のびのび、地域で。理想の子育てができる南予エリア。
自然とまちが近く、温暖な気候で暮らしやすいことから、人気の移住先になっている愛媛県。近年、県全体で移住者が増加傾向にある中、人と人とのつながりの深さや、豊かな自然に育まれた穏やかな“地域の特性”を生かし、子育て世代の移住に力を入れるのが県南西部の南予(なんよ)エリアです。
これまで、南予5市町(宇和島市・八幡浜市・大洲市・西予市・内子町)でオーダーメイド型の移住体験ツアーを実施したり、南予に移住した家族と交流して本音が聞けるイベントを東京・大阪で開催したり、子育て世代に特化したユニークなプログラムを次々と打ち出して、多くの移住検討中の家族を受けいれてきました。参加家族からは「人がとても温かい」「地域で子どもを育てる雰囲気がある」といった反応が寄せられるなど、南予ファンを育んでいます。
オーダーメイド移住体験ツアーの様子
南予移住のプログラムに深く関わるのが、「南予移住マネージャー」の山口聡子さんです。
「南予5市町それぞれに自然・文化・暮らしの特徴があります。まずはいろんな問い合わせに対して、その人にとって広く、有益な情報をお渡しできるように心がけています。どんな暮らしを実現したいか、どんなことに興味があるかなど、いろんなお話を伺ったうえで『ここにいったらいいかも』『この人に会ったらヒントになるかも』というのを考えて、ご案内しています」
相談内容に応じていろんな情報を提供する、山口聡子さん
都会での暮らしと、南予での暮らし。それぞれを知るからこそ、できること。
山口さん自身はUターン組。南予エリアの西予市で生まれ育ち、地元の高校を卒業後、東京都内の大学へ進学。販売業に勤しむ中、セラピストという天職に巡り会います。やりがいと充実の日々の中で起きたのが、2011年の東日本大震災でした。それを境に、東京の日常に疑問を抱きはじめます。
「震災をきっかけに『どこでどのように生きていきたいのか?』を考えるようになった結果、私にとってこれから生きたいと思う場所は、未知なる地ではなく生まれ育った故郷でした」
以降、自分らしい生き方を探すように多拠点生活を経験した後に、2017年、故郷へ戻って西予市野村町の地域おこし協力隊に着任。活動当初から、地域外から関わる人を増やしていくための企画を実施したり、Iターンで着任した協力隊の相談にのったりすることも少なくはありませんでした。
「都会で暮らす人たちの感覚と、地域の人たちの感覚のすり合わせってとても大事な気がしています。だから地元の人や、移住希望者、移住してきた人、それぞれから受ける相談はいろんな立場を考えてできる限り丁寧に聞くように心がけています」
物事を俯瞰し、他者の気持ちを分かりやすく翻訳していく山口さんのもとには協力隊卒業後も、まちづくりの仕事が次々と回ってくるように。2021年、内子町に南予への移住相談窓口を併設したコワーキングスペース「COWORKING-HUB nanyo sign(南予サイン)」ができたタイミングで、南予移住コーディネーターに着任しました。
山口さんが常駐するコワーキングスペース「COWORKING-HUB nanyo sign(南予サイン)」
「“都会”と“田舎”、どちらの良さもデメリットも分かるからこそできるアドバイスがある」と語る山口さんに、南予エリアの魅力を教えてもらいました。
「5市町それぞれに特有の自然・文化・暮らしがあります。海・平野・山と自然にあふれ、自然と人との暮らしがとても近いうえに、伝統産業や歴史的な町並み・景観など、文化的な面があるのも魅力です。とりわけ、“食”に恵まれています。私自身、地域の人からいろんな旬のおすそ分けをいただきますが、これは特別なことではなく、移住された方は、『玄関に野菜が置いてあった』とか『新鮮な魚をたくさんもらった』とか、よく話していますね。南予あるあるです(笑)」
柑橘や水産業が盛んな宇和島市。
かんきつ栽培が盛んな八幡浜市。都市機能がコンパクトにまとまっている
古民家を活用したまちづくりで世界的に注目を浴びる大洲市
拓けた平野、大自然、伝統的町並みなど、まちの表情がゆたかな西予市
地域コミュニティが盛んな内子町。若い移住者も多い
南予に来れば、子どもが変わる。それを感じてほしい
移住相談の中でも、今後の生き方の切実な悩みにつながるのが子育て世代の移住。高いコミュニケーション能力が求められるセラピストという肩書きを持つ山口さんは、ちょっとした言葉を糸口に、相談者の本音にたどり着きます。
「相談者の方のお話でよくあるのが、“お父さんは子どもの寝顔しか知らない、お母さんは子育ての相談をする相手がいない。でも日々の忙しさに追われて何もできない”、といった余裕のない都会での子育ての現実です。すぐに移住までは考えていなくても、日常に違和感を持つご家族は一度、南予に来てほしいです。南予には田舎の良さ、都会とは違う暮らし方があると体感するだけでも、そのご家族にとって大きな経験になると思っています」
山口さん自身、都会から訪れた子どもたちの変化を目の当たりにしてきました。
「南予では地域のいろんな人たちが見守り、声をかけてくれます。そうすると心を開いた都会育ちの子どもたちがあちこち駆け回るようになるんです。親御さんも、それまで漠然としていた“田舎の良さ”が、人のやさしさ・包容力・地域社会の温かさに触れることで、『こういうことだったのか』と実感できるようです。若い頃は自己実現や刺激を求めますが、子どもができると理想の暮らしが変わり、子育てに合ったライフスタイルを重視するようになります。
豊かな自然に囲まれながら、地域で子育てをする風土がある南予では、地域のおじちゃん、おばちゃんが、わが子のように声をかけてくれたり、さりげなくサポートしてくれたりします。その心地よさは短時間の滞在でも十分実感できます。そうして南予に移住されたご家族は、地域に見守られ、安心しながらのびのびと子育てしている印象です。
ただ、田舎暮らしのイメージにありがちな“のんびり”、とはいきません(笑)。草刈りのお手伝いとか地域でやることがありますから。地域社会があって、その中に生きて、子どもたちは生きる力を自然と備えながら、すくすくと伸びやかに育っています。私が、南予が都会よりも子育てにとってプラスと思えるのは、そういうところです」
10月初旬、移住体験ツアーに参加した大阪市のTさんファミリーにもお話を聞きました。
ツアーでは学校やスーパーなど暮らしのリアルに触れるだけではなく、移住者が営むカフェやゲストハウスなどを訪ね、“先輩移住者”や地元の人たちと交流を深めたといいます。
「のどかな里山の風景にも、地域の人たちの温かさにも感激しました。特に印象的だったのは内子町の山深い場所にある小田地区です。山奥でも風景が整っていて、とてもきれいで、たくさんの若い移住者さんがいらっしゃいました。地元のおばちゃんが、私たちの子どもに洋服をプレゼントしてくれてびっくりしました。こんなところで子育てがしたいなと改めて思いましたし、わたしたちにとって『また戻りたい場所』になりました」と、4泊5日の南予ツアーを振り返ります。
内子・小田地区の先輩移住者(後段のお二人)と交流するTさんファミリー
現在、南予と気軽につながる制度「お福わけ登録制度」も実施中。「福を分ける」という人の温かさを感じる南予ならではのネーミングをつけた制度は、専用フォームで登録すればニーズに合わせた旬の情報が届いたり、継続して移住相談ができたりと、南予移住の入り口を気軽に手にすることができると好評です。
山口さん自身も、日々いろんな移住相談を受けながら、自然が豊かで心地よく、安心して過ごせる南予暮らしに、これからの可能性を感じると言います。
「仕事で疲れても大自然の中に帰ればそれだけでリセットできるし、人と人とのつながりが濃くて私自身もそのつながりに助けられて今があります。移住希望の方が、実際に移住した後も良い出会いがあるように、その方に合った地元の人たちとのつながりをつくっていくのが私の一番の役目だと思っています」
都会にはない暮らしを知ることの大切さ。人や地域とのつながりから生まれるもの。愛媛・南予での移住体験を通して“もう一つの暮らし”を味わってみませんか。
https://e-iju.net/nanyo/ofukuwake/
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移住情報ページ「南予子育てガイド」
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文・ハタノ エリ