TURNSプロデューサーが体験
千葉県外房地域で二地域居住生活【前編】

海、山、里があり、都心から気軽にアクセスしやすい千葉県は、仕事と合わせて休暇を楽しむワーケーションや都会との二地域居住に最適な場所です。

2022年10月中旬、地方を軸にした豊かな暮らし方・働き方を実現するための有益な情報を発信している『TURNS』のプロデューサー、堀口正裕が千葉県南東部に位置する外房地域で二地域居住生活を体験しました。自然に囲まれながらリモートワークもグルメも地域の人との交流も満喫した様子を、前編と後編にわたってレポートします。

今回は前編として、勝浦市と大多喜町での2日間の様子をお伝えしていきます。


1日目 勝浦ってどんなところ?まちを探索

東京駅から特急列車「わかしお」に乗って約90分、勝浦駅に到着。1日目は勝浦市内中心部の散策からスタートです。魅力的なスポットを巡りながら、地域の人との出会いを楽しみます。

最初に立ち寄ったのは千葉県勝浦朝市通りにある「佃煮近江」。手作りのカツオやマグロの佃煮、ひものなど、地元の素材を使った水産加工食品を販売している個人商店です。勝浦市は日本有数の漁業の町。水産加工業も盛んです。店内にぎっしり並ぶ種類豊富な品揃えは流石!

<佃煮近江>
住所:〒299-5234 千葉県勝浦市勝浦146
HP:https://tsukudanioumi.com/

 

勝浦中央商店街にある「かつうら商店」には千葉県内や勝浦市の特産品が集結。地元で水揚げされた鮮魚を使ったひものや練り物、地酒、ご当地グルメ「勝浦タンタンメン」関連商品など土産物が充実しています。店内でつくる白身魚シイラのフライをバンズで挟んだ「マリンバーガー」は、ここだけのオリジナルメニューです。

<かつうら商店>
住所:〒299-5225 千葉県勝浦市勝浦154
HP:https://www.katsuura-kankou.net/katsuurashop/ 

見て回るだけでなく、お店や街角で出会った地元の人と話すことで、勝浦市の生きた情報やストーリーを深く知ることができました。

さて、たくさん歩いてお腹もすいてきたところでランチタイム。「勝浦に来たのなら、やっぱりおいしい海鮮が食べたい!」と、「丸竹都寿司本店」へ。旬の魚介がたっぷりのった日替わり海鮮丼をいただきました。

<丸竹都寿司本店>
住所:〒299-5234 千葉県勝浦市勝浦119
HP:https://www.marutake-honten.com/

 

勝浦市観光協会 KAPPYビジターセンター訪問

午後は勝浦市観光協会KAPPYビジターセンターへ。ここで移住促進業務を担当している市職員の植村さん、地域おこし協力隊の大和田里奈さんに、勝浦の魅力発信や移住プロモーションについてお話しを伺いました。

勝浦市観光商工課定住・ビジネス支援係の植村さん(写真左)、勝浦市地域おこし協力隊の大和田さん(写真右)、勝浦市の公式マスコット「勝浦カッピー」と記念撮影。

「海と山に囲まれた勝浦市は、その地形ゆえ新鮮でおいしい海の幸、山の幸に恵まれています。海から吹く風で夏はとても涼しいですし、冬に関しては意外と平均気温が東京より1〜2度高く、1年を通して過ごしやすくなっています。いいところですよ」と植村さん。

1958年をピークに人口減少が続いる勝浦市ですが、リモートワークが普及した近年は移住の相談が増えているそうです。相談数の推移は、令和2年度は75件、令和3年度は254件、今年度は10月18日時点で既に224件あり、昨年度を大きく上回りそうとのこと。

実際に、どのような人がどんな目的で勝浦市へ移住や移住検討をしているのでしょうか。

「首都圏の企業にお勤めの方が、テレワーク移住をされるケースが増えています。やはり海のイメージが強いようで、サップやサーフィン、ダイビング、釣りといった趣味を身近に楽しめる暮らしがしたいとう声が多いですね」(植村さん)

とはいえ、10人いたら10通りのニーズがあると、植村さんは続けます。

「勝浦市は海沿いの勝浦地区・興津地区と、山間部の上野地区・佐野地区の4つの地域があります。海側と山側ではまちの雰囲気も住民性も異なりますので、どんな生活を望んでいるのかを丁寧にヒアリングしてその人に合った情報を提供したり、希望があれば地域の人とつないだりすることもあります。市街地でのマンション暮らしも、ひっそり田舎暮らしも、いろいろな暮らし方を選択できるところが勝浦市の特徴です」(植村さん)

自然が豊かで、都市と田舎のバランスが取れた勝浦市。移住先としてとても魅力的ですが、家族がいれば子育てのための支援策も気になるところ。

「今は高校生まで医療費が無料で、小中学校の給食費も無料です。このほかに、出生児におむつ券 6万5000円分を支給するなど、充実していると思いますよ」と植村さん。

2021年に地域おこし協力隊として東京から移住してきた大和田里奈さんは、移住相談窓口として多様な相談に応じるほか、以前からの職業である動画クリエイターとしても活動。勝浦市のさまざまな情報や魅力を、動画制作を通じて全国に発信しています。

2年目になる勝浦市での暮らしについて、大和田さんはこう話します。

「自然が身近にあって魅力的ですし、人が温かいですね。外から来た人に対して排他的ではないし、かといって、とやかく介入してくるわけでもないので、程よく人付き合いをしたい私にとっては居心地がいいです。自分の暮らし方に合わせて地域が選べると先ほど植村から話しがありましたが、人との距離感も自分で選べる場所。誰でも来ていいよという包容力を感じます。勝浦に来て本当に良かったと思っています」

移住先のコミュニティに馴染めるだろうかと不安を抱える人は少なくありません。積極的に地域と関わりたい人もいれば、そうでない人もいます。大和田さんは、そうした一人ひとりの気持ちを汲み取りながら、移住者と地域をマッチングさせていきたいと考えているようです。


大和田さんが制作した勝浦市のプロモーション動画

二人三脚で移住プロモーションに取り組む植村さんと大和田さん。最近ではメタバースを活用した移住イベントを企画しているそうです。

「今度、お隣のいすみ市さんと一緒に『Oasis』というバーチャルプラットフォームを使ったオンライン移住イベントをやるんです(2022年11月10日開催)。移住相談者がアバターとなって仮想空間を歩き回り、私たちや先輩移住者と直接お話することができます。新しい取り組みで若い方たちにもPRしていけたら」と植村さん。

今後も移住・定住の不安や疑問を解決する先進的なソリューションを提供してきたいと、さらなる展開に意欲を見せる二人でした。

 

<KAPPYビジターセンター(勝浦市観光協会)>
移住・定住相談窓口が併設されています。
住所:〒299-5225 勝浦市墨名815-56
HP:https://www.katsuura-kankou.net

<千葉県勝浦市 移住・定住ポータルサイト「日々、かつうら」>
https://www.katsuura-iju.org/

 

旧老川小学校でワークタイム

高台に建つ旧老川小学校。運営は「無印良品」でおなじみの(株)良品計画。

夕方はしっかりワークタイム。レンタカーで大多喜町の丘の上にあるコワーキングスペース「旧老川小学校」へ移動します。

「旧老川小学校」は生徒数の減少に伴って2013年に廃校になった校舎をリノベーションした施設。地元産の杉材をふんだんに使ったユニークな建築デザインが印象的です。ふと顔をあげれば周囲の緑が目に入り、和やかな気持ちで仕事に集中することができました。

<旧老川小学校>
住所:〒298-0265 千葉県夷隅郡大多喜町小田代524-1
HP:https://localnippon.muji.com/place/3614/

 

2日目 『まるがやつ』の古民家、畑を見学

2日目の朝に向かったのは『まるがやつ』。築約200年の古民家をリノベーションした一棟貸し・体験型宿泊施設です。手がけたのは一級建築士事務所の「人と古民家」。

5年前にオープンして以来、「遊ぶ、学ぶ、育てる、食べる」をコンセプトに、農業体験やバーベキュー、竈(かまど)でご飯作りなどの農的暮らしが体験できるスポットとして注目されています。

約2万平方メートルの広大な敷地に建つ、大屋根が圧巻の母家「萱-KAYA-」(最大15名宿泊可能)。その横には有名建築家の中村好文さんが設計したグランピングスタイルの蔵の宿「蔵-KURA-」やキャンプサイトがあります。

敷地の一角には季節の野菜を減農薬で育てる畑もあり、農業体験も楽しめます。訪れた時はネギやナス、ピーマンや聖護院カブが栽培されていました。

「萱-KAYA-」に入ると、室内はまるで田舎のおばあちゃんの家に来たかのような雰囲気です。土間キッチンにはデザイン家電もあれば、昔懐かしの竈も完備。一枚板のカウンターは調理に、食卓に、デスクワークにと便利で、寿司職人の出張サービスで江戸前鮨を握ってもらうこともできるそうです。

自然体験や郷土文化を楽しめるメニュー、企業向け体験プログラムも充実しており、オリジナルウエディングの開催も可能。地域の人たちとの交流が広がる多目的空間でした。

<まるがやつ‐MARUGAYATSU>
住所:〒298-0202 千葉県夷隅郡大多喜町下大多喜1530
HP:https://marugayatsu.com/

「BLACK RAMS」でランチ

昼食は勝浦市にある『BLACK RAMS』へ。東京から移住してきたオーナーの齋藤祐之介さんがセルフリノベーションして2020年にオープンした家族経営の飲食店&キャンプ場です。

「野菜の直売所を約半年かけてDIYで改装しました。子育てしやすい環境が移住の一番の理由で、サーフィンが好きでよく来ていた千葉の外房エリアで探しました。勝浦は手つかずの自然が多くて、人より動物が多いぐらい。のんびり暮らせています」と語る齋藤さん。

ここでオーダーしたのが自家製ブリトーです。メニューは北海道産ラム肉を使った「ラム」、勝浦産のシイラをメンチカツにした「マヒマヒ」、豆と挽き肉を炒めた「チリビーンズ」の3種類で、今回はラムをチョイス。ラム肉がホロリと柔らかく、シャキシャキのレタスとあいまって、これはもうリピートしたくなる美味しさ!

「テイクアウトでまたぜひ。以前、ハワイに一年ほど暮らしたことがあって、勝浦はハワイのサーフィンスポット、ノースショアと雰囲気がすごく似ています。それで店をオールドハワイアンスタイルにしてみました。非日常な空間とフードを楽しんでもらえたら嬉しいです」(齋藤さん)。

壁にはZensist(ゼンシスト)という名でアーティスト活動をしている齋藤さんの絵が飾られ、店の裏手には齋藤さんが整備したキャンプ場とバスケットコートが広がります。滑り台やブランコを手作りし、目下、ツリーハウスも製作中です。

「ここに越してくるまでテントを張るペグも知りませんでした」と笑う齋藤さんの人柄と手作り空間が、つい長居したくなる雰囲気を醸し出していました。

<BLACK RAMS>

住所:〒299-5272 千葉県勝浦市貝掛355
HP:https://www.blackrams.online/

 

大多喜町役場 訪問

最後に訪れたのは大多喜駅の目の前にある『大多喜町観光本陣』。ここで、大多喜町役場商工観光課の渡鍋佳晋さんと大竹義弘さんに、観光と移住をテーマに大多喜町の魅力と課題について伺いました。

「大多喜町は房総半島のほぼ中央に位置し、東京から車で1時間から1時間半で来ることができます。“転職なき移住”が可能な距離感は魅力で、コロナ禍をきっかけに二拠点生活の問い合わせが増えています」と語るのは交流促進係の渡鍋さん。

「キャンプ場や一棟貸しの宿のニーズが高まってきています。観光の見どころとしては130k㎡の面積の70%が森林という自然の豊かさ、大多喜城の城下町、養老渓谷の温泉街、そしてローカル線のいすみ鉄道があります。観光から二拠点生活、そして移住の流れをつくれたらと考えています」と観光係の大竹義弘さんが続きます。

空き家バンクは売却が主流で、なかでも別荘だったログハウスは1〜2カ月で売れるほど人気。しかし、賃貸物件が少なく、観光事業者も多くはないので観光客のサポート強化が課題だといいます。

「ロケーションの良さをもっとPRして、多くの事業者に来てもらえたらと思います」(大竹さん)

過去には有森架純さん主演映画『夏美のホタル』のロケ地になったこともあり、ロケーションサービスを推進して、美しい風景や歴史、郷土文化の魅力などを、映像を通して発信していきたいと語ります。

「大多喜町の町民性は穏やかだとよくいわれます。都会からの移住で懸念される密な地域活動もゆるやかなのが特徴で、フィジカル面もメンタル面も程よい距離感のあるのが暮らしやすさにつながっています。移住したら長く住み続ける人が多いのも、空き物件が出ない理由です。まずは観光に力を入れて、交流人口を増やすところからですね」(渡鍋さん)

東京の通勤圏であり、コロナ禍でテレワークが増えたことで二拠点、移住先として注目が高まる大多喜町。ロケーションサービスの推進で、さらなるムーブメントを起こせる可能性を十二分に感じました。観光から始まる移住者、事業者の増加に期待が高まります。

<大多喜町役場>
住所:〒298-0292 千葉県夷隅郡大多喜町大多喜93
HP:http://www.town.otaki.chiba.jp/


後編へ続く

                   

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