秋田移住で農泊ビジネスにチャレンジ!
地域の暮らしに溶け込み、“田舎”を味わう
新しい形のゲストハウスを開業

地方での起業を成功させるなら、秋田県の農泊ビジネス起業実践研修!

秋田県では県内に移住し、農家民宿や農家レストランなど農泊ビジネスに取り組みたい人を対象に「農泊ビジネス起業実践研修」を実施し、移住者の起業を支援しています。

秋田県南西部に位置するにかほ市横岡地区で今年5月、この研修を受講したVentos(ベントス)の中山功大こうだいさんと笠間 れんさんが「ゲストハウス麓〼ろくます-Rokumasu」(以下「ゲストハウス麓〼」とする)をオープンしました。「ゲストハウス麓〼」は、地元の食材や文化を楽しめる素泊まり型の宿。東京からIターンし、横岡地域を拠点にゲストハウスをスタートさせるまでの歩みや研修で得た経験、そして今後の展望についてお話をうかがいました。地方に移住してビジネスを始めたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。

11月10日(金)〜12日(日)「農泊ビジネス起業実践研修」を実施します!

「農泊ビジネス起業実践研修」では、起業プランの策定から起業・経営に関する幅広い知識の習得、実際の農泊ビジネス実践者の指導の下での実務体験を通して、地域社会との連携を大切にしながらビジネスを展開するための学びの場を無料で提供しています。農泊ビジネスに興味のある方は、ぜひこの機会に研修に参加してみてください。

研修は2023年11月10日(金)〜12日(日)の2泊3日で行われます。なお、リモート講義を10月29日(日)に実施します。応募条件や申し込み方法など詳細は、下記の特設サイトをご覧ください。
https://www.akita-gt.org/experience /welcome-akita_2023.html

長岡花火がきっかけ。地域に溶け込む新しい観光を目指す

日本百名山として知られる名峰・鳥海山ちょうかいさん麓を棚田の広がる田園風景に癒されながら進んでいくと、今回の舞台、秋田県にかほ市横岡地区に行きつきます。この自然に恵まれた集落で地域に溶け込みながら、にかほ市の地域おこし協力隊として活躍しているのが中山さんと笠間さんです。協力隊の活動と併せ、Ventosの屋号でゲストハウスの経営も手掛けています。


鳥海山麓に広がる田園風景。

東京出身の2人は学生時代、フットサルを通じて知り合った友人同士。共通の趣味である旅を通じ、2人でさまざまな土地を訪れてきたといいます。

「2人で旅をしながらいろいろな景色を見てきました。旅先の景色を見て、写真を撮って情報発信するということを長く続けていましたが、ふと、“景色を見るだけって、価値があることなのか”と行き詰ってしまって……。そんな時、笠間が新潟の長岡花火を見に行こうと誘ってくれたんです。当時はこの花火大会がターニングポイントになるとは思っていませんでした」と中山さんは振り返ります。

十分な準備をしないまま東京から車で新潟に向かい、会場に着くころには観覧場所は人で埋め尽くされていました。そんな状況の中、どうしようかと思いあぐねる2人に声をかける人がいました。自分たちの席で一緒に花火を見ようと、地元の人が招いてくれたのです。

「見ず知らずの僕たちと一緒にブルーシートに座ってお酒を飲みながら、『この場所にはこういう文化がある』とか、『花火の時は欠かさずみんなで集まるんだ』とか、地元ならではの話をたくさん聞かせていただきました。その時、温かいな、これこそ観光なんじゃないか、と思ったんです。他人にあまり関心を向けない東京で育った僕らにとって、対価を求めず、ただ一緒に楽しむために輪に入れていただいたことは、とても新鮮な経験でした」と中山さんと笠間さんは懐かしそうに話します。


左・笠間さん、右・中山さん。にかほ市の地域おこし協力隊としても活躍している。

もともと旅に関する事業で起業することを考えていた2人。長岡花火での経験が転機となり、景色を見ることに留まらない、地元の人との関わりを軸にした新しい形の観光を目指すことに。「旅には人を元気にする力がある」と口を揃えます。

「屋号のVentosは、“travel and toss”が元になっています。V字回復というように、旅には人を回復させるような力があると思っています。旅を通じて得られる感動の一歩手前まで、僕たちがトスをあげられたらという願いを込めました」と中山さんと笠間さんは強い思いをのぞかせます。

さまざまなビジネスコンテストに応募する中で、事業計画がしっかりしていても、実際に行動に移せる場がなければ実現できないこと、何をやるにも資金が必要になることも痛感。理想と現実の間で揺れていると、にかほ市に住む学生時代の友人が、遊びに来ないかと誘ってくれたそうです。訪ねてみると、そこに新たなチャンスが待っていました。

「にかほ市主催のビジネスコンテストがあることを友人を通して知りました。事業計画をつくってきた実績もあったし、やりたいことができる場を探しているタイミングでもあったので、にかほ市のビジネスコンテストは渡りに船でした。おかげさまで僕たちのゲストハウスのプランが通り、地域おこし協力隊にも委嘱していただきました」と中山さん。

こうして、活動の場は東京から秋田県にかほ市に。2人の事業は本格的にスタートしました。

地域の人を巻き込んで。「ゲストハウス麓〼」が立ち上がるまで

2人の思いが形になった「ゲストハウス麓〼」は2023年5月にオープン。鳥海山の1合目にあたる標高200mの横岡地域にある築100年の古民家を1年かけてリノベーションした建物です。

「ここは、地域の暮らしを体感するゲストハウスです。収穫作業を中心とした農業体験、魚の選別などの漁業体験、そば打ち体験、山菜取りや地域のお祭りなどの里山体験を通じ、地域の方との交流も楽しみながら、“田舎”の魅力を味わっていただけたら」と中山さんは話す。


共用リビングは地域住民とゲストの交流の場になる。

にかほ市のいろいろな地域を見て回った上で、横岡に根を下ろすと決めたことについて2人は、

「にかほ市で唯一グリーンツーリズムを受け入れている場所だったから。地域の人たちは外から来た人を受け入れることに慣れています。僕らのように東京から来た若者にも温かい目を向けてくださいました。地域に溶け込むきっかけになったのは、この近くに住む齋藤喜久男さんとの出会いでしたね」と思い出し笑いしながら話します。

聞けば、市役所の人からの紹介で齋藤さんに挨拶に行ったその日に、そば打ちを習い、打ち立てのそばをご馳走になって、そこから地域の集まりや行事があるたびに声をかけられ、気づけば地域の一員として溶け込むことができていたといいます。

「今年は横岡に加え、2つの地域でお神輿に参加してきました。お神輿はテレビなどで見て憧れていたので、実際に参加できたのは本当に貴重な体験でした」。

3回お神輿を担いだ疲れはなかなか抜けないと言いながら、笠間さんは充実感に満ちた表情を浮かべます。

ゲストハウスの母体となる古民家は、地域の商店での出会いがもたらしました。ゲストハウスとして使える空き家の情報収集で訪れた2人を、たまたま居合わせた地域の方が案内してくれたそうです。

いよいよ活動拠点が整い、ここから1年をかけ、リノベーション作業が始まります。必要な建材の購入には、「若者チャレンジ応援事業」や「未来へつなぐ元気な農山村創造事業」等、県からの補助金を活用しました。


和室ドミトリー。建具は既存のものを再利用。

リノベーションはプロセスエコノミーの考え方を採用し、つくり上げる過程で生まれる価値を参加者みんなで享受できる形をとりました。SNSやにかほ市の広報等で参加者を募り、1年の作業期間中100人ほどの人が参加したといいます。

「専門知識が必要な箇所については、大工さんや工務店の方に手伝っていただきました。作業で出る粉塵を屋外に出すため、窓はいつも開けっ放しでしたが、冬場は本当に寒くて。そんな僕らを心配した地域の方々が温かい飲み物を差し入れてくれたり、食事の心配をしてくれたりして見守ってくれました。だからリノベーション作業が全て終わった時はうれしくて。グッとくるものがありました」と笠間さん。

続けて中山さんは、「僕はでき上がったゲストハウスでお客さんと地域の方が一緒にお酒を飲み交わしているのを見た時、この光景が見たかったんだと感慨深いものがありましたね」と話します。思い出したら涙が出そうになると照れ笑いしながら話す2人の「ゲストハウス麓〼」は、こうして完成の日を迎えました。

秋田県主催「農泊ビジネス起業実践研修」で実践的な学びを得る

リノベーション期間中、学びの機会にも恵まれました。秋田県が主催する2泊3日の農泊ビジネス起業実践研修に参加することで、より実践的な農泊ビジネスに触れることができたと話します。

「研修ではメンバーにも恵まれました。自分たちと同じような志を持った人たちがいることが心強かったです。メンバーの中にゲストハウスをやりたいという人がいて、宿泊先の農家民宿で囲炉裏を囲みながらお互いの構想を話し合ったり、違った視点からアイディアを出し合う時間がとても楽しかった。途中から宿のおかあさんも加わり、僕たちの話を否定せずに聞きながら、農家民宿の実際の話を教えてくれたのも豊かな時間でした」と中山さん。


「農泊ビジネス起業実践研修」で起業プランを作成する中山さん、笠間さん。

そう話す一方、2人で頭を抱えたこともあったといいます。

「ワークショップでビジネスプランを話したところ、どこにフォーカスしたゲストハウスなのかうまく伝わらない場面がありました。提供するのは、農業体験なのか、漁業体験なのか、地域交流なのか……。どうしたら自分たちのやりたいことが伝わるかを突き詰めた先に“暮らしの体験”というワードが浮かびました。訪れる人がずっと前から横岡に住んでいたんじゃないかと錯覚するくらい、地域の暮らしにフォーカスしたゲストハウスがやりたいんだと、言葉にすることで自分たちの方向性を再確認できました」と2人で納得の表情を見せます。改修作業の合間に受講した実践的な研修は、自分たちが進む道を確かめる有意義な時間となりました。


ワークショップの様子。

地域と都会をつなぐ 二拠点生活を促す場に

「ゲストハウスのオープンから数カ月経ちますが、研修で学んだことが生かされているのを感じます。研修の宿泊先であった農家民宿のおかあさんがやっていたことで、お客さんの話をしっかり聞いてからこちらの話をすることを心がけています。あの時経験した否定せず受け入れてくれるような雰囲気がとても心地よかったので、取り入れていけたらと思っています」と中山さん。

笠間さんは、「地域の面白味が伝わるよう、お客さんと地域散策するようにしています。より深く地域を楽しめるよう、僕から地域のことを話すことも大事なのではと感じています。研修時にやった秋田弁のカルタで自分自身が秋田の面白さを知った経験が役に立っています」とも。

目下の悩みは、ゲストハウスが心地よくてお客さんと深夜まで話し込んでしまうこと。「朝食は僕たちが準備するので、ある程度のところで切り上げないといけない。その線引きが難しくて……うれしい悩みですね」と2人で苦笑い。

「農泊ビジネスは人と関わることが好きであることが重要だと僕は思います。地域の人と一緒に手をつないでやっていきたいという気持ちがあればぜひチャレンジしてほしい分野だと思います。秋田県は、農泊ビジネスで起業する人を対象にした補助金やサポート体制が手厚いように感じます。僕らのように積極的に活用してほしいです」と中山さん。

笠間さんは自身の経験から「地域に溶け込まないと難しい場面も出てくるように感じます。僕らは地域の人たちからの誘いには可能な限り応じてきました。声をかけてくれる気持ちがうれしかったから。地域に溶け込むことができたからこそ、宿泊者と地域の方の交流を実現することができて、より充実した観光体験を提供することができています」とも。

「将来的にはこのゲストハウスを拠点に、横岡地域と都会の二拠点生活をする人を増やしていければと思っています。どこに住んでもいい時代になってきている今、僕たちのゲストハウスが、横岡と都会をつなぐ入り口の部分になれたらいいなと思っています」と中山さん。

横岡の集落を自分の故郷のように思えるくらい、地域に溶け込むような時間を提供していきたいーー。地域に根ざしたゲストハウスは、ここから新しい観光の形を発信していきます。

取材・文:平川百合子 撮影:コンドウダイスケ


秋田県で農泊ビジネスにチャレンジしたい方へ
「農泊ビジネス起業実践研修」参加者募集!

秋田県では、県内への移住を考え、農泊ビジネスに取り組みたいを対象に、起業に必要な知識やスキルを習得するための「農泊ビジネス起業実践研修」を実施しています。

研修は2023年11月10日(金)から12日(日)までの2泊3日にわたって実施され、事前のリモート講義が10月29日(日)に行われます。

農泊ビジネスの運営に必要な知識やスキルを学ぶだけでなく、地元住民や既に起業を成功させた方々とのネットワークを広げる貴重な機会となります。研修費(体験料・宿泊費・食事代※飲料代は除く)は無料です!(主催者負担)

農泊ビジネスは、自分の夢を叶えるだけでなく、地域にも貢献できる素晴らしいビジネスです。この機会にぜひ、「農泊ビジネス起業実践研修」に参加して、自身の夢を実現させるための第一歩を踏み出してみませんか?

詳細・お申し込みは下記の特設サイトから
https://www.akita-gt.org/experience /welcome-akita_2023.html

 

農泊ビジネス起業支援補助金について

また、県外から移住し、農家民宿や農家レストランを起業しようとする方を支援するため、農泊ビジネス起業支援補助金」を交付しています。補助金の対象は、改修費・設備購入費・広告費・委託費等。最新の情報やご相談は、下記へお問い合わせください。

秋田県農林水産部 農山村振興課 調整・地域活性化チーム
電話:018-860-1851

                   
令和5年度農泊ビジネス起業実践研修
開催日 2023年11月10日(金) 〜2023年11月12日(日)
リモート講義

10月29日(日)

研修場所

秋田県仙北市、羽後町

定員

10名

研修費

無料

研修費補足

(1)研修費は講義料・体験料・宿泊費・食事代(飲料代は除く)のことをいい、研修期間中のこれらの経費は主催者で負担します。
ただし、リモート講義を受講するためのパソコン等の機器は各自で準備するとともに、事前に使用機器へのZoomアプリのインストールを行ってください。また、インターネット回線等の通信費は各自で負担してください。

(2) 交通費
集合場所までの往復の交通費は、各自でご負担下さい。

主催

秋田県

運営

NPO法人秋田花まるっグリーン・ツーリズム推進協議会

申し込み期限

令和5年9月29日(金)17:00 ・・・ 一次募集

令和5年10月13日(金)17:00 ・・・ 二次募集

人気記事

新着記事