都会との”余白”を埋める起業で 佐賀に”古民家写真館”が誕生!

佐賀だからこそ出会える風景や魅力ある人物をお届けする「さがぐらし」。
今回は、佐賀市で写真館「ハレノヒ柳町フォトスタジオ」を営む、笠原徹さんをご紹介します。

【佐賀県ってこんなところ!】・・・・・
食、歴史、文化など、数多くの魅力をもつ佐賀県。国内最大級の環濠集落跡「吉野ヶ里遺跡」をはじめ、日本の近代化を牽引した佐賀藩海軍の拠点「三重津海軍所跡」(世界遺産)など、歴史マニア垂涎のスポットも多数。そのほか、日本の磁器のルーツ「有田焼」、日本一の生産量を誇る「佐賀海苔」やブランド牛の「佐賀牛」、特A評価の県産米「さがびより」に「呼子のイカ」など、バラエティに富む。全国幸福度ランキング5位。

 

妻の出身地・佐賀へ 大阪から移住

佐賀市の中心市街地に突如現れる、古きよき街並みを残す柳町地区。築約100年の履物問屋「旧久富家住宅」を、佐賀市が「古民家再生プロジェクト」の一環としてリノベーションした。

この建物を活用し、昨年2月に写真館「ハレノヒ柳町フォトスタジオ」を立ち上げたのが、フォトグラファーの笠原徹さんである。千葉県出身の笠原さんは、大学卒業後、大阪市内でブライダル関係の大手写真会社に勤務。13年前、妻の出身地の佐賀市に移住した。

「妻の実家がカメラ関係の仕事だったので、当初は手伝う目的で。大阪を離れることに、とくに迷いはなかったですね」

その後、市内の写真館やウエディング業界で働くも、都会とのサービスの違いなどについ目が向いてしまい、悶々とした毎日が続く。そんな日々を打破すべく、「自分の力でいまできることは何か」を考えた末、たどりついた答えは”起業”のふた文字だった。

_DSC4023

「まず、自分が消費者の立場になって考えたとき、客として行きたいと思える写真館が佐賀にはなかった。もしかしたら、自分と同じ感覚の都会経験者が佐賀には多くいるのではないか。そんな人たちのためにも選択肢を増やすと同時に、都会と佐賀との”余白”を埋めることにこそ、自分の力を発揮できる場所があるはず」

そう考えた笠原さんは、”佐賀ライフには満足しているが、たまには都会的なものにも触れたい層”向けに、佐賀市内に写真館をつくろうと決意する。幸運にもこの古民家プロジェクトの募集があり、”ハレノヒ柳町フォトスタジオ”はオープンを迎えた。

 

子育て世代にもやさしい 起業もしやすい環境

笠原さんの”余白”狙いは、見事的中。U・I・Jターン組だけでなく、おしゃれに敏感な地元の若者夫婦が次々とハレノヒを訪れてくれるように。

「訪れる方がそろって口にしてくださる言葉が”写真館なのにおしゃれ” ”自分のイメージしていた写真館と違う”。この”ギャップ”をうまく利用して、写真館自体に興味をもってもらい、従来の写真館のイメージを変えるチャレンジをしていきたいんです」

_DSC3849

惹きつけられるのは顧客だけでない。開業1年でフォトグラファーが2名増えた。いずれも東京からの移住者である。その一人、副島智子さんは東京出身、結婚を機に佐賀に移住。2歳の男の子を育てるママでもある。

「佐賀は、子ども3人以上の家庭の割合が全国トップクラス!そのおかげか、とにかく子育て環境がいいですね。待機児童が格段に少なく、働くママにもやさしい環境。子育てサークルも多く、地縁がない人でも気軽にママ友づくりや子育ての悩みを相談できるし。園庭や公園も広く自然も身近で息子ものびのび成長中。旬の新鮮野菜が食べられるのも幸せですね」

_DSC3945

移住者目線で語りあえる同僚も得て、ますます活躍中の笠原さん。

「都会より、地方のほうが起業に向いている気がしますね。都会と同じことをしていても”田舎なのに新しいチャレンジをしている”とすぐに注目されるんです(笑)。起業前より多忙な生活ですが、幸福度は数倍です」

写真館での”幸せな1枚”が、世界の平和につながる——
そんな”ハレノヒ”を発信しつづけたい、と語る笠原さんの目は、佐賀から日本、そして世界に向いている。

 

笠原徹さん
1975年、千葉生まれ。(社)日本ウエディングフォトグラファーズ協会副理事長。大手婚礼写真会社を経て独立、2015年スタジオ設立。『AERA』など雑誌やテレビ、新聞でも多数取り上げられ、講師としても活躍。9月にはキャノンHPの「フォトソリューションレポート」で紹介される。

 

文:西郡幸子  写真:樋渡新一
全文は本誌(vol.19 2016年10月号)に掲載

                   

人気記事

新着記事