、お惣菜、和菓子やデザートなど多数。毎週5〜6店舗、いすみ市近郊で地域と共に活動をしている方々がそれぞれの商品を出品しています。
自宅にいながら気になる商品を選ぶことができ、かつ必要最低限の移動で受け取ることができるとあって「マーケットに行った気分で楽しめる」と、リピーターも増加しました。最初は、10数件程度だった予約も、回を重ねるごとに増え、多い時では50件近くになることも。毎回欠かさずに利用してくださる方もいます。
出店者にとっても『ナカガワお持ち帰りBOX』は、貴重な販売機会になりました。
出店者の多くは、店舗を持たずイベント出店で主な収入を得ている「小商い」の事業者。マーケットの開催が見送られる中で、少しでも売上を立てることができ、さらに、完全予約であるため、一切のロスを発生させることなく準備ができることは、ありがたいこと。また、当日の受け渡し業務を出店者同士、協力し対応することで、運営に関する手数料等が発生しないように工夫しました。より多くの利益を得られるようにしました。こういった場ができたことで、先行きが見えない中でも、目標を失うことなく前を向いて進んでいくことができていると言います。
口コミで噂は広がり、利用するお客様はもちろんのこと、出店者も増え、また、活動を知った方から「できることで協力したい」と、予約システムを無償で提供していただくなど、様々な人を巻き込み、新しい広がりを見せています。
新しい取り組みがもたらしたもの。
毎週末、多くのマーケットが開催されていた頃、そこは、単なる買いものの場ではなく、誰かに会うための場でした。お客さんとして出店者に会いに行く。友人に会いにいく。そして、出店者さんも、お客様だけではなく、同じ志を持った同志に会いに行くことが一つの楽しみでもありました。
突如、その場がなくなってしまった時、一番の喪失感は「人に会えないこと」だったかもしれません。
外出が制限され、以前と同じようなことができなくなる。でも、だからこそ、今、できることはなんだろう。
考えた結果スタートした完全予約制、ドライブスルーという企画。
ただ「おいしいもの」を求めてお買い物をするだけではなく、ほんの数分でも会いたい人に会いに行く。それを楽しみにしている人も多いように感じます。
実際に、商品をお渡しする際に「ありがとう。会えてうれしかった」と、声をかけてくださる方が本当に多いのです。
たった数ヶ月の間になくなったものは、たくさんありました。厳しい状況はまだまだ続きます。それでも、新しく生まれたこともありました。そして、人と人とのつながりや、温かさにも、改めて気づくことができました。
先は見えないけれど、いつかまたお互いが自由に行き来しながら会える日を楽しみに、今は、一人一人ができることと精一杯向き合って行く時なのかもしれません。
(寄稿:三星千絵 株式会社スターレット/星空スペース)
「ナカガワお持ち帰りBOX」
https://www.facebook.com/nakagawatakeoutbox
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