宮崎といえば南国、南国といえば青い海というイメージから、宮崎の「里山」に目を向けないのはもったいない。宮崎市中心部から車で約1時間半ほどのところにある中山間地域は豊かな自然に囲まれながら暮らすことのできる場所。今回は里山の一つである「えびの市」について紹介をしていきます。
えびの市ってどんなところ?
えびの市は、宮崎、鹿児島、熊本の県境にあり、交通・経済・文化の交流拠点として発展が期待されています。おいしい「えびの産米」の産地として広く知られており、近年はさといも・ほうれん草などの露地野菜、ピーマン・イチゴなどの施設園芸も盛んです。「宮崎牛」の一大産地でもあります。えびの高原やクルソン峡など大自然の魅力を体験することや、泉質がそれぞれ異なる温泉でリラックスできるなど、余暇を思いっきり楽しめる住みやすい場所です。
カフェ「HANNAH」を営む村上さん
宮崎市中心部から車で約1時間半ほどのところにあるえびの市は、美しい霧島連山を望む、豊かな自然に囲まれた場所。そんな場所で、カフェ「HANNAH」を営む村上大輔さんと入江万理子さんは〝何もない〟からこそ生まれる手づくりの暮らしを楽しんでいる。
風に泳ぐ田畑の緑の中に、点々と建つ民家。えびの市の中心地から車を少し走らせると、そんなどこか懐かしい田舎の景色に、真っ白な外観が目を引くカフェ「HANNAH(ハンナ)」が建っている。
宮崎市とのアクセスもよく、自然環境に恵まれたえびの市は暮らしを自由に作っていける程よい『余白』が残る場所。そんなえびの市の暮らしを体現しているのが、「HANNAH」を切り盛りするご夫婦、宮崎市出身の店主・村上大輔さんと、奥さまで画家の入江万理子さんだ。
店主の村上大輔さん・入江万理子さん
「県内外の人がえびのにやってくるきっかけを作りたい」と、2019年12月に村上さんご夫妻がオープンしたカフェ「HANNAH」。築90年の馬小屋をリノベーションした広々とした店内には、奥さまである画家の入江さんの作品が並ぶ。カフェ利用者の約6割が市外からの来店客で、「いろいろな人が集まるハブのような場所にしたい」と村上さん。時には高校生とそのおばあちゃんがお茶を飲みながら談笑しているような、微笑ましいシーンも。「ご近所さんからも『こんな場所ができてよかった』と喜んでいただいています」と入江さんも笑顔で話す。
村上さんはかつて10年ほど宮崎市内でパン屋を営んでいたが「このままでいいのだろうか」と一念発起して海外へ。帰国を機にえびの市の地域おこし協力隊として移住した。「山が好きで、昔からえびのには月一で登山に来ていたので愛着はありました。ただ、移住した当初は飲み屋も若い人も、本当に何もないことに驚いてしまって(笑)。それも慣れれば居心地が良く、自然や星の美しさに『ここで暮らすことにしてよかった』と思っています。
入江さんはえびの市の生まれ。県外で絵を学び、大学院を卒業して、絵を描きながら暮らしたいとUターンした。自然をテーマにした作品の多い入江さんは、「山などインスピレーションの源泉になるような場所にすぐに足を運べることが魅力です」と言う。
天井が高く、開放感のあるカフェは、かつて入江さんの祖母の家にある馬小屋だったという。二人で小屋の中を片付け、ペンキを塗り直し、一年がかりでオープンした。すべてを白で統一したのは、色鮮やかな入江さんの作品が映えるようにしたため。都市部にはない馬小屋を、現代風にシンプルなカラーでまとめ、ここにしかない世界観を追求した。また店内はギャラリースペースと入江さんのアトリエも併設。入江さんも「心落ち着ける空間で、絵と向き合える。こんな贅沢なことはありません」と満足気だ。
「えびのの人はなんでも自分で作るんです。食べる野菜も、家も。気付くと自分たちにもそんな力がついていて、『こうしたい』ができる暮らしに近づいてきていると感じますし、ここのは暮らしを作れるゆとりがあるんです」と村上さん。暮らしを自分たちの手でカスタマイズできるこのゆとりこそが、えびので暮らす魅力なのだろう。
店内には至るところに入江さんの作品が飾られており、ポストカードなども販売。時にはワークショップも開催しています。
おいしいコーヒーと共に癒しの時間を過ごしたら、ぜひトイレも覗いてみてください。壁や床、天井まで入江さんの鮮やかな絵で埋め尽くされており、まるで違う世界に迷い込んでしまったような不思議な感覚に。
カフェ「HANNAH」(ハンナ)
住所:宮崎県えびの市大字原田1326
アクセス:えびの飯野駅から車で5分
TEL:0984-48-1297
おすすめコンテンツの紹介
①矢岳高原ベルトンオートキャンプ場
えびの市で楽しめるアクティビティとして一番におすすめするのがキャンプ。秋~春はもちろん、夏場も暑すぎず、年中を通して楽しむことができる山間地域ならではのアクティビティ。特にえびの市には、「矢岳高原ベルトンオートキャン場」など、初心者から上級者までが楽しめるキャンプスポットが多数点在している。
ちなみにえびの市は宮崎市内からも車で1時間30分程度と、キャンプに欠かせない非日常感を得られる「絶妙な距離感」であることもポイント。②鶏肉専門店「えびチャン本店」
えびの市は米、野菜、肉、焼酎など食の魅力が満載のエリア。地獲れの新鮮で旬な食材を手に入れるなら「道の駅えびの」が最適だが、あえて紹介するのは、そのすぐそばにある鶏肉専門店の「えびチャン本店」。ももやささみといった味わいの異なる鶏肉を部位別に販売するほか、鶏の唐揚げや塩焼きといったメニューも並ぶ。中でも新鮮だからこそ味わえる刺身は一押し。キャンプに向かう道中、こで買い物をしてから山へ。自然の中でいただくと絶品!③リノベーション・DIYできる暮らし
自分で暮らしをカスタマイズできるのも この土地の特徴。宮崎市内から理想の暮らしを求めて移住、空き家を改装し、その様子をYouTubeチャンネル「えびのさるき」で公開中。リノベーションの様子をはじめ、庭で仲間と食事を楽しむ様子など、えびの市でのリアルな暮らしを垣間見ることができます。ちなみにえびの市では移住者を対象に「移住者住宅取得支援金」も交付しているので、こちらを空き家購入に充てて、DIYできる暮らしを始めるのもおすすめです。
国内で最初に指定された「霧島錦江湾国立公園」内にあるえびの高原等を中心に、トレッキング、キャンプ、スケート等のアクティビティを気軽に体験できる、アウトドア好きにはたまらないエリアです。
豊かな自然
えびの市の南に広がるえびの高原は標高1200m、国内最初の国立公園に指定された霧島錦江湾国立公園の北部に位置し、豊かな自然の宝庫としても知られる宮崎県内屈指の観光エリア。トレッキングスポットとしても人気の高い韓国岳や甑岳をはじめ、大小さまざまな山々がすそ野を広げる高原内には不動池、六観音御池、白紫池などの火山湖が点在。北部には人気のオートキャンプ場もある矢岳高原がある。市内を流れる川内川の上流ではヤマメ釣り、流れの緩やかな下流ではSUPも楽しめます。
アウトドアシティえびの
TEL:0984-351111
MAIL:info@city.ebino.lg.jp
アウトドアステーション
「道の駅えびの」の敷地内で、市内で体験できるアクティビティの紹介等を行っており、クロスバイク、電動アシスト付きマウンテンバイクのレンタルサイクルもある。キャラメルフラッペやカプチーノが楽しめるカフェもあります。
アウトドアステーション
住所:宮崎県えびの市氷山1006-1
TEL:0984-48-7650
営業時間:9:00~18:00
アクティビティの紹介
SUP
Stand Up Paddieboardは、その頭文字をとって「SUP}(サップ)と呼ばれているウォータースポーツ。バドルで水を漕ぐだけで、まるで川面を散歩しているような感覚を楽しめます。
サイクリング
高低差のあるコースを風を切りながら駆け抜けたり、美しい景色や澄んだ空気を存分に味わいながらのんびり走ったり、えびの市でのサイクリングは様々なコースを体験できます。
文:田代くるみ(Qurumu) 写真:田村昌士