“母”として“社員”として
岐阜の林業を支える女性の姿

日本の真ん中に位置し、“にほんのおへそ”とも呼ばれている岐阜県は、森林率が全国2位

「清流の国 ぎふ」と呼ばれるように、長良川などの大きな川があり、山とともにきれいな水が流れているので、自然豊かな環境であることが岐阜県の特徴です。そういったことから、もともと林業が盛んな地域であり、他のエリアに比べて下地が整っているため林業に携わりやすい県だそうです。

今回は、そんな岐阜県で、林業や森林に関りのある女性の団体「林業女子会@岐阜」を設立された堀部美希さんを取材し、女性が林業の仕事につくまでの歩みや、奥さんの視点から見た林業の仕事、林業女子会の活動についてお話を伺いました。

 

▲堀部 美希さん/株式会社 山共フォレスト(林業女子会@岐阜 設立者)
岐阜県岐阜市生まれ。本巣郡にある「岐阜農林高校 森林科学科」卒業後、森林文化アカデミーに入学。在学中に「林業女子会@岐阜」を立ち上げ、アカデミーのつながりでメンバーを集める。卒業後は東白川村森林組合で4年間林業について学んだ後、現在働いている株式会社山共フォレストに就職。現在は林業に携わる旦那様と加茂郡に住みながら、2人の子供を育てている。

 

林業女子会を立ち上げるまで

岐阜市出身の堀部さんは本巣郡にある「岐阜農林高校 森林科学科」に通い林業について学ぶ中で、現場での仕事、いわゆる「木こり」の仕事に興味を持ちました。女性の木こりがあまりいないこともあり、高校の先生に相談した際は、女性で現場にでるのは難しいと言われたそうです。それでも林業に関わりたいという思いをもっていた堀部さんは、森林の川上から川下まで学ぶことができ、現場ではなくても森林に関わることができる「岐阜県森林文化アカデミー」に通うことを決めました。


岐阜県森林文化アカデミー

森林文化アカデミーに入り多くの人と出会ったことで、高校では学ぶことのできなかった森林の魅力や、周りの人の意見や思いに色々な刺激をうけた堀部さんは、森林に関わりのある女性が集まった団体「林業女子会@岐阜」を立ち上げました。
林業女子会を立ち上げたきっかけは、アカデミーにいる間に何か活動をしたいという思いとともに、林業業界では数少ない女性が集まって、コミュニケーションをとれる空間をつくりたいという思いだったそうです。そして、アカデミーのつながりもあり、立ち上げ時には9人の女性が集まりました。

 

立ち上げ時の林業女子会の活動

林業女子会は全国各地にある任意団体で、実際に現場で働く人だけでなく、川下で働いている方や、森林関係の部署にいる県職員の方、森林にただ興味がある人でも気軽に参加できるような団体です。立ち上げ当時は、そういったメンバーと一緒に「女性に向けて」林業の魅力を知ってもらえるような活動を行っていたそうです。実際に体験者の方々と森に入って木を切ったり、女性の木こりが大きな木を切るところをその場で見てもらうなど、女性だけで活動を行うことで、今までの固いイメージを払拭した新しい体験活動を行っていました。

現在は岐阜県自体が林業や木育に力を入れているので、県などのイベントに出展したり、県などと一緒にPR活動を行うことも多くあるようで、公式に誰かをサポートできる団体となっています。


岐阜県主催 ぎふの木フェスタ出展の様子


森のジョブステーションぎふ主催 森のしごとセミナー出展の様子

 

アカデミー卒業後、女性として現場に入るまでの苦労

アカデミーに入ったことで世界が広がった堀部さんですが、森林に関わる様々な仕事を知ったうえで、やはり原点となる「林業」という仕事で現場にでたいという思いを強く持ちました。そのためアカデミー2年生の頃、様々な会社に問い合わせをしましたが、女性で木こりとして働いている人が少ないこともあり、電話で断られることが多々あったそうです。

そんな中、今働かれている「株式会社山共(現在は株式会社山共フォレスト)」に就職が決まりました。ただ、会社では人材育成の体制が整っていなかったため、近くにある東白川村森林組合で4年間勉強をし、山共に戻ることになりました。

堀部さんのお話をお伺いして、林業が盛んな岐阜だからこそ、そういったサポートが充実しており、林業の経験がない方でもこの世界に踏み出せる場所が用意されているように感じました。

 

結婚後も子育てしながら続けられる職種

現場での仕事を経験した後、東白川村森林組合で働かれている旦那さんと結婚しお子様が生まれた堀部さんは、現在「株式会社山共フォレスト」で事務として働き、山の管理の仕事を請け負っています。
取材にお伺いした日は、お子さん2人と一緒に事務所で過ごしていました。

堀部さんは、現在育休を取られているのですが、会社の方にお子さんを連れてきていいよ、と言ってもらえるのでとても助かるとおっしゃっていました。
自然に囲まれ、自分の仕事もしながら、会社の方たちと子供を育てられる環境は、都会ではなかなかできない形であり、この職種・この地域だからこその魅力のように感じました。

 

“妻”の立場から見る林業の仕事

旦那さんが東白川村森林組合で働かれているということで、奥さんの立場から見た「林業」という仕事についてお伺いしたところ、一番強く言われていたのは、「無事に帰ってきてくれるか心配」ということでした。やはり山の中での作業は危険が伴い、実際に現場で働いた経験がある堀部さんだからこそ、「林業」という仕事の危険さを知っています。人のためになる仕事、必要不可欠な仕事ではありますが、本人だけでなく、奥さんのサポートもとても必要になってくる仕事だと強く感じました。

ただ、この仕事、この環境だからこそ出来ることも多く、仕事はだいたい17時定時に終わるので、夕方は家族で過ごす時間をしっかりと確保できるそうです。夕飯も必ず家族で食べられるので、お父さんとお子さんの触れ合う時間が多く、お子さんもとても喜ばれているそうです。

今はまだ小さいですが、お子さんが小学校にあがると、お父さんと子供の生活リズムが一緒になるので、家族が決まった時間にまとまって動けるというのは、母親としてもありがたいとおっしゃっていました。

 

この生活だから家族で体験できることがある

この日取材させていただいた会社の周りにはお店があまりなく、堀部さんが現在住まわれている地域からも買い物に行こうと思うと往復で約3時間はかかるそうです。

利便性や子育てのことを考えたときに、今の地域に住むことにためらいはなかったですか?とお尋ねすると、堀部さんは全くなかったと答えられました。第一にこの仕事をするためにこの地域に来たかったということと、自然に囲まれている田舎暮らしだからこそ体験できることが多くあり、こどもたちにも体験させてあげられる環境があるとおっしゃっていました。


お子様が家の周辺で落ち葉を集め、落ち葉プールで遊んでいる様子


子供たちを連れて、お父さんの仕事場に現場見学に行ったときの様子

自分のやりたいことを仕事にしながら、自然に囲まれて周りの人と一緒に子育てをする堀部さんの姿は、都会ではみることのできない田舎暮らしの魅力を感じさせてくれました。

 

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\今の林業女子会の活動について/

団体のメンバーの構成は当初と変わらず、林業に携わる人、林業系の県職員、林業に興味のある人、アカデミーの学生などです。

【活動内容】
■森林文化アカデミーの学生と交流する「森女カフェ(もにょかふぇ)」
■岐阜県開催のイベント「ぎふの木フェスタ」の出展
■他県の林業女子会との交流
■森林や林業の勉強会(林業関係の会社にお伺いして見学など)

林業に興味がある女性の方は、ぜひお気軽にご参加ください!
林業女子会@岐阜のブログはこちらから↓
http://www.musublog.jp/blog/ringyoujosikaigifu/

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また、自然の中で暮らしたい、働きたいと、少しでも「林業」に興味のある方は、岐阜県の「森のジョブステーションぎふ」(下記のINFORMATION参照)を訪ねてみてはいかがでしょうか?
きっと今までには見たことのない“新しい世界”を体験することができますよ。

 

\INFORMATION/

【森のジョブステーションぎふ】
林業の就業相談から技術習得、定着までを一貫して支援し、担い手の確保・育成、事業者の雇用管理改善などの取組を行っています。
アドバイザーを配置しておりますので、いつでも相談ができます。

■所在地:岐阜県美濃市生櫛1612番地2 岐阜県中濃総合庁舎1階
■TEL:0575-33-4011(代表)
■FAX:0575-46-8408
■E-mail:m-job@gifu-shinrin.or.jp
■休所日:土曜日、日曜日、祝日、年末年始
■HP:https://m-job.net/

                   

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