【求人】戦国時代から受け継がれる玄海町の棚田を守り、名産の魅力を広める

佐賀県玄海町 地域おこし協力隊募集

佐賀市街からも、福岡市街からも車で約1時間30分。

九州北西部佐賀県の東松浦半島西岸に位置し、西は玄界灘に面し、三方は唐津市に接している佐賀県玄海町。青い海、緑の山、清流の川と自然の景観に恵まれた豊かで住みよい町です。

農畜産業や漁業が盛んで、いちごやハウスみかん、たまねぎなどの農産物のほかに最高級の国産黒毛和牛「佐賀牛」、真鯛の養殖など町全体がまさに「食材の宝庫」。また、海を望む棚田は「日本の棚田百選」、「恋人の聖地」としても有名で、田んぼに水が張られる4月下旬〜5月上旬には、その美しい風景を一目見たいと、カメラを手にした多くの観光客で賑わいます。特に夕日に染まる時刻になると、棚田の畔の美しい曲線がくっきりと浮かび上がり、まるで美しい絵画を見ているかのよう。

▲海と水田の反射、畦道の曲線が描く造形美に、ただただ見惚れるばかり

そんな玄海町「浜野浦の棚田」は、名所として認知度が上がる一方、耕作者の高齢化により、年々作付面積が減少し、写真手前や右手の高台の田んぼのあたりには、耕作放棄地が目立つようになってきました。そこで今回は、この「浜野浦の棚田」を保全するため、棚田保全組合と一緒に、地権者と耕作者のコーディネートを担う「棚田プランナー」と、棚田米や真鯛、佐賀牛など玄海町でつくられる美味しい農林水産物を町外の消費者にお届けするため、商品の販路開拓活動やふるさと納税事務をサポートする「地域商社プランナー」、計2名の地域おこし協力隊を新規に募集します。

「浜野浦の棚田」にかける想いとは? そこでどのような活動が求められているのか? 現役棚田耕作者で浜野浦棚田保全組合長の松本正弘さんと玄海町地域振興会の青木一里さん、産業振興課の渡辺晴彦さん、そして脇山伸太郎玄海町長にお話を伺いました。

 

戦国時代から受け継がれる「浜野浦の棚田」

最初に訪れたのは、浜野浦の棚田展望台。美しい棚田を一望できる展望台には、ハート型のモニュメントが設置されており、恋人たちの聖地として多くのカップルが訪れる場所でもあります。なんと、ここで結婚式をされる方もいらっしゃるそう。ハート型絵馬やメッセージカードを結ぶ場所も設置されていて、見ているだけで幸せな気分になれる、まさにLOVEパワースポットです。

▲カップルが両脇の穴から手を結んで鐘を3回鳴らせば幸せになれるという「エターナルロック」(写真提供:玄海町地域振興会)

「もともと原野だったこの急斜面に、戦国時代から江戸時代にかけて先人たちが山を切り開いて、石を積み上げて築き上げてくれたのがこの浜野浦の棚田。この石垣は、すべて手積みでね、豊臣秀吉が文禄の役の拠点とした名護屋城築城のときに活躍した石工職人の子孫たちがこの地に住み着き、代々築いてきたとも言われているんですよ」

おだやかな笑顔で教えてくださったのは、棚田の浜野浦棚田保全組合長の松本正弘さん。ここ玄海町に生まれ育ち、棚田作りの7代目となるそう。

▲展望台付近からの棚田の景色

▲名護屋城の石垣の特徴とも合致する、自然石を使った穴太(あのう)積み

古くは戦国時代、江戸時代から脈々と受け継がれてきた棚田ですが、高齢化や担い手不足で、耕作放棄地が出てくるようになってきました。

「現在耕作者は13人。後継者がいるところも多いのですが、棚田ではなく、ハウスみかんや畜産関係など、別のものに携わっていることが多くてね。今はまだお互い助け合って、できない棚田はだれかが請け負ってなんとかやっているんですが、10年後となると、ね」

現在66歳の松本さん、管理されている20枚の棚田のうちの10枚は、助っ人として受け持っているものだそう。

「棚田は上の方から水をためていき、どんどん下の田んぼへと水を送っていくのですが、どこか1つの田んぼがやめてしまうと、水がそこでとまってしまう。棚田は、耕作者どうしの協力が大切な田んぼなんです」

美しい棚田の背景には、こんな苦労とごほうびも。
「作付面積が狭かったり、形もまっすぐではないから、なかなか機械も入らないし、入らないところはすべて手作業。道も急勾配すぎて、コンバインなど機械の運転も慣れてないとかなり大変で。でも、お日さまに近い分、いっぱい日の光を浴びて、照り返しの熱の恵みもあり、海からのミネラル分も豊富で。この棚田で育てたお米の味は、どこのものにも負けない自信があります!」

▲棚田のほかにも、玄海町のハウスみかんの先駆者でもある松本さん

浜野浦棚田保全組合が中心となり、米を収穫した後に菜の花の種をまいて春には菜の花畑にするなど、棚田保全、景観維持などにも取り組み、また、玄海町では、平成29年に「玄海町浜野浦の棚田条例」を制定するなど町を挙げて景観保全活動に力を入れています。

「この美しい浜野浦の棚田の景色を、次世代にも残していきたい。そのためにも、一緒にひとつでも耕作放棄地を少なくしていくお手伝いをしてくれる仲間がいると、とてもありがたいですね。そして、自分もまだまだがんばらないとね」

ほほえむ松本さんの笑顔が、とても美しくて印象的でした。

 

何にもないけど、何でもあるまち「玄海町」

次にお会いしたのは、玄海町地域振興会の青木一里さん。もともと玄海町生まれの青木さんは、高校卒業後、10年ほど県外に住んでいたそう。

「離れてみてから、玄海町のよさがわかりました」という青木さんは、意欲的に企画を考え、玄海町のよさ、すばらしさを伝える、ザ・仕掛け人です。“棚田の夕日”が見頃を迎える今年のゴールデンウィークには、「夕日が棚田の水面に映るのであれば、花火だって映るのではないか」と思いつき、“おもてなし花火”を企画。強風で、開催も危ぶまれた中、花火予定時刻の5分間だけ、風がやむというミラクルが!

暮れゆく夕日と濃い藍色に影を落とした棚田の水面に映る鮮やかな花火。
「それはそれは美しい、奇跡の5分間でした」


▲日にちは未定だが、今年も花火大会は開催予定だそう。お楽しみに!
(写真提供:玄海町地域振興会)

玄海町の特産品や名所を盛り込んで、出会いの場をおもてなしした婚活イベントでは、2組がゴールイン!

「玄海町は何にもないけど、何でもある町!美しい大自然はもちろんのこと、全国有数の漁場「玄界灘」で育まれる真鯛・カキ・サザエなどの海の幸、おなじみ佐賀牛に、いちご、みかん、たまねぎ、棚田米などの美味しい食べ物も。生産者は温かい方ばかりで、みんな作物などに話しかけながら愛情たっぷりに育ててくださっているからこそ、当たり前のように質も高いんです。まだまだ知られていないお宝のまち・玄海町のよさをまずは知ってもらいたい! その一心で日々活動しています!」と青木さん。

▲「とれたて海の幸をその場で食べられるような場所づくりもしたい」と夢が広がる青木さん

そして、今回の「地域商社プランナー」募集に関しては、
「願わくば豊富な経験を持った方に来ていただいて、ネット販売などで外の販路に繋げていただいたり、玄海町のブランド化をしていただいたりと、町外から来たからこそわかる玄海町のよさを発信してくださると本当に嬉しいです」。

玄海町に来る人も楽しい、受け入れる人もこれまた楽しい。
そんなまちづくりをしたいと話す青木さんの眼差しは、玄海町の明るい未来を見据えていました。

 

“食”からも棚田を応援!

ちょうどお昼どきになったので、立ち寄ったのが棚田の目の前にある食堂「さくら」。
昨年9月13日にオープンしたばかりですが、観光客のみならず、地元の方もお昼を食べに、お惣菜を買いに、おしゃべりをするためにと訪れる人が絶えないあたたかいお店です。

▲左から 大原一美さんと山口かすみさん。

娘さんが亡くなった時期と以前ここに建っていたお店が閉店する時期が重なり、何かの縁を感じたという山口さん。実家が食堂を営んでいることもあって、「大好きな玄海町の特産品を集めたかったのよね」という仲良しの大原さんとともに食堂を作ることを決断。準備期間は1か月半と急ピッチで開店を迎えたそうです。今では、棚田を訪れる観光客の休憩場所としても、地元の人の憩いの場としても重宝されています。

▲心のこもった家庭料理に、身も心もほっこり
▲玄海町の特産品コーナー。棚田米も2合入りから販売

使っているお米は、もちろん「棚田米」。今後の展望は、テイクアウト商品の開発や、今年の春、棚田に水を張る時期にはお店の前に玄海町の特産品を出して、観光客にもっともっと玄海町の“おいしさ”を知ってもらいたいと画策中だそうです。
「浜野浦の棚田」を、“食”を通じて一段と盛り上げてくれる、“ホット”な情熱を持つ“ホッと”あったかいお二人に出会えました。

 

玄海町が望む人材とは?

最後にお伺いしたのは、脇山伸太郎町長。今回の地域おこし協力隊募集に関して、どんな人材を望んでいらっしゃるのかズバリ聞いてみました。

まずは、「浜野浦の棚田プランナー」について。

「近年、浜野浦の棚田が全国的に認知されるようになってきたこともあり、今後も棚田の保全に力を入れていきたいと考えています。耕作者同士や、耕作者と地権者との話し合いが重要な棚田。耕作放棄地が年々増えてくるだろうと予測される中、この『浜野浦の棚田』を保全するため、棚田を耕し、棚田保全組合と一緒に、地権者と耕作者のコーディネート、高齢化や後継ぎ問題など各所で包括的なコミュニケーションをもってもらい、今後のまちの発展を推進していただける方を希望します」

では、「地方商社プランナー」に関しては?

「玄海町は、海産物、畜産関係、野菜・果物どれもが一級品で自慢の特産品。佐賀牛にタイ、カキの養殖、イチゴ、ミカンなど磨けば光る原石が至るところに転がっているんです。そんな自慢の特産品を各方面にPRしていただき、町外の販路拡大や認知度などに貢献していただける方を希望します。ほかにも地域特産品の発掘や、棚田米の付加価値化、全国で上位ランキングとなり、一躍玄海町の名前が全国に知れ渡ったふるさと納税の促進などにもぜひ力を発揮していただきたいですね」

玄海町役場産業振興課の渡辺晴彦係長も口をそろえていう。
「仕事をする上で、生産者、役所、地域の組合、この三位一体の結束力を強くしてくださることを期待しています。まだまだ眠っている玄海町のたくさんの魅力ある“お宝”を外からの目で“発掘”して、伸ばしていただきたいですね」

▲地域おこし協力隊募集窓口ご担当の渡辺晴彦係長

400年以上も続く歴史ある「浜野浦の棚田」。この美しく荘厳な景色を続く未来へ残すお手伝い、してみませんか?
そして、あなたの手で玄海町のさらなる魅力を発掘・発信して、玄海町をさらに元気にしてみませんか?

写真:樋渡新一 文:西郡幸子


ご希望の方には可能な範囲で、地区内のご案内など対応します。
【お問合わせ先】
産業振興課 担当 : 渡辺・越路(こいじ)
〒847-1421 佐賀県東松浦郡玄海町大字諸浦348番地
TEL:0955−52−2199 FAX:0955−52−3041

玄海町役場ホームページ
http://www.town.genkai.lg.jp/
浜野浦の棚田フェイスブック
https://www.facebook.com/hamanoura/

                   
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