ゲームで地域を知る。
若手職員の発案で誕生したコンテスト

福岡県マインクラフトコンテスト レポート1

福岡県の服部誠太郎知事が22年8月10日の定例記者会見で発表したイベントに注目が集まった。いわく、「福岡県マインクラフトコンテスト」の開催である。
知事は「移住を検討している層の多くは、30
代・40代。将来的な移住者の裾野を広げていくために、若い世代へのアプローチが必要だと考えた」と述べた。

少子高齢化が進み、若年層の首都圏への流出が続く現代。移住・定住とその裾野の拡大につながる関係人口の創出に力を入れている地方自治体は、全国に枚挙のいとまがないほどだ。
それは、政令指定都市のなかで最も高い人口増加率を誇る福岡市を擁する福岡県でも同じ。県全体の人口は増加し続けているものの、県内60市町村のうち半数以上の市町村で人口減に直面している(令和2年度国勢調査・人口等基本集計結果)。今後を見据え、福岡県としても関係人口の創出には重点的な取り組みが必要だろう。

そんななかで開催された「福岡県マインクラフトコンテスト」。服部誠太郎知事は、「この事業は、20代の若手職員の提案を生かして作り上げたもの。これまでにないユニークな取り組みだと自負している」と期待をにじませた。

その「20代の若手職員」こそ、「福岡県マインクラフトコンテスト」の立役者、県政策支援課の園田誠一郎さんだ。同僚たちとプライベートでマインクラフトに触れるうちに、その魅力と大きな可能性に気づき、今回のコンテスト企画に至ったのだという。

コンテストには全130作品の応募があり、「課題部門」「政策部門」「自由部門」の各部門で合計12作品が受賞。2023年2月3日に、受賞者を福岡県庁に招いて表彰式を行った。
今回は、福岡県庁の園田誠一郎さんと、コンテストの審査員を務めたプロマインクラフターのタツナミシュウイチさんにお話をうかがった。

 

マインクラフトってどんなゲーム?

このコンテストについて触れる前に、「マインクラフトってなに?」という皆さんのために、まずはマインクラフトについて簡単な説明をしておこう。
マインクラフトは、パソコンや家庭用ゲーム専用機、スマートフォンなどで遊ぶことができるゲーム。2009年に誕生し、2013年ごろから世界的な流行となり、2021年には月間アクティブユーザー数が1億4000万人を超え、日本の全人口に等しい人々が遊んでいる計算だ。

「マインクラフトは、“サンドボックスゲーム”と呼ばれるジャンルのゲームです。マインクラフトの世界は、土や石、木などいろんな種類のブロックで構成されています」(タツナミさん)

サンドボックスとは、もともと子どもが遊ぶ砂を入れた箱庭のことを指すが、日本語でわかりやすく表現すれば「公園の砂場」だ。砂場遊びには決まったルールはない。お城を作ろうが山を作ろうが、水を入れて池や川を作ってもいい。想像力のままに遊ぶことができるのが砂場遊びの醍醐味だが、マインクラフトにも同じ楽しみがある。

「マインクラフトの世界は、1メートル四方のブロックですべてが表現されています。ブロックでできた木を切り倒せば丸太ブロックが手に入り、丸太を加工すれば木材ができる。木材を4つ集めれば作業台のできあがり。作業台で作ったツルハシで岩肌を叩けば、石炭や鉄を採集できる……という具合に、世界を構成するすべてのブロックを利用したり、壊したり、積み重ねたりして、さまざまなものを作ることができます。また、作ったものを利用してマインクラフトの世界のなかで鬼ごっこをしたり、スポーツをすることもできる。

マインクラフトにはゲーム内で決められた『得点』や『エンディング』というものがないので、プレイヤーそれぞれの楽しみ方で遊ぶことができます。だからこそ、マインクラフトは“砂場ゲーム”といえると思います」(タツナミさん)

教育の現場でも、マインクラフトの活用が進んでいる。

「マインクラフトは、教育プラットフォームとして非常に高い評価を得ています。海外では、学校の授業で使っている国も増えてきました。ソフトウェアとして優れているのももちろんですが、子どもたちにとって教科書で勉強するのと、普段遊んでいるマインクラフトで勉強するのでは、どちらが興味を引くかといえば……もちろんマインクラフトですよね。プログラミングや理科のように教科に直接関係するものはもちろん、今回のコンテストのように『地元の代表的な建築物に触れてみよう』とか、『歴史的な建築物を見学してみよう』など、さまざまな手法があります。マインクラフトの魅力を最大限に生かすためには、大人がマインクラフトがどういうものかを知っておかなければいけない。マインクラフトを、『ゲームでしょ?』と色眼鏡で見てしまってはもったいないですよ」(タツナミさん)

 

マインクラフトで建てる、学ぶ、触れる

無限に広がるマインクラフトの遊び方のひとつに、「建築」がある。さまざまなブロックを組み合わせ、積み上げて、巨大な建築物を作り上げる。ゲーム内で役に立つ建物ではなく、「見て美しい」「歩いて楽しい」建築物を作る、というものだ。お城や高層ビル、公共施設など実在する建物から、映画やアニメに登場する建物など実在しないものまで、ありとあらゆる建築物がマインクラフトの世界に登場している。なかにはラスベガスの街そのものを完全再現したものや、廃墟美で知られる長崎県の世界遺産・軍艦島を再現したものなど、「建築物」という概念を超えた作品が次々に生まれている。

今回のコンテストを企画した園田さんも、このマインクラフト建築の面白さにハマったことがきっかけだったという。

「県庁の職場仲間数名で、マインクラフトをやってみよう、となったのが2021年のことでした。私の出身地にある『西鉄柳川駅』をみんなで作ったんですが、柳川を訪れたことがない先輩が『一度、実際に現地に行ってみたくなった』と言いまして。これが、今回のコンテストを企画したきっかけになりました。県内のさまざまな建物や観光名所などを作るコンテストを開催すれば、県外の人に福岡県の魅力を知ってもらうことができ、実際の訪問に繋げることができるのではないか、と考えたんです」(園田さん)

「現地に行ってみたくなる」という気持ちを呼び起こす―つまり、関係人口の創出につながる心の動きが生まれるということだ。

「他の自治体さんとのマインクラフトを使った取り組みで、その自治体にあるお城を大学生が再現したことがありました。私はそれをマインクラフト上で見たり歩いたりしたので、後に実際にそのお城を訪れた際には『あ、この角を曲がって、この階段を登っていけばいいんだな』ということがすぐわかったんですよ。とても不思議で、大きな意味がある感覚だと思いましたね」(タツナミさん)

「作品が集まるかどうか不安だった」と心配した園田さんだったが、2022年8月17日から10月31日までの募集期間で、合計130作品の応募があった。このうち28作品が県外から、半数以上が小・中学生による作品。作品の質も非常に高く、初開催のコンテストとしては大成功となった。

「実際の建造物と見分けがつかないくらい忠実に再現された作品や、福岡県の政策や名物、特産品などをユーモアたっぷりに表現された作品を数多く応募いただいて、とても嬉しかったです。また、応募された作品を見て、自分も知らなかった福岡の魅力を発見したり、県外の方が福岡県に対して抱いているイメージを知ることもできました。あとは、福岡県に住んでいる子どもたちが『自分が住んでいる地域にこんな場所があるんだ』と再認識してくれたこともよかったですね。これは郷土愛を醸成することにつながりますし、子どもたちが将来地域に定住してくれることにもつながります」(園田さん)

 

マインクラフトを通して地域の良さを知る

「応募作品に添えられたコメントのなかに、すごく印象的なものがありました。『遠くから引っ越してきた身ではありますが、この福岡に骨をうずめる予定です』っていうんですよ。福岡に来て、福岡の良さを知って、一生福岡にいようと思う。これはもう、移住の成功、定住じゃないですか。そう思ってくれる人が、このコンテストに参加してくれた。素晴らしいことですし、これが第一歩なんだと思います。これが積み重なることで、関係人口の創出や移住定住の促進につながります」(タツナミさん)

 

タツナミシュウイチ
日本で最初のプロマインクラフター

明治大学研究所員。マインクラフトカップ全国大会審査委員長。 2018年マインクラフトマーケットプレイスにてアジア初、日本初の作品をリリース。 プロマインクラフターとなる。 2021年9月、MicrosoftInnovative Educator FELLOWの称号を米マイクロソフト社から授与。 「情熱大陸(毎日放送)」「マツコの知らない世界(TBS)」「有吉ぃぃeeeee!(テレビ東京)」など 地上波番組にプロマインクラフターとして出演、マインクラフトの教育的効果について広く世間に発信、 現在もマインクラフトをプラットフォームとして使用した教育教材の制作や特別支援教育での活用を研究中。

 

 

福岡県マインクラフトコンテスト レポート 2を見る

文・深水 央

 

 

                   

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