【地域で活躍するアーティスト】
難病を乗り越え、山口県で歌手活動をスタート
Linoの想いが人の心と故郷を輝かせる

オンラインワークが広まり、暮らす地域や働く場所が自由に選べるようになってきた。地方にいても自分らしい働き方ができ、やりたいことにチャレンジできる今の時代、音楽・芸能活動もそのひとつ。東京や大阪などに拠点をおかず、地方にいながら活躍するアーティストも増えている。

今回は、ふるさとの山口県で暮らしながら、歌手・ラジオパーソナリティのほか、周南市観光大使など、幅広いジャンルで活躍されているLinoさんを訪ねて、錦帯橋で有名な岩国市へ。脳の難病をきっかけに音楽活動をスタートし、ライブ配信をするライバーとしても注目を集めているLinoさん。音楽やトークライブを通して伝えたい想い、地方での活動を支える「ライブ配信」の魅力についても語っていただいた。

 

岩国のバーで歌の楽しさを知り、難病を機に歌で生きることを決意

小さな頃から歌が好きで、気がつけば歌を口ずさんでいたというLinoさん。子ども時代の夢は、歌手になること。しかし、多くの人が経験するように、大人になるにつれて“夢”に対する現実味は薄れていった。やがて、奈良県の高校に進学したことをきっかけに生まれ育った岩国市を離れ、関西で働き始める。「実は20歳の頃、大阪の音楽事務所の方から『歌手になりませんか』と誘いを受けたことがありました。でも当時は自分に自信がなくて、お断りしたんですよ。それから、音楽とは関係のない仕事をしていましたが、高齢の両親のそばにいたいと思って25歳で岩国に戻りました」

そこで、ひとつの転機が訪れる。たまたま知人に連れて行ってもらったピアノ・バーでの出会いだ。「知り合いに『何か歌ってよ』と言われて、マスターの伴奏でカーペンターズの曲を歌わせてもらったら、すごく感動してくださって。その翌日、お店からライブをやってほしいと言われました。人前で歌ったこともないし、レッスンを受けたこともないけど、それでもやってみたいと。それから、バーやフォーク酒場などで歌う機会をいただくようになりました。歌うことが、自分を表現できる、一番の楽しみになったんです」

しかし、突然の悲劇に見舞われる。2015年の春、仕事中に転倒したことで、脳の難病が見つかったのだ。脳梗塞や脳出血のリスクをはらんだ『もやもや病』と診断された。

「脳の難病と言われて、半身不随になる?言語障害になる?死ぬかも?って、色んなことが頭を駆け巡りました。そこで、自分の人生を見つめ直して、何ができなくなるのが一番嫌かと考えたんです。やっぱり、大好きな歌を諦めたくない。いつ死ぬかわからないからと暗い人生を送るよりは、とにかく“自分がやりたいことを、やりきって生きよう”と、子どもの頃の夢でもあった歌手になろうと決めました」

 

山口にいても、たとえ海外でも。オンラインで広がる活躍のチャンス

Linoさんは、2015年10月に歌手としての道を踏み出して以来、山口県に根ざした活動を続けている。東京などに拠点をおかず、地元で活動する理由を尋ねてみた。

「一番の理由は家族ですが、自分に合った環境で暮らすことが、体調面でも、気持ち的にも大事だとすごく思います。それに、オンラインが普及したことで、地方でも、たとえ海外でも、どこにいても活躍できるチャンスはあるし、新しい出会いも可能性も広がります。私は、Pocochaでライブ配信もさせていただいていて、自分のライブをオンラインで全国に発信しています。実際に山口にいながら関東圏からお仕事をいただくこともありますが、Pocochaをやっていることで自分の露出が増えてお仕事につながっているなと感じますし、自分の好きな場所で夢を叶えるのに、コミュニケーションアプリの存在は大きいです。Pocochaのライバーの中には、配信をきっかけにメディアで有名になった方もいますよ」

 

Linoさんのライブ配信では地元愛あふれるトークもあり、そこで山口県の魅力を知るリスナーも多いそう。「配信で周南市の観光大使をやっています〜と言ったら、『周南市ってどこにあるの?』『Linoちゃんに出会ったおかげで周南市のことを知った』という方もいて、認知度アップにもなっているんですよ(笑)。観光スポットや名産品の話とかしていたら、『山口に行ってみたい』というコメントも増えて嬉しいですね」

Pococha(ポコチャ)とは、株式会社DeNAが手がけるライブ配信アプリのこと。オンラインでライバー(ライブ配信者)と、リスナー(視聴者)をつなぐサービスで、スマホさえあれば配信も視聴も手軽にできる。ライバーは音楽やトークなどを中心にライブ配信を行い、配信時間やリスナーの応援によって収入を得ることも可能だ。シングルマザーなど、生活の核となる部分を変えず活躍する人もいる。

 

アプリといえども人・対・人。
場所を選ばず夢の実現の後押しをしてくれるPococha

「山口県外の人にLinoという存在を知ってほしくて」と、2018年からライバーとして配信を始めたLinoさん。色々な配信アプリを使っていたが、なかなか思うような成果が得られない。やがてコロナ禍となり、人が集まるコンサートもできなくなってしまった。

「ライブ配信は続けていましたが、コロナ禍の今こそもう一度ちゃんと向き合おうと思い、Pocochaで自分の想いを伝え始めました」と、難病を克服した経験をもとに、“生きていることは当たり前じゃない”と、いのちの大切さ、やりたいことを見つけて毎日を笑顔で過ごしてほしいと、胸のうちにある熱い想いをリスナーに語りかけた。

「自分の想いをきちんと伝えることで、リスナーさん達が応援してくれるようになりました。私の配信枠は、夢をどんどん実現させていく、前に進んでいる姿が見れるとリスナーさんが受け止めてくれて、いつのまにか “私の夢=みんなの夢”になっていると感じます。実際に会ったこともなく、オンライン上のやりとりですが、アプリといえども“人・対・人”のつきあい。それに、リスナーさんは健康な方ばかりではありません。入院中でPocochaを楽しみにしてくださっている人もいます。『Linoさんのお話、歌、生き方に影響されて、頑張ろうと思いました』とか『勇気づけられた』というコメントをいただいたり、歌を楽しみにしてくれたり、想いに共感や感動してくれたり。スマホ画面のこっちでも向こうでもお互いに泣いています。こんなに素晴らしいことはありません」

Linoさんは歌と言葉で、リスナーはコメントを送ることで、お互いに応援しあっている。深いつながりと心温まる関係性は、たくさんのファンの心をつかんでいる。

「初めて私の配信を見てくださったリスナーさんが、『良い枠ですね』って。ライバーとリスナーで作るグループをファミリーというんですが、うちのファミリーはみんな仲が良くて、居心地が良いと言われています。私にとっては、課金してもしなくても大事なリスナーさん。1日24時間しかない時間をさいて配信を見てくれているんですよ。そんな人達と、どうやってPocochaを楽しもうか、ただそれだけです」

 

Linoが見つめる、これからの未来

Linoさんは自身の5周年記念コンサートを企画した際、『山口を盛り上げようプロジェクト』を同時開催しようと思い立つ。よさこい、大徳山太鼓『回天』保存会の和太鼓チーム、地元の高校にもデザインや合唱のコラボを提案。クラウドファウンディングも立ち上げ、と、地域を応援するためにも日々奮闘している。

「コロナ禍でも沈まず、地元を盛り上げたいと思ってこのイベントを企画しました。音響や照明、舞台監督など、コロナでイベントの機会が減って困っている地元の方達の力になれればと思っています。日々のコミュニケーションの積み重ねが、大好きな山口での活動を後押ししてくれています」

「人生には色んな試練があるけど、目の前にある事実は変えられません。それをどう解釈するか、明るくなるか、どんよりするか、未来は自分次第だと思います」
笑顔で語るLinoさん。その想いが、地域の未来を、人の心を、明るく照らしてくれる。

住みたい場所にいながら様々な活動を支援してくれる『Pococha』は、働き方にも暮らしのスタイルにも大きな変化が訪れている今の時代にフィットした注目のツール。音楽やダンス、パフォーマンスなどアーティストはもちろん、自分らしい何かを表現したい人、好きな土地で好きなことを発信したい人も。ライブ配信やコミュニケーションを通して、地域との新しい関わり方が見つかり、自分の世界がさらに広がるもしれない。

POCOCHAのWEBサイトはこちら

文・山田美穂  写真・内藤正美

                   

人気記事

新着記事