【徳島県那賀町地域おこし協力隊・藤本雪絵さん】廃校になった母校を、誰もが元気になれる交流拠点に!

地域おこし協力隊が語る、地域で暮らし働くリアル vol.3

2009年にスタートした、地域おこし協力隊制度。2022年度までに任期を終えた隊員は、20〜30代の若者を中心に 9,656名にのぼり、そのうち65%ほどが活動エリアに定住しています。

現在も約6,400名が少子化、過疎化が進む地域で活動していますが、彼らはなぜ地方で暮らし働く道を選択し、日々どのような思いで活動しているのでしょうか?また、それぞれの目に映る”地方の今”はどのような姿をしているのでしょうか?

TURNSでは連載企画「地域おこし協力隊が語る、地方で暮らし働くリアル」を通して、全国で活躍する協力隊一人一人の声をお届けしていきます!

連載第3弾は、徳島県那賀町なかちょうで活動する藤本雪絵さんです!


藤本雪絵さん|徳島県那賀町地域おこし協力隊

1989年、徳島県那賀郡那賀町(旧・相生町)生まれ。高校卒業後、大学進学を機に広島県に移住。教員免許を取得して一度は地元にUターンしたものの、結婚を機に広島に戻り、通信制高校の教員として働く。2020年に理想の環境で子育てするため嫁ターン。現在は夫と1歳になる子どもとともに自然豊かな那賀町で暮らしつつ、協力隊として同町の相生地区にある廃校を多世代交流拠点に生まれ変わらせるべく活動している。

夢を叶えるために、Uターン

-藤本さんが活動されている、徳島県那賀町旧相生地区はどんな地域ですか?

那賀町は、徳島県の南部にある森林率95%の緑豊かな地域です。人口は7,400名ほどですが、5町村の合併によって生まれたため総面積は694.98㎢と広く、徳島県の総面積(4,145.10㎢)の約17%を占めています。

旧相生地区は、人形浄瑠璃(農村舞台)や吹筒花火(県の無形民俗文化財)などの文化を大切に伝承してきた地域で、森林公園や温泉、乗馬クラブを始めとする観光スポットも豊富。阿波晩茶(国の重要無形民俗文化財)や花卉栽培(ケイトウ、オモトは出荷量全国トップクラス)などの農業が盛んです。

区内にはボランティア組織が20近くあり、子どもも大人もお年寄りも元気いっぱい。地域活動に挑戦しようとすると、皆さん何らかのカタチでサポートしようとしてくれる、あたたかさと頼もしさがあります。差し入れ、おゆずり、シェア文化が根付く、良い田舎だと思います。

-藤本さんが地域おこし協力隊を志したきっかけについて教えてください。

私が小学5年生の時(2001年)に廃校になった母校「旧・平野小学校」を、子どもも大人も地域内外の人たちもごちゃまぜになって交流できる、ローカル版キッザニアに生まれ変わらせる!という夢を叶えるためです。

私は高校生の時に「地域の人と子どもたちをつなぐ大人になりたい」と教師を志し、広島県内にある大学に進学して教員免許を取得しました。その後、一度地元にUターンしていた時に地域おこし協力隊制度を知ったんです。結婚を機に一度は広島に戻りましたが、教員経験を経た今なら高校生の時に抱いた夢を叶えられるのではないかと思い、地元に戻って地域おこし協力隊になりました。

理想の子育て環境を本気で考えたときに、地域の方々と一緒に自然とつながる文化行事を楽しみながら暮らしたいと思ったことも理由の一つです。

-現在はどのようなミッションで活動されていますか?

主に4つのミッションを軸に活動しています。

1.廃校活用
⑴交流できる図書室の運営(2023年6月8日スタート!)
⑵イベント企画
⑶廃校利用運営のための組織準備

2.古民家ゲストハウスの開業準備
⑴DIYなど
⑵コンテンツの開拓(物販、古物商、イベント等)

3.広報活動
⑴SNS(Instagram、FB、note、twitter)
那賀町の暮らしに関すること、他自身の協力隊活動
⑵町内に向けて紙媒体広報

4.研修、視察、交流会の参加
⑴参加:起業・経営セミナー、防災関連、地域づくり等
⑵視察:自治体の制度、組織等

-一週間の活動スケジュールを教えてください!

-どんな時に「協力隊になって良かった!」と感じますか?

自分がこれをやりたい!と思って始めたことが、地域の方々のワクワクになって返ってきた時ですね。

地域活動を続けていると、地域の方が「こうしてみたらどう?」と自らのアイデアを生き生きと語ってくれることがありますし、「これ使う?」などの差し入れやエールなど、それぞれの方法で何かしらのサポートをしようとしてくださいます。そういうご厚意を持ち寄ってくれた人同士で新しい交流が始まることもあります。

協力隊になってから、家族も含め身近な人の存在に感謝する機会が増えました。

-今後、どのような活動をしていきたいですか?

日本一、いや!地球イチ元気な廃校を作りたいです!

 

地域の方々のご厚意に支えられて

2023年に旧・平野小学校内にオープンした「ひらの図書室」

-移住前に抱いていた「地方暮らし」のイメージと実際の暮らしとの間のギャップ、苦労したことなどはありましたか?

移住者のことをよそ者扱いする地域もあると聞いていましたが、私自身がUターン者であることもあって、あたたかく見守っていただいています。また、田舎には仕事がないと思い込んでいたのですが、実際に暮らしてみると農業関係のバイト情報が口コミで入ってくるので、そうした仕事を組み合わせれば働き口には困らないことに気付きました。お祭りや草むしりなどの地域行事で忙しいというイメージもありましたが、コロナ禍ということもあって感染拡大への警戒感ゆえ中止になったままの行事も多くあります。

苦労したことは、暮らしに必要な情報がWEBやSNSを通してあまり積極的に情報発信されていないため、見つけずらいことですね 。あとは、地域の方々がたくさんの山海の幸をお裾分けしてくださるのですが、たくさんいただきすぎて、自分たち家族だけではいただけないこと。笑 友人家族とシェアしながら、おいしくいただいています!
車社会なのに、日曜日はガソリンスタンドが休みで給油できないということにも戸惑いました。

-実際に地域で暮らし、働いてみて分かったこと、気付いたことはありますか?

暮らしに関することで言うと、地域の人と積極的に交流するよう心掛けないと地域の最新情報が入ってこないことです。特に子育てに関する情報は、役場発信ではなく、仕事で出会った先輩ママや先輩パパの奥様からもらうことが多いです。

地域おこし協力隊関係では、那賀町は協力隊の受入歴が10年近くあるため、想像していた「協力隊あるあるトラブル」が無いに等しい環境だったことです。これまでに活動してきた先輩協力隊や役場、地域の方々が試行錯誤をして良い関係性を築いてきたからこそ、全国トップクラスに柔軟な環境にあるのだと思います。

また、廃校利用の際に地域の方から「(本職等があって)主ではできんけど、雪絵ちゃんがするんやったら手伝うよ!」と言われたことがあり、地域の方々は「こうしたい!」というビジョンを持つ人を自分なりの方法でサポートする形の方が地域活動に関わりやすいのだと気付きました。

あとは、対町民に対する「集客のための広報」を行うなら、SNSや広報誌での情報発信をこまめに行い、直接会った際はお願いすると来てもらいやすいということですね。

-地域で暮らし、働くことの良さやメリット、魅力はどんな所にあると思いますか?

たくさんあると思います。例えば…

<暮らしのメリット>
①役場が発信しきれていない子育て情報・グッズなどを、仕事で出会った人がくれる。
②自分がする活動や仕事により、自身を含めた住民が暮らしやすい環境をつくることができる。
③自宅近くに住む地域の方が、職場まで差し入れや地域のお知らせの伝達にやってきてくれること。
④家バレしているので、何かあったらみんな助けてくれる。笑

<仕事のメリット>
①地域の商店を利用したり、地域組織に参加することで、仕事に関する情報やサポートをいただくことが多い。
②プライベートで地域の方に会った際にも、挨拶レベルで仕事へのエールをくれること。
③友人と喋っていたら、新しい仕事のアイデアが生まれたこと。
④地域活動に参加することが、最大の広報活動になること。

<地域で暮らし、働く魅力>
①地域のための活動は、何をするにしても自分のためにも地域のためにもなること。
②地域の方々のおかげで生かされていることを常に感じることができ、自己肯定感が上がりました。

-移住後に役場職員や地域住民から受けたサポートはありますか?

転居翌日に、役場職員さんがライフラインの確認に寄ってくださるなど、仕事だけでなく暮らし全般へのサポートをしてくださいました。また、着任時に受入団体とすれ違いがあった際に相談すると、速やかに対応・配置替えしてくれたり、地域活性化のアイデアを出すとそれを実現するための建設的な回答を返してくださいます。

地域住民から受けたサポートは、本当に数えきれません。
日々の差し入れ(山の幸、ドリンクやおやつ)にはじまり、私が活動拠点にしている廃校を自主的に清掃・整備してくれることもありますし、活動に必要な物品を快く提供してくださることもあって、本当に助かっていますしとても感謝しています。

永住用の住まいを探していた時には、空き家情報を提供してくれたり、売買契約までのバトンつなぎや畑の無償賃貸もご厚意で行ってくださいました。

物理的に距離がある町内の方もSNSでコメントをくれるなど、それぞれのカタチで応援をしてくれることも活動の励みになっています。

-地域住民と交流する中で印象的だったエピソードはありますか?

廃校(不用品・雑草だらけ)を事務所にして活動し始めたところ、近所に住むおじちゃんが毎日のように花壇整備に来てくださるようになりました。そのおかげで、雑草だらけだった花壇が花々でいっぱいの花壇によみがえりました。

また、土建屋の社長さんが廃校にある不用品の山と今後の雑草を心配して様子を見にきてくれた時、現状を伝えると1時間後にダンプに防草用の砂利を積んで持ってきてくれて、不用品をそのダンプに乗せて帰っていきました。

地域の皆さまのご厚意のおかげで、廃れていた校舎は綺麗になり”現役感”を取り戻しています。

それ以降もおじちゃんは花壇整備をしてくれていましたが、急逝。今はその隣に住むおじちゃんが「2代目やるわ!」と頑張ってくれていて、私の励みになっています。

 

地方暮らしのリアルQ&A


開業準備中のゲストハウス

-移住後の住居はどのように探しましたか?

移住直後の仮住まいは、役場に相談して賃貸物件を紹介していただきました。

永住用の購入物件を探していた時は、協力隊活動広報媒体を使って、また居住希望エリアに赴いた際には現地で、希望家屋条件をひたすら発信しました。条件にピッタリ合う物件だけでなく、少しだけ妥協すれば条件を満たすような物件が見つかったらすぐにアタックすること、そして、仲介的役割を果たす方だけでなく、その方の周りへも相談して気運を高める(囲い込み)が大切だと思います。

私の場合は、希望物件の仲介的役的な方にご飯屋さんで偶然出会い、そのご飯屋さんの店長にも後押ししてもらって物件購入交渉がスタートしました。

-地域ビジネスの芽はどんなところにあるのでしょうか?

地域のウチとソトの人との交流機会にヒントが眠っていると思います。

前職の経験になりますが、人力車の車夫として観光案内をしていた時に、地域の方々と交流する場面がありました。私の地元でも観光地でも当たり前のようにあるささやかな交流だと思っていましたが、後日、ご乗車いただいたお客様からお手紙をいただき、その交流に「とても感動した、会えて嬉しかった」等のお手紙をいただいたことがありました。

その経験から、ローカルな人との交流には価値があるということに気付けました。

-地域コミュニティに馴染むポイントやコツを教えてください!

ひとつは、自己紹介をする時の枕詞に、自分とそのコミュニティとの「共通の関係者」とのつながりを入れて伝えるといいと思います。

例えば、私の現在の居住地は祖母(私が小学生の頃に他界)の地元なのですが、Uターンするまで足を運んだことがなかったんです。不安を抱えつつその地域の寄合に初めて参加した時に「〇〇地区の△△が祖母の出で、…」と自己紹介すると、「昔、商店をしてて、世話になったよ!」と一気に距離が縮まったことがありました。その後の会話で当時のことや祖母のことも知ることができ、とても嬉しかったです。

あとは、田舎暮らしには逆算管理能力も求められます。
・会う相手に、前回何でお世話になったかを伝えてお礼からコミュニケーションを始める。
・年間予定を立てる:農繁期(農業バイト)、文化的行事のスケジュールを管理し、それをこなす覚悟と体力を調整する。
・ガソリン(残り燃料とスタンドの営業時間を把握しておく)
・食材(大量の旬野菜量とその調理時間の確保、車で40分かけて買い出しに行くときの買い物リスト)
・移動時間
・必要な物に対する希望条件を明確に持つ
・天候の確認

-これから協力隊になりたい方や地方移住したい方に向けて、メッセージやアドバイスをお願いします!

地域おこし協力隊に与えられる「ミッション」は抽象的なことが多いので、その「ミッション」とご自身の「やりたいこと・できること」のすり合わせはしっかりした方が良いと思います。また、スタッフなのか、先頭に立って事業を推進するのか等、どんなポジションで活動するのかによって求められることもできることも変わってきます。

活動先の地域がなぜそのミッションで活躍できる人を求めているのか、その根拠となる地域課題や目標数値の確認は隊員側でも事前にしっかり行うべきですし、ミッション+フリー(ミッションと、自身がやりたいことを両立させて活動する協力隊)の協力隊として活動するのであれば、それぞれにかける時間やお金のバランスをどのようにとっていくかをも、できるだけ具体的に考えておいた方が良いと思います。

 

\藤本さんからのお知らせ!

SNSを通して地域に関する情報を発信していますので、ぜひご覧ください!

【facebook】
那賀町地域おこし協力隊 藤本雪絵
https://www.facebook.com/profile.php?id=100079062108656

【Instagram】
ひらの小学校(2023.06.08~廃校図書室)
https://instagram.com/hiranokko_tokushima?igshid=OGQ5ZDc2ODk2ZA==

イツキ邸リーダー(赤ちゃん目線那賀町暮らしレポート)
https://instagram.com/1tsukitei_leader?igshid=OGQ5ZDc2ODk2ZA==

イツキ邸(2024.01開業予定の古民家ゲストハウス)
https://instagram.com/1tsukitei?igshid=OGQ5ZDc2ODk2ZA==”

\地元紙で紹介されました!/

 


\地域おこし協力隊の皆さまへ!/

TURNS WEBで地域の魅力を発信してみませんか?

https://turns.jp/79112


過去の連載企画
全国の地域おこし協力隊がリアルな今と未来を語る【地域おこし協力隊リレーTALK】

https://turns.jp/60659


TURNSバックナンバー


TURNSの若者向け移住・定住促進施策事例
https://turns.jp/78258



移住・地方創生・地域活性化に関するプロモーションのご相談/お問い合わせ/事例集はこちら

https://turns.jp/contact

https://turns.jp/advertisement

 

                   

人気記事

新着記事