地域おこし協力隊リレーTALK Vol.42
​「田辺市の関係人口講座に参加して、移住を決意」

和歌山県 田辺市 現役隊員
田中和広さん

 

活動内容:温州みかんや紀州南高梅に関する農作業、ECサイト運営、SNS等による情報発信ほか 

大阪府泉南市に生まれ、大阪の大学を卒業した後は東京のIT企業に就職してシステムエンジニアとして8年勤務した田中さん。
「もともと都会暮らしが好きではなかったし、一生エンジニアの仕事をするのもきついと思っていました。地方移住をしたいと考えたとき、東北や九州も魅力的で目移りするばかりで決められないので、まずは関西圏に絞ろうと思いました。ちょうど勤めていた会社に和歌山県人会があり、そこに入るのと併せて和歌山のことを深く知るために移住関連のイベントに参加していたところ、田辺市主催の地域住民と都市部住民との交流を通じた関係人口の創出と拡大を目的とする
たなコトアカデミーを受講しました。参加して知り合いもできましたし、田辺市を深く知ることができました。つながりができたことで、移住するなら田辺市がいいという思いが強くなりました。」 

移住を考え、田辺市での仕事を探していたところ、地域おこし協力隊の募集が目に止まったという 

「田辺市の募集は、地元の若手農家の方々が地域での新しい農業スタイルを目指し活動する団体とともに農作業等に関わるものでした。この団体のことは、たなコトアカデミーで知っていました若手農家が中心となって、耕作放棄地や鳥獣害などの課題を解決しながら地域活性化に取り組むという主旨にも共感していたので、すぐに応募を決めました。」 

田辺市には、地域課題に積極的に取り組む若手起業家が多く、地域課題をビジネスで解決する人材の育成とビジネスモデルの創出を目指す「たなべ未来創造塾」の卒業生たちと接するうち、自分も彼らと一緒に地域課題に取り組みたいと強い決意を持った田中さん。2021年6月に、地域おこし協力隊として田辺市に着任した。 


左)地元の特産品である南高梅を干す田中さん 右)バレンシアオレンジを収穫している様子

 

農作業や狩猟など多彩な活動で刺激的な毎日

「和歌山県は温州ミカンをはじめとする柑橘類や南高梅の特産地です。これらの農産物の収穫や消毒、せん定、摘果といった農作業全般はもちろん、ジュースやジャムなどの加工工場への運搬や完成品の納品業務も行っています。IT業界の出身ということもありECサイトの管理も担当しています。」 

加えて耕作放棄地の整備や山林を切り拓いての農地開拓など、農地拡大のための作業を行う。また、地元の中学校や和歌山県内の高校、大学サークルの農業体験の受入といった活動もある。 

「私が所属する団体は農業が中心ではありますが、狩猟関連の業務もあります。イノシシやシカなどの鳥獣被害から畑を守るために狩猟にも力を入れていて、捕えた獲物をジビエ素材として加工するほか、狩猟体験の受入れなども行っています。」 

着任前は、農業というと地道な作業を繰り返し行うような印象を持っていたが、実態は大きく違っていたと話す。 

田辺市に来てからの仕事は、本当にやることが多彩で楽しいし、毎日やることが変化してあらゆることが経験できることが魅力です。団体の代表も人と関わることが好きで、講演に行くことも多いし、私も代表と同行するうちに様々な方と出会うことができ、とても刺激になっています。」 


左)シカとイノシシを捕えるためのワナを仕掛けている田中さん 右)田中さんが所属する団体の仲間たち 

 

移住してからは、人間関係のストレスを感じたことがない

田辺市に移住してきてからは、人間関係のストレスをほとんど感じたことがないという田中さん。 

「もともとたなコトアカデミーに参加した当時から、田辺市の方々と接していて、気の合う人が多いことはわかっていました。地域おこし協力隊に応募する際も、代表と接して団体のことを知ることができたことが決め手のひとつになっていましたし、人間関係で悩まない自信があったので移住してきたとも言えます。自分は慎重な性格なので、そこで不安を感じていたら応募していなかったと思います。」 

他の団体のスタッフとの関係も良好だ。 

「皆さん、いい方ばかりなので、本当に働きやすいです。人間関係で苦労することはほとんどありません。のびのびと活動させてもらっています。月に一度の定期ミーティングや日常的な連絡はしていますが、活動の自由度が高いことは、私としてはありがたいと感じます。」 

地域おこし協力隊としての活動に加えて、地域課題に取り組む「たなべ未来創造塾」でも、6期生として学んでいる。 

「1年目は協力隊の活動に専念して、2年目に入ろうとも考えていましたが、周囲の勧めもあって2021年夏に入りました。こちらは月に1~2回のペースで開かれる講座で、最終的には本業につながるような地域課題に対するビジネスプランをプレゼンすることになっています。そこで学ぶことは地域おこし協力隊での活動ともリンクしますし、自分がこれからやっていきたいことを明確にする上でも、貴重な勉強をさせてもらっています。」 


左)大型バイクで趣味のツーリングを楽しむ田中さん 右)関東から来たたなコトアカデミーのメンバーたちと 

 

都会の若者と地方をつなぐビジネスプランを模索中 

「たなべ未来創造塾」で知り合った地元の仲間たちとは、お互いのアイディアをブラッシュアップするなど、切磋琢磨しながら交流を深めているそうだ。 

「地元でデザイナーをしている方と仲良くなって、ビジネスプランを一緒に進めていこうという話もしています。今後は、田辺市にいながら関西圏や首都圏の若者たちとコミュニティを作っていきたいと考えているのですが、かつて自分がそうだったように、今は都会で暮らしているけど、地方に移住したいと思っている人は少なくないと思います。一方で、そんな人たちがいきなり移住するとか農業を始めるとなると、ハードルは高いはず。私は、そのハードルをできる限り下げたいと思っています 

地域おこし協力隊として様々な活動を経験し、たなべ未来創造塾などで切磋琢磨できる仲間たちと出会った田中さんが、任期終了後に思い描いているのは、まさに都会からの移住のハードルを下げるビジネスプランだ。 

「具体的な形は模索中ですが、私のようにいきなり移住しなくても、年に1回だけ田辺にみかんの収穫に来るとか、そんな形のコミュニティがあってもいいはず。人口減少とか少子高齢化といった、地域が直面する課題に対してもアプローチできると思いますさらに、他の地域の協力隊同士がもっと交流して、コラボできればいいと思います。自治体の枠を超えて、広く深くつながれば面白いですよね。そういう交流は既にいくつかあるようですが、交流というレベルではなく、一緒に何かを作り上げるようなコラボが生まれたらいいと思います。地域おこし協力隊はそんな可能性も秘めた制度です。」 


左)田中さんの所属する団体で販売している加工品の一部 右)田中さんたちが育てている温州ミカン

 

和歌山県 田辺市 現役隊員
田中和広さん 

1989年生まれ。大阪府出身。大学卒業後、東京のIT企業でシステムエンジニアとして8年勤務。関係人口講座「たなコトアカデミー」を受講したことを契機に田辺市との関わりを持ち、地域おこし協力隊に応募。2021年に着任し、農作業を中心に幅広く活躍中。 

和歌山県田辺市 地域おこし協力隊: https://www.facebook.com/wakayama.tanabe.chiikiokoshi/ 

地域おこし協力隊とは? 

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。具体的な活動内容や条件、待遇は、募集自治体により様々で、任期は概ね1年以上、3年未満です。 

地域おこし協力隊HP:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei

発行:総務省 

 

 

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