地域おこし協力隊リレーTALK Vol.38
​「ドローンの技能を活かして地域に貢献したいと飛騨市へ 」

岐阜県 飛騨市 現役隊員
山﨑裕考さん 

 

活動内容:飛騨市内でのドローンの普及、ドローンを活用した産業の普及、観光動画の作成ほか 

北海道出身で、道内の高校を卒業後、美容室の見習いなど、様々な職業に従事してきたという山﨑さん。 

「労働量の割に給料が少ないと感じたので、美容室はすぐに辞めて以降はあらゆるバイトを掛け持ちして働きました。とび職や水商売、探偵など何でもやって、24歳の時に初めて北海道を出て三重県の自動車工場に勤めました。そこで地道に技術を高める仕事が自分に向いていると気づき、以降は半導体や腕時計など工場ばかりを渡り歩いて、最終的に愛知県豊田市で、自動車メーカーの期間従業員になりました。」 

自動車メーカーでは正社員並みの教育も受けることができ、ようやく安定した職場を得た山﨑さんは、趣味で始めたドローンレースに没頭した。 

「最初はドローンの空撮ができれば、小遣い稼ぎができるかなという軽い気持ちでした。撮影機から始めて、次第にドローンレースの世界を知り、その高度で華麗なテクニックに感動してのめり込んでいきました。ドローンレースの第一人者が埼玉県にいたので、埼玉に赴き技術や知識を学ばせてもらいました。」 

ドローンで撮影をする人は多いが、ドローンレースは競技人口も少なく、マニアックな世界だった。愛知県刈谷市にあるドローンのクラブに通い、ドローンレースを楽しんでいたという。 

「そんなとき、飛騨市でドローンを活用した地域おこし協力隊の募集があることを知りました。ドローンを活かして地域に貢献できるのは大きな魅力でしたが、当時の勤務先では正社員登用の話も頂いていたのでとても迷いましたが、それでも決断して応募しました。」 

面接でドローンへの想いを熱くプレゼンした結果、採用が決定。山﨑さんは2020年10月に飛騨市の地域おこし協力隊として着任した。 

着任後の委嘱式で市長へドローンの紹介をした 

 

空撮コンテストを開催してドローンの魅力を発信

安定した仕事を辞めて飛騨市に移住した時点で、山﨑さんは既に相当な覚悟を決めていた。 

「着任したときから、『地域に密着して活動するのだから、飛騨市で事業を立ち上げよう』と決めていました。任期である3年間で形を残せないのなら、飛騨に来た意味がありません。ドローンを活用した地域振興の一環として、まずは2021年10月に『第1回飛騨市空撮コンテスト』を開催しました。法令を遵守しながら、市内でドローンを飛ばして動画を制作してもらい、その出来栄えを競うものです。全国のドローン関係者に市の取り組みを知ってもらい、市民にドローンを身近に感じてもらう機会とすることが目的でした。」 

関係名所への許可取りなどの準備を行い、着任から一年後に大きなイベントを実現させたことからも、山﨑さんの並々ならぬ熱意が感じられる。 

「全国から9組の参加者が集まりました。1日目は、本来は空撮できない飛騨古川の古い町並みや史跡 湿原などを撮影し、2日目の昼までに編集して審査を行いました。コロナ禍で飛騨の観光も打撃を受けていたので何としても成功させたかったのですが、作品の出来栄えも素晴らしく、大いに手応えがありました。」 

以降も子ども向けのドローン体験会を行ったり、小中学校に出向いてドローンの講義を行うなど、山﨑さんは精力的に動いた。 

「11月に行った体験会ではドローンに触れた子どもたちが、その後も興味を持ってくれるように、ドローン機材一式込みの料金設定にしました。」 


左)撮影に限らず、産業用などあらゆる場面で活躍するドローン 右)ドローンを操縦する山﨑さん 

 

ドローンを活用して地域の困りごとを続々と解決 

山﨑さんは一般市民へのドローンの普及活動と併せて、地元企業にドローンを業務に活用してもらう活動も行っている。 

「例えば鉄塔の検査をするためにヘリコプターを飛ばしていた企業が、ドローンの導入によりコストを大幅に削減できたという事例があります。ほかにもサギによる大量のフン害に対しても、ドローンでサギを誘導することにより、解決することができました。」 

同じドローンの操縦でも、レースとなると最高レベルの技術を要する。山﨑さんは150kmのスピードでも自在にドローンを操ることができるという。 

「企業からの特殊な要請があっても、私なら対応できる可能性があります。学校の体育館の天井裏にマイクロドローンで潜入して、鳩の死骸を取り除いたこともありました。ほかにも高所作業などの人体に危険が伴う労働をドローンで代替することで、リスクの軽減やコストを削減できるので大いにメリットのある事業だと思います。」 

地元の困りごとをドローンで続々と解決し、実績を積み上げるのと同時に、着任当初から起業に向けての準備も進めていた山﨑さん。協力隊での活動実績から、多くの方々からの支援を得ることができた。その結果、2021年1月に着任からわずか1年強で、株式会社ドローンコンシェルジュを立ち上げた。


左)アクロバット飛行をゴーグルで体感する子供たち 右)市内のイベントでドローンの説明をする山﨑さん 

 

飛騨市の人がより豊かな生活を送れるようドローンで貢献したい 

飛騨市も山﨑さんの活動を全面的にサポートしてくれるので、非常に心強いと話す。 

「空撮コンテストの際には、担当課の職員の方が総出で協力してくれました。ほかにもドローン撮影で人手が足りない時にも手助けをしてくれるなど、本当に助けていただいています。起業の際には支援してくれる方も大勢いて、本当にスムーズに立ち上げられたので、地元の人や、お仕事で出会った方、SNS等を通じて応援してくれる方には感謝しかありません。」 

2022年1月に起業した会社では、産業や農業、趣味などのドローン活用に関する相談や販売を手掛けるほか、ドローンレーサーの育成も行う予定だ。 

「子どもたちがピアノを習うような感覚で、ドローンレースの技術を習得してほしいと思っています。習い事のようにドローンの知識を学んで、飛ばし方を覚えて、やがてはドローンレースで優勝して世界で活躍するようにと。子ども相手なので収益は望んでいませんが、子どもたちに夢をもってほしいと思います。事業で得た利益を地元の子供たちに還元して、学びたいことを学べる環境を作るつもりでいます。」 

ドローンによる農薬散布事業にも参入する予定だが、それも単なる収益のためではないという。 

「農薬の散布は、装備の不備、事故からくる吸引や接触によって、健康被害を引き起こすことも指摘されています。農薬をドローンで散布することで、こうした農家の方の不安を払拭することができる。それも地域貢献になるはずです。将来は会社も大きくして、地域の学生たちをどんどん採用したい。飛騨の人みんながより豊かな生活を送れるように、これからも尽力していきたいと思います。」 


ドローンが多くの人を笑顔にすることを実感できたそうだ 


自らが立ち上げた会社設けられたドローンレース場 

 

岐阜県 飛騨市 現役隊員
山﨑裕考さん 

1985年生まれ。北海道出身。高校卒業後、様々な職業を経験した後、自動車メーカーに勤務。趣味で打ち込んでいたドローンレースの技術を社会課題解決に活かせるのではないかと考え、岐阜県飛騨市の地域おこし協力隊に応募。2020年10月に着任して活動中。 

飛騨市地域おこし協力隊:https://www.facebook.com/HidaChiikiOkoshi/ 

地域おこし協力隊とは? 

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。具体的な活動内容や条件、待遇は、募集自治体により様々で、任期は概ね1年以上、3年未満です。 

地域おこし協力隊HP:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei

発行:総務省 

 

 

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