白河市が位置するのは、福島県の南端。東北の玄関口とも言われます。観光地や温泉などで知られる栃木県那須町と境界を共にします。
「白河の関」という言葉を聞いたことはないでしょうか。
この関所は5世紀中頃に設置されたと言われており、多くの歌人の和歌や俳句に登場します。当時の都(京都、江戸)からみちのく(現在の東北地方)に入ることへの感慨や旅心などが表現されており、それらは、現代の私たちにも訴えてくるものがあります。
古今、さまざまな和歌や俳句にも詠まれた白河の関
主要街道が交わり、かつて交通の要衝として機能した白河。今も市内各地に点在する遺跡や地名が、往時の賑わいを伝えています。
市内近隣で100軒超の店舗が存在する白河ラーメン
白河の名を冠するものとして知られるのがラーメンとだるま。白河ラーメンは近年のあっさり味への回帰もあって、マニアの注目を集めました。そして、白河だるまは有名ブランドやアニメキャラなどとのコラボで広く知られるように。それでも、まだまだ白河という場所を知る人は多くありません。私たちは実際に白河を訪問した方々からよく言われます。
「那須の隣に白河というまちがあるなんて知らなかった。」
「福島県の南端は郡山だと思っていた。(岐阜県の)白川郷とは違うの?」
「灯台の下」が持つ大きなポテンシャル
かくいう私も、白河という土地を知らなかった一人です。私は白河市の地域おこし協力隊に着任して2年目の久野 宏と申します。若いころから東北地方にはたびたび、車や東北新幹線を利用して訪問してきました。
東北新幹線に乗車する際、せっかちな私にとっては速達のやまびこ号以外の選択肢はありませんでした。宇都宮駅を出発すると、一部列車を除き次の降車駅は郡山駅です。車内の電光掲示板で流れる「XX駅通過中」とのアナウンスも、那須塩原駅を通過したらそろそろ郡山駅が近いという認識でした。新白河駅は那須塩原駅から新幹線だと10分たらず。しかし、その際の「新白河駅通過中」とのアナウンスを一度も見た記憶がありません。
桜の季節には多くの観光客で賑わう日本百名城の小峰城
少し小難しい話になりますが、「人間知性論」などの著書で知られるイギリスの哲学者ジョン・ロックは経験論という考えのもと、「認識するには経験が必要」と述べています。その時点で白河というまちを知らなかった私にとって、白河に関連する情報はノイズとして脳で処理されていたため、認識されなかったのだと思います。
また、「灯台下暗し」ということわざのように、光源に近すぎるものは見えづらいというのも原理と言えるものです。先の私の体験も、まさに那須という場所ばかりに関心が集中していたゆえ、白河という場所の存在を認識するに至らなかったことを証明しています。
そして、当時の私と同じような認識状態にある方が少なくないことも容易に想像できます。実際、私の移住前からの友人たちに聞くと、ほとんどが白河というまちの存在を知りませんでした。私が移住したことで初めて認識した人が多いのです。そして、その縁で実際に訪問してくれた友人は声を揃えて言います。
「初めて来たけど、ほどよく便利で、少し離れれば自然も豊富で住みやすそう。」
「市民共楽」をコンセプトにしている南湖公園
私はこの友人たちが伝えてくれた言葉に、白河というまち、地域のポテンシャルが端的に表現されていると考えています。実際、地域おこし協力隊への着任から約1年半、私もこのまちでは住みやすさを実感する日々です。
平凡な日常から魅力を「ディグ」してほしい
私は市街地に住んでいることもあって、買い物など生活の利便性は東京に住んでいる時と大きく変わった印象はありません。しかし、夜になると車の往来がめっきり少なくなり、時期によってはカエルや鈴虫の鳴き声に癒されます。
時期によっては天の川の姿にお目にかかれることも
晴れた日に見上げる夜空は、東京で見ていた星空とはまったくの別物。140年ぶりとされた部分日食の日には、月の表面がうっすらと見える幻想的な光景に見とれていました。流星群の時期は必ず、流れ星を探してしまいます。ふと、夜空をじっくり眺めたくなったときは20分も車を走らせれば、漆黒の闇と輝きを増した星空が包み込む空間へ。その場で淹れたコーヒーを片手に、ぼーっと空を眺めるのは至極の時間です。
晴れた日の夕方、さまざまな表情を見せてくれる大空はキャンバスのよう
また、日々新鮮な野菜や果物を口にできることもQOLの向上に一役買っています。東京で購入する野菜と比較すると、とにかく味が濃い。だから、しっかりと煮込むことで野菜の出汁がしっかりと出るんです。夏野菜はミネラル豊富だから、きっと免疫力のアップにもつながっているはず。網戸は引っ越してから1年半、一度も洗うことがありません。東京に住んでいた時は高速道路が近くを走っていたこともあってか、3か月に一度拭くと雑巾が真っ黒になっていたのに。
言葉にすれば平凡かもしれない、こうしたできごとが日々の生活の満足度を証明していると思います。しかし、私もまだまだ魅力をディグ(発掘)しきれているわけではありません。
「ディグ(Dig)×仕掛け」を全面的にバックアップ
話は少し逸れますが、見出しに入れた「ディグ」とはDJの世界でよく使われる言葉で、たくさんのレコードからレア盤を探すといった行為のことです。1990年代、全世界的に「レアグルーヴ(Rare Groove)」なるムーブメントが起こりました。単純にレア盤なだけでなく、発売当時に埋もれてしまった良質な楽曲を再評価するという動きです。昨今、日本の古い楽曲が「和モノ」として世界的に注目を集めているのも、第二次レアグルーヴ的な動きが起点と言えるかもしれません。
地方創生の潮流においても、これまでを大きくアップデートし、近年の動きは本質に近づいているように感じます。地域から本質的な魅力・価値を抽出し、SNSや人づてなど、草の根的に支持者を増やすプロジェクト・プロダクトが増えているのが昨今の潮流です。
某企業のCMで取り上げられたことで再注目を集めた木舎のJR白河駅
白河市で地域おこし協力隊を募集する背景には、新たなプレイヤーを地域に呼び込みたいという思いがあります。長らく住んでいる住民の方にとっての「当たり前」を外部視点からアップデートし、生業化を目指す。そのためには、ご自身の感性で地域の魅力をディグし、ロジカルに戦略を構築、着実に実行していくことが要求されます。一つひとつは小さな動きかもしれません。それが時間の蓄積とともに花を開き、結実していくことでしょう。
正直、白河市の地域おこし協力隊業務に着任される方へ求めるものは少なくありません。しかし、求める分、白河市でも全面的に活動をバックアップしてくれます。事実、私もこれまで多くのバックアップをもとに、イベントやワークショップの開催を行ってきました。最近では、10年来利用されていなかった施設を県内の大学生と一緒に改修作業をおこない、コミュニティスペース「温室」としてオープンさせることができました。
県内の大学生らとDIYで作り上げたコニュニティースペース「温室」
私が白河市に移住してから1年半あまり。新型コロナウイルス感染症の影響で、伝統の祭りやイベントなど、そのほとんどが中止を余儀なくされています。しかしその一方で、新しいやり方でコロナ禍に立ち向かう人たちも目立つようになってきました。日夜開発する新製品を地域外の人に届けるべく、オンラインを積極的に活用する事業者。SNS全盛の時代、「バズる」ことをきっかけに伝統産業へ目を向けてもらおうとさまざまな業種・業態とコラボを行う事業者。あるいはアフターコロナを見据え、若い人たちの活力を集結させるべく取り組むNPO、などなど。白河でも着実に次の時代を担う動きが広がってきています。
こういったダイナミックな動きと連携し、地域おこし協力隊として主体的に活動していくことで、3年後にはきっと新たな世界が広がっているはず。
強く、熱い「想い」を持った方のコミットを白河市では歓迎します。
白河市地域おこし協力隊の募集概要
●業務概要
募集枠により業務内容は異なります。詳しくは下記「応募フォームはこちらから」ボタンのリンク先の市役所ホームページ内「地域おこし協力隊の募集」ページをご覧ください。●募集対象
白河市において、何かしら「仕掛け」たいと考えている方。地域住民の方々や関係機関との調整などを能動的に進めることができる調整力、実行力を伴う方。三年間の任期終了後のキャリアビジョンを明確にお持ちの方。●募集人数
数名(募集枠充当次第、募集は締め切ります)●選考方法
1次選考(書類審査) → 2次選考(市内訪問及び意見交換)→3次選考(面接審査)
この記事を書いた人
久野 宏
白河市地域おこし協力隊 / コミュニティスペース「温室」プロデューサー。
ウェブ業界でのセールス、マーケ、ディレクター経験を経て2017年からフリーランスとして独立。国内外のBtoB企業などを中心に、ウェブを活用したプロモーションの支援を行う。2020年春に福島県白河市へ移住し、地域おこし協力隊との複業に挑戦中。2021年9月、県内の大学生とともにリノベーションをおこないコミュニティスペース「温室」をオープン。アフターコロナを見据えた地域の内外を「つなぐ」仕掛けを模索しています。
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都道府県+市町村 福島県白河市 募集状況 募集中 勤務地 福島県白河市 募集期間 募集枠充当次第、募集は締め切ります 選考プロセス 1次選考(書類審査) → 2次選考(市内訪問及び意見交換)→3次選考(面接審査)