若者たちが地域の課題と本気で向き合い、地域に残るビジネスを作る2週間のプログラム 「TURNS LOCAL COLLEGE.( 通称『ローカレ.』)。プログラムを通して向き合った地域は、 参加者にとって「ただいま」と言える第二の故郷になっています。
今回は9月に行われた第3回の様子をレポート。参加者たちのリアルな姿をお届けします。
ローカレ.とは?
地域の課題と向き合い、地域に残るビジネスを作り、「ただいま」を言えるまちに出会う……。
TURNSが主催する「TURNS LOCAL COLLEGE.」は、18歳から29歳までの若者たちが地域と深く関わり、事業者が抱える課題の解決策を真剣に考え抜く2週間のプログラムです。地域のプレイヤーや仲間たちと課題に挑み続ける姿は毎回さまざまなドラマを生み、地域に新たな活動の芽を残しています。
以前の「ローカレ.」の様子はこちらからぜひご覧ください!
ローカレ.in 丹波山村 15日間の歩み
ローカレ.では、地域の事業者の方々にご協力いただき、地域の課題に即したテーマを設定。参加者たちは1テーマ1チームの計4チームに分かれて課題に取り組みました。
テーマ① 地域PR:丹波山村役場
「丹波山村だから」と選んできてくれるプレイヤーに出会いたい。人口減にともない人と人の交流「人交」が減りつつあるなかで、50年先の丹波山村のために何ができるのか。もっと多くの人に丹波山村を知ってもらうため、村の特色を活かした企画を考える。
テーマ② 文化継承:丹波山村郷土民俗資料館
地域特有の歴史文化は住民たちのアイデンティティや地域愛に繋がるもの。その重要な役割を担う郷土民俗資料館で何ができるのか。山の神の使いとして狼を祀る「七ツ石神社」の再建をきっかけに、丹波山村に伝わる狼信仰を軸とした価値の創造と提案方法を探る。
テーマ③ 空き家:梅鉢不動産株式会社
「空き家は多いが住める空き家がない」「移住したい人はいるのに受け入れるための住居がない」という課題に対し、空き家の調査から残置物の処理までを視野に入れ、全国の空き家問題の解決の糸口になるような対策を新たな目線で考えていく。
テーマ④ 観光:一般社団法人 たばやま観光推進機構
観光客が自然と村に溶け込んでいける姿を目指し、丹波山村の自然や魅力を活かした、この村ならではの観光の在り方とは。自然を存分に活かした体験やアクティビティ、一人ひとりに合わせたオリジナルツアーなど、人々の記憶に残るような観光を目指す。
Day.0〜2(キックオフ・フィールドワーク)
厳しい残暑が続き、まだまだ夏の終わりが見えない9月初旬。丹波山村役場に地域の事業者と参加者が集まり、キックオフミーティングが行われました。
前夜から丹波山村に入って顔合わせを済ませていたものの、改めて地域の方々と対面し、期待と不安でいっぱいの参加者たち。そんな彼らに木下村長は「この村を第二の故郷として好きになってもらえたらうれしい」と歓迎の言葉を贈り、「ローカレ.」がスタートしました。
その日の午後からは、さっそくフィールドワークに。事業者の方の案内で現場を見学したり、地域について学んだりと、これから企画を立てる上で大切な土台となる情報を集めていきました。
Day.3(中間プレゼン)
集めた情報を整理し、今後の方針についてプレゼンを行いました。
事業者の方々からは、「本当に自分がやりたいと思えるか」と、地域課題の企画を自分ごと化できていないことの指摘や、「丹波山村でやる意味はあるのか」と根本的な部分について厳しい意見をもらう場面もあり、参加者たちは改めて地域と向き合う難しさに直面。
プレゼン後には事業者の方と意見を交わし、再度アドバイスをもらいました。
Day.4〜7(ブラッシュアップ)
中間プレゼンで自分たちの力不足を目の当たりにした参加者たちは、さらに情報を集めて議論する必要性を痛感。チームにも変化が起き始め、これまで遠慮して言えなかったことも堂々と言い合える関係に。
ちょっとした意見や認識のズレを放置せず、お互いが納得できるまでとことん意見を戦わせる場面も見られましたが、「地域のため」という共通の目標のもとで結束が強まっていきました。
Day.8(ちょっとひと休み)
この日は「企画」を離れ、ちょっと休息。村の方と一緒に遠出をしたり、丹波山村を観光目線で歩いたりと、いつもと違う視点で地域を楽しみました。何気ない会話は相手の意外な一面を知る機会にもなり、プライベートな時間をともに過ごしたことで、参加者同士はもちろん、事業者の方との心の距離も一気に近づきました。
梅鉢不動産の梅原さんと一緒に、山梨名物の「ほうとう」と「ワイン」を求めてお隣の甲州市へ。ワイナリーでは試飲をすることができ、普段はワインを飲まない参加者も「ちょっと大人になった気分です」と、新たな体験を楽しんでいました。また、地域の方と積極的に会話をする姿に「ローカレ.」での成長が垣間見えました。
資料館学芸員の寺崎さんと一緒にお出かけしたグループも。土偶を見たり、公園に行ったりと、山梨の文化と自然をたっぷり満喫して心も体もリフレッシュ!周辺の歴史文化に詳しい寺崎さんのガイドは、本やインターネットで知る情報よりも深く地域に根ざしたもので、参加者たちも熱心に耳を傾けていました。
Day.9〜13(ラストスパート!)
折り返しも過ぎ、最終プレゼンまで一気に駆け抜けます。毎日地域と向き合ってきた参加者たちの心には「丹波山村のために何かしたい」という強い思いが芽生えていました。
これまで以上に真剣な目で取り組む彼らに、木下村長も忙しい公務の合間を縫ってアドバイスをくださいました。村長からの忌憚ない意見は、迷いのなかにある参加者たちが「地域に寄り添う」という企画の本質に立ち返るための、ひとつのきっかけになりました。
プログラムが佳境に入ったある日、みんなでキャンプファイヤーを囲んで互いの不安や思いを言葉にし、自分と向き合うことができました。また別の日には、周辺の飲食店が定休日で食事に困っていた参加者のために、近所のおばあちゃんがカレーを作りに来てくれました。
こうした経験も、ローカレ.の醍醐味のひとつです。
Day.14(最終プレゼン)
いよいよ最終プレゼンです。溢れる思いと覚悟を10分間の発表に詰め込んだ参加者たち。村内外の「人交」を増やすアイデアや、空き家の所有者と使いたい人を繋ぐ取り組みなど、各チームが向き合ってきた課題に対してひとつの答えを出しました。
プレゼンを終えた参加者の目からは自然と涙が。「またいつでもおいで」「必ず帰ってきます」と会場のあちこちで言葉が交わされるなか、やりきった達成感、もっとやれたという悔しさ……それぞれがさまざまな思いを抱えながら、2週間の「ローカレ.」が幕を閉じました。
ローカレ.を終えて
ローカレ.生たちが提案した企画は地域の方々から好意的に受け入れられ、そのうちのいくつかは実現に向けて動き始めています。
2週間のプログラムを終えた参加者と、ご協力いただいた丹波山村の方々に、今回のローカレ.について感想をいただきました。
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塩田智恵さん
辛いことのほうが多かったけれど、学びも大きかった。地域を新しく変えるのではなく“生かす”ことの大切さを知れました。 |
内田唯さん
自分の気持ちを素直に表現できるようになりました。いろいろな個性を持った仲間と出会えたことが一生の財産です。 |
阿曽由希菜さん
ローカレ.をきっかけに、味方作りのアクションを恐れず実行できるようになりました。 |
石橋風雅さん
ともに生き抜いてきた仲間、戦友ができたことに感謝! これからの人生に影響を与えるよい経験をしたと思います。 |
山口航平さん
良い意味でも悪い意味でも頭を殴られたような衝撃を受けた2 週間。今後のキャリアを考える上での参考になりました。 |
大之木里早さん
自分の意外な一面が見えたり、思っていることを伝える重要性と怖さを知りました。「人に向き合う」とはどういうことなのか学ぶことができたと思います。 |
平山晴浩さん
丹波山村での2 週間は私にとって、かけがえのない財産になりました。また丹波山に遊びに来て、「ただいま」と言いたいです。 |
野口杏奈さん
ローカレ.を経て、人とのご縁をこれまで以上に大切にするようになりました。また、自分の好きなことをもっと大事にしてあげたくなりました。 |
杉崎歩さん
個性的なメンバーに触れ、好きなことややりたいことをして生きることの尊さに気づきました。自分の世界が広がった気がします。 |
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丹波山村役場 地域創造課 矢嶋澄香さん
これまでも移住促進や関係人口構築に取り組んできましたが、今回のローカレ.は新たな道を拓く第一歩となったと思っています。小さな村にまだまだ可能性があることを実感しました。 |
丹波山村郷土民俗資料館 寺崎 美紅さん
地元の声に熱心に耳を傾ける若者の姿がたくさん見られて嬉しく思いました。普段は単独で活動することが多いので、「伝える」ことを改めて意識する機会にもなり、目標を具体的に考える時間にもなりました。 |
梅鉢不動産株式会社 梅原颯大さん
ローカレ. 生たちが村の人たちと2 週間でこんなにも深く関われるようになり、驚きました。また、参加者からのいろいろな意見を受けて、発想が固くなっていたなと若者や外からの意見の重要性も再認識する機会となりました。 |
一般社団法人 たばやま観光推進機構 福島千冬さん
若い世代の方たちと接して、自分の社会性を見直す機会を得られました。素直で一生懸命な姿を見せていただくことができ、初心を忘れることなくいることは大切だと感じました。 |
木下喜人 丹波山村長より
丹波山村をフィールドとして選んでくれたことに感謝いたします。
初日に皆さんの活動を見学したときは、これまで若い人たちがこの村で実施してきた光景と何ら変わりありませんでした。しかし後日意見交換をした際には、次から次へと意見や質問が飛び出し、皆さんの真剣な目がとても印象的でした。短期間で地元の人と触れ合い、情報を収集し、夜遅くまで研究する姿に熱意を感じました。
小規模な山村なので、いろいろと難しい面があったと思いますが、それぞれに形を残してくれました。あわせて「丹波山村のことをもっと好きになった」という声が多く聞かれたのも、ありがたいことです。
また、若い人たちが2 週間もこの村に滞在しながら課題解決に取り組む姿を、多くの村民が見て応援しているという状況自体が、地域の課題解決になっていると感じました。参加者が再び丹波山村を訪れたときに、ふるさとに帰ってきたような気持ちになってくれればうれしいです。
Information
山梨県丹波山村
〒409-0300 山梨県北都留郡丹波山村2450
TEL 0428(88)0211
●移住情報専用サイト
https://www.vill.tabayama.yamanashi.jp/
●たばやま観光Navi
https://tabayama.info/
\「ローカレ.」生が訪ねたスポット/
のめこい湯
奥多摩源流の名湯と言われる「のめこい湯」。しっとりつるつるする美人の湯として評判。
きのしたベーカリー
地元だけじゃなく、東京からもお客さんが足を運ぶパン屋さん。国産小麦100%を使用した無添加生地のパン。
灯里
元は築80年の民家だったものを改装しできた地域の憩いの場。メニューは、かまど炊きご飯で味わう日替わりの田舎弁当(数量限定)、熟成ワインカレー、カツカレー、うどん各種。
オオカミ印の里山ごはん
丹波山村の旬の食材を生かした料理や手作りお味噌が美味しいお店。お昼の営業だけではなく、週末限定で夜は居酒屋を営業している。
写真:TARO