2009年にスタートした、地域おこし協力隊制度。2022年度までに任期を終えた隊員は、20〜30代の若者を中心に 9,656名にのぼり、そのうち65%ほどが活動エリアに定住しています。
現在も約6,400名が少子化、過疎化が進む地域で活動していますが、彼らはなぜ地方で暮らし働く道を選択し、日々どのような思いで活動しているのでしょうか?また、それぞれの目に映る”地方の今”はどのような姿をしているのでしょうか?
TURNSでは連載企画「地域おこし協力隊が語る、地方で暮らし働くリアル」を通して、全国で活躍する協力隊一人一人の声をお届けしていきます!
連載第2弾は、群馬県藤岡市で活動する吉田まり子さんです!
吉田まり子さん|群馬県藤岡市地域おこし協力隊
1986年東京都品川区生まれ。10歳の時に群馬県高崎市に転居し、大学進学を機に上京。京都で暮らした後、沖縄県の北中城村に移り同村の地域おこし協力隊として活動。2022年9月から現職。
美しい山々と清流に抱かれた、静かな盆地
-吉田さんが活動されている、群馬県藤岡市鬼石(おにし)地域はどんなところですか?
群馬県藤岡市の南西端、川を越えれば埼玉県というところにある、豊かな自然と清流・神流川に抱かれた小さな盆地です。空っ風が吹くことで有名な群馬県にありながら、まちの周囲を山々に守られた鬼石には、優しい風が吹いていきます。その山々がとにかく美しく、空気もおいしいです。
かつて商業都市として栄えた旧・鬼石町があったエリアですが、近年は少子高齢化・過疎化が進み、現在の人口は5,000人を切っています。普段は静かで暮らしやすいまちですが、毎年「鬼石夏祭り」の時期になると市外で暮らしている元住民が戻り、一時的に人が増えて地域全体がにぎわいます。
自然環境に恵まれた土地ながら必要なものは揃っていて、住んでいる人たちも自分たちのまちに誇りを持っているような印象を受けます。近年は移住者も少しずつ増えてきているんですよ。
著名な芸術家が創作活動の拠点としていたこともあり、今なお国内外のアーティストが集まる「アートの街」という一面もあります。冬桜の咲く「桜山公園」や、巨岩・奇岩が建ち並ぶ「三波石狭」などの観光スポットもあるので、ぜひ一度お越しいただきたいです!
-吉田さんが協力隊を志したきっかけは?
沖縄で地域おこし協力隊として活動していた時に娘を授かったのですが、彼女をどこで、誰と、どんな風に育てていきたいかを考えて、出てきた答えが「地元(のそば)」でした。実家がある高崎市周辺で仕事を探していた時に、その隣の藤岡市で協力隊を募集していることを知り、求められている業務内容を見て「沖縄での協力隊経験が活かせそう!」と思い応募しました。
着任前に下見に訪れた日は梅雨明け間近で小雨のぱらつく日でしたが、見渡せば盆地をぐるりと囲む緑鮮やかな山々が靄を纏っている様子がとても美しく、そこに優しく抱かれるように佇む街並みを見て「ここならやっていけそう」と思いました。
地元に近くて自然豊かなエリアを探していたこともあり、ここで挑戦してみようと決心しました。
-現在はどのようなミッションで活動されていますか?
移住先としての藤岡市の魅力を広く伝えるべく、「藤岡市移住・定住ポータルサイト」の公式SNSを通じた情報発信業務を行っています。投稿内容の企画運営のほか、サイト自体の改善作業も少しずつ始めました。
-一週間の活動スケジュールを教えてください。
こんな感じです!
-これまでの活動成果について教えてください。
これまで培ってきた経験を活かし、さまざまな取り組みを行ってきました。例えば…
・地域の特産(鉱泉水)を活用したパンが、着任前に住んでいた沖縄県北中城村で製造販売され、地域交流を生みました。
・地域のYouTube動画を作成・公開したところ、テレビ朝日系列の「ナニコレ珍百景」の番組スタッフがご覧になり、地域に取材が入り2023年6月11日に全国放送されました。
・SNSのフォロワー増加に貢献しました。(着任以降はTwitter2.5倍強/Instagram3倍弱/YouTube10倍。のべ363件の投稿数、12本の動画を投稿、プロデュース動画を1本納品しました。
-どんな時に「協力隊になって良かった!」と感じますか?
PRにつながる活動をしていることもあり、インタビュ-動画の撮影などで地域の方々と直接お会いする度、喜んでいただけているという実感が持てることですね。
仕事を通してたくさんの方と出会い、友人が増えていくことにも大きな喜びを感じています。
-今後どのような活動をしていきたいですか?
地域の皆さんに喜んでいただけるような、パン屋の開業を目指しています。その実現に向けて全速力で頑張ります!
人と人とのあたたかい交流の中で
-実際に地域で暮らし、働いてみて分かったこと、気付いたことはありますか?
初めて着任した沖縄で感じたことですが、協力隊募集の求人は「様々な問題が山積している地域が、協力隊員の力を必要としている」というニュアンスで表現されていることが多いと思いますが、それは行政の立場から見るとそうなのであって、実際にその地で暮らしている住民側は「別に困ってはいない」ということです。
「地域の課題を解決するんだ!」と使命感満々に地域に入って行っても、住民の皆さんは別に困っていないので一歩引かれてしまうと感じました。
そのため、この度着任した藤岡市鬼石地域では、もっとゆったりと構えて「地域のお手伝いをさせていただく」ような心づもりで業務にあたらせていただいています。
また、役所内の常識と私が経験してきた民間企業の常識に大きな乖離があり、協力隊と役所担当者の行き違いが起こりがちだと感じています。もともと互いの立場や見えている世界が全く異なる者同士が同じテーブルについているのだということを忘れずに、住みやすい地域実現のためにできることを考えて実行していきたいです。
-地域で暮らし、働くことの良さやメリット、魅力はどんな所にあると思いますか?
PCやスマホの画面越しではなく、直接対面する人同士で物事が進んでいくことがとても魅力的です。
業務の依頼や業者の選定、物件探しなども誰かからの紹介で進みますし、狭い地域なので「よく会うね」「奇遇だね」ということだらけで、それがとても心地よいです。
また、地域住民の中には協力隊の存在を知っている方も多いので、自己紹介の時に「地域おこし協力隊」と言うことで伝わることもあり、皆さんよく顔と名前を覚えてくれます。
中古の物件探しの際も、役所所属ということで多少の信頼感も感じてもらえたのか、地域の方にたくさん助けていただきました。
あとは…都会暮らしと違って満員電車に乗らなくて済み、通勤中は車中で大声で歌えることがいいですね。笑
娘と出かける公園なども空いていて、子どもの好奇心が赴くまま外遊びを楽しめますし、ダイナミックな自然との触れ合いも身近にあります。
地域の方から新鮮なお野菜を譲っていただく機会に恵まれたり、娘に声をかけていただく機会が多いことも大変ありがたく、子育てをする安心感にもつながっています。
-移住後に自治体職員や地域住民から受けたサポートはありますか?
自治体職員の方々は、私が思う地域活性化のあるべき姿を理解しようとし歩み寄り、その実現に向けてさまざまなサポートをしてくだっています。具体的には情報発信業務や移住サイトの改編、起業・定住のためのパン屋開業にむけた準備などです。こちらからの相談にも親身になって乗ってくださいますし、日々の業務の裁量をある程度任せてもらっているため、自由に活動できることも本当にありがたく感じています。
地域の方々には、物件探しから、娘の保育園の紹介まで、生活のありとあらゆるところで助けていただいています。ただ声をかけていただくだけでも本当に励まされるので、感謝したいエピソードは枚挙に暇がありません。
-地域住民と交流する中で印象的だったエピソードはありますか?
人間関係で悩んでいた時に、地域の方々にたくさん励ましていただきました。あの時の励ましがなかったら今までこの仕事を続けていないと思います。
”よそ者”に対し、とことん懐が深い地域性があると感じています。
-地域が抱えている課題や問題、変えた方が良いと思うこと、違和感を覚えたことはありましたか?
空き家が増え続けていることです。廃屋となってしまった住宅も多く、地域全体の課題だと感じています。空き家問題を解消するためには、空き家の持ち主が空き家を貸すことや売ることに積極的な考えを持てるように、先行事例を周知させていくことが必要だと感じています。
私自身も地域の空き家を購入したので、一つの事例として発信し続けていきたいです。
地方暮らしのリアルQ&A
-移住後の住居はどのように探しましたか?
私は自分でウェブ検索で探しました。沖縄では自治体職員さんが内覧に行ってくれ、藤岡市では実家の両親が行ってくれましたね。
どちらもビデオ通話で画面越しでの内覧でしたが、いろいろ確認できましたよ。
-活動をする上で、気を付けたことや工夫したことはありますか?
地域の情報発信がミッションなので、なるべく新鮮な情報を届けられるように、発信する内容の企画から公開までなるべく効率的に進めるように工夫しました。
私が担当しているSNSは役所のものなので、どんなにささいな投稿でも一つ一つ課内で決裁を取っていただく必要があります。それまでの決裁の仕方だと時間がかかり投稿数が伸び悩んでいたので、一週間程度まとめて決裁をお願いする形に変えました。
また、課内での情報共有を心がけています。協力隊の暮らしは、役所の業務のほか自身の定住準備が大きな比重を占めるので、自治体側から見ると公私が混ざって見えてしまいやすいと感じています。信頼関係に関わるので、私が今何をやっていて、今日は何のためにどこへ行くのか等、自治体側から見て私の動きが不透明に映らならないように気を付けています。
-地域コミュニティに馴染むポイントやコツを教えてください!
地域の方々に対しては、とにかく聞き取りやすい声と笑顔で挨拶することです。
私は娘がまだ小さいため、夕方以降の飲み会などの交流の場にほとんど参加できていませんが、それでも新しい友人はできています。
-地方で暮らし働く上で、大切にすべきポイントはありますか?
これまで地域の歴史や文化を守ってきてくれた地域住民への、尊敬や感謝の気持ちを忘れないようにすることですね。
自分がポッと出のヨソモノであることを常に頭に入れつつも、必要以上に卑下せず、地域のために自分のできることをしっかりやり遂げることが大切だと思います。
-これから協力隊になりたい方や地方移住したい方に向けて、メッセージやアドバイスをお願いします!
地域おこし協力隊は、地域で何かやりたいことがある方にはもってこいの職業だと思います。
着任後のミスマッチを防ぐためにも、着任前にOBや現役の協力隊員から話を聞くこと、自治体の担当職員さんとよく話すことをおすすめします!
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